1804年に創業し、酢や調味料を主力製品とする株式会社Mizkan(以下、ミツカン)。そのミツカンを代表する商品の一つが、2024年11月に発売60周年を迎える味付けぽん酢「味ぽん」です。発売以来、世代を超えて愛されてきたロングセラー商品ですが、若年層の認知や購買に課題感を抱えていたことから、2023年10月、VTuberを活用したYouTubeライブ配信を実施。重視していたX上での発話量は20,000件を超えたほか、用意していた限定の「味ぽん」セットが2時間で完売するなど、大きな成果を上げました。
そこで今回は、VTuber施策で成果を上げることができた理由について、ミツカン マーケティング本部 マーケティング企画1部 主任 プロモーション担当の吉岡真優さんと、施策を支援したFinT SNSソリューション事業部 セールスマーケティング マネージャーの田中隼輔さんに話を聞きました。
(取材・文:星 久美子、撮影:矢島 宏樹)
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若年層とのタッチポイント創出のため、VTuberファンに注目
――「味ぽん」といえば、食卓のお供として欠かせない調味料です。マーケティングではどのような課題があったのでしょうか。
ミツカン 吉岡(以下、吉岡) 弊社が取り扱う調味料は40代以上のお客さまを中心に購入いただいてきました。2024年に60周年を迎える「味ぽん」も全世代でブランド認知率は高いものの、10代後半〜20代の若年層からは「知っているが使ったことがない」という声も聞かれます。
また、コロナ禍を経て生活者の“料理離れ”が進み、時短や簡素化への意識が高まっています。料理をする人口が減ると調味料の消費量も減るため、いつブランドが無くなってもおかしくないという危機感がありました。そこで、未来の顧客である若年層と新たなタッチポイントを作り、需要を活性化しようと考えました。
これまでプロモーションはテレビCMをはじめとするマス広告を重視してきましたが、若年層はSNSやYouTubeなどのソーシャルメディアを好む傾向があります。そのため「味ぽん」でもデジタルマーケティングに挑戦すべく、これまで公式YouTubeチャンネルでYouTuberとのコラボレーションや、TikTok、X、InstagramなどSNSを活用した施策を展開してきました。
ミツカン マーケティング本部 マーケティング企画1部 主任 プロモーション担当 吉岡真優さん
――新たなマーケティング施策を検討する中で、VTuberを起用することになった経緯を教えてください。
吉岡 さまざまなマーケティング施策を実行するうち、求心力が高いキャラクターと熱量の高いファンが集まる場では、商品への関心も高まりやすく、これまで商品に興味がなかった人たちにも振り向いてもらえる傾向が見えてきました。「熱量のある人たちが集まっている界隈はどこだろう?」とリサーチした結果、注目したのがVTuberです。
ただ、これまで弊社ではVTuberを活用した経験がなかったため、FinTの田中さんにマーケティング支援をお願いすることにしました。
――田中さんが考えるVTuber起用のメリットとは何でしょうか。
株式会社FinT 田中(以下、田中) 施策の話題化とVTuberファンの相性の良さが挙げられます。FinT社内にいるVTuberファンとソーシャルリスニングによる定量調査を踏まえると、VTuberを推している方々の三つの特性が見えてきました。
一つは購買力です。いわゆる「推し活」として、VTuberが話題にしたことをきっかけに、VTuberのファンの方々は応援目的で商品を購入する流れがあります。
二つ目は発話量の多さです。VTuberの発言に対して、ファンはYouTubeのコメント欄やX上でコメントを活発に発信してくれます。また「あのVTuberが『味ぽん』とコラボするらしいよ」といったニュースが、ファンコミュニティ内で拡散されやすいのも特徴です。
三つ目は若年層の多さです。株式会社矢野経済研究所が2023年11月に行った「VTuberに関する消費者アンケート調査」によると、VTuberのファンは男性・女性ともに10代、20代の若年層が多い傾向にあります(※)。そのため「従来のマス広告では効果が出にくい」「若年層との接点を持ちたい」と考える企業にとっては活用するメリットがあると考えています。
※出典:株式会社矢野経済研究所「VTuberに関する消費者アンケート調査(2023年)」(2024年1月18日発表)注.調査時期:2023年11月、調査(集計)対象:日本国内在住の15~44歳の男女32,918名に対し、趣味設問項目の中から「VTuber」を選択した1,104名(男性555名、女性549名)の性別・年代別回答比率、調査方法:インターネットアンケート調査。
FinT SNSソリューション事業部 セールスマーケティング マネージャー 田中隼輔さん
吉岡 将来、若年層の方々が実家を出て一人暮らしを始め、はじめて自炊をする際には「味ぽん」を手に取っていただきたい。VTuber施策は若年層の好意度醸成に向けた新たなチャレンジです。
田中 VTuberのライブ配信時間は約2~3時間、長いときには6時間くらいになることもあり、カップ麺や冷凍食品など配信を視聴しながらでも簡単に調理できる食品を好む視聴者が少なくありません。そうした方々の中にも、コロナ禍以降は健康意識が高まり、カップ麺や冷凍食品ばかりを食べることに危機感を抱いている人が少なからずいるだろうと推測し、「簡単でおいしく、健康にも気を使った料理を作りたい」というニーズと、食材に漬けるだけで簡単に調理できる「味ぽん」とのマッチングが図れると考えました。
限定セットが2時間で完売、Xの発話量20,000件超え
――VTuberを活用したYouTubeライブ配信の内容について教えてください。
吉岡 VTuberのSMC(すめし)組(葉加瀬冬雪さん、夜見れなさん、加賀美ハヤトさん)とソフィア・ヴァレンタインさんの4名に出演いただき、「味ぽんを使用した料理のプレゼン対決」をテーマにライブ配信を行いました。
SMC組の3名それぞれが、食材を「味ぽん」で漬けるだけで完成する「漬けぽん」のおすすめレシピをプレゼンし、ソフィア・ヴァレンタインさんが実食して優勝者を判定します。調理工程がほぼ不要な「漬けぽん」はミツカンのX公式アカウント(@mizkan_official)でも反響が大きく、視聴者に「これなら自分でも試せそうだ」という印象付けができればとテーマに選びました。
画像左から、SMC組の加賀美ハヤトさん、葉加瀬冬雪さん、夜見れなさん、ソフィア・ヴァレンタインさん
画像出典:https://www.youtube.com/live/tCy2-yg5RGg?si=1XqXBkLkR7YtEvDK
田中 YouTubeライブでは、視聴者の皆さんに優勝者を予想してもらい、味ぽんの公式Xアカウントをフォローして優勝者の名前が含まれるハッシュタグとともにリポストしていただきました。ユーザー参加型のライブにすることで、発話量の創出と同時接続数の最大化をねらうためです。
――VTuberとして「SMC組(すめしぐみ)」と「ソフィア・ヴァレンタイン」を起用した理由を教えてください。
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