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マーケティング

ファイブフォース分析とは?業界の競争構造を把握する方法

最終更新日:2022.08.25

ファイブフォース分析は、マーケティングプロセスにおける「環境分析」に位置づけられ、業界の競争構造を分析するために用いられるフレームワークです。自社を取り巻く環境の把握にファイブフォース分析という手法があることは何となく知っていても、具体的な分析方法や活用の仕方がわからず、自社のマーケティング戦略としてうまく取り入れられていない方もいるのではないでしょうか。

この記事では、業界構造を把握するファイブフォース分析とはどのようなフレームワークなのか、5つの切り口や分析結果の考え方、分析を行う際の注意点を基に解説します。

目次

    業界の構造を可視化する「ファイブフォース分析」とは?

    外部の競争構造を把握するためのフレームワークである「ファイブフォース分析」。ここでは、ファイブフォース分析の概要と目的をご紹介します。

    ファイブフォース分析の概要

    ファイブフォース分析とは、業界の競争構造を把握するうえで役立つ分析手法です。アメリカの経済学者であるマイケル・ポーター氏が提唱したもので、1980年に発表した著書『競争の戦略』にて示されました。「5F分析」や「ポーターの5フォース」などと呼ばれることもあります。

    ファイブフォース分析では、以下5つの競争要因を切り口として業界構造を紐解いていきます。

    • 買い手の交渉力
    • 売り手の交渉力
    • 業界内の競争
    • 新規参入者の脅威
    • 代替品・代替サービスの脅威

    ファイブフォース分析を行う目的とメリット

    マーケティング戦略においてファイブフォース分析を行う目的は、自社がいる業界、もしくはこれから参入を予定している業界について分析し、現状を把握することです。ファイブフォース分析は外部環境の把握に役立つフレームワークで、マーケティングプロセスの中では「環境分析」にあたる重要な作業です。

    5つの競争要因から業界構造を分析することで自社を取り巻く環境を把握でき、業界内における自社の立ち位置や強み、解決すべき課題などが明らかになります。また、将来的な脅威の予測や収益構造の把握にもつながるため、これから自社としてどう動いていくべきか見通しを立てやすく、状況に応じた適切な判断ができるようになります。

    さらに分析の結果、業界内の競合企業がすでに強い力を持っており、自社の収益性が見込めないと判断した場合は、参入する前に事業撤退を検討することができます。自社の立ち位置の把握や将来予測だけではなく、新規参入業者としてのリスクをあらかじめ確認できることも、ファイブフォース分析を実践するメリットといえるでしょう。

    また、マーケティング戦略における環境分析では、PEST分析SWOT分析といったフレームワークも活用するのが一般的です。ファイブフォース分析に加えて他のフレームワークも併用することで、自社の外部環境や内部環境をより詳細に分析でき、今後の経営戦略の立案や策定に役立つでしょう。

    • 外部環境分析
      マクロ環境:PEST分析
      ミクロ環境:ファイブフォース分析
    • 内部環境分析
      VRIO分析
    • 外部環境と内部環境の関係性を整理
      3C分析
      SWOT分析

    関連記事:マーケティングプロセスの基本|具体的な流れとやるべきこと

    ファイブフォース分析の5つの切り口

    ファイブフォース分析では、自社がさらされている外部からの脅威(競争要因)をそれぞれ分析し、業界の現状や収益性を探ります。ここでは、ファイブフォース分析の競争要因である5つの切り口について解説します。

    5つの切り口と分析の手順

    ファイブフォース分析の切り口と分析の手順を以下にまとめました。

     1.買い手の交渉力

    • 買い手とは、商品・サービスを購入する顧客のこと
    • 買い手の交渉力が強いと値引きを要求されやすく、自社の収益が下がるリスクがある
      <分析>買い手の交渉力を強めている要素は何か考える

    2.売り手の交渉力

    • 売り手とは、商品・サービスの提供に必要な原材料の仕入れ先・供給元のこと
    • 売り手の交渉力が強いと仕入れ価格が高くなり、自社の収益を下げる要因となり得る
      <分析>原材料や部品などの仕入れ先が自社に与える影響は何か整理する

