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マーケティング
2022.01.12

D2Cとは?注目ブランドの事例に見るビジネスの特徴と成功のポイント

D2Cとは、自社で企画、開発した商品を直接消費者に販売するビジネスモデルのことです。独自の世界観やストーリーを基にプロダクトを開発し、熱心な顧客を獲得しています。アパレルやコスメ、フード、飲料などさまざまな領域でD2Cブランドが登場しており、Marketing Nativeのインタビューでも注目の企業を取り上げてきました。

この記事では、D2Cの基本をあらためておさらいしつつ、近年の傾向や成功事例、D2Cで成果を上げるためのポイントを解説します。

目次

D2Cとは?

D2Cは「Direct to Consumer」の略です。具体的にどのような特徴があり、類似するビジネスモデルとはどう異なるのでしょうか。

D2Cの定義

D2Cとは一般的に、企業が企画・製造した商品を、卸業者や小売店などの仲介業者を介さず、消費者にダイレクトに販売するビジネスモデルを意味します。ビジネスモデル自体は古くからありましたが、アメリカのスタートアップ企業を中心に発展し、大手企業による買収も相次いだことなどから、2019年頃から「D2C」という言葉が注目を集めるようになりました。

▲BtoB(Business to Business)は企業間で取引が行われ、BtoC(Business to Consumer)は企業と消費者で取引が行われる。D2C(Direct to Consumer)は間に卸売業者や小売り業者が介在しない。

D2Cの主な特徴

・販路の主軸はECサイト

D2Cの基本的な販売チャネルはECサイトで、実店舗がなくてもインターネットを通じて立ち上げが可能です。中間マージンの削減により、従来は流通経路の確保に充てていた費用を商品開発などに利用できます。商品を直接顧客に販売するため、顧客情報を自社に蓄積できるメリットもあります。

近年は実店舗やポップアップショップを展開するブランドも珍しくなく、ファッション系のD2Cブランドの中には試着用の店舗を設け、顧客が試着して購入できるようにしているところもあります。

・ブランドのストーリーや世界観を重視

D2Cの多くはブランドのストーリーや世界観を大切にし、起業時のビジョン、商品化までのヒストリーなどを発信します。そして、ブランドのストーリーや世界観に共感してくれる顧客のファン化につなげています。

・SNSを中心に活用

顧客に商品を直接販売するD2Cでは、集客や宣伝に主にSNSが活用されます。ブランドのストーリーを発信したり、顧客と直接コミュニケーションをとったりすることが可能です。顧客のニーズをくみ取ったり、フィードバックを商品に反映させたりしやすい点はD2Cのメリットと言えるでしょう。

・LTV(Life Time Value)を重視

D2Cでは指標の中でも特にLTVが重要とされます。LTVは顧客生涯価値とも言われ、1人の顧客が企業にもたらすであろう利益の合計のことです。顧客にできるだけ長く、もしくは高く購入してもらうことによりLTVが向上し、継続的な売上が見込めます。

類似する言葉・SPAとの違い

SPA(エスピーエー、スパ)は「Speciality store retailer of Private label Apparel」の略で、「製造小売業」と訳されます。自社で企画や製造、販売までを一貫して行う小売業態のことです。主な代表例にGAPやユニクロ、ファストファッションブランドのH&M、ZARAなどが挙げられます。D2Cが自社サイトを軸に商品・サービスを展開するのに対し、SPAは直営店舗での販売を軸とします。

D2Cの近年の傾向

D2Cの市場規模は今後も拡大が見込まれています。新規参入企業も数多く見られ、競争は激化する一方です。そうした流れを受け、コクヨの「THINK OF THINGS」やミツカングループの「ZENB」など、大手企業がD2Cビジネスに参入するケースも見られます。大手企業が参入する際は、新規事業としてD2Cブランドを立ち上げたり、買収または提携したり、既存事業をD2Cモデルに切り替えたりといったパターンがあります。

なぜ多くの企業がD2Cに参入するのか――広告代理店で企業のマーケティング支援を行う匿名マーケター「エルモ」さんは、Marketing Nativeの寄稿で、その理由として「マーケターが関与できる成長ドライバーの数の多さ」を挙げています。

