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インタビュー

ミツカン「味ぽん」が初のVTuberマーケティングに成功!ライブ配信で発話量20,000件超、限定セットが2時間で完売した理由とは?

最終更新日:2024.06.05

Mizkanマーケティング本部 マーケティング企画1部 主任 プロモーション担当

吉岡真優

FinT SNSソリューション事業部 セールスマーケティング マネージャー

田中隼輔

1804年に創業し、酢や調味料を主力製品とする株式会社Mizkan(以下、ミツカン)。そのミツカンを代表する商品の一つが、2024年11月に発売60周年を迎える味付けぽん酢「味ぽん」です。発売以来、世代を超えて愛されてきたロングセラー商品ですが、若年層の認知や購買に課題感を抱えていたことから、2023年10月、VTuberを活用したYouTubeライブ配信を実施。重視していたX上での発話量は20,000件を超えたほか、用意していた限定の「味ぽん」セットが2時間で完売するなど、大きな成果を上げました。

そこで今回は、VTuber施策で成果を上げることができた理由について、ミツカン マーケティング本部 マーケティング企画1部 主任 プロモーション担当の吉岡真優さんと、施策を支援したFinT SNSソリューション事業部 セールスマーケティング マネージャーの田中隼輔さんに話を聞きました。

(取材・文:星 久美子、撮影:矢島 宏樹)

目次

若年層とのタッチポイント創出のため、VTuberファンに注目

――「味ぽん」といえば、食卓のお供として欠かせない調味料です。マーケティングではどのような課題があったのでしょうか。

ミツカン 吉岡(以下、吉岡) 弊社が取り扱う調味料は40代以上のお客さまを中心に購入いただいてきました。2024年に60周年を迎える「味ぽん」も全世代でブランド認知率は高いものの、10代後半〜20代の若年層からは「知っているが使ったことがない」という声も聞かれます。

また、コロナ禍を経て生活者の“料理離れ”が進み、時短や簡素化への意識が高まっています。料理をする人口が減ると調味料の消費量も減るため、いつブランドが無くなってもおかしくないという危機感がありました。そこで、未来の顧客である若年層と新たなタッチポイントを作り、需要を活性化しようと考えました。

これまでプロモーションはテレビCMをはじめとするマス広告を重視してきましたが、若年層はSNSやYouTubeなどのソーシャルメディアを好む傾向があります。そのため「味ぽん」でもデジタルマーケティングに挑戦すべく、これまで公式YouTubeチャンネルでYouTuberとのコラボレーションや、TikTok、X、InstagramなどSNSを活用した施策を展開してきました。

ミツカン マーケティング本部 マーケティング企画1部 主任 プロモーション担当 吉岡真優さん

――新たなマーケティング施策を検討する中で、VTuberを起用することになった経緯を教えてください。

吉岡 さまざまなマーケティング施策を実行するうち、求心力が高いキャラクターと熱量の高いファンが集まる場では、商品への関心も高まりやすく、これまで商品に興味がなかった人たちにも振り向いてもらえる傾向が見えてきました。「熱量のある人たちが集まっている界隈はどこだろう?」とリサーチした結果、注目したのがVTuberです。

ただ、これまで弊社ではVTuberを活用した経験がなかったため、FinTの田中さんにマーケティング支援をお願いすることにしました。

――田中さんが考えるVTuber起用のメリットとは何でしょうか。

株式会社FinT 田中(以下、田中) 施策の話題化とVTuberファンの相性の良さが挙げられます。FinT社内にいるVTuberファンとソーシャルリスニングによる定量調査を踏まえると、VTuberを推している方々の三つの特性が見えてきました。

一つは購買力です。いわゆる「推し活」として、VTuberが話題にしたことをきっかけに、VTuberのファンの方々は応援目的で商品を購入する流れがあります。

二つ目は発話量の多さです。VTuberの発言に対して、ファンはYouTubeのコメント欄やX上でコメントを活発に発信してくれます。また「あのVTuberが『味ぽん』とコラボするらしいよ」といったニュースが、ファンコミュニティ内で拡散されやすいのも特徴です。

