インタビュー
2021.01.22

「『あざとくて何が悪いの?』をカルチャー史に刻まれる番組へ!」――テレビ朝日プロデューサー・芦田太郎インタビュー

Special Interview #10

テレビ朝日 プロデューサー

芦田 太郎

『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系列・土曜21時55分~ ※一部地域を除く)でプロデューサーを務める芦田太郎さんのインタビュー後編です。

後編では、芦田さんが入社したての頃、1秒でも早くディレクターになるために取っていた一種の「あざとい」行動と、現在プロデューサーとしての自分が部下からあざといアプローチを受けたときの考え方、さらに田中みな実さんが見せる天性のあざとさの凄みについて語ってもらいました。

ぜひご一読をお願いします。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、人物撮影:永山 昌克)

目次

認められたくてギンギンに尖っていた20代

――芦田さんご自身についてお話を伺いたいのですが、芦田さんはあざとさを見せることは得意ですか。

得意ではないです。「あざとい」と相手に思われた段階で、計算しているのがバレているわけですから、それはもうあざとさではありません。気づかれずに相手を気持ちよくさせるのがあざとさなので、そういう点で僕は得意ではないと思います。

――しかし過去のインタビューを拝見すると、すごく頑張って努力していることをアピールしていたんですよね。

あれもあざといというのかなあ…そうか、確かにそうかも。編成局長の西(新=あらた=取締役総合編成局長)さんが当時、僕の直属の上司で、すごく熱い方なんですけど、その頃、僕も西さんに認められて1秒でも早くディレクターになるために、ギンギンに尖っていました。

――どんなふうに尖っていたのですか。

当時、ゴールデンの番組にADで付いていたのですが、『めちゃイケ』を見て育った大学出たての23~24歳の人間が、情報番組などをやっていると鬱屈としてくるんです。「やりたいのは、こういうことじゃない」「バラエティがやりたい」と。本当はそこで頑張ることも大事なんですけどね。

僕が考えた企画を1秒でも早く実現させるためには企画書を書くしかない。それで西さんに「この企画、考えたんですけど」「また考えたんですけど」と、今考えると大学のサークルレベルの企画書なのですが、とにかく出しまくっていました。西さんは最初こそ「おお!今日も考えてきたか」という反応だったのですが、だんだん「お前さ、これ本当に考えている?」「ただ思いついたことを書いているだけだろ」みたいに言われだしまして(笑)。それでも諦めずに企画を出し続けていたら、次第に「芦田って、やる気はあるみたいだな」と覚えてもらえるようになりました。

そうすると、そのやる気がたまに引っかかって企画書が編成に上がり、「芦田ってヤツ、1年目なのに頑張っているな」「2年目にしてはやる気あるな」と目に留まるようになってきます。自分で言うのは恥ずかしいのですが、そんなふうに上司や周囲の人に名前を覚えてもらったり、「やる気のある人」という印象を与えたりする努力は、会社員としてとても大事なことだと思います。自分が若い社員と接していて、「あまりやる気なさそうだな」と思うと、そんな人に残業時間だけ増やされても困るし、無難な仕事しか振らなくなります。

――今、芦田さん自身が注目される立場になって、部下が「芦田さん!」と猛烈にアピールしてきたら、「あざといなあ」と思いませんか。

思わないですよ。自分の企画をやりたいという気持ちはすごくわかるので、むしろどんどんアピールしてほしいですね。でも、意外とそういう人は少ないかな。

どの部署も一緒かもしれないけど、バラエティは労働時間的な費用対効果が悪すぎて、やる気のない人にはただひたすら苦行だと思います。何となく仕事をする部署ではないですし、明確に志を持っている人と僕も仕事をしたい。だからやる気があることをアピールしてくれるのは、あざといというよりシンプルにうれしいですね。

田中みな実さんが見せる「プロのあざとさ」への驚きと尊敬

――部下やスタッフではなく、演者さんもプロデューサーの芦田さんに対してあざといパフォーマンスをしてくることはないですか。

これはもうネタですけど、田中みな実さんは本当にすごいですよ。彼女は番組のプロデューサー的役割も担っているので、僕にあざといことをする必要はないはずです。

ところが、コロナの前に一緒に食事をしたときも、自分が食べているものを普通に「はい、あーん」とやってくるんですよ(笑)。これはある意味感動しました。プロだなと。

また、先日、土日の4番組によるリレー形式のPR収録があったのですが、うちの番組は田中みな実さんがショートケーキを持ってカメラに「あーん」とやるのを撮ったんです。僕はカメラの後ろにいて、「はい、その角度」などと指示していたのですが、撮影が終わったら、技術も美術もスタッフがみんないるところで、ケーキを持ったまま「はい、芦田くん、あーん」とやってきたんです。いります、それ?(笑)。意味がわからない。周りも当然「おおーっ」ってなりますよ。

