インタビュー
2019.12.24

ハヤカワ五味インタビュー「ビジネスが成功している理由と、ピンチを乗り越えるために必要なこと」

Special Interview #04

株式会社ウツワ代表取締役

ハヤカワ五味

「五味ちゃん」の愛称で親しまれ、高校生の頃から注目を集めてきた株式会社ウツワ代表取締役のハヤカワ五味さん。自作の「キリトリ線タイツ」を販売するや、インターネットを中心に評判となり、高校生にしてプリントタイツの生産と販売をスタートしました。2014年にはシンデレラバスト(小さなバスト)向けのランジェリーブランド「feast」を立ち上げ、その約5カ月後に現役大学生ながらウツワを起業しています。

さらに、2019年には生理用品のセレクトショップなどを運営するプロジェクト「illuminate」を始動。「今の自分が考えていることを書籍として残し、ほかの人に伝えることに意味がある」との思いから、初の著書も出版しました。彼女のカリスマ性に憧れる若者も少なくありません。

なぜハヤカワさんは、若き起業家として成功を収めてきたのでしょうか。今回は、ハヤカワ五味さんに話を伺いました。

(取材・文:Marketing Native編集長・佐藤綾美 撮影:永山昌克)

 

目次

「運が良かった」と言えるのも自身のスキル

――初のご著書『私だけの選択をする22のルール あふれる情報におぼれる前に今すべきこと』(KADOKAWA)を拝読しました。前半では、ハヤカワさんの半生や事業立ち上げの経緯などが書かれています。あらためて振り返ってみて、若くして企業を経営するに至ったのは、ご自身がほかの人とどこが違って、何が優れていたからだと思いますか。

小中高と学生時代にずっと代表委員会に所属したり、クラス長や委員長になったりしてきたので、まず前提として、自分だけで何かをするよりもチームの力で物事を動かすことに興味がありました。

そのうえで、今こうして会社を経営できているのは、自分の実力だけではなく、育った環境や運も良かったと思います。ここまでやってこられたのが自分の実力であると過信せず、「運が良かった」と言えること自体も私の一つのスキルかもしれません。例えば「彼、もしくは彼女と会えたから運が良かったな」と思えるような考え方は、今の自分の在り方にポジティブに働いています。

――ご自身が「運が良かった」と感じた出来事で、象徴的なことはありますか。

最初に「feast」に関するツイートが大きく拡散されたことは、運が良かったとも言えます。

▲2014年当時のツイート。1.2万件ものリツイートで大きな話題となり、多数のメディアに取り上げられたという。

「こういう考えで、こうやって狙ったら当たりました」と後付けで言うこともできますが、実際に何かが成功した人で、狙って当てに行った人はそれほど多くないのではないかと考えています。私はある程度狙いつつも、ホームランを狙ってつぶやいたわけではなかったので、運やタイミングが良かったからできたのだと思います。

――これまで企業を経営してきた中でピンチに感じたことはありますか。また、それをどう乗り切ったのか教えてください。

起業家なので、クリティカルな問題としてぶつかりやすいのは、やはりお金と人の問題です。小売業は商品の仕入れや製造などによってキャッシュアウトしやすいビジネスモデルなので、特にお金の問題は重要です。これまで何度かキャッシュアウトしそうになったタイミングがあり、人から一時的にお金を借りることもありました。

お金がなくなりそうなときは、それまでのことをいくら反省しても、もうお金がなくなることは自明です。それでも負けずに最後まで踏ん張れたのは、自分自身がやりたいことだったからだと思います。「『feast』は絶対に継続していかなければいけない」という責任感や使命感を強く持っていたから、粘り強さで危機を乗り越えてくることができました。

よく「成功するかしないか」と言われますが、私は「成功させるにはどうすればいいか」しかないと思います。少なくともビジネス領域において大事なのは粘り強さで、ビジネス以外で自分の夢を追いかけているときでも、「どうやって成功させるか」が重要だと考えています。

▲「feast」は、2018年には年間6000万円の売り上げを記録するブランドへと成長した。
画像出典:feast

――ご著書に書かれていた22のルールの中にも「“成功”になるまで続けてみる」というのがありましたね。

私の周りでも、「失敗する」と言われながら成功するまでやり続けた人は本当に強いんです。もちろん、成功する可能性が全くないところで頑張り続けるのは厳しいと思います。でも、確率が1%でもあるなら、例えばサイコロを100回振ったら1回は当たるということなので、その100回を振り切れるかどうかが重要ではないでしょうか。

――憧れや目標としている経営者の方がいたら、教えてください。

目標としている人って、そんなにいないんですよね。ただ、企業単位で「この会社のやろうとしていることはいいな」と思う会社はあります。東急電鉄やJR東日本などのインフラ系や、森ビルのようなデベロッパー系など世の中の仕組みづくりをしようとしている会社は特に好きです。

