インタビュー
2020.04.20

『ポツンと一軒家』『アメトーーク!』の放送作家・中野俊成が語る「時代とともに進化するテレビの面白さと、視聴率を上げるポイント」(後編)

Special Interview #08

放送作家

中野 俊成

『ポツンと一軒家』が大ヒットした放送作家・中野俊成さんのインタビュー後編です。

今回は、出だしにつまずいた番組の視聴率を上げるために中野さんが工夫していることや、昔と今のテレビの違い、企画の出し方、放送作家として長く生き続けてこられた秘訣をお聞きしました。

さすがテレビ業界でフリーとして35年間、生き抜いてきた人の言葉は違います。ぜひお読みください。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)

目次

伝え方を変えて数字が上がった『プレバト!!』

――中野さんのWikipediaを見ると、『大改造!!劇的ビフォーアフター』『テスト・ザ・ネイション 全国一斉IQテスト』『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』で、3年連続ATP(一般社団法人全日本テレビ番組製作社連盟)賞情報バラエティ部門最優秀賞を受賞したとあります。すごいですね。中野さんは他の放送作家と比べてどこが優れていると自分で思いますか。

僕自身が優れているというより、何人もの優秀な演出家と出会えている運の要素が大きいと思っています。20代で『電波少年』の土屋さんと出会ってたくさんのことを学び、30代、40代のときにもそれぞれ優秀な演出家たちと出会って、50代になった今も今度は二回りも下の優秀な演出家と一緒に仕事ができています。同じ企画を出しても、演出家の中には生かせない人もいるし、受け入れない人もいます。そもそも能力的に疑問符のつく人もいる中で、自分は優秀な演出家と出会えて恵まれていると思います。とにかく放送作家ってディレクターのサポート役ですから。

――でも中野さんに実力がないと演出家からのオファーもないわけですよね。

1つあるとしたら、我が強くないってことは関係しているかもしれませんね。

――どういう意味ですか。

アイデアをゴリ押しするような我の強さは持たないようにしています。収録して編集するのはディレクター、演出家ですから、この人たちが面白いと思わないのに無理やりやる方向に進めてもうまくいかないと思っているんです。とにかく演出家と企画のかけ算が基本ですから。

一方で、演出家のイエスマンにもなってはいけないとも思っています。演出家が独りよがりになっているときはそこを指摘するし、必ず自分なりの代替案を出すようにしています。ボールを投げようとしている方向を見極めて、より遠くに投げる。あくまでも心構えですけど(笑)。瞬発的に具体的なアイデアが出ないことも多いですよ。そんなときは少なくとも演出家が考えるヒントになるような情報を投げたりもします。

――では、最初は視聴率が悪かったけど、徐々に伸びてくる番組の特徴を教えてください。いわばヒットさせるコツというか。

直接、ヒットさせるコツになっているかどうかはわかりませんが、こちらの意図がきちんと伝わっているかどうかを客観的に点検して、どうすればしっかりと伝わるかを考えて修正するようにはしています。「あそこがうまく伝わっていないんじゃないかな」と会議でよく言っている気がします。

例えば、『プレバト!!』の数字は最初5~6%くらいでしたが、今は平均11%を超えています。この番組の特徴の1つはランキングで、順位によって座席の位置が低いところから高いところへ階段状に上がるようになっています。今は当たり前の光景ですが、最初はなかったんです。皆さんが浜田(雅功)さんの横に座っていて、テロップで「第3位」「凡人」と入っていただけなんです。それで、「これでは一応伝えてはいるけど、わかりづらいんじゃないか」「3位なら下から3位の席まで階段を上っていって座るほうが視聴者に伝わりやすいんじゃないか」と話して今のスタイルに変わりました。

3位の席まで階段を上がるときに5位の人の前を勝ち誇ったように横切ったり、2人の間に微妙な優劣感が漂っていたり、悔しそうな顔があったり、ちょっとドヤ顔を見せたりといった様子がテレビで画(え)になるんです。台本には書きようのない、こういうドキュメントな感情の動きが画になって伝わったのが、視聴率が良くなった一因だと思います。

作成:Marketing Native編集長・佐藤 綾美

昔はなかった「クロちゃん」的な笑い

――わかりやすいですね。あと、長くテレビ業界にいる中野さんにお聞きしたかったのは、昔との比較です。ヒット番組の特徴として、「昔はこうだったけど、今は違うよね」みたいな話はありますか。

