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マーケティング

STP分析の基礎知識|戦略立案に必要なフレームワークの使い方

最終更新日:2023.05.09

STP分析とは、セグメンテーションによって分類した顧客の中からターゲットを選定し、競合他社にはない自社の強みを見つけて戦略を策定するためのフレームワークです。STP分析によって決めた戦略をもとに、次のステップであるマーケティングミックスで、マーケティング施策の具体化が行われます。

では、STP分析は具体的にどのように進めれば良いのでしょうか。この記事では、STPそれぞれの単語が表す意味のおさらいをはじめ、分析方法、注意点などをまとめて解説します。

目次

STP分析とは?

STP分析は、長年にわたり多くの企業に活用され、その成果に貢献してきた手法です。まずは、STP分析の基本と行うタイミングを解説します。

フィリップ・コトラーが提唱したフレームワーク

STP分析は、自社の具体的なマーケティング戦略を考える際に使用するフレームワークです。アメリカの経済学者で、「近代マーケティングの父」とも呼ばれるフィリップ・コトラーが提唱しました。具体的には、以下3つの要素を分析し、ターゲットとする市場・顧客を明確にして効果的なアプローチができるようにします。

  • Segmentation(セグメンテーション)
  • Targeting(ターゲティング)
  • Positioning(ポジショニング)

3つの要素の頭文字を取って、STP分析という名称になっています。各要素の詳細は、後述する「STP分析の基本的な手順」で解説します。

STP分析を使用するタイミング

STP分析をするタイミングは、PEST分析3C分析、SWOT分析といった環境分析の後です。コトラーが提唱する以下のマーケティングプロセスの中では、2番目に取り組む内容となっています。

マーケティングプロセス 概要
R リサーチ(調査)のステップ。自社ではコントロールできないマクロ環境と準統制可能なミクロ環境分析を行う。マクロ環境分析としてはPEST分析、ミクロ環境分析としてはバリューチェーン分析などが挙げられる。また、内部環境と外部環境の視点で整理するSWOT分析もある。
STP 市場の細分化を行い、自社が狙う市場や立ち位置を決定する。
MM マーケティングミックスのステップ。4Pや4Cといったフレームワークを使って、商品や販売方法を具体化していく。
Implementation マーケティングミックスで決定されたことを計画に落とし込み、実行していくステップ。5W1Hなどのフレームワークを使って、いつまでに誰が何をするのかなどを明確にして取り組む。
Control 計画を実行して判明した問題点の改善など、管理を行うステップ。

STP分析の後にも、マーケティングミックスやImplementationなど、マーケティングのプロセスは続きます。そうした一連の流れの中でも、STP分析はターゲットを定め、差別化戦略を考えるための大切なステップです。

STP分析の基本的な手順

STP分析は具体的にどのように行えば良いのでしょうか。各項目で分析する内容と、STP分析の基本的な手順を紹介します。

Segmentation(セグメンテーション)

はじめに行うのはSegmentation(セグメンテーション)で、市場を細分化する作業です。セグメンテーションでは、市場・顧客を類似したニーズを持つ層(セグメント)に分けていきます。セグメンテーションの指標は、以下4つの軸を使うのが一般的です。

  • 人口動態変数(デモグラフィック変数)
  • 地理的変数(ジオグラフィック変数)
  • 心理的変数(サイコグラフィック変数)
  • 行動変数(ビヘイビアル)

各変数の詳細について、以下に解説します。

・人口動態変数(デモグラフィック変数)

人口動態変数とは、年齢や性別、家族構成などの変数で、具体的には以下が挙げられます。

  • 年齢
  • 性別
  • 家族構成
  • 職業
  • 所得
  • 学歴
  • 宗教
  • 人種
  • 国籍
    など

人口動態変数は消費者のニーズやサービスの使用率に結びつきやすく、調査統計が多い傾向にあることからデータを入手しやすい特徴もあります。

・地理的変数(ジオグラフィック変数)

地理的変数(ジオグラフィック変数)とは、地理的な要素のことで、人口動態変数と同じく客観的なデータとして収集できる変数です。具体的には以下が挙げられます。

  • 国や地域
  • 気候
  • 人口密度
  • 都市の発展度
  • 文化
  • 政府の規制
    など

地理的変数はSTP分析の後の工程であるマーケティングミックスや、企業の経営戦略に影響を与えやすいと言われています。食品や衣類、家電などは、その影響を受けやすい商品の例です。例えば、コンビニエンスストアは、地域限定の麵商品や弁当、惣菜を販売していることがありますし、日清食品は、関東と関西でカップうどん・そばのだしを地域に合わせて変えています。

・心理的変数(サイコグラフィック変数)

心理的変数は、心理面に焦点を当て、分類する軸のことです。人口動態変数や地理的変数による分類では同じセグメントでも、消費の傾向が異なる場合があります。例えば同じ20代独身の男性でも、価値観やライフスタイルによって、身に着ける衣服、外食の傾向などは異なり、そうした際に併用されることが多いのが心理的変数です。具体的には以下の要素が挙げられます。

  • 信念
  • 価値観
  • 習慣
  • 嗜好
  • ライフスタイル
  • 購買動機

心理的変数の把握には、アンケート調査やユーザーインタビュー、コールセンターの通話記録で得られるデータなどが役立ちます。

・行動変数(ビヘイビアル)

