O2Oとは「Online to Offline」の略で、日本語にすると「オンラインからオフラインへ」と訳されるマーケティング用語のひとつです。オンライン上の施策をきっかけに、オフラインの実店舗へ足を運んでもらうための施策を意味します。
O2Oに類似する言葉にはオムニチャネルやOMOがあり、近年注目を集めています。それぞれどう異なり、具体的にはどのような施策があるのでしょうか。
この記事では、O2Oの基本をあらためておさらいしつつ、オムニチャネルやOMOとの違いについても解説します。
目次
O2Oの押さえておきたい基本
O2O(オンラインからオフラインへ)は「OtoO」や「On2Off」と表記されることもあります。O2Oはどのような背景で浸透したのでしょうか。
O2Oとは?
O2Oとはインターネットから得た情報に興味をもった消費者を、店舗などのオフラインへと誘導する施策のことです。また、オンラインでの接触がオフラインでの購買行動に影響を及ぼすような施策をO2Oと言うこともあります。
O2Oが注目を集めるようになったのは、2010年前後のことです。もともとO2Oは、「ショールーミング」対策でもあったと言われています。ショールーミングとは、実店舗では商品を見るだけで、より低価格で購入すべくオンラインで検索する消費行動のことです。スマートフォンの普及に伴い、いつ・どこでもインターネットにアクセスして情報が得られるようになったことや、価格比較サイトの登場したことなどが、ショールーミングに拍車をかけたとされています。また、SNSの普及により、口コミを検索しやすくなったことも影響しているでしょう。
このようにオンラインへと消費者が流れていく一方で、接客や試供など実店舗でなければ実現できないサービスがあるのも事実です。例えば、次のような事柄は店舗でなければ体験するのは難しいでしょう。
- 気になるワンピースの色や着心地を試着で確かめる
- 雑貨屋で、友人への贈り物について、店員さんにおすすめのアイテムを聞く
- ゴルフクラブを試しに打って、重さや感触を確かめる
など
実際に商品を目にしたり、手に触れたりしてこそ、満足感が得られるケースも存在します。
O2Oの主な目的
O2Oの目的は、主に2つあります。新規顧客の獲得と再来店の促進です。
O2Oではインターネットの利用により、実店舗のことを知らない層や潜在顧客にもアプローチすることが可能です。そのため、O2Oの施策は新規顧客の獲得に有効と言われています。また、O2Oはプッシュ通知やクーポンの発行などにより、店舗への再来店を促すこともできます。
またオンラインの特徴を活かして明確な数字(売上や来店者数など)が記録されることも、O2Oの効果のひとつです。
O2Oの特徴
O2OはメールマガジンやSNSなどで顧客にアプローチし、即効性のある施策を打つことができます。例えば、利用期限を設けて実店舗で使えるクーポンを配布すると、その期間中に店舗へ訪れる顧客が増え、売り上げの増加につながる可能性があります。雨の日にお客様が少ないと感じたら、その場で限定のクーポンを配信し、来店を促進することもできるのです。
また、O2Oはマーケティング施策の効果を測定しやすいという特徴も持っています。オンライン上で行った施策の数値を計測できるのはもちろん、オフラインへどれだけ誘導したか測定することも可能です。例えばクーポンを発行した場合、実店舗で使用された件数を調べれば、施策の効果を測定できるでしょう。
O2Oの具体例
O2Oへの理解をより深められるよう、ここでは具体例を5つご紹介します。コストを抑えた施策を打てる点もO2Oのメリットです。
ECサイトと実店舗の連携
ECサイトと実店舗の連携は多くの企業で見られるようになっているのではないでしょうか。具体的な連携の仕方としては、ECサイトで購入した商品を店舗で受け取れるサービスの提供や、ECサイトと店舗の両方で貯まるポイントシステムの運用などが挙げられます。また、近年の消費行動には、Webサイトで商品の情報を検索し、実店舗で購入する「ウェブルーミング」もあり、ECサイト上で店舗の在庫を確認できるようにしている企業も見られます。
クーポンの配布
クーポンの配布は、「店舗限定」や「期間限定」などとすることにより、来店を促し、売り上げにつなげるのが目的です。メールマガジン会員限定のクーポンや、公式SNSで発行するクーポンなどの例があります。また、クーポンを活用し、既存顧客から新規顧客の獲得につなげる工夫も効果的でしょう。顧客が知人や友人を紹介することによって両者に発行されるクーポンなどがその例です。
SNSの活用
TwitterやInstagramなどのSNSを活用し、情報を発信するのも効果的です。例えば新商品やセールの情報を配信するのはもちろん、特定の投稿をシェアした顧客に特典を与える方法もあります。Twitterでフォロー&リツイートによりクーポンや商品のプレゼントを行っているツイートを見たことがある方もいるのではないでしょうか。SNSでは、うまく拡散することができれば、費用を抑えてより多くの見込み客にアプローチが可能です。
位置情報との連動
スマートフォンに搭載されたGPS(位置情報)と連動させ、来店を促す方法もあります。一般的な活用例は、顧客が店舗付近を通った際に、クーポンやポイントを付与するものです。付与するクーポンやポイントに利用期限を設ければ、利用の促進につなげることもできます。
QRコードの活用
QRコードのわかりやすい活用例が「LINEアカウントへの友だち登録」です。初回購入後のレシートやレジの横、店内のPOPなどにQRコードを掲載し、友だち登録を促します。登録してもらったユーザーにはクーポンやセール情報を発信し、再来店へとつなげるのです。
O2Oとオムニチャネル、OMOの違い
O2Oと同じく知られる用語にOMOとオムニチャネルがあります。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
オムニチャネル
オムニチャネルとは、実店舗やECサイト、公式アプリなど、オフラインとオンラインの境目なく顧客とのつながりを関連付けることです。複数のチャネルでアプローチすることにより、顧客はオンラインかオフラインかを意識せず、どのチャネルからも同様の購入体験が得られるようになります。例えば、次のようなイメージです。
- ECサイトで商品を検索し、在庫を確認
- 店舗に来店し、チェックイン機能でポイントを入手
- 店舗で商品を購入
- 商品購入時にスマートフォンアプリのクーポン、ポイントを使用
オムニチャネルは、顧客満足度の向上によってリピーターの増加が見込めるため、既存顧客の囲い込みを目的に実施されることが多い取り組みです。
OMO
OMOは「Online Merges with Offline」の略で「オンラインとオフラインの融合」と訳されます。オンラインとオフラインの境目をなくしてどちらでも同様のサービスを受けられるようにし、顧客体験の向上を目指す考え方です。OMOはO2Oとオムニチャネルを発展させた考え方とも言えます。
例えば、中国の有名なスーパーマーケット・盒馬鮮生(フーマーションシェン)では、商品棚のバーコードをアプリでスキャンすると商品の特徴やおすすめレシピを確認できるなど、オンラインとオフラインの垣根のないシームレスな買い物体験を提供しています。
3つのマーケティング用語をあらためてまとめると、次の通りです。
- O2O:オンラインからオフラインへと顧客を誘導する施策
- オムニチャネル:顧客と接点を持つチャネルを連携させ、アプローチする方法
- OMO:オンラインとオフラインのチャネルの区別なくサービスを提供する考え方
O2Oで店舗にしか実現できない価値の提供を
O2Oはオンラインからオフラインへと誘導するための施策です。コストを抑えて実施でき、即効性が高く、効果測定しやすいというメリットがあります。オムニチャネルやOMOとの違いも含めて、この記事が参考になれば幸いです。