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インタビュー

「COHINA(コヒナ)」の急成長を支えたInstagram活用のポイントとは?代表 ディレクター・田中絢子インタビュー

最終更新日:2023.05.23

COHINA代表 ディレクター

田中 絢子

InstagramをはじめとするSNSの活用によって急成長している企業があります。中でも身長155㎝以下の小柄な女性をターゲットにしたD2Cのファッションブランド「COHINA(コヒナ)」は、ライブ動画を活かしたInstagramの運用法で注目を集めています。

「COHINA」は2018年1月の立ち上げ後、2周年となる今年1月には売り上げが前年比220%成長を達成しました。では、「COHINA」はInstagramをどのように活用し、ビジネスを拡大してきたのでしょうか。今回は「COHINA」の代表でディレクターの田中絢子さんに話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集長・佐藤綾美、撮影:草葉あゆみ)

目次

参考にしたのはSNS世代に慕われる海外D2Cブランド

――「COHINA」を立ち上げた背景と、ブランド名の由来を教えてください。

「COHINA」を立ち上げたのは、身長や体型が壁になって、理想の自分になれないのはイケていないと思ったことがきっかけです。それは私自身の経験から生まれた考えで、私は身長が148cmと低く、普段から洋服選びに不便を感じていました。一般的なアパレルブランドでは、自分にぴったりのサイズの洋服を見つけるのがなかなか難しいんです。

私の周りにいた小柄な女性たちにも聞いてみたところ、同じように「身長が低いと何かと不便なことがある」「コンプレックスを感じる」という声が多くありました。身長は自分で選べません。だからこそ、小柄な女性たちが身長も自身の個性として楽しめるようにしたいと思って「COHINA」を始めました。2017年11月にプレオープンし、2018年1月に正式に立ち上げました。

ブランド名には、「小柄女性のための日向」という意味を込めています。

――「COHINA」はターゲットを155cm以下に絞っています。155cmで区切って設定したのはなぜでしょうか。

ターゲットの人たちに「小柄な女性向けのブランドであること」が伝わるギリギリの数字で、なおかつマーケットサイズがミニマムで担保されるラインを選択しました。

日本人の20~30代女性の平均身長は大体157~158cmです。私の身長である148cmに合わせたり、150cm以下にしたりすると人口が少なく、ターゲットが限られてしまうので、区切りもいい155cm以下に設定しました。

――消費者に商品を直接販売するD2C(Direct to Consumer)を選択した理由は何でしょうか。

D2Cをやろうと思って始めたわけではなく、結果的にD2Cと呼ばれるビジネスモデルにたどり着いた感じです。アパレル未経験の私には商品の生産元の伝手がなかったことに加え、いきなり店舗を出すような大規模な展開はできないと考えていました。また、大手ファッションサイトなどのECプラットフォームは出店するのに手数料がかかります。そうした理由から、まずは小ロット生産で小規模に展開し、慣れ親しんだInstagramを活用して自社サイトで販売することにしました。

――立ち上げの際に参考にしたブランドがあれば、教えてください。

当時、まだ国内には参考になるブランドがなかったので、海外のD2Cブランドを参考にしました。お客さまの声をもとに商品を生産する、SNS世代にとって親近感の湧きやすいビジネスの在り方に好感を持ったんです。

具体的には、ファッションブランドの「Everlane(エヴァーレーン)」やコスメブランドの「Glossier(グロシエ)」、シューズブランドの「Allbirds(オールバーズ)」などです。中でも「Glossier」はお客さまの「こんなアイテムが欲しい」という声をもとに誕生したブランドです。「Glossier」のInstagramにはお客さまからのコメントが多数投稿されていて、ブランド側が丁寧に返事をしています。Instagramを活用してお客さまとの日常的なコミュニケーションを上手に設計しているのが印象的でした。今年(2020年)1月に日本に上陸した「Allbirds」も、お客さまから寄せられた「定番商品の色違いでブルーが欲しい」という要望に対して、実際にブルーのシューズを作るなど、顧客観点に基づいて柔軟に商品開発を行う姿勢を示しています。

――立ち上げ当初、大変だったことやうまくいかなかったことはありますか。

最も苦労したのは商品の生産ですが、マーケティングの観点では、商品のラインナップと需要のバランスを取ってお客さまの満足度を上げる方法を考えるのが難しかったです。

最初は自社で企画し、製造するオリジナル商品のみで始めました。しかし、1つの商品につきミニマムで100枚は生産する必要があり、簡単にはバリエーションを増やすことができませんでした。しかし、お客さまにとっては、1種類の商品しかないよりも選択肢はたくさんあるほうがいいはずです。生産と需要のバランスをどのように取るか悩んだ結果、小柄な女性に合う服を韓国まで買い付けに行き、セレクト商品も小ロットで取り扱うことにしました。オリジナル商品だけでなくセレクト商品も扱うことによって、小ロット・多品種で商品を展開し、バリエーションを増やしたんです。

一時期はその方針で売り上げも順調に伸びていました。しかし、今度はセレクト商品のクオリティをコントロールできない点が課題となりました。お客さまに満足いただける品質、デザインの商品を販売するため、1年くらい前からセレクト商品の追加は止め、現在は完全にオリジナル商品だけを投入しています。

――初期はセレクト商品も販売されていたんですね。とはいえ、立ち上げから3~4カ月の時点で、服を購入しすぎてお金がなくなる「COHINA貧乏」という言葉がお客さまの間で使われるようになるなど、「COHINA」は早くからファンに支持されてきました。短期間でお客さまに支持されるようになった理由はどのようにお考えですか。

お客さまに、友達が頑張ってブランドを運営しているような感覚を持ってもらえたのではないでしょうか。商品を販売する前からInstagramを通じて情報を発信し続けたことにより、一緒にブランドを作っている感覚がお客さまの中に生まれたのだと思います。

Instagramを開設した当初は商品がまだできていなかったので、小柄な女性に役立つ情報を発信していました。例えば、私のその日の私服に関する情報などで、「今日は○○のSサイズを試してみましたが、ちょっと大きすぎて私には合いませんでした」「ここのブランドのSサイズの商品はぴったりで良かったです」などと投稿していくと、次第に反応が良くなり、フォローすれば小柄女子に役立つ情報が得られる「小柄女子コミュニティ」として認知されるようになりました。その結果、フォロワー同士で情報交換まで行われるようになり、自然とファン化の促進につなげることができました。

また、商品を作る過程をInstagramのライブ動画(インスタライブ)でリアルタイムに発信していたことも、ブランドとお客さまの一体感の醸成につながったと思います。

お客さまの意見からインサイトを見抜く

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・毎日数字と向き合い、ポストの内容を工夫
・Instagramの新機能をいち早く取り入れ、徹底活用
・オフラインでお客さまが商品に触れられる場を増やしたい

記事執筆者

佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。
X:@sleepy_as
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