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インタビュー

noteプロデューサー/ブロガー・徳力基彦が語る「コロナ禍で問われたメディアの本質的な価値とは?」

最終更新日:2023.05.23

Special Interview #09-01

noteプロデューサー/ブロガー

徳力 基彦

2020年は何という激動の年なのでしょうか。

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、外出自粛を余儀なくされる中で、人々の生活や生き方、働き方は、有形無形、規模の大小を問わず、何らかの形で影響を受けています。

三密回避、マスクを手放せない生活、それに伴う事業への影響、有名人の突然の死と、わずか数カ月前には想像もできなかった急激な変化に直面し、今年後半以降、どんな事態が待ち受けているのかと不安を覚えている人も少なくないでしょう。

そのような状況をメディアやコンテンツ制作に携わる人たちはどう捉え、これからどのように行動を改善していくべきでしょうか。

今回はnote株式会社でnoteプロデューサー/ブロガーを務める徳力基彦さんに、ウイルスと共存する時代に求められるメディア、コンテンツの在り方と可能性について話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、人物撮影:豊田 哲也)

目次

「会いに行く文化」の終焉とデジタルシフト

――緊急事態宣言の解除から1カ月半が経過し、人々の生活、考え方、働き方において変化したところ、元に戻ったところと、それぞれの形がおぼろげに見えてきました。「ニューノーマル」という言葉もよく目にしますが、ここまでの流れをどのように見ていますか。

現在進行系なので総括的な話をするのは難しいですが、何かが変わってしまったのは間違いないところです。

人と対面で話をしたり、握手をしたりすることが、誰かの命を危険にさらすリスクのある行為となってしまった現実は、意識するしないにかかわらず、多くの人の精神面に少なからぬ影響を与えていると思います。では、ワクチンや治療薬が開発されれば完全に元の生活に戻れるかというと、そうではなく、ビジネスを営む我々はもう元には戻らない前提で考えておく必要があります。

――具体的にはどのような変化が起きるとお考えですか。

誤解を恐れずにひと言でまとめると、「デジタル」というキーワードに総括されます。テクノロジーの進化によって、今、リアルとは別の世界がデジタル上に存在しています。

日本は国土が狭く、交通網が発達していますので、これまではデジタル技術を使わなくても、消費行動に大きな支障は生じていませんでした。ビジネスシーンにおいても、直接会って打ち合わせをするのが一般的で、例えば「東京―大阪」間を新幹線で日帰り出張することに何の疑問も感じなかった人は多かったと思います。

私はもともとNTTでテレビ電話システムの法人営業をしていたのですが、「会いに行く文化」の日本では、絶対に流行らないだろうと当時、考えていました。現在でも、コロナが流行する直前までは、ビデオ会議システム自体は進化しているのに、多くの人たちが出張で日本中を往来していました。それがWebサービスのセールスであったとしても、クライアントから「一度弊社まで説明しに来てください」と対面でのコミュニケーションを求められてきたわけです。とにかく詳しいことは会ってから話しましょう、会うまでは信頼できませんというのが、日本のビジネスで慣習になっていて、そこに問題意識を持つ人はそれほど多くなかったと思います。

そのため、技術自体はビジネスコミュニケーションに十分耐え得るレベルまで進化していたにもかかわらず、デジタル化の進捗は企業の規模を問わず、遅れている状態でした。企業だけでなく、学校も同様です。

ところが、コロナ禍の到来で、デジタル化を事前にどこまで進めていたかが、企業の明暗を分ける1つのポイントになりました。もちろん、業種や職種にもよりますが、デジタル化を進めていた企業の多くはそれほど決定的なダメージを受けていないし、中には業績を大きく向上させたところもあります。

私はここにヒントがあると思います。インターネットの普及から約30年が経ち、人類の叡智としてデジタルの世界を成立させる技術や手段をすでに手にしていたにもかかわらず、これまではリアルの世界に依存しすぎていました。このまま元の生活に早く戻ることを期待し、変わることなく手をこまねいていると、気がついたときには取り返しのつかないことになっているおそれがあります。

一方で、デジタルをフル活用すれば、リアルにかなり近いレベルのコミュニケーションやビジネスができますし、飲み会だって成立します。コロナウイルスに対する有効な治療薬が出てくるまで、リアルで会うのは、いわば「究極の贅沢」になるでしょう。

今、日本企業、日本人全体がデジタルシフトに本気で取り組むべきタイミングだと思います。そして、デジタル上でコミュニケーションを完結させても会社が成長することを示し、コロナ禍というネガティブインパクトをポジティブに変える努力をすべきです。

これを半年前に言っていたら鼻で笑われたに違いありません。今、それくらい急激な変化に直面しているということです。

リアル同様の臨場感を実現するデジタルの可能性

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・求められるビジネスの価値と存在意義の再定義
・コロナ禍で向上した既存メディアの信頼性
・不毛なPV獲得競争から抜け出す取り組みを

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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