[最終更新日]

2019/05/28

 

「情報解禁」する企業から終わる!良いモノを売るコツはお客さんを巻き込むこと 西野亮廣さんインタビュー(後編)

前回に続き、西野亮廣さんのインタビューをお届けします。前編では主にオンラインサロンについて伺い、運営は退会のさせ方が重要であることや、運営者にはN字の感情曲線の演出が必要であることなどを語っていただきました。

西野さんと言えば、絵本『えんとつ町のプペル』や、文字を贈るサービス「レターポット」、古本屋プラットフォームの「しるし書店」など、世間一般の概念を覆すような商品・サービスを提供していることでも知られています。

では、そんな西野さんが実際にモノを作ったり、届けたりするときには、どのようなことを意識しているのでしょうか?

インタビューの後編では、革新的な商品やサービスを打ち出す方法と、周囲を巻き込む秘訣に迫ります。

(取材・文:Marketing Native編集部・佐藤綾美)

画像提供:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

    

目次

アイデアが出るのは飲みの席

――西野さんのように既成概念を覆すような商品やサービスを作るには、どういった点を意識すればいいですか?

会社(※1)のチームのメンバーとやっていますけど、言うても個人のペーペーのベンチャーなので、まずは正攻法が無理だというところですよね。大企業が「あんなことをやってもおいしくないよな」とか「金にならねえよ」みたいなことをやっていかないと、そこくらいしか空いていないので。

で、それには段階がありますね。人数が増えて規模が大きくなれば、奇襲とか奇策はいらないので。作るサービスとかモノも、多分段階によって違いますね。最初はやっぱりベンチャーなので、ベンチャーらしい戦い方…奇襲とスピードで行くしかないですよね。

※1:株式会社にしのあきひろ。西野さんが2017年10月に立ち上げた。

――エッジの利いたサービスとかモノですか?

そうですね。「レターポット」なんて、大企業は絶対に作らないですよね。文字をお金にすることって、ほぼアートに近いので。基本的に、向こうしばらく10年はやらないだろうなってことですよね。「しるし書店」は多分どっかで誰かがやると思います。

画像出典:しるし書店

画像出典:レターポット

――アイデアが出るのは、いつもどんなときですか?

いつも飲んでいる席ですね。飲んでいる席で、「あれやろうよ」「これやろうよ」って言って。Web系だったらエンジニアさんにも投げて、「これ作って」って言うと、大体作ってくれます。偉い人に話を通さなきゃいけないってなったら、僕が飲みに行って、「いいっしょ!」みたいな感じで進めてますね。

――飲みの席でお話しする人は、どういった方々なんですか?

大学生から上場企業の社長、エンジニア、落語家、ミュージシャンまで幅広いですね。スナック「キャンディ」にみんな集まってしゃべって。いろんな人が集まっていますね。

――いろいろな人と話していく中で、インスピレーションを受けるんですね。

それか、編集作業ですね。つまり、自分1人だったら見えなかったけれど、これとこれを掛け合わせたら新しいモノができるよね、とか。大体そうですね。

『えんとつ町のプペル』も全部飲みの席で決まったっていう掛け合わせですね。6年か7年くらい前、ちょうどその時にクラウドファンディングと、クラウドソーシングがバッて来ていたので。家入一真さん(※2)がクラウドファンディングをやっていたし、クラウドソーシングはクラウドワークスの吉田さん(※3)がやられていて、飲みの席で、まず「クラウドソーシングって何ですか?」っていうところから、「それおもしれー!」ってなって。「じゃあ、クラウドファンディングでお金集めて、クラウドソーシングでスタッフを集めて、分業制で絵本を作ればいいんちゃう?」みたいなことを言ってできたのが、『えんとつ町のプペル』ですね。クラウドソーシングでイラストレーター特化型の「MUGENUP」という会社があって。そこの社長と飲みに行って、3万人のイラストレーターの中から選んで、チーム組んでやっちゃいました。

※2:家入一真(いえいり・かずま)さん。クラウドファンディング「CAMPFIRE」代表取締役CEO。
※3:吉田浩一郎(よしだ・こういちろう)さん。クラウドワークスの創業者であり、代表取締役社長兼CEO。

▲スナックキャンディ

画像提供:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

良いモノにするためにも30点で出す

――西野さんが良いサービスや商品を作るために、デリバリーの前に行っていることがあれば、教えてください。

世の中に30点くらいで出して、改修改善のスピードを上げる、PDCAをめちゃくちゃ速く回すっていう。そっちですね。

――サイクルはどれくらいで回すんですか?

