[最終更新日]

2019/07/30

 

オンラインサロン運営の鍵は「物語性」にあり!鎖国が感覚を研ぎ澄ます 西野亮廣さんインタビュー(前編)


キングコングの西野亮廣さんがMarketing Nativeに登場!西野さんは芸人としてはもちろん、絵本作家としても有名ですが、実は優れたマーケターと言える方でもあります。

そんな西野さんの活動の一環として知られているのが、オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」の運営です。西野さんがサロン運営を思い立ったのは、2015年末から2016年と、まだ黎明期の頃。ダイレクト課金の主軸としていた、クラウドファンディングの限界を予感して、お金やサービスの流れがお客さんと双方向になるサロン運営を思い至ったものの、当時は周囲にあまり理解されなかったと言います。

しかし、今では会員数2万人以上を誇る、日本最大級のオンラインサロンへと成長。世間も無視できないほどのコミュニティを構築するまでに至りました。一体どのような理論と行動によって、ここまで大きなオンラインサロンを育て上げてきたのでしょうか?

今回は、西野亮廣さんのインタビューを前編と後編の2回に分けてお届けします。
(取材・文:Marketing Native編集部・佐藤綾美)

画像提供:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

    

目次

世間の声は5~6年遅い

――西野さんのオンラインサロンは月額1000円とほかのサロンに比べて価格が安く、入会のハードルが低く感じられます。この価格に設定されたのはなぜですか?

価格設定なんだったっけな…まぁ、こういう仕事をしていて、それこそお客さんからお金を頂いて、生かしてもらっているので、まずは、「架空のお客さんの財布を作っておかなきゃいけないな」っていうのが一つあって。

つまり、お客さんであるAさんの月収がどれくらいあって、どういう生活をしていて、週にどれくらいお小遣いが使えて…ってそういうことを設定するわけです。そのときに一番ダメなのは、金額的にも時間的にも応援するのが疲れてしまう設定にしていたらダメだな、と。

なので、お客さんから頂いていいお金と時間っていうのは決まっているし、「それを超えちゃだめかな」って思っていて、その良いラインが1000円だったんですよ。

――その良いラインを見定めたポイントは何だったんですか?

いろいろですよ。例えば、どれくらいのペースで僕が本を出していて、ライブやクラウドファンディングはどれくらいの頻度でしていて、クラウドファンディングは一人頭大体どれくらい支援していただいていて…っていう複合的なポイントですね。

するとやっぱり、「応援するのに、月にどれくらいお金がかかるのか」っていうラインがある。当然、大学生とか主婦、起業家とかでラインは変わってくるんですけど、基本的にはその額を超えないようにする。で、どの層をちゃんと狙っているか。わかりやすく言うと、主婦がちゃんと応援できる額にしておこうって。

――オンラインサロンを始めたときに、「特にこの人たちに入ってほしい」というターゲット像はあったんですか?

それはあんまりなくて。だいぶ前だったから、ちょっと記憶もうろ覚えなんですけど、サロンについてあれやこれやと発信しているときに、世間からの横槍が結構すごかったんですよ。それが全部的外れで。的外れっていうか、なんか遅かったんですよ。

――遅かった?

そうですね。例えば、クラウドファンディングをやる。その当時の世間の声は、「宗教でしょ?」なんで。「悪徳なことなんでしょ?」「よくわからないけど、宗教に決まっている」とか。

次に「じゃあ、書籍を無料公開する」って言ったら、「そんなことをしたら売り上げが下がって、食いっぱぐれる人がいる」みたいな。世間の声って、大体5~6年は遅いんで。その相手をするのがもう嫌だな、と。

それで、「自分と同じ速度でちゃんと活動している人と会話をしたい」ってなったときに、エッジの利いたことをやろうとしたら、「一回鎖国みたいな空間を作らなきゃいけないな」と思って、オンラインサロンがいいなって。

江戸時代も完全な鎖国ではないと思うんですけど、ああいう時代に育った文化って、独特な浮世絵とか「その色とその色を合わせんの!?」みたいなのがありますよね。今は日本の文化って、着ている服とかあんまり欧米と変わらないですけど、江戸時代の日本って、むちゃくちゃ魅力的で。結局それが世界に勝っているんで、やっぱり鎖国性って必要だなと。エッジの利いたことをやろうと思ったら、鎖国しちゃおうと。

世間の人はやたらとみんなツッコミが好きなので…ちょうどTwitterとかが盛り上がっていたときじゃないですかね。タレントさんとかも激しいことができなくなって、どんどん普通の人になっているのを見ていて、「これはやばいな、とっとと鎖国しちゃえ」って思いました。

▲オンラインサロンのトップページ。

画像出典:西野亮廣エンタメ研究所

サロンの運営は退会のさせ方に鍵がある

――オンラインサロンに入る人・興味を持つ人は以前より増えていますが、一方で運営の仕方に疑問を投げかけるようなニュースが散見されるようにもなりました。西野さんは、きちんと運営できているサロンと、そうでないサロンの違いはどこにあると思いますか?