大胆な仮説となりますが、「単品売り切り型のビジネスと異なり、SaaSやD2Cのサブスクリプションビジネスでは、マーケターも購買頻度(継続率・離脱率)をいくばくかコントロールできるのではないか?」というのが筆者の仮説です。

出典:【エルモ寄稿】購買フローとビジネスモデルから考える|D2CとSaaSが最強な理由について

また、東京の有楽町・新宿・渋谷にある体験型ストア「b8ta(ベータ)」や、福岡の体験型RaaS(Retail as a Service)ストア「NewMe(ニューミー)」など、D2Cブランドの商品を体験できる店舗も登場しており、実店舗のないD2CブランドもECサイト以外に顧客との接点を持てるようになってきています。

国内で注目を集めているD2Cブランドの事例

数多くあるD2Cブランドの中から、魅力的なコンセプトや商品で話題のブランドを紹介します。

アパレル

・COHINA(コヒナ)

COHINA(コヒナ)は身長155cm以下の小柄な女性をターゲットにしているD2Cファッションブランドです。SNSの中でも特にInstagramを活用してビジネスを伸長させています。2020年には「第31回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2020 AUTUMN/WINTER」に初出演を果たし、2021年には初の試着専用路面店舗を表参道にオープンしています。

2018年1月の正式立ち上げ後、COHINAが早期に顧客に支持された理由について、代表の田中絢子さんは次のように話しています。

お客さまに、友達が頑張ってブランドを運営しているような感覚を持ってもらえたのではないでしょうか。商品を販売する前からInstagramを通じて情報を発信し続けたことにより、一緒にブランドを作っている感覚がお客さまの中に生まれたのだと思います。

出典:「COHINA(コヒナ)」の急成長を支えたInstagram活用のポイントとは?代表 ディレクター・田中絢子インタビュー

まだ商品がない頃からInstagramを通じて小柄な女性に役立つ情報を発信し、それが次第に「小柄女子コミュニティ」として認知され、フォロワー同士で情報交換も行われるようになったと言います。COHINAのInstagram運用方法やPDCAの回し方などは、以下の記事で詳しく取り上げています。

関連記事:「COHINA(コヒナ)」の急成長を支えたInstagram活用のポイントとは?

・ALL YOURS(オールユアーズ)

ALL YOURS(オールユアーズ)は「着たくないのに、毎日着てしまう」シリーズなど、着心地の良いアイテムを提供しているアパレルブランドです。東京都世田谷区にある直営店では、商品を試着できるようになっています(購入はオンラインストア)。

ALL YOURSのブランド名は「あなた」が中心にあることを表しており、ロゴも「U」が中心に位置するようになっています。共にブランドを作る一員として顧客を「共犯者」と呼んでいる点が特徴的で、熱心なファンの獲得に成功しています。

ALL YOURSについては、匿名マーケターの「みる兄さん」が「顧客と価値を共創するブランド」をテーマに下記の記事で考察しています。

関連記事:「オールユアーズ」から学ぶ、顧客と価値を共創するブランドとは?

ウェルネス

・TENTIAL(テンシャル)

TENTIAL(テンシャル)はスポーツ情報を届けるメディア『SPOSHIRU』の立ち上げ後に展開されたウェルネスD2Cです。メディアから得られる情報を基に顧客ニーズを考え、インソールやマスク、スリープウエアなどの商品を販売しています。ターゲットは、健康意識の高いビジネスパーソンやスタートアップの若手経営者ら「ビジネスアスリート」です。

SEOと圧倒的なコンテンツ投下数でメディアのユーザー数を順調に伸ばし、ブランドを展開して成果を上げているD2Cのお手本のような事例です。『SPOSHIRU』のデータの活用について、テンシャル代表取締役CEO中西裕太郎さんはインタビューで次のように話しています。

最初にインソールから入ったのは、「SPOSHIRU」のトラフィック分析などを通して、足の課題へのニーズが高いことがわかったからです。最初は私の思い入れが強すぎて、「どうせ作るならスポーツブランドらしい商品を作りたい」「サプリメントやプロテインがいい」と模索していましたが、中長期的に勝つためにはどうすれば良いかを考えた結果、スポーツ系、健康系のブランドとして認知を獲得するには足まわりから入るのが良いと気づきました。ナイキやニューバランス、アシックスなど有名企業の多くは足まわりから入っているのです。