    3.業界内の競争(競合)

    • 業界における既存の競合他社との競争のこと
    • 競争が激しい業界では製品の差別化戦略や価格競争が繰り広げられている
      <分析>業界内の競合各社がとっている戦略を整理する

    4.新規参入者の脅威

    • 業界内への参入障壁の高さのこと
    • 参入障壁が低い場合は業界内の競争が激化しやすい
      <分析>参入障壁の高さ、新規参入者の有無について整理する

    5.代替品・代替サービスの脅威

    • 既存製品と同様の機能を果たせる製品・サービスのこと
    • 既存製品よりも費用対効果が高い製品・サービスが現れた場合、業界全体の収益に影響を及ぼす可能性がある
      <分析>既存製品と同じ機能を持つ製品・サービスがあるか否かを整理する

    ここからは、5つの切り口それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

    1. 買い手の交渉力

    ファイブフォース分析における「買い手」とは、自社の商品やサービスを購入してくれる顧客のことです。

    買い手との力関係を「交渉力」と捉えると、買い手の力が強い、つまり交渉力が強い場合、買い手は売り手よりも優位な立場にあるといえます。こうなると買い手から値引きを要求されやすく、売り手の収益性は下がりやすくなります。

    買い手の交渉力を強める要因には以下が挙げられます。

    • 買い手市場であること
    • 自社製品の認知度やブランド力が弱いこと
    • 他社製品との差別化ができていないこと
    • 買い手が十分な知識量・情報量を持っていること
    • スイッチングコストが低いこと

    買い手に特定の商品・サービスを選ぶ明確な理由がない場合や、ある商品から別の商品に切り替える際に発生する金銭的・心理的負担が低い場合は、簡単に競合企業へ乗り換えられてしまうおそれがあります。企業としては、自社製品の独自性を高めて自社ならではの価値を提供したり、買い手が持つ情報量を把握したりするなどの対策が必要です。

    2. 売り手の交渉力

    ファイブフォース分析における「売り手」とは、商品・サービスを提供するにあたって必要な原材料や部品などの仕入れ先(サプライヤー)のことです。

    売り手が業界内の企業に対して影響力を持っている場合、買い手よりも売り手の力関係(交渉力)が強くなりがちで、企業としては自社が受ける影響を考えなければなりません。この状況では交渉力が強い売り手側が提示する価格を受け入れざるを得なくなることもあり、仕入れ値が高くなりやすく、企業の収益性は下がってしまう可能性があります。仕入れコストが高くなるのであれば、製品価格を上げない限り、利益が少なくなるからです。

    売り手の交渉力を強める要因には以下が挙げられます。

    • 売り手市場であること
    • 売り手の業界が寡占状態にあること
    • 原材料に代替品が存在しないこと
    • スイッチングコストが高いこと

    業界内の競合企業が少なかったり、原材料に替えが利かなかったりする場合、売り手は買い手に対し強気に出ることができます。また、別のサプライヤーに乗り換える際の金銭的・心理的負担が大きい場合も同様に、売り手の交渉力を強める要因となるでしょう。企業としては、「複数の仕入れ先を見つけておく」「原材料を代替可能な物にする」「サプライヤーを利用せず自社開発する」などの対策が考えられます。

    3. 業界内の競争(競合)

    ファイブフォース分析における業界内の競争(競合)とは、業界における既存の競合他社との競争です。

    競合との敵対関係が強い場合、市場では他企業よりも優位に立つために激しい価格競争や製品の差別化戦略が繰り広げられ、結果的に企業の収益性を下げる要因となってしまいます。すでに寡占・独占状態の業界もありますが、多くの業界は競合他社がひしめき合っている状況であり、企業間競争を勝ち抜き生き残るには競合他社の分析が必要不可欠です。

    業界内の競合分析で確認すべき項目には以下が挙げられます。

    • 業界の規模
    • 業界の成長速度
    • 業界における規制の有無
    • 競合他社の数
    • 各社の資金力や知名度
    • 製品・サービスの差別化
    • 撤退障壁(撤退が容易かどうか)