でもこれは多分、彼女としては、僕が田中みな実さんのことを好きになってほしいと思ってやっている行動ではないと思います。今さらそんな恋愛感情なんかいりませんから。だから本当にプロだと思いますね。悪気はなくて、染みついているんでしょう。

――みんなの前で田中みな実さんから「あーん」とされて、芦田さんはどうしたんですか。

いや、食べないですよ。断りました。そしたら変な空気になって、田中みな実さんに「なんなのそれ、ノリ悪くない?」と怒られたんですけど、食べられませんよ。

もちろん、男ですから悪い気はしません。でも、周囲にスタッフも部下もいるところでデレデレ食べていたら、僕はもう終わりですよ。だから食べなかった。でも、魂からのあざとさというか、あざとさのプロとしての立ち居振る舞いは尊敬のひと言です。

――芦田さんは昔から「あるある」的な視点を見つけるのは得意だったのですか。

得意かどうかはわかりませんが、人に対する興味が非常に強い点は自分の中で長所としてあると思います。そうでないと人に焦点を当てた『あざとくて何が悪いの?』も『あいつ今何してる?』も成立していません。

例えば、ADが新しく入ってくると、「出身はどこ?」「部活は何をしていたの?」「どんな映画が好き?」と質問攻めにします。それはビジネスに役立つからではなく、単純に人に興味があるからですね。

『あざとくて何が悪いの?』も僕なりの観察眼で捉えた女性たちを描いています。オンライン座談会で女性が話したちょっとしたエピソードを番組にすると、女性から「あんな一瞬の出来事をよく覚えているね」と言われることがありますが、人間観察の得意さが人を描く極致のような2つの番組作りに活きていると感じます。

カルチャー史に刻まれる番組への夢

――最後に『あざとくて何が悪いの?』をこれからどんな番組にしていきたいか、抱負をお願いします。

『あいつ今何してる?』はゴールデンの19時(18時45分)から放送していて非常に多くの方に見ていただけているのですが、僕らより下の世代がしっかり見ている21時以降の時間帯でもう1つ当てたいというテレビマンとしての想いがあります。

なぜそう思うかというと、大先輩である加地(倫三)さんが作り上げた『アメトーーク!』のようにカルチャー史に刻まれる番組を作りたいという夢があるからです。

具体的には、「あざとい」がトレンドとして流行語大賞を取ったり、何らかの価値基準を転換させるきっかけになったり、ほかにも才能ある若いタレントさんたちがこの番組からブレイクしたりなど、頭の中に思い描いているシーンを現実のものにしたいですね。

そのためにいろいろな仕掛けを考えています。例えば、初めてのデートで食事をするときの店選び、皆さん困りませんか?高すぎても引かれるし、その後の展開を露骨に感じさせる店も選びにくい。アプリで検索しても、ちょうどいい店を見つけるのはなかなか難しいですよね。そんな初回のデートで行きやすい店を「あざといい店」と名づけて、「あざログ」みたいに紹介していければ面白いな、とか。

ほかには、連続視聴を促すために連ドラを撮っています。毎回1話完結の再現ドラマではネタのストックもキツくなってきますので、1週7分くらいの尺で5、6話で完結するドラマを作っていきます。第1弾には乃木坂46の新センター山下美月さんを抜擢させていただきました。

あとは、『サタデーステーション』(土曜20時54分~)終わりの男性視聴者の流入を獲得するために、「おじさん構文」の企画を考えています。「おじさん構文」とは、おじさんたちが若い女性に送る、変な絵文字なんかを使ったキモいLINEやメールのことです。

それを「明日から使えるおじさん構文講座」という感じにして、若い女性タレントさんたちに添削してもらって、どうすれば不快に思われないか、セクハラ扱いされないか、男性視聴者に正解を示してあげるわけです。

20代の女の子に「おじさん構文ある?」と聞くと、スクショされたキモいLINEやメールがビックリするほどたくさん来ます。個人情報なのでそのままは載せられませんが、ネタはたくさんありますし、めちゃくちゃ面白いですから、それをコーナーとしてやっていこうかなと考えています。

皆さんもキモいLINEを送って女性に引かれていないか、気をつけたほうがいいと思います(笑)

――はい、気をつけます。本日はありがとうございました。 

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Profile
芦田 太郎(あしだ・たろう)
テレビ朝日プロデューサー。
1985年東京都生まれ。早稲田大学卒業。2008年テレビ朝日入社。以来、『雑学王』『爆笑問題の検索ちゃん』『ナニコレ珍百景』『関ジャニの仕分け∞』『関ジャム 完全燃SHOW』など主にバラエティ番組の制作を担当。現在『あいつ今何してる?』『あざとくて何が悪いの?』の演出・プロデューサーを務める。

早川巧

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
Twitter:@hayakawaMN
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