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インタビュー

ハヤカワ五味インタビュー「ビジネスが成功している理由と、ピンチを乗り越えるために必要なこと」

最終更新日:2023.05.25

Special Interview #04

株式会社ウツワ代表取締役

ハヤカワ五味

「五味ちゃん」の愛称で親しまれ、高校生の頃から注目を集めてきた株式会社ウツワ代表取締役のハヤカワ五味さん。自作の「キリトリ線タイツ」を販売するや、インターネットを中心に評判となり、高校生にしてプリントタイツの生産と販売をスタートしました。2014年にはシンデレラバスト(小さなバスト)向けのランジェリーブランド「feast」を立ち上げ、その約5カ月後に現役大学生ながらウツワを起業しています。

さらに、2019年には生理用品のセレクトショップなどを運営するプロジェクト「illuminate」を始動。「今の自分が考えていることを書籍として残し、ほかの人に伝えることに意味がある」との思いから、初の著書も出版しました。彼女のカリスマ性に憧れる若者も少なくありません。

なぜハヤカワさんは、若き起業家として成功を収めてきたのでしょうか。今回は、ハヤカワ五味さんに話を伺いました。

(取材・文:Marketing Native編集長・佐藤綾美 撮影:永山昌克)

目次

「運が良かった」と言えるのも自身のスキル

――初のご著書『私だけの選択をする22のルール あふれる情報におぼれる前に今すべきこと』(KADOKAWA)を拝読しました。前半では、ハヤカワさんの半生や事業立ち上げの経緯などが書かれています。あらためて振り返ってみて、若くして企業を経営するに至ったのは、ご自身がほかの人とどこが違って、何が優れていたからだと思いますか。

小中高と学生時代にずっと代表委員会に所属したり、クラス長や委員長になったりしてきたので、まず前提として、自分だけで何かをするよりもチームの力で物事を動かすことに興味がありました。

そのうえで、今こうして会社を経営できているのは、自分の実力だけではなく、育った環境や運も良かったと思います。ここまでやってこられたのが自分の実力であると過信せず、「運が良かった」と言えること自体も私の一つのスキルかもしれません。例えば「彼、もしくは彼女と会えたから運が良かったな」と思えるような考え方は、今の自分の在り方にポジティブに働いています。

――ご自身が「運が良かった」と感じた出来事で、象徴的なことはありますか。

最初に「feast」に関するツイートが大きく拡散されたことは、運が良かったとも言えます。


▲2014年当時のツイート。1.2万件ものリツイートで大きな話題となり、多数のメディアに取り上げられたという。

「こういう考えで、こうやって狙ったら当たりました」と後付けで言うこともできますが、実際に何かが成功した人で、狙って当てに行った人はそれほど多くないのではないかと考えています。私はある程度狙いつつも、ホームランを狙ってつぶやいたわけではなかったので、運やタイミングが良かったからできたのだと思います。

――これまで企業を経営してきた中でピンチに感じたことはありますか。また、それをどう乗り切ったのか教えてください。

起業家なので、クリティカルな問題としてぶつかりやすいのは、やはりお金と人の問題です。小売業は商品の仕入れや製造などによってキャッシュアウトしやすいビジネスモデルなので、特にお金の問題は重要です。これまで何度かキャッシュアウトしそうになったタイミングがあり、人から一時的にお金を借りることもありました。

お金がなくなりそうなときは、それまでのことをいくら反省しても、もうお金がなくなることは自明です。それでも負けずに最後まで踏ん張れたのは、自分自身がやりたいことだったからだと思います。「『feast』は絶対に継続していかなければいけない」という責任感や使命感を強く持っていたから、粘り強さで危機を乗り越えてくることができました。

よく「成功するかしないか」と言われますが、私は「成功させるにはどうすればいいか」しかないと思います。少なくともビジネス領域において大事なのは粘り強さで、ビジネス以外で自分の夢を追いかけているときでも、「どうやって成功させるか」が重要だと考えています。

▲「feast」は、2018年には年間6000万円の売り上げを記録するブランドへと成長した。
画像出典:feast

――ご著書に書かれていた22のルールの中にも「“成功”になるまで続けてみる」というのがありましたね。

私の周りでも、「失敗する」と言われながら成功するまでやり続けた人は本当に強いんです。もちろん、成功する可能性が全くないところで頑張り続けるのは厳しいと思います。でも、確率が1%でもあるなら、例えばサイコロを100回振ったら1回は当たるということなので、その100回を振り切れるかどうかが重要ではないでしょうか。

――憧れや目標としている経営者の方がいたら、教えてください。

目標としている人って、そんなにいないんですよね。ただ、企業単位で「この会社のやろうとしていることはいいな」と思う会社はあります。東急電鉄やJR東日本などのインフラ系や、森ビルのようなデベロッパー系など世の中の仕組みづくりをしようとしている会社は特に好きです。

鉄道系の会社はよくウォッチしていますね。MaaS(※1)の実現に向けて、これからの交通を考え直すフェーズに入っていると思います。例えば、自動運転が完全に普及したら、基本的に鉄道は必要なくなりますよね。そうなったときに、「鉄道会社が提供するのは鉄道でいいのか」ということが、たぶん見直されているタイミングなんです。馬車を提供している会社が馬車だけ提供していたら、鉄道や自動車が出てきたときに廃れたはずなのと一緒で、鉄道会社が提供しているのはあくまで「移動すること」や「体験する(観光のため移動する)こと」で、そうした本質を早いタイミングで大きく見直そうとしている点でも尊敬しています。

※1:「Mobility as a Service」の頭文字を取り、「マース」と読む。ICTを活用して各種公共交通機関をシームレスに結び、人々の利便性向上を目指すシステムのこと。対象となるのはバスや電車だけでなく、タクシー、レンタカー、シェアサイクルなど、あらゆる交通手段が含まれる。

自身のセンスの再現性に確信を持てた「illuminate」

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記事執筆者

佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。
X:@sleepy_as
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