僕が放送作家になった35年くらい前は「視聴者=国民」だったと考えて良かったと思います。しかし今は「視聴者=テレビを見るタイプ」に変わりました。あくまでも「ヒット番組」を視聴率を取る番組と定義づけた場合のことですが、その違いが数字に大きく影響していることは確かだと思います。

――確かに…。テレビをよく見る人というと、地方在住の年配層でしょうか。

一概に捉えることは難しいですが、生活習慣の中にテレビの割合が大きく占めている人。とりあえず帰宅したらテレビをつけるようなタイプというか、明日の天気が気になっていたとしてもすぐにスマホで調べたりせず、テレビの天気予報で確認するようなタイプです(笑)

ただ、今は2つの考え方があると思います。テレビを見ない人が増えているのであれば、その見ない人が面白いと感じる番組を作ってテレビに戻ってくるようにしなければいけないという考え方と、テレビを見るタイプを分析し、そんな人たちが何に興味を持つかを考えてつくるべきという考え方です。これまでは後者でつくる傾向が続きましたが、これからは前者を強く意識し始めるべきだと個人的には思っています。

――テレビを見る人が減っているという話を、中野さんはどのように感じていますか。

忸怩たる思いはあります。テレビを否定する人が多いじゃないですか。「家にテレビないんです」という言葉が、まるでイケてることのようにアピールする人もいる。

でも、そういう人たちもYouTubeに違法アップロードされた番組を見ている。そもそも僕は昔より今のテレビ番組のほうが数段面白くなっていると思っています。

――どの辺が昔より面白くなっていると感じますか。

単純にテレビマンのスキルがアップしているので面白さの解像度が上がっています。その分、例えば笑い1つとってもバリエーションが増えていると思います。『水曜日のダウンタウン』がやっているクロちゃんのああいったキモ面白さを突いた笑いって、昔は作れなかったと思いますね。作ろうとした人はいたかもしれないけど、伝え切れていなかったと思うんです。

――コンプライアンスはどうですか。私はとんねるずさんを見て育った世代ですが、今とんねるずさんや『電波少年』のような暴れ方をしたら、大炎上するでしょう。

炎上するでしょうね。とはいえ、コンプライアンス的なことは昔から言われていましたので、今特別に窮屈とは感じていません。「コンプライアンスがうるさいから面白い番組ができない」というのは言い訳だし、決められた条件の中で成果を上げるべきプロの考え方ではないと思います。

――お聞きしにくい質問なのですが、テレビ業界の中には『ポツンと一軒家』に対して「あれは見ている人が年配層ばかりだから」とか「業界の評価はそんなに高くない」みたいなことを言う人がいるようです。それに対してはどうですか。

営業的な見地でそんなふうに言う人はいるでしょうね。でも良質な番組をつくって話題になればスポンサーはついてくれます。『ポツンと一軒家』は営業的にも何ら問題ないとプロデューサーが胸を張っていました(笑)。個人的には「〇〇の世代が見ているような番組はダメだ」という考え方をしません。子供が楽しみにしている番組もいいし、おじいちゃん・おばあちゃんが楽しみにしている番組も素晴らしい。肝心なのは「どの世代であれ、楽しみにしてもらえる番組」がつくれるかどうかだと思います。だってテレビなんですから。

既存番組、新番組それぞれの企画の考え方

――企画の出し方について教えてください。中野さんはどのように企画案を考えているのでしょうか。

既存の番組については3つの軸で考えます。1つ目はその番組の現状の流れにある企画。2つ目は今の番組内容から発展させて、「こんなこともできるのではないか」という提案。3つ目は番組のコンセプトからあえて逸脱した企画です。それぞれ出すタイミングも重要だと思っています。

作成:Marketing Native編集長・佐藤 綾美

――新番組のときはどうですか。

まずどこの枠を想定したものかを考えます。「日曜日20時」と「金曜日23時」は全く考え方が違いますから。そこから、その枠の裏環境を調べます。「裏番組で強いのは〇〇で、視聴者層は20~30代だから、40代以上が空いている」「裏番組△△の視聴者は積極視聴ではないので、この番組から持ってこよう」など、マーケティング的に分析した上で、大雑把な方向性やキーワードだけをおぼろげに頭に置いて企画を考え始めます。