    競争が激しい業界、つまり自社の脅威となる競合他社が多い業界においては、競合分析によって自社の現状や立ち位置を明らかにするとともに、優位性を確立するための施策を検討しなければなりません。また、業界全体や競合他社の状況を詳しく分析することは、自社事業の拡大、もしくは事業撤退を判断するうえでも役立つでしょう。

    4. 新規参入者の脅威

    ファイブフォース分析における新規参入者の脅威とは、業界内への参入障壁(新たに参入しやすいかどうか)の高さです。新規参入者の有無や参入障壁について分析することで、新規参入者により業界内の競争が激化する脅威がどれくらいあるのかについて確認できます。

    参入障壁となる要素には以下が挙げられます。

    • 設備投資の規模
    • 既存企業のブランド力
    • 製品・サービスの差別化
    • スイッチングコストの高さ
    • 流通チャネルの確保
    • 法規制の有無

    参入障壁が低い、つまり新規の業者が参入しやすい場合、業界内の競争が激しくなり自社の収益性が下がる懸念があります。反対に、参入障壁が高い、つまり参入を妨げる要素が多い場合、その業界への新規参入者の数は少なくなるでしょう。既存企業としては、参入障壁が高い業界であるほど一定の収益性の確保が期待でき、企業の魅力度も高まるといえます。

    5. 代替品・代替サービスの脅威

    ファイブフォース分析における代替品・代替サービスとは、既存製品と同様の機能を果たせる製品・サービスのことです。具体例としては、紙の書籍と電子書籍、飲食店(実店舗)とデリバリー、既存医薬品と後発医薬品などが挙げられます。

    代替品・代替サービスが脅威を持つ要因には以下が挙げられます。

    • 代替品・代替サービスの数が多い
    • コストパフォーマンスが高い
    • スイッチングコストが低い

    既存製品よりも費用対効果の高い新しい製品やサービスが現れた場合、市場が奪われ、業界全体の収益性が脅かされる可能性があります。顧客のニーズを満たせる質の高い代替品・代替サービスは、自社だけではなく業界全体に影響が及ぶ脅威となります。この脅威に対抗していくには、「他の製品・サービスにはない自社製品ならではの価値を提供する」「自社のブランド力を高めて差別化を図る」「スイッチングコストを高めて消費者を囲い込む」などの戦略が必要となるでしょう。

    ファイブフォース分析の考え方と注意点

    ファイブフォース分析では、5つの脅威が与える業界への影響を分析し、自社の現状や業界の将来性を明らかにしていきます。ここでは、ファイブフォース分析の結果に対する考え方と、分析を行う際の注意点をご紹介します。

    ファイブフォース分析の結果の考え方

    ファイブフォース分析の切り口である5つの力が強い業界ほど、業界内の競争が激しく、自社の収益化のハードルは高いといえます。競争性が高い場合は、その中でも自社が競争優位性を発揮できるポジションはあるのか、業界内での立ち位置を考えるとよいでしょう。また、将来的に降りかかる可能性のある脅威を把握することで、自社が業界で生き残っていくためには何が必要なのか見いだせるようになり、事業を拡大していくか、あるいは参入を見送るかの判断がしやすくなります。

    競争優位性を発揮できるポジションの考え方については、以下の記事でも詳しく解説しています。本記事とあわせて参考にしてみてください。

    関連記事:セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの実践的な考え方とチェックポイント

    ファイブフォース分析を行う際の注意点

    ファイブフォース分析を行う際は、分析の範囲を明確にすることが大切です。どの企業までを対象とするのか、期間はどれくらいで区切るのかなど、あらかじめ範囲を決めてから取り組むことで分析結果にブレが生じにくくなります。

    また、ファイブフォース分析を行ううえでは、可能な限り客観的なデータを収集しましょう。ファイブフォース分析はマーケティングプロセスにおいて最初の段階で行う作業であり、具体的なマーケティング戦略・戦術を考える際に基準となる重要プロセスです。自社を取り巻く競争構造を正確に判断するため、また、分析者によって結果が変わらないようにするためには、なるべく客観的なデータを用いて分析する必要があります。