鉄道系の会社はよくウォッチしていますね。MaaS(※1)の実現に向けて、これからの交通を考え直すフェーズに入っていると思います。例えば、自動運転が完全に普及したら、基本的に鉄道は必要なくなりますよね。そうなったときに、「鉄道会社が提供するのは鉄道でいいのか」ということが、たぶん見直されているタイミングなんです。馬車を提供している会社が馬車だけ提供していたら、鉄道や自動車が出てきたときに廃れたはずなのと一緒で、鉄道会社が提供しているのはあくまで「移動すること」や「体験する(観光のため移動する)こと」で、そうした本質を早いタイミングで大きく見直そうとしている点でも尊敬しています。

※1:「Mobility as a Service」の頭文字を取り、「マース」と読む。ICTを活用して各種公共交通機関をシームレスに結び、人々の利便性向上を目指すシステムのこと。対象となるのはバスや電車だけでなく、タクシー、レンタカー、シェアサイクルなど、あらゆる交通手段が含まれる。

自身のセンスの再現性に確信を持てた「illuminate」

――次に、生理関連のプロジェクト「illuminate(イルミネート)」の話をお伺いします。「illuminate」にも「illuminate your choice」というキーワードがあり、「選択」というワードが出てきます。この言葉に込めた思いを教えてください。

いくつかの意味を込めて「illuminate」という言葉を使っていて、かなり気に入っています。一つは「新たな選択肢を照らす」、もう一つは「選択肢を世の中に広げていく」という意味です。

私は、世の中には「選べない人」と「選びづらい人」の2種類がいると思っています。「選べない人」とは、選択肢が見えていない人です。実は選べるのに、選択肢そのものに気づいていないから、選べない。この見えていない選択肢や新たな選択肢を照らすという意味がまず一つです。

一方、「選びづらい人」は、選択肢があるけれど、それを取りづらい人です。例えば、「LGBTが同性のパートナーと一緒に過ごす」というのは、世界的にも選びやすいとは言えない状況にあって、実際には選びづらい選択肢だと思います。そうした選択肢を世の中に広げていくのが「illuminate」に込めたもう一つの意味です。「illuminate」には「啓蒙する」「明示する」などの意味も含まれています。

――私も「illuminate」を知って、生理用品の選択肢の少なさに気づいた一人です。同じように気づいた人も多くいると思いますが、プロジェクトの反響や、開始前後で変化したことがあれば教えてください。

周囲の反響としてあったのは、「子宮頸がん検診に行ってみました」「婦人科に初めて行ってみました」など、「今まで悩んでいたけれど、選んでみたら意外と楽になった」という声です。プロジェクトに関連して、自分の体について知ろうとしてくれる人が増えたのはすごく嬉しいと感じました。

また、大局的な話で言うと、今回のプロジェクトには、自分のセンスに再現性があるかどうかを確認する目的もありました。これまで「feast」などのプロジェクトでは、ある意味、感覚的にやってきた部分があったと思います。そのため、「運が良かったからできた」「たまたま当たった」などと批判されることがあって、自分自身もそこに引っかかっていたので、再現性の有無を確認したかったんです。

結果、やはり再現性はありました。生理に関する課題に光を当てられたことと、世の中に広げられたことが今回の成功体験です。「illuminate」を開始してから、ほかの生理関連のプロジェクトや、生理用品を取り扱い始める企業が増えてきて、世の中におけるムーブメントを醸成できたと思います。センスは定量的に測れるものではありませんが、再現性がある自分の実力だと確信できました。

――プロジェクトの中には、ハヤカワさんご自身が企業を巻き込んで進めなければいけないこともあったと思います。企業や周囲を巻き込むときのコツはありますか。

自分の目標や夢について、高い解像度で語れるようにすることでしょうか。周囲を巻き込んでビジネスを成功させている起業家を見ていると、目標や夢について語る技術が優れていると感じます。みんな本当に楽しそうに語るし、質問されたらいくらでも答えられるんです。まるで昨日あったことのように、かなり精密に話せます。私も、生理用品や自分が目指している社会のことは高い解像度で語れるので、それができる人は巻き込み力が本当に強いと思います。

私の友達に「これは売れそう」ではなく「もう俺の中では売れている」と、もはや売れているみたいに言う人がいるんです。その気持ちはよくわかって、私の中でも「illuminate」はもはや成功しているくらいの気持ちなんですね。成功しているところがありありと見えるから、そこから逆算して何をすればいいかがわかる。ユーザーがどのように使い、語るのか、具体的に想像できている感じです。

――「illuminate」を進めてきた中で苦労したことはありますか。

現状の商品が通販に向いていないことですね。生理用ナプキンやタンポンなどの単価に対して配送料(※2)が高くついてしまうほか、ポスティングに向いていないために受け取りの手間が発生するという致命的な課題があります。それでも売れるんじゃないかとは思っていましたが、やはりネックになっている感じなので、解消していきたいです。

