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インタビュー

テレビ以外のマスメディアを作る!――映像ディレクター 高橋弘樹インタビュー

最終更新日:2023.06.10

Special Interview #14

映像ディレクター/『ReHacQ』プロデューサー

高橋 弘樹

テレビ東京時代に『家、ついて行ってイイですか?』や『吉木りさに怒られたい』などを企画・演出し、敏腕プロデューサーの一人として知られた高橋弘樹さん。

テレ東在職中にYouTubeチャンネル『日経テレ東大学』を立ち上げ、ビジネスパーソンを中心に100万人以上の登録者数を誇る人気チャンネルに育て上げました。

高橋さんは現在、ABEMAに転籍。同時に株式会社tonariを興し、YouTubeの映像制作に取り組んでいます。

人を惹きつける映像制作のポイントは何か。

今回は映像ディレクターで『ReHacQ-リハック-』プロデューサーの高橋弘樹さんに話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)

目次

数十万人の登録者数なら、自分がペルソナで十分

――テレビ東京を退職後も、YouTubeやABEMAなどに活躍の場を広げ、ますます意気軒高。YouTubeでは『日経テレ東大学』のヒットがあったとはいえ、新しく立ち上げた『ReHacQ -リハック-』(以下『ReHacQ』)もすでに登録者数が33万人を突破(2023年5月31日現在)。YouTubeを始めた当初はなかなか数字が伸びなくて、人気動画を見ながら勉強したと他のインタビュー記事で読みました。今あらためて、YouTubeで動画をヒットさせるポイントはどこにあるとお考えですか。

YouTubeはテレビと比較すると、アルゴリズムなどの“ルール”がしっかりしていて、戦略やマーケティングが効きやすい分野だと思います。テレビは放送すればいろんな家庭に流れるというマスメディアの強みはありますが、マーケティングが効きにくくて、キー局5局とNHKの中から視聴者がなぜその番組を選択したのか、実際はどんな人が見ているのか、どうレコメンドされたのかなど、今ひとつ判然としにくい業界です。

高橋弘樹さん

一方、YouTubeはテレビと比べると、マーケティングが効きやすいと感じます。大事なのは前提として、プラットフォームであるYouTubeに上げた動画を、いわばYouTubeさんという“人”が最初に全部見て分析した上で、その動画を好きそうな他の人にお勧めしている仕組みを理解しているかどうかです。そこをわかっていることがまず大切ですね。

――どんな数値をチェックしていますか。

視聴回数をはじめ、ひと通り全部の数字を見ています。例えば1時間の動画を何十%の人が最後まで見たか、どこで離脱したかという視聴者維持率は気になりますし、ほかにもインプレッションのクリック率など基本的なデータは全て分析しています。

――登録者数も気になりますよね。

登録者数だけを気にして追うことはあまりなくて、視聴者維持率などのデータ分析の結果と登録者数の伸びを比較して検証するのが基本です。

――テーマ選定や企画選びはいかがですか。面白い企画の発想力だけでなく、トレンドにいち早く飛びついて、すぐアップするスピードもすごいですよね。

マーケティングでは一般的にペルソナが重視されますが、私がディレクターを務める動画のペルソナは全部自分です。自分が作りたい、もしくは見たい以外のテーマはあまりなくて、強いて言えば、仮説で自分を少し横にスライドさせたペルソナは作ります。今の自分だけでは視野が狭くなりますから、例えば、「もし自分がスタートアップに転職したら」「もし自分が金融業界に就職していたら」「もし自分が女性だったら」などと考えて、見たい動画を作る感じですね。

ほかにも時系列で「もし自分が1カ月後にこういう選択をしていたら」「もし過去にこういう選択をしていたら」という発想で企画を考えることもあります。いずれの場合も価値基軸はあくまで自分です。そうしないと具体的なことや細部がイメージできない気がするので、そこは一貫してブレさせていません。

――自分が男なので、女性はイメージしにくくないですか。

女性は確かにやりづらい気がするので、周りにいる人から考えるようにしています。30代の女性なら妻かもしれないし、若い女性であればAKB48の番組を担当していたので、タレントという特殊性を引き算しつつ彼女たちを基に考えてみたこともあります。

――自分をペルソナにしていると、自分の感覚が外れていたり、ズレてきたりしたら厳しくなりませんか。

皆さん勘違いしている気がするのですが、よほど変な価値観の持ち主でない限り、自分が面白いと思うことに正面から向き合って真摯に作り続けていれば、少なくとも数万から数十万人は同じ考えの人はいるはずです。テレビのように1,000万人を目指すとなると、マス向けのマーケティングが必要になりますが、数十万人のレベルなら自分の興味のあることを貫けば何とかなると思います。

――マス向けになると、自分の好みだけでは間に合わなくなる、と。

マス向けの場合は、例えば旅行番組なら自分と自分の家族が興味津々の内容にする必要があります。自分も行きたいけど、妻も子供も楽しめるという視点ですね。でも、それは相当マス向けの発想だと思います。

高橋弘樹さん

エンディングのポイントは「覚えておいてもらう」こと

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・ショート動画のメリットと危険性
・自分が周囲を上回っていたのは、圧倒的な労働量
・演者ではなく、作り手でありたい理由
・『ReHacQ』とABEMAで、新たなメディアとコンテンツ作り

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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