三つ目は若年層の多さです。株式会社矢野経済研究所が2023年11月に行った「VTuberに関する消費者アンケート調査」によると、VTuberのファンは男性・女性ともに10代、20代の若年層が多い傾向にあります(※)。そのため「従来のマス広告では効果が出にくい」「若年層との接点を持ちたい」と考える企業にとっては活用するメリットがあると考えています。

※出典:株式会社矢野経済研究所「VTuberに関する消費者アンケート調査(2023年)」(2024年1月18日発表)注.調査時期:2023年11月、調査(集計)対象:日本国内在住の15~44歳の男女32,918名に対し、趣味設問項目の中から「VTuber」を選択した1,104名(男性555名、女性549名)の性別・年代別回答比率、調査方法:インターネットアンケート調査。

FinT SNSソリューション事業部 セールスマーケティング マネージャー 田中隼輔さん

吉岡 将来、若年層の方々が実家を出て一人暮らしを始め、はじめて自炊をする際には「味ぽん」を手に取っていただきたい。VTuber施策は若年層の好意度醸成に向けた新たなチャレンジです。

田中 VTuberのライブ配信時間は約2~3時間、長いときには6時間くらいになることもあり、カップ麺や冷凍食品など配信を視聴しながらでも簡単に調理できる食品を好む視聴者が少なくありません。そうした方々の中にも、コロナ禍以降は健康意識が高まり、カップ麺や冷凍食品ばかりを食べることに危機感を抱いている人が少なからずいるだろうと推測し、「簡単でおいしく、健康にも気を使った料理を作りたい」というニーズと、食材に漬けるだけで簡単に調理できる「味ぽん」とのマッチングが図れると考えました。

限定セットが2時間で完売、Xの発話量20,000件超え

――VTuberを活用したYouTubeライブ配信の内容について教えてください。

吉岡 VTuberのSMC(すめし)組(葉加瀬冬雪さん、夜見れなさん、加賀美ハヤトさん)とソフィア・ヴァレンタインさんの4名に出演いただき、「味ぽんを使用した料理のプレゼン対決」をテーマにライブ配信を行いました。

SMC組の3名それぞれが、食材を「味ぽん」で漬けるだけで完成する「漬けぽん」のおすすめレシピをプレゼンし、ソフィア・ヴァレンタインさんが実食して優勝者を判定します。調理工程がほぼ不要な「漬けぽん」はミツカンのX公式アカウント(@mizkan_official)でも反響が大きく、視聴者に「これなら自分でも試せそうだ」という印象付けができればとテーマに選びました。

画像左から、SMC組の加賀美ハヤトさん、葉加瀬冬雪さん、夜見れなさん、ソフィア・ヴァレンタインさん
画像出典:https://www.youtube.com/live/tCy2-yg5RGg?si=1XqXBkLkR7YtEvDK

田中 YouTubeライブでは、視聴者の皆さんに優勝者を予想してもらい、味ぽんの公式Xアカウントをフォローして優勝者の名前が含まれるハッシュタグとともにリポストしていただきました。ユーザー参加型のライブにすることで、発話量の創出と同時接続数の最大化をねらうためです。

――VTuberとして「SMC組(すめしぐみ)」と「ソフィア・ヴァレンタイン」を起用した理由を教えてください。

田中 前提として、VTuberを起用したタイアップ案件はまだ少ないため、ファンは推しのVTuberへの案件を喜んでくださる傾向にあります。やみくもに人気が高いVTuberを選定するのではなく、「味ぽん」との相性を考慮しながら複数の候補の中から選定しました。

またVTuberファンはコラボレーションの文脈や、キャラクターと商品との親和性を重んじる傾向にもあります。「SMC組(すめし組)」は「酢飯」とも読むことができるので、味ぽんの原料である「酢」との親和性の高さが決め手でした。

新人ライバーのソフィア・ヴァレンタインさんは、以前「白米にかけて食べるくらいめんつゆが好き」という話をYouTubeのライブ配信でしていて、ファンの間で盛り上がっていたことがあります。

そこで、SMC組がめんつゆ好きのソフィアさんに「味ぽん」も好きになってもらうレシピをプレゼンして、ソフィアさんが「美味しい」と言ったメニューであれば、視聴者も「自分も『味ぽん』を使って作ってみよう」と思っていただけるのでは?という仮説を立てました。