むっちゃ速いですよ。数分レベルで改善改善って。吉本(興業)が絡んでいるやつはひどいんですけど(笑)。吉本とクラウドファンディングを作っているんですけど、そっちはスピード最悪です。一緒に絡んでいる人が決定権を持っていないっていう大企業病ですね。

画像出典:SILKHAT

あとは、30点くらいで出しても、怒られないキャラクターになっておくっていう。

「ごめん!」って言ったとき、ファンの方とかに「もう〜」で済ませてもらえるキャラクターになっておきます。生真面目なやつだったら、多分クレームとかが来ちゃうんで。そのコミュニティ作りとか世界観作りが、大事かもしれないです。

「レターポット」とか、最初スタートしたときはサーバーが落ちていたんですけど、夜中に落ちているときはサイトのトップページに貼り紙を出すんです。「開発リーダーに赤ちゃんが生まれたばっかりで、今寝ているから、朝になったら復旧やりますんで、ちょっとごめん。開発リーダーが起きるまで待っていてください」みたいな。ちょうど、開発リーダーが子育て中だったんですよ。赤ちゃんが生まれて1歳にならないくらいだったので、それを全部伝えて、トップページに貼り紙を出すんですけど、クレームが1件も来ない。クレームを言うほうがダサくなっちゃうんですよ。

その世界観をちゃんと作っておくって、大事やなって思いますね。要は、30点でサービスを出そうとすれば、絶対にサーバーが落ちたり、エラーがあったりするので。エラーしても許される、「しょうがねぇな」っていうところをちょっと練り込んでおかないと、30点で出すのは難しいですね。

情報解禁をなくし、お客さんと共創する

――西野さんは世の中にモノを届ける力があると思うのですが、デリバリーの部分で意識していることは何ですか?

まずは、情報解禁っていうのを終わらせる。情報解禁という文化を作ってしまった時点で、作り手とお客さんが完全に分かれちゃうので。

要は、お客さんに対して「あなた方にはまだ情報教えませんよ。なぜなら、あなた方はお客さんだから」っていう風になると、せっかくお客さんが発信力を持っているのに、その発信力を使えない。作っている段階からお客さんを巻き込んでしまって、ふにゃふにゃの状態から揉んで一緒に作っていったら、お客さんにとって自分たちの作品・商品になるから、「ちょっと使ってよ」って友達に言ってくれるわけですよ。

多分、情報解禁が捨てられない企業とかから潰れていくと思います。情報解禁っていうのは、発信力がない時代、SNSがない時代の道徳ですよね。本来売れていたはずのモノでも「何月何日発売」みたいな情報解禁のせいで、死んでいった商品とかサービスって結構あるだろうなっていうのがありますね。

でも、僕よりももっとおじさんと話すと、大体そこの情報解禁っていうブロックを外せないですね。完成品を見せたい、みたいな。つまり、100点になってからどうぞっていう。

昔は100点のクオリティが高かったんですけど、今100点のモノって、参加する余白がないので、クオリティ低いですよね。つまり、参加するスペースがない、100点のモノなんか出してしまったら、お客さんの満足度が下がっちゃうので。「私が言ってあげてん、この商品に。だから、よくなってん!」ていうモノのほうがいい。

「これが出たてのときは、ほんとに困ってね」的なことをお客さんに言わせてあげたほうが発信するし、満足度も高いので。100点のモノを届けようとした時点で、終わりかもしれないですね。

今だったら、自分は映画『えんとつ町のプペル』を作っているんですけど、全国の映画館で映画『えんとつ町のプペル』のストーリーをしゃべるっていうライブをし始めていて。つまり、映画を見るときには、お客さんもストーリーを知っているんですよ。知ってる物語の完成品をみんなが見にくるっていう風に持っていっているんです。

最初はほんと野面で、「こんなんで、こんなストーリーでね」ってしゃべって、1時間で終わるんですけど、また2カ月後とかにそのライブをするときは、「ストーリーは一緒なんですけど、ここのシーンが出来上がったので、ちょっと見て…」となって、だんだん仕上げていくんです。

映画ですら、そうしたほうが絡められる人数とか届けられる人数は、増えるだろうなっていうので、一番ネックというか、分かれ目は情報解禁だと思うんです。それを捨てられるか、捨てられないかっていうところで変わってきますね。