    ファイブフォース分析の事例

    ファイブフォース分析は、あらゆる業界の競争構造や脅威の把握・分析に役立てられています。ここではホテル業界を例に、ファイブフォース分析による分析事例をご紹介します。

    例:ホテル業界のファイブフォース

    買い手の交渉力ホテル業界の買い手は「ホテルの利用客」と「(ホテルのサービスを商品として扱う)旅行会社」の2つが考えられる。

    買い手(1):ホテルの利用客
    ホテルは利用客に選ばれる立場であり、業界の特性としてホテルは利用客に対し「No」と言いづらいため、買い手の交渉力は強いといえる。

    買い手(2):旅行会社
    インターネットが普及しWeb予約が主流となったことで、仲介を担う旅行会社を間に挟まなくても、ホテルがダイレクトに利用客とつながれるようになった。そのため、旅行会社を買い手とする場合は、売り手であるホテルの交渉力のほうが強まっている傾向にあるようだ。

    売り手の交渉力ホテル業界の売り手は、客室の備品や業務用アメニティ、料理の食材、飲料などの供給業者である。ベッドやデスクなど備え付けの備品は開業時に揃えるが、ボディソープやシャンプー、歯ブラシ、タオルなどは常に補充が必要となる。

    大規模調達を行うホテルは供給業者に対して一定の交渉力があり、規模が大きいホテルほどその傾向は強くなる。ただし、交渉力は供給される物によって差異が生じるため、売り手の交渉力は中立と考えられる。

    業界内の競争(競合)一口にホテルと言ってもその種類はさまざまで、シティホテルやリゾートホテル、ビジネスホテル、カプセルホテルなどがある。それぞれのターゲット層や立地条件は類似しているものの、ホテル業界は過度な競争を避けるという意味で安定的な経営を行っており、価格引き下げ競争が激化することは考えにくい。

    ただし、似た特徴を持つ同クラスのホテルが近い場所に集中するなど、他ホテルとの差別化が難しい場合、過当競争が生じる可能性がある。

    新規参入者の脅威ホテルの開業には土地や建物といった固定資産、客室の備品やアメニティなどを準備しなければならず、多額の資金が必要となる。新規参入の障壁は低いとはいえず、一から準備するよりも既存ホテルを買収して参入する方が効率的である。

    しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で一時は大きく落ち込んだ観光需要や出張需要も徐々に回復してきていることから、アフターコロナを見据えた積極投資に乗り出している企業も存在する。

    代替品・代替サービスの脅威ホテルにはさまざまな種類があるが、それぞれターゲット層が異なるため、基本的には代替関係にないと考えられる。たとえばシティホテルとビジネスホテルを比べると、シティホテルは観光目的の利用客が多く眺望の良い場所に建つが、ビジネスホテルの利用客は出張中のビジネスパーソンが多く、駅前など交通の利便性が高い場所に建っている。

    しかし、業界外にはホテルが提供しているサービスの代替となり得るサービスも多く、その典型例がウエディングである。ウエディングはシティホテルが提供する中心的なサービスの一つだが、同様のサービスは結婚式場や教会・神社、レストラン、ゲストハウスなどでも提供されているため、いかに差別化していくかが課題といえる。

    ※編集部で調査、収集した情報を基にまとめた内容です(いずれも2022年8月時点)。

    自社事業の収益性を見いだすファイブフォース分析

    市場にモノやサービスがあふれる現代において、ほとんどの企業は激化する競争の中での事業展開を余儀なくされています。企業間競争に打ち勝ち顧客から選ばれる企業になるには、市場内で自社の脅威となる5つの要因に着目・解明するファイブフォース分析が欠かせません。ファイブフォース分析を用いて競争構造を把握し、業界の将来性や自社事業の収益性を見いだしましょう。

    Marketing Native編集部

    記事執筆者

    Marketing Native編集部

    Marketing Native(マーケティングネイティブ)は株式会社CINC(シンク)が運営しているメディアです。 CMOのインタビューやニュース、Tipsなど、マーケターに役立つ情報を発信しています。
    Twitter:@market_native
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