メディアグロースやブランド立ち上げの過程など、詳しくは中西さんのインタビューをご覧ください。

関連記事:メディアグロースからのD2Cブランド成功で勢いに乗るビジネスアスリート企業TENTIALの強さとは――中西裕太郎代表インタビュー

フード

・Minimal – Bean to Bar Chocolate –(ミニマル)

Minimal – Bean to Bar Chocolate –(ミニマル)はクラフトチョコレートのD2Cで、Bean to Bar(※)板チョコレートをはじめ、生ガトーショコラ、レアチーズケーキなどを販売しています。

Minimalはセールスターゲットとブランディングターゲットの2つを設定し、訴求の仕方もそれぞれで変えている点が特徴的です。セールスターゲットは30~40代女性、ブランディングターゲットは30~40代男性をターゲットとしており、それぞれへの訴求の仕方について、Minimal-Bean to Bar Chocolate-代表(βace代表取締役)の山下貴嗣さんは次のように話しています。

セールスターゲットである女性のお客さまに対しては、ストレートに「味」を訴求しました。カカオ濃度は70~80%をメインにして、Minimalらしい甘さと香りのバランスを実現し、「美味しさ」を徹底的に追求しました。

一方、ブランディングターゲットについては、帽子・ひげ・眼鏡・Tシャツ・短パン姿のオシャレな30~40代男性を設定しました。そういう男性のマニアックな心理をくすぐりたいと考え、店内のデザインをコーヒーショップのようにしたり、チョコレートのパッケージにもこだわったりしました。

出典:熱い!クラフトチョコ「Minimal」の山下貴嗣が語る、マーケティング戦略としての「2階建て理論」と「ターゲット設定」

その結果、男女を問わず、数多くのファンを魅了しています。

以前は東京にある2つの店舗を販売経路の中心としていましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、主軸をECへシフト。ECで売れる商品開発も行い、売上の増加に成功しています。

関連記事:
クラフトチョコ「Minimal」の山下貴嗣が語る、マーケティング戦略としての「2階建て理論」と「ターゲット設定」
クラフトチョコ「Minimal」が店舗・ECともにコロナ禍でも売り上げを拡大し続ける理由――代表・山下貴嗣インタビュー

※Bean to Bar:カカオ豆から板チョコレートになるまでの全工程を自社の工房で一貫して管理し、製造するスタイル。

・snaq.me(スナックミー)

snaq.me(スナックミー)は、人工添加物や白砂糖、ショートニングなど不使用の自然素材で作られたおやつが定期的に届くサブスクリプションサービスです。100種類以上のおやつの中から、データを基にユーザーの好みに沿った8つをセレクトし、かわいらしいパッケージのボックスに入れて月1~2回の頻度で届けています。

ユーザー自身がおやつを選ばない仕組みにすることで、何が届くかわからないワクワク感を演出しています。さらに、食べてみたいおやつのリクエストや届いたおやつへのフィードバックなど、ユーザーがアクションを起こすほど、アルゴリズムによって好みのおやつが届く仕組みになっている点が特徴的です。

また、snaq.meはおやつのボックスが届いたとき、ボックスを開けたとき、おやつを食べるとき…と随所にUGCが発生するポイントを作っています。 詳しくは、以下の記事をご覧ください。

関連記事:おやつのサブスク「スナックミー」がTwitterで口コミを伸ばしている仕掛けとは?

飲料

・PostCoffee(ポストコーヒー)

PostCoffee(ポストコーヒー)は、スペシャルティコーヒー(※)のサブスクリプションサービスです。ローンチ以来、順調に会員数を伸ばし、2021年7月には1億5000万円の資金調達を実施しています。

サービスの内容は、オンライン上の「コーヒー診断」により、150種類以上の中からパーソナライズされた3種類のコーヒーを届けるというものです。フィルターやシュガー、ミルクもセットになっています。

PostCoffeeでは、顧客解像度を上げるために、コーヒー診断やアンケートのほかに、ユーザーインタビューを実施し、解約者を減らす取り組みを行っています。インタビューは月に5~10人、1人1.5時間ほどかけており、解約者にも積極的に話を聞いているそうです。詳しくは、下記の記事でPOST COFFEE代表取締役の下村領さんに伺っています。

関連記事:注目のコーヒーサブスク「PostCoffee」が行う、ユーザーを引きつけ、解約を防ぐ取り組みとは?