――お客さんと一緒に作って、当事者意識を持ってもらうってことですね。

そうですね。だって、変な話、CMとかもう見なくないですか?雑誌とかに入っている広告とかも見ないじゃないですか。あれって、全くの他人が作った100点のCMだと思うんですけど、自分とあまりにも関係なさすぎて飛ばすじゃないですか。

自分がそのCMにちょっとでも参加していれば、多分見ると思うんですけど。極端な話、CM撮影のエキストラで参加していれば、そのCMが流れるたびに、こうやって見るじゃないですか。

70億人に届けるよりかは、70億人で作ったほうが、70億個売れますよっていう話です。これが通用するのが、いつまでかはわからないんですけど、向こう5年くらいは多分こっちだろうなって。揺り戻しは絶対にあるので、「情報解禁まで秘密にしましょうね」「100点のモノを届けましょうね」っていう時代は絶対に来るんですけど、今はそっちじゃないですね。今はもう「みんなで」っていう風になっていますよね。

個の時代の次は集落の時代が来る

――名前の知られていない良いモノも多いと思うのですが、デリバリーのもっと前段階で当事者を増やすには、どうすればいいですか?

コミュニティに属すっていうのが一番手っ取り早いと思いますよ。

要は、今だったらオンラインサロンとかって、むちゃくちゃ利用したほうが良くて。吉本で作ったクラウドファンディングのサイトを見ているとすごくわかるんですけど、自分のオンラインサロンのメンバーだけ成功しているの。しかも、多分本来その人が持っているポテンシャル以上のお金が集まっている。

みんなは星の数ほどあるクラウドファンディングの企画の中から、「誰かには支援したいんだけど、どうせ支援するんだったら、僕たち・私たちが知っているあの人にしようよ」っていう流れになってきているので、つまり、オンラインサロンのコミュニティを利用してコミュニケーションを取りまくってやっている人が、コミュニティからめちゃくちゃ応援されている風になっていて。

僕が無名だったら、誰かのオンラインサロンに寄生して、むちゃくちゃコミュニケーションを取りまくって、どっかで卒業して、自分のやつを作りますね。

例えば編集者の箕輪さん(※4)だって、ホリエモン(※5)のコミュニティに入ってそこで頑張って、お客さんを引っ張って、落合さん(※6)のコミュニティに入ってそこで頑張って、引っ張って…っていう、みんな何かのコミュニティに入って、ずっとその繰り返しなので、そっちのほうが早いですよね。

最終的には自分のコミュニティがあったほうが強いとは思うんですけど、順番で言うと、すでにあるコミュニティに入っていっちゃうのがいい感じはしますね。

※4:幻冬舎の編集者、箕輪厚介(みのわ・こうすけ)さん。オンラインサロン「箕輪編集室」を運営している。
※5:堀江貴文(ほりえ・たかふみ)さん。会員制コミュニケーションサロン「堀江貴文イノベーション大学校」を運営している。
※6:メディアアーティストの落合陽一(おちあい・よういち)さん。「落合陽一塾」を運営している。

――無名で世の中に知られていない状態だったら、すでにあるコミュニティの中で頑張って、ある程度のパイを取ってから独立したほうがいいってことですね。

そうですね。そこからスタートしたほうがいいですね。

サロンメンバーの主婦がクラウドファンディングをやっていて、100万円くらい集めたんですけど、「雑貨屋を作りたい、内装工事にお金が必要だ」って理由で、クラウドファンディングの内容としては面白くないじゃないですか。「本来は友達何人かに支援してもらって、15万円集まったらいいほうじゃねーの」くらいのものだと思うんですけど、誰が支援したんだろうって調べたら、やっぱりほぼオンラインサロンメンバーだったんですよ。

彼女はそこで雑貨屋を作ってしまって、雑貨屋を作ったら彼女のコミュニティができると思うので、店の売り上げが入ってきたら、オンラインサロンを卒業してもいいと思うんですよ。あ、いてもいいんですけど、別に卒業しても問題ないっていう。

