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マーケティング

LTVの計算方法|重要性とLTVを高める5つの方法

最終更新日:2022.06.06

スタートアップやベンチャー企業、中小企業を中心に、安定した企業経営を行う指標の一つとして「LTV」という考え方が重要視されるようになりました。特にSaaSでは一般的な指標となっていて、経営層だけでなく、マーケターなら知っていて当然の考え方になっています。

LTVとは何か。LTVを上げるにはどうすれば良いのか。この記事ではLTVの基本と計算方法、最大化するポイントを解説します。

目次

LTVの基本

そもそもLTVとは何か、その意味と重要視される背景、効果を解説します。経営者のみならず、マーケターの方にとっても必要な知識なので、理解しておきましょう。

LTVとは?

Life Time Value(ライフ・タイム・バリュー)の略称で、「顧客生涯価値」と訳します。「生涯価値」なので、まだ取引していない、未来の取引で得られる利益も加味して考えるので、顧客がサービスの利用を開始してから終了するまでの期間に、自社にどのくらいの利益をもたらすかを測る指標として使われるのが一般的です。そのため事業計画の策定や見直しの際の判断材料としてLTVはよく利用されます。

当然のことながら、顧客ロイヤルティの高い顧客ほど自社にもたらす利益が高く、LTVが大きくなる傾向になります。

LTVが重要視される背景

新規顧客の獲得にかかるコストは既存顧客よりはるかに大きいのが一般的であることや、継続的な定額課金によって利益を生み出すサブスクリプション型のビジネスモデルが注目されていることなど複数の理由が挙げられます。

顧客ニーズの多様化や購買行動の複雑化などを背景に、新規顧客獲得の難易度が上がる中、顧客視点でのマーケティングの重要性にあらためて注目が集まり、顧客一人ひとりのロイヤルティ向上に役立つCRM(顧客関係管理)システムやカスタマーサクセスの活動の重要性も指摘されています。

LTVがもたらす効果

顧客一人当たりの獲得のためにどの程度の費用(CPA)が必要なのかがわかります。上限CPAの計算式は「LTV×粗利率=上限CPA」です。例えば、LTVが10,000円、粗利率が10%の場合、上限CPAは「10,000円×10%=1,000円」となります。このことからもLTVが高くなればかけられる費用も多くなることがわかります。

また、顧客セグメントごとに施策の評価や比較も可能になります。例えば、顧客セグメントを30代と40代で比較するとします。30代の利益が1000万円で顧客数は100人、40代の利益が3000万円で顧客数は500人の場合のLTVは、30代は1000万円÷100人=10万円、40代は3000万円÷500人=6万円となるため、40代の方が利益をもたらしてくれているように見えて、実際には30代の方が一人あたりの利益が多くなっています。費用対効果の最大化という課題に取り組むために利益率の向上は必要な指標となります。

LTVの計算方法と注意点

ここでは基本的なLTVの計算方法やSaaSに適した算出方法、さらに注意点を紹介します。いずれも重要な計算式なので、この際、覚えておきましょう。

LTVの計算式

・原価や経費を考慮してLTVを算出したい場合の計算方法

LTV=顧客の年間取引額×収益率×顧客の継続年数

顧客一人のLTVを算出する理想的な計算式となっています。しかし、個別にLTVを算出しての対応は、経営の観点からも現実的ではありません。その場合、顧客全体平均から計算する方法を以下に紹介します。

・基本的な計算方法

LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間

平均値を計算するときに用いられることが多い計算式です。しかし、売り上げのみの算出となりCACが考慮されていません。そのためLTVからCACを差し引いた計算方法を次に紹介します。CACとは「Customer Acquisition Cost」の頭文字を取った用語で、「顧客獲得単価」と訳します

・顧客の獲得と維持にかかった費用を差し引く計算方法

LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間-(顧客獲得コスト+顧客維持コスト)

CACを意識し、費用対効果を可視化できることがこの計算式のメリットです。

・サブスクリプション向けの計算方法

LTV=平均顧客単価×平均継続期間×契約数×(1-チャーンレート+新規契約獲得率)

この計算式に購買頻度が入っていませんが、理由は機能別に価格設定されたプランが前提のサブスクリプションモデルに、頻度という概念が適さないためです。

LTVを計算するときの注意点

・臨機応変に計算式を変える

自社の商品やサービスの特性に合わせてLTVの計算方法を変えることが重要です。LTVの計算方法は一人の顧客の生涯価値を割り出すことができれば、計算式にこだわる必要はありません。