行動変数とは、顧客の知識や態度、行動に関する分類のことです。具体的には、主に以下が挙げられます。

  • 製品・サービスに対する知識の有無
  • 利用目的
  • 購入理由や求めるベネフィット
  • 購入プロセス
  • 購入した商品と金額
  • 利用頻度や利用経験
  • 利用水準
  • ロイヤリティの状態
    など

商品が売れる時期を明確にしたり、クロスセルを検討したりする際にも役立つ視点です。ECサイトがある場合は、アクセス解析などにより確度の高いデータを得られます。

Targeting(ターゲティング)

セグメンテーションで明確になったセグメントの中から、自社が狙う層を決定するのがターゲティングです。3C分析、SWOT分析、セグメンテーションの結果から見えてきた自社の強みや目指すべき方向性などをもとに、ターゲティングを行います。

多くの場合は競合他社に勝てそうなセグメントに集中する形でターゲティングを行います。人材や資源、資金には限りがあり、競合が強く参入してくる可能性もあるためです。資本力のある大企業や、市場で圧倒的なシェアを持っている企業を除き、市場全体をターゲットにすることは避けましょう。

ターゲティングの際に留意すべき視点として知られるものに「6R」があります。難しく感じる場合は、客数や客単価が十分で儲かるかどうかと、競合に対して差別化でき、自社の強みを生かして勝てるか否かを意識すると良いでしょう。

【6R】

  • Realistic scale:市場規模は十分か
  • Rate of growth:成長性はあるか
  • Rival:競合はどのような状況か
  • Rank/Ripple Effect:優先順位と波及効果
  • Reach:到達可能性
  • Response:測定可能性

Positioning(ポジショニング)

ターゲティングの結果が、完全に競合他社のいないブルーオーシャンでない限りは、ポジショニングを行います。ポジショニングとは、競合商品と比べて顧客に選ばれる立ち位置を探すことです。競合に対して差別化でき、自社の強みを生かせる立ち位置、アピールの仕方を考えます。価格やベネフィット、販売方法などを競合と比較しましょう。

STP分析のポイント

STP分析を行う際のポイントは「誰にどのような価値を提供するか明確にすること」「STPそれぞれを往復しながら考えること」「定期的に見直すこと」の3つです。

誰にどのような価値を提供するか明確にする

STP分析時は、「誰にどのような価値を提供するのか」を常に考えることも重要です。あらゆる顧客を狙った商品は特徴や魅力が少なくなり、誰からも必要とされません。マネジメントの父とも呼ばれるピーター・ドラッカーも以下のような言葉を残しています。

“事業の目的とミッションに取り組むうえで、答えるべき最後の問いは、「顧客にとっての価値は何か」である。これが最も重要な問いである。しかし、最も問うことの少ない問いである。答えは明らかだと思い込んでいるからである。品質が価値だという。ただし、この答えはほとんど間違いである。顧客は製品を買ってはいない。欲求の充足を買っている。彼らにとっての価値を買っている。“

出典:『ドラッカー名著集13 マネジメント[上]―課題、責任、実践』(ダイヤモンド社、P.F.ドラッカー著、上田惇生訳)

顧客が商品に感じている価値と企業が想定している価値がずれてしまうケースも多々あります。必須ではありませんが、製品やサービスの特徴、ベネフィットの整理にはFABE分析(ファブ分析)なども併せて行うと良いでしょう。

【FABE分析】

  • Feature:製品やサービスの特徴
  • Advantage:競合に対する自社の優位性
  • Benefit:顧客が得られる価値
  • Evidence:根拠となるデータや事例

STPそれぞれを往復しながら考える

STP分析は、必ずしもS⇒T⇒Pの順番で行う必要はありません。例えば、ターゲティングを検討していくうちに、あまり精査していなかった顧客層のデータが必要になり、あらためてセグメンテーションに戻るなど、各要素の分析と考察を進めるうちに他の要素を詳細に分析しなおす必要が出てきたり、ポジショニングから考えたほうが進めやすかったりする場合があるためです。

また、セグメンテーションとターゲティング、ポジショニングの3つは一貫性も重要です。それぞれ往復しながら考えると良いでしょう。

定期的に見直す

STP分析を定期的に見直すのも重要なポイントです。市場は常に変化しており、競合他社の状況も変わっていきます。入念にSTP分析をしたからといって長期間そのままにせず、定期的に見直し、修正を図りましょう。

的確なSTP分析がマーケティングの成果につながる

STP分析は、セグメンテーションとターゲティング、ポジショニングの3つの要素を分析し、戦略の立案につなげるためのステップです。誰にどのような価値を届け、どんな差別化戦略をとるかにより、製品やサービスの具体的な内容、価格、流通・チャネル、広告・販促の仕方が決まります。STP分析をきちんとできているか否かが、売り上げや利益の最大化にも影響すると言えます。この記事を参考に、STP分析に取り組んでみてください。

なお、次のマーケティングプロセスである4P(マーケティングミックス)については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧いただければ幸いです。

4Pとは?

記事執筆者

Marketing Native編集部

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