どこなんだろうなぁ。サロンのオーナーさんとお客さんが双方満足していたら、あんまり外野がとやかく言うことではないな、と思うんですけど。

基本的にオンラインサロンって、肌が合わない人が退会するわけじゃないですか。「なんかちょっと合わなかったな」「入ってみて合わなかったな」っていう。で、肌が合っている人は、そこに居続けるわけじゃないですか。退会した人は、TwitterとかFacebook、ブログとかインスタで退会理由を書きますよね。すると、どうしたってネガティブな情報が出回ってしまう。基本的に退会したら、「あそこが嫌だった」っていう話になってくるので、ネガティブな人しか発信していないっていう状態ですよね。

そうなってきたときに、サロンオーナーは、肌が合わなかった人に対してバンって切っちゃうとダメですよね。丁寧に退会していただく。退会のハードルをグッと下げてしまって、すぐ抜けられるようにしておいて、例えば強制退会であっても何度も話し合って、「サロンに入っていた時間は無駄じゃなかったな」って思っていただけるようにコストを割くっていう。大体下手なところは、退会のさせ方が雑です。

――雑というのは、例えばどんな退会のさせ方がありますか?

有無を言わさず強制退会っていう…ほんと「セックスし終わったから帰れ」みたいな状態ですね。すると、恨みに変わるんで。なので、多分オーナーさんがモテなかったらダメですね。そこのアフターケアみたいなところが一番大事なので、もう恋愛とかと一緒ですね。恋愛とか会社とか、すべての人間関係って結局別れ際なので。そこを安く見ちゃうと、結構火傷するなっていうのがあるので、大分時間を割きますね。場合によっては直接会いに行ったりします。

――西野さんが直接ですか?

はい。強制退会の場合は、その人のことが嫌いになっているわけではないので。ルール違反をした人には、DMでやりとりをして、それでも「この人腑に落ちていないな」と思ったら、会いに行って「こういう理由で今回は抜けてほしい」って言いますね。バッて切っちゃうと、なんで退会させられたのかよくわからないと思うので。

――会員数が増えてくると、結構大変ですよね。

まぁでも、だから犯罪が起こらないように町を作るっていう状態ですね。

面白いことをやりたいから自分でお金を作る

――オンラインサロンを運営していて良かったと思うことは何ですか?

良かった点だらけなんですよね。まずは自分の好きなことが言える。ストレスがたまらない。精神衛生上いいですよね。

最近はあんまりなくなりましたけど、Twitterとかで言ったら、「何言ってんの?」とか、「炎上商法ですか」みたいなことに大体なっちゃうんで。そういう面倒臭さがあんまりなかったので、精神衛生上いいっていうのが一つと、やっぱり、サロンの売り上げで次のエンタメに全額投資しているので、まず企画書を通すっていうことがなくなりました。

――以前は企画書を通す必要があったんですか?

例えばタレントにしても、番組にしても、企画が通らないと番組がスタートしないわけじゃないですか。企画書を通すことがなくなったので、自分がやりたいものをやれるっていう。

大前提として、企画書って通った時点で終わりで、通るような企画書って基本的に面白くない。おじさん、しかも大分偉い人がOKを出すものは、あんまり面白くないんですよ。10年か20年か、30年前の「面白い」で判子が押されてしまうので、企画としては面白くない。

優秀な経営者の方は、別に年齢関係なく「ちょっとよくわからないけど、行け」って言ってくださる方もいらっしゃいますけど、基本的には企画書が通った時点でもう終わりだなと思っていて。通らないような企画書をやりたいわけじゃないですか。

例えばそうですね、自分の場合だったら、絵本を1冊作るのに1000万円から1500万円くらいかかるんです。「もと取れんの?」って話になってくるので、本来は本にそんなにかけないですよ。とりあえず出版社に持っていって、「この本作るのに1500万円必要なので、1500万円出してください」と言っても、通らないので。