――配信を実施して、どのような反響や成果が得られましたか。

田中 定量面では、リアルタイムで配信を視聴している人数を表す同時接続数が12,000件以上、再生回数9.6万回(翌日集計)を記録し、描き下ろしのイラストカードが付いたオリジナルセットをライブ配信日にECサイト限定で販売したところ、用意した分をわずか2時間で完売することができました。X上の発話量も20,000件を超え、初の施策としては目標値を上回る結果となりました。

画像提供:株式会社FinT

吉岡 発売前は「もし売れ残ったらどうしよう」と不安でしたが、それが杞憂だったほどの売れ行きでした。弊社では、マーケティング施策がどれほど購入意向に響いたのかという事後調査を実施しています。展開していた他の施策と比較したところ、VTuber施策に触れた消費者のほうが、購入意欲が高いことがわかりました。一過性の盛り上がりで終わらず、購買行動まで結びつけることができたのはうれしい成果でした。

──X上ではどのような投稿が多かったのでしょうか。

田中 「漬けぽん」という簡単な調理方法だったことから、多かった投稿は「漬けぽん作ってみた」というレシピ再現です。また、推しが考えたレシピということで、推しのアクスタ(アクリルスタンド)や人形を置いた投稿など、UGC(User Generated Content、ユーザー生成コンテンツ)が多く見られました。

また、VTuberファンから支持されているイラストレーターのimoniii(いもに)さんやInooka(イノオカ)さんに、味ぽんのコンセプトである「家族団欒」をテーマにイラストを描き下ろしていただきました。

このイラストをXに投稿したところ、ファンの方がそれぞれにテーマを感じ取ったUGCが醸成されたので、「味ぽん」ブランドに対する好意度の向上にもつながったと思います。

ライブ配信前後もファンの熱量を維持するための工夫

――継続的な話題化のため、配信前後にもさまざまな施策を実施したとお聞きしました。施策の具体的な内容とそれぞれの目的を教えてください。

田中 ファンとの接点をとり続け、期待値の醸成のために配信前のティザー投稿やプレゼントキャンペーンなどを実施しました。

ソフィアさんが謎解きを特技としていることから、配信日20日前の10月4日にはソフィアさんのXで「ソフィア・ヴァレンタインからの挑戦状」と題したティザーツイートを実施しました。

画像出典:https://x.com/SophiaV214/status/1709402969630716242

謎解きを解いて「味ぽん」の公式アカウントに行くと、SMC組とのコラボレーションを実施することがわかります。ファンのライブ配信への期待値を高める仕掛けです。

画像出典:https://x.com/ajipon_mizkan/status/1709422112077959422

翌日10月5日からは、「誰がプレゼンで優勝するか」を事前に予想してもらうプレゼントキャンペーンを投稿したところ、約1万「いいね!」、7,000 以上のリポストと反響が大きく、その後も関連話題の投稿を週1で実施し、合計3.3万「いいね!」をいただくことができました。

画像出典:https://x.com/ajipon_mizkan/status/1709717015806550380

──吉岡さんから見て、定性的な成果をどう感じられますか?

吉岡 YouTubeライブの配信前から一貫したメッセージを発信し、配信終了後も熱量を高く保つことができたと思います。

配信を実施して驚いたのは、実施のタイミングが平日21時スタートと遅い時間だったのにもかかわらず、開始1時間前から何百人もの視聴者が待機してくださっていたことです。

その時点から、チャット上で「私はこの料理に味ぽんをかけるのが好き」「実はかき氷にもかけるとおいしい」など、自発的に会話が盛り上がっていて、参加している私自身もファンの輪に入れたような一体感と熱気を感じました。

また、配信中には「材料を買ってきました!今おうちで作ってます」というコメントもありました。「味ぽん」はスーパーやコンビニなどにも並んでいることが多く、購入のしやすさが強みの一つです。「漬けぽん」に使っていた食材も手に入りやすいものばかりだったので、盛り上がった要因の一つになったのではないでしょうか。

テレビCMのオンエア時間はほんの一瞬ですが、1時間もの長い間、「味ぽん」をリアルタイムで自分ごと化していただけるのはVTuberによるライブ配信の強みだと驚きました。

初めてのVTuber施策を振り返って、単発の施策で終わるのではなく、季節やイベントごとに繰り返し「味ぽん」の利用シーンを提案して、認知をさらに広げていく工夫ができたらと思っています。