※スペシャルティコーヒー:農園から消費者に届くまで徹底的に品質管理され、日本スペシャルティコーヒー協会で美味しさが認められているコーヒーのこと。

D2Cで成果を上げるためのポイント

D2Cで顧客から支持され、ビジネスを伸長させるにはどうすれば良いのでしょうか。「国内で注目を集めているD2Cブランドの事例」で紹介した成功事例をもとに、成果を上げるためのポイントを紹介します。

メディアから始める

TENTIALのように、商品開発前にオウンドメディアを立ち上げ、成功しているD2Cブランドもあります。ターゲットを決めて特定のテーマでメディアを立ち上げることで、興味を持ってくれる人を集めやすく、コミュニティの形成が期待できます。Webメディアではなく、COHINAのようにInstagramを活用するのも良いでしょう。

株式会社Moonshot CEOの菅原健一さんも、株式会社フラクタCEOの河野貴伸さんによる公開インタビューで次のように話しています。

D2Cに関わっている人がたくさん聴いているようなので、大事なことをお伝えしておくと、まずメディアを作ってほしい。うまくいかないD2Cによくあるのは、商品を作るときにターゲットが決まっていなくて、作りたいものを作ってしまうことです。ところが、売り方がわからない。わからないからメディアを作るかとなって、商品を作ってから買ってくれそうな人たちが集まるメディアを作るという順番なんです。商品を誰向けに作るかがまず難しいのに、ターゲットの定まっていない商品を買ってくれるかもしれない人たちをいっぱい集めるメディアを作るのはもっと難しくて、「難しい×難しい」になってしまいます。

出典:ムーンショット菅原健一 × フラクタ河野貴伸「リアルとオンラインが交錯する社会で、マーケターが注目すべきポイントとは?」

商品づくりを先行させると、ターゲットが定まらないまま商品を作ってしまう可能性があります。メディアを先に立ち上げればそうしたリスクを回避でき、収集したデータを基にニーズを理解し、商品開発に活かせます。

菅原さんと河野さんが「アフターコロナの世界でブランドはどう変わるか」をテーマに語ったトークの内容は、以下の記事よりご覧ください。

関連記事:ムーンショット菅原健一 × フラクタ河野貴伸「リアルとオンラインが交錯する社会で、マーケターが注目すべきポイントとは?」

SNSを活用し、顧客と双方向のコミュニケーションをとる

成果を上げているD2Cブランドの多くは、SNSを単なる情報発信の手段にとどめておくのではなく、顧客との対話に積極的に活用しています。例えばCOHINAは、Instagramストーリーズの質問機能でライブ配信で見たいコンテンツの希望を聞いたり、インスタライブで顧客から得たフィードバックを商品に反映したりしています。またsnaq.meは、Twitterで「#スナックミー」と付いたおやつに関する感想(画像付き)をいいね・RTし、顧客と積極的にコミュニケーションをとっています。

数あるD2Cブランドの中でいかに差別化できるか

D2Cブランドが熱心なファンを獲得するには、魅力的なプロダクトや共感を呼ぶストーリーはもちろん、顧客との密な関係性の構築、双方向性のあるコミュニケーションなども欠かせません。D2Cブランドの立ち上げを検討している方や、D2Cブランドについて勉強している方は、この記事で紹介した事例に関するインタビュー記事もあわせてご一読ください。D2Cブランドのさらなる理解に役立てば幸いです。

Marketing Native編集部

記事執筆者

Marketing Native編集部

Marketing Native(マーケティングネイティブ)は株式会社CINC(シンク)が運営しているメディアです。 CMOのインタビューやニュース、Tipsなど、マーケターに役立つ情報を発信しています。
Twitter:@market_native
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