だけど、そういうものを作りたいから、通すために1500万円を使える自分たちになってなきゃいけないなって思っていて。エッジの利いたものが作れるので、自分たちがスポンサーになっているっていうのは、そこがいいですよね。

やっぱり日本が求めているものと、世界が求めているものは違います。例えば、日本がイケメン大集合みたいな物語を求めていても、企画書は通るけれど、「イケメン大集合を作りました。これを海外に売り込みましょう」って言っても全く売れないので。海外に売れないものを作っている場合じゃないなってなったときに、ちゃんとそこにつながるようなアクションをしようっていうのはありますね。

――今行われている活動の基本は、海外もターゲットにしたものなんですね。

海外とか、でたらめなことですね。「エンタメで世界を取る」とか言っちゃってるので、基本的には海外っていうのが一つ軸にあるんですけれど、一方で、美術館を作っちゃうみたいなでたらめなこともやりますね。

基本的に芸人って本来は美術館を作らなくていいはずなので…でも作っちゃう、みたいな。本来は「美術館作りたいんで、お金貸してください」って言っても、誰もお金は貸してくれないので。だったら、美術館作れるお金を自分たちで作ろうっていうことですね。

▲美術館のスケッチ。

画像提供:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

次にやるべきことは「死にかけるようなこと」

――西野さんのオンラインサロンはROM専(※1)の方も受け入れてから人数が増えて、2018年に会員数は2万人を突破しています。2019年で3万人、2020年までに10万人と、ご著書で目標を書かれていましたが、今後会員数を増やす上で考えている施策はありますか?

僕、2020年に10万人はいけるって言ってたんですけど、スタッフに「5万人弱で均衡点が来ますよ」みたいなことを言われて、一回そこで頭打ちするらしいんですよ。

伸びが止まるっていうのはデータが取れたので、そこからですよね。次は何かピンチになると思います。何かしらのピンチをちゃんと迎えて、そのピンチをどうやって乗り越えていくかっていう、死にかけるようなことを、多分年内か、年明けとか来年には一発やりますね。

※1:SNSやオンラインサロンなどで、見ているだけの人たちのこと。

――死にかけるようなこと、ですか。

そうですね。勝っちゃったらダメで、勝ち続けるとサロンメンバーも増えないんですよ。勝とうが負けようが、挑戦していて「来週どうなる?」をずっと続けていったほうがいいというのは、もうわかっていて。

自分が60点を取っていて、80点を取る能力があったら、その間に一回0点を挟んで、感情曲線を激しくしなくちゃいけないわけですね。結局はクオリティじゃなくて角度で、95点の人が96点を取るよりも、0点の人が30点を取ったときのほうが楽しいので。

角度をとにかくつけなきゃいけないってときに、「どっかのタイミングで、おまけしなきゃいけないな」っていうのがあって、その一つが美術館だったんです。最初は好感度が低かったんですけど、ずっとやっているうちに薄れてきて、しがめなくなってきて(※2)。多分、好感度みたいなものがちょっと上がっちゃったんだと思うんですよ。

「これはもうダメだな」と思って、次に負けなきゃいけないってなったときに、「ああ、借金だ」と思って美術館を作って。美術館って15億円も払わなきゃいけないんですよ。それって結構ピンチじゃないですか。でも、そこもあんまりしがめなくなってきていて、オンラインサロンの人数と月額1000円を計算されてしまうと、美術館の15億円だって「何年かで返せるんじゃないの?」っていう風に思われてしまうので。

もう、15億円もフックとしては弱いなと思っていて、もうちょっと死にかけるようなことですね。「あいつ、もう死んだな」っていうことを、年内とかに思いつかなきゃいけないですよね。でも、なかなか死ねないんですよね。借金で死ねなかったら、次はほんとに死ぬくらいのことじゃないと…物理的に死ぬような、身の危険じゃないとそういうことにはならないので、難しいんですよね。

※2:「しがむ」とは、噛み潰す、噛みしめるといった意味の方言。旨味が出るまで噛みしめること。

▲美術館の敷地で柵立てを行う西野さん。

画像提供:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

――15億円の借金を作ってもフックが弱かったので、死にかけるようなことをして、もう一段ブレイクスルーを狙うんですね。

そこのデザインですね。つまり、もう「サロンに入ったらお金持ちになれますよ」みたいな情報とかを売っている場合じゃない。

基本的に情報とか技術ってあまり売り物にならなくて、そんなものネットで調べたら出てくるし、もっと言うと、「お金を稼げる体になれますよ」みたいなことをうたい文句にしていると、どっちに転んでも結局辞めちゃうっていうところに着地するので。