――今回は調味料のプロモーション施策でしたが、食品以外の商材ではどのような特徴のある商材がVTuberと相性が良いですか。

田中 VTuberは一般的なアイドルや芸能人と違って現実には存在しないキャラクターなので、例えば香水やシャンプーなど、彼らの存在を感じられるようなライフスタイル商材は相性が良いと考えています。

「VTuberさんがまとっている匂いを知りたい」「自分も推しと同じ香水をつけたい」などのニーズが高いため、実際にVTuberが所属する事務所ではキャラクターグッズとして香水を販売しているケースもあります。推しと同じ商品を消費することで応援でき、彼らの世界観を体験できるような文脈やストーリーが感じられる商品やサービスと相性がいいのではないしょうか。

今回の「味ぽん」の取り組みも、「推しがおすすめするレシピを自分も作ってみたい」「推しと同じ料理を食べたい」というストーリーと体験の具現化に当たります。VTuberが好む商材をメーカーとの協力で再現できたら、ファンの興味関心も高まり、話題性も期待できると考えています。

――今回のプロモーション施策で購入に至った若年層のお客さまに今後も継続的に購買いただけるよう、考えている施策はありますか。

吉岡 VTuberに限らず若年層の方に「自分だったら『味ぽん』をこういうふうに使ってみよう」と考えていただけるきっかけになるようなデジタル施策は検討しています。

今年、「味ぽん」は誕生60周年を迎えます。アニバーサリーイヤーを盛り上げるために、食品に限らずさまざまな業種・ブランドとのコラボレーションを検討中です。2024年11月10日の記念日に向けて、話題作りやSNSの発話量も最大化していけたらと考えています。

――今後、プロモーションを強化したい年齢層や、挑戦してみたい施策があれば、可能な範囲でご教示ください。

吉岡 「味ぽん」はすでにブランド認知率が高いゆえに、さらに飛躍的成長を遂げるような施策は正直まだ見いだせていません。

一方で、次世代を担う若年層には「祖母の家にあるような昔ながらの調味料」といったイメージを持たれているようにも感じます。これからも引き続き手に取っていただくためにも、従来のブランドイメージにとらわれず、「何か面白いことに挑戦しているブランドだ」と思っていただけるような施策にチャレンジしていきたいと考えています。お客さまのニーズや社会環境の変化を踏まえながら、「味ぽん」がこれからも愛される存在になれるよう、挑戦を続けていきます。

田中 今回初めて伴走させていただきましたが、ミツカンさんならではの「チャレンジ精神」や「スピード感」は施策を一緒に進める上でも実感しました。ライブ配信後、「VTuberさんが作ったレシピの詳細を知りたい」といったポストに対しても、翌日すぐに公式Xアカウントで発信されていたくらいです。意思決定の速さ、そしてブランド担当者の熱量があってこそ、施策を成功に導けるのだと感じました。

吉岡さんもおっしゃっているように、「味ぽん」はすでに認知度が高いロングセラーブランドなので、ただのコラボでは「『味ぽん』とVTuberがコラボしている」と一過性の話題で終わってしまいます。VTuberファンのインサイトを深掘りし、「味ぽん」のファンになっていただけるような施策を追求していきたいです。

60周年に向けて、今後のプロモーション展開も楽しみにしています。

――本日はありがとうございました。

株式会社Mizkan
酢や調味酢、ぽん酢、みりん風・料理酒、つゆなどの調味料、加工食品、納豆の企画開発、製造、販売を行う食品メーカー。代表的な商品に、「穀物酢」「カンタン酢」「味ぽん」などがある。

創業:1804年
本社:愛知県半田市
代表者:代表取締役会長 中埜 裕子
企業サイト:https://www.mizkan.co.jp/

株式会社FinT
InstagramやTikTok、XなどのSNSを基軸としたプロモーション支援事業を展開する企業。大手企業を含む累計300社以上のSNSを活用したマーケティング支援を行う。

設立:2017年3月
本社:東京都目黒区
代表者:代表取締役 大槻 祐依
企業サイト:https://fint.co.jp/

 

記事執筆者

星久美子

ほし・くみこ
フリーランスのライター/編集/広報。事業会社を経て独立。ビジネス、食やライフスタイル分野を中心に、取材や企業広報などを担当。
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