なんか、順番で言うとそっちな気がしますね。間違いなく今、個の時代みたいなのは終わりを迎えていて、次はもう集落の時代になる。前までは、会社とか芸能事務所、雇い主と雇われ側っていう縦のやつだったんですけど、そこから個が発信できるようになっちゃったから、個の時代が来た。でも、個の時代でみんながある程度のクオリティのモノを発信できるようになった。情報の格差もあんまりなくなりましたってなったら、個が発信するモノを選ぶ理由が、もう「ブランド」しかないので。

AさんとBさんがいて、同じようなモノを発信して、同じような値段ですってなったら、どっちを選ぶか?っていうと、「Aさんのほうが好きだから」とか、「Aさんのほうが前にお世話になったから」「Aさんのほうが、信用度が高い」みたいな、ブランドしかないんで。基本的にはAさんの名前が知れ渡ってないといけないってなったら、行動して集まって集落みたいになっちゃわないと、その個は最終的にブランドにはならないですね。

逆に集落を恐れてしまうと、ほんまにやばいですよ。多分、「それ宗教でしょ」って言って、ふたをしちゃうのが一番やばいです。

関わらないってすると、もう個で勝負しなくちゃいけなくなるんですけど、個が持っている情報とか技術は大して差がないから、集落の中でブランドを競うってなったら、集落の中にいるほうが選ばれる。だから、「宗教」っていう言葉でオンラインサロンにふたをしていると、やばいかもしれないですね。

一方で、本当にマズいオンラインサロンもあるから、ちょっとそれは見極めて、知っておかなきゃいけない。ただオンラインサロンということでふたをしちゃうと、すべてが終わってしまうから、それはやめといたほうがいいだろうなと思いますね。

――今後、集落の時代になっていく中で、西野さんはどのような像を目指していくんですか?

そうですね、やりたいことはいっぱいあるんですけど、次は不老不死ですね。死なないっていう。

「バーチャル西野」を作っちゃって、死なないっていうのをやってみよう、みたいな。最近、シャレでやってるんですよ。

ディズニーが作ったミッキーマウスは、時間とか場所を自由自在に飛び越えるじゃないですか。ギリシャに行って、その次はコロンビアに行って、3年前に行って、10年後に行ってっていう。

今だったら、作家本人がそれをできるなって思って。声を録って、テキストの癖とかも全部コピーさせてしまって「バーチャル西野」だけ作ったら、そいつに働かせて、しれっといなくなろうかなって(笑)

まだ、わからないです。理屈でいけているので、実現可能だと思うんですけど、やって面白いかどうかは、またちょっといってみないとわからないです。でも、「バーチャル西野」やりたいですね。あとは、サロンメンバーのみんなと作っている町ですね。

――町をもっと大きくしたい、ということですか?

大きくするのは別に後々でもいいですけど、もっと町が優しい感じにはしたいですね。なんでしょうね、子どもが安心して歩けるとか、物理的に交通事故が起こらないように設計するとか。

イタリアのベネチアは、車がそもそも入れないので、交通事故がないわけじゃないですか。でも、あれは何で車が入らなくてもいいかって言うと、水路で行けるからというのもそうなんですけど、一番はみんながあの町を「歩きたい」って思ったから。車に乗るよりも、歩いたほうが満足度が高いから。つまり「ゆっくり移動したい」と思わせたから、あの町には「車を入れよう」って話にならないわけじゃないですか。

車が入らないから交通事故がないわけなので、お父さんとお母さんは安心して子どもを歩かせられる。そういう町を作りたいなっていうのはありますね。別に時間がかかってもいいので、あんまり慌てて大きくするっていうより、ちゃんと地元の方と対話を繰り返して、「これ必要ですよね」「これ必要ないですよね」っていうのを繰り返して、優しい町をゆっくり作っていく。そういうのをやりたいですね。

――西野さん、ありがとうございました!

 

西野亮廣(にしの・あきひろ)
お笑い芸人・絵本作家。1999年に梶原雄太とともにお笑いコンビ・キングコングを結成。お笑いだけでなく、絵本の制作やソロトークライブ、舞台の脚本執筆、オンラインサロンの運営など、幅広い活動を行う。立ち上げたクラウドファンディングの合計調達額は2億円を超えると言われる。最新刊絵本『チックタック~約束の時計台』は4月18日(木)発売予定。

オンラインサロン|西野亮廣エンタメ研究所
西野さんが携わっているプロジェクトに参加したり、野次馬的に見届けたりできる会員制コミュニケーションサロン。
https://salon.otogimachi.jp/

[記事執筆者] 佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。Twitter:@sleepy_as

 

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