――「積極視聴」って何ですか。

文字通り、その番組が好きで積極的に見ているという意味です。新番組を立ち上げるときは、ほかに見るものがないからその番組をたまたま見ている層を取り込む必要があります。基本的にテレビ局の編成部がその辺りの戦略的配置は行いますが、その駒となる番組にならなければいけないので、企画を考えるときからそこは意識します。まずは企画が通らないと何も始まらないので。

――例えば、裏に『イッテQ』のような強力な番組がある場合、「この企画で『イッテQ』に勝てるの?」と言われることはないですか。

言われますよ。言われたら「わかりません。わかります?」と聞き返すことにしています(笑)。プロのスポーツ選手もライバルや場所を分析するように、自分も放送作家のプロとして現状を分析します。ただ、企画を考えるときは矛盾するようですが、あまりそこにとらわれず自由に考えて、面白そうな企画が思い浮かんだら、分析結果に照らし合わせてチェックしてみるという順番が多いかもしれないですね。

作成:Marketing Native編集長・佐藤 綾美

――深夜帯などで、好き勝手にやっていい枠はないんですか。

バブルの頃の深夜番組は自由にやれるものばかりでした。でも、今は違います。

――なぜですか。

今の深夜番組はゴールデンに上げるための試作の場になっているからです。企画もその先が想定できるような要素が入っている必要がありますね。

――窮屈な時代になりましたね。

窮屈といえば窮屈ですけど、指定された条件の中で結果を出すのがプロの仕事ですから。

――「テレビ離れ」に関連してですが、もう一度テレビに振り向かせる策はありますか。

身内びいきと取られるかもしれませんが、テレビマンが作るコンテンツは優れているものが多いと思っています。テレビとYouTubeなどネット番組との大きな違いは、タイムスケジュールが決まっていることです。今どきテレビを見るためにその時間までに帰宅するとか、わざわざ録画設定をするとか、面倒でなかなかしないと思います。だから時間に縛られずに、どんなデバイスでも見られるようなビジネスモデルへの転換が実現したときに、またテレビとネットの勢力図が変わると思います。

ただ、放送の時間が決まっているということは実はプラスな面もあるんです。同時間にコンテンツを共有するメディアとしてテレビは非常に優れています。スポーツの生中継や災害時のニュース、M-1グランプリのような生放送のコンテストものなどはテレビで共有したい。「紅白歌合戦」を見て大晦日の気分をみんなで味わうとか(笑)。YouTubeは100万回再生が大ヒットの基準になっていますけど、昨年の紅白、過去最低視聴率だと言われながら5800万人が見たというデータが出ています。テレビ、オワコンですか?(笑)

ワクワク感を追い求め、気づけばテレビで35年

――最後の質問です。放送作家として、よくここまで長くテレビ業界で生き残ってこられましたよね。ご自身の人生を振り返っていかがですか。苦しかったことはなかったですか。

「苦しかったこと」ってどういう意味でですか。

――「もう辞めようかな」とか「全然うまくいかないな~」とか。

それはないです。うまくいかないことは多々ありますけど、その「うまくいかない」の一方で「うまくいっている」こともあるので救いになります。全部、「うまくいかない」になっていたら相当苦しかったでしょうね。幸い、優秀なスタッフと仕事ができているので、そこは免れていると思います。やっぱり、人なんですよね。ラッキーでした。

――どういうモチベーションで続けてこられたのですか。

これは僕の性格ですけど、新しモノ好きなので、つくっていて「これ他にないじゃん」「誰もやってないじゃん」「今までなかったじゃん」というオリジナリティがある番組になったときに一番ワクワクするんです。それが周期的に生まれたことが持続力に繋がったのかな、と思います。

――本日はありがとうございました。

Profile
中野 俊成(なかの・としなり)
放送作家。
1965年生まれ。富山県出身。主にバラエティ番組、お笑い番組を担当。高校卒業後に上京し、渡辺プロダクション主宰の放送作家オーディションに合格してテレビ業界へ。現在『ポツンと一軒家』『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』『大改造!!劇的ビフォーアフター』『プレバト!!』『この差って何ですか?』『題名のない音楽会』など担当。過去には『内村プロデュース』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』『進め!電波少年』『あらびき団』など人気番組を多数手掛ける。

[記事執筆者] 早川巧
株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writerとして30年のキャリアあり。Twitter:@hayakawaMN

 

 

メルマガ
メルマガ
メルマガ