※2:「illuminate」の配送料は、ポストサイズ300円/宅急便サイズ600円(いずれも税込、2019年12月時点)。

▲「illuminate」のWebサイト。ECはLINEとも連動している。「illuminate」のLINEアカウントを友だち登録すると、生理日の予測をメッセージ通知で受信したり、連動したECサイトから生理用品を購入したりできる仕組み。「生理日の予測をLINEでやってもらえるのがありがたい、というコメントをたくさん頂くので、継続しつつ、今後は購買体験をどうアップデートするか考えています」(ハヤカワさん)
画像出典:illuminate

今こそ、あらためて起業家に立ち戻るタイミング

――ハヤカワさんご自身は大局での戦略決めが得意とのことですが、商品やサービスを売るうえで戦略を選ぶときに、心がけていることがあれば教えてください。

1カ月、もしくは向こう1年くらいの短期的な話であれば、マーケターの方だったら、データドリブンで着々と選択していくのがいいと思います。

より長期的な話、例えば「3年後に売れるものを作る」「5年後に愛されているものを作る」などの話になってくると、データだけでは読みきれない側面が出てくると思います。3年、5年といった年月で、人の生活はだいぶ変わるでしょうし、世界の情勢や日本の状況も変化していくはずだからです。3年後または5年後の人がどんな考え方をしているのか、どのような社会になっているのかを考えることがやはり重要です。

先読みには、決定的なコツがあります。ちょっとした変化を敏感に察知しつつ大局での数字的な変化も追い、それらによって出てきた反応をなるべく大量にインプットするんです。

例えば、日本の人口が減っていることに関連して、いろいろな情報をインプットするとします。そのうえでエネルギーの仕組みを学ぶなど、インフラ関係の情報をインプットすると、「日本の人口が減ると、インフラの維持コストがめちゃくちゃ上がるはず」と関連付けることができるんです。そうなると、「もしかすると、地方で停電が起きるかもしれない」「そうしたら、蓄電池を売ってみるのはどうだろう」とつなげられます。データから見える定量的な変化と、それに対して出てきた表層的な変化をつなげて、「こんなことが起きそうだな」と考えるのがいいと思います。

――ありがとうございます。ご著書の中で「経営者として次のフェーズに入ろうとしている」といった旨を書かれていましたが、次はどのようなフェーズになりそうですか。

そうですね、今年の頭くらいから薄々感じてはいましたが、2019年、2020年とあらためて起業家に立ち戻るタイミングかなと思っています。

これまでは「起業したくてしたわけじゃない」という気持ちが結構ありました。2014年の「feast」立ち上げ後、初年度には3500万円程度の売り上げが立っていて、やらざるを得ない状況で5年近く経営を行ってきました。そのため、私自身にどこかで腹をくくりきれていないところがあって、やらされてきた感じもゼロではなかったと思います。先にブランドと売り上げが立っていたので、組織についてもやむを得ない形で人を入れていました。

でも、「illuminate」のプロジェクトは誰かに指示されたわけでもなく、自分で始めたことです。あらためてまっさらな状態で、誰からもリクエストされずに会社をやるので、理想の組織づくりにも着手しています。

組織やロードマップなどについてゆっくりと考えられる時間がちょうど今あるので、起業家として、自分の責任ですべてやり切ってみることができるタイミングなのだと思います。

――今後「illuminate」については、どのようなプロジェクトに育てていきたいとお考えですか。

女性向けのヘルスケア領域におけるプレーヤーがあまりいない印象なので、そこでトッププレーヤーになりたいと思っています。

今、「illuminate」は基本的に卸で仕入れて販売しているため、どんな人がどういうときに購入するのかデータがたまってきている状態です。そのため、2~3カ月前から、そのデータを基にして自社商品の開発を進めています。年始には秘密裏にプロダクトを出してみて反応をうかがうほか、来年(2020年)4月以降で立て続けにいろいろな商品を出す予定です。

――新商品の発売など、楽しみにしています。本日はありがとうございました。

【Profile】
ハヤカワ五味(はやかわ・ごみ)
1995年生まれ、東京都出身。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。課題解決型アパレルブランドを運営する株式会社ウツワ代表取締役。 高校3年生のときに、オリジナルのプリントタイツをブログに載せたところ、思わぬ反響があったことから販売を開始。当初の名義は「早川翼」だったが、「ゴミを量産するな」との批判の声を逆手に取り、「ハヤカワ五味」と名乗るようになる。その後、高校卒業から大学入学までの期間に立ち上げた「GOMI HAYAKAWA」をはじめ、「feast」「ダブルチャカ」と複数のブランドをプロデュースし、2018年にはラフォーレ原宿に常設直営店舗「LAVISHOP」を出店(~2019年8月)。2019年からはプロジェクト「illuminate」をスタート。
Twitter:@hayakawagomi  https://utw.co.jp/ https://illuminate-pjt.com/

 

佐藤綾美

記事執筆者

佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。
Twitter:@sleepy_as
メルマガ
メルマガ
メルマガ
メルマガ