サロンに3カ月入って、お金を稼げる体にならなかった人は「ならないじゃないか」って辞めちゃうし、なれた人は「なれました。どうもありがとうございます」って辞めちゃうので、スケールしていかないですよね。

サロンオーナーが売らなきゃいけないのは情報とか技術じゃなくて、さっき言った、「来週どうなる?」っていうサロンオーナーの物語ですよね。だから、多分勉強しなきゃいけないのは、経営とかそっちじゃなくて、漫画とか映画ですね。つまり、ヒット映画とかヒット漫画っていうのは、どういうロジックでヒットにつながるのか。

ヒットの型というのはあって、読者の方とかお客さんは主人公に感情移入するので、一番わかりやすいのは主人公の感情曲線ですね。最初、60点くらいでちょっと頑張っていて、強敵に出会って負けて、挫折して0点になって、仲間がみんな離れていって、そこからリベンジするっていう。こういうN字を描かなきゃいけない。

基本的に、ヒット漫画とかヒット映画はこのN字なので、サロンオーナーも同じようにやらなきゃいけない。そこを描くことを恐れちゃダメっていう。

難しいのは、起業家です。起業家は、勝っている数字でお客さんを呼んでいるので、感情曲線というか、勝ち負けをデザインしにくいんですよね。時価総額がいくらだとか、うちのサービスのユーザーが何万人だとか、勝っているところを前に出すので、負けているところを出すと、お客さんが離れちゃうっていう。

芸人は「これだけ負けちゃったよ」とか、「嫁に逃げられた」とか、「貧乏しちゃったよ」とか、負けているところを本来は売る生き物なので。そこを売って上がってきている生き物だから、芸人のほうがまだ負けに対して「結構ネタになるな」っていうのを体で覚えていて、そこに対してのブレーキがあんまりかからないですよね。

負けネタを売るのに慣れているので、結構ある程度のところに行ったら、バッて捨てて、飛び込んで行って「死ぬ!」ってことをやっちゃう。

――オンラインサロンは純粋な情報提示じゃなくて、ドラマを伝えていくのが大事なんですね。

そうですね、今、情報はどこでも手に入るので。僕だったら、みんなが有料でやっていて、売っているようなものは、ブログとかYouTubeで、無料でバンバン提供しますね。例えば僕のビジネス書とかも、ネットで無料で見られるようになってるんで。

情報でお金を取るっていうのは、もう大分前に多分終わっていて、次は情報で売っていた人が、どんな人生を歩んでいるかという体験になっちゃっている感じはしますね。

――ドラマを伝えていく以外に、具体的な成果物を作る力も大事でしょうか?

絶対大事ですね。それは、サロンメンバーを守るために大事っていうことです。成果物がないと、サロンメンバーが攻撃されてしまうので。

だから、はあちゅうちゃんとイケダハヤトさんのフォロワーの人は、執拗に攻撃受けちゃうんです。それに対してどんだけ理屈で言っても、もう無理で。

基本的に、人は論破できないです。人間は理屈で言っても、論破されている側は余計に恨みを持っちゃって、次はあの手この手で攻撃しちゃうんで。

「僕らはこれを作りました。あなたは何をしていましたか?」。もうこれで終わらせなきゃいけない。議論じゃないですね。

(後編はこちら


画像提供:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

西野亮廣(にしの・あきひろ)
お笑い芸人・絵本作家。1999年に梶原雄太とともにお笑いコンビ・キングコングを結成。お笑いだけでなく、絵本の制作やソロトークライブ、舞台の脚本執筆、オンラインサロンの運営など、幅広い活動を行う。立ち上げたクラウドファンディングの合計調達額は2億円を超えると言われる。最新刊絵本『チックタック~約束の時計台』は4月18日(木)発売予定。

オンラインサロン|西野亮廣エンタメ研究所
西野さんが携わっているプロジェクトに参加したり、野次馬的に見届けたりできる会員制コミュニケーションサロン。
https://salon.otogimachi.jp/

記事執筆者

佐藤綾美

佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。Twitter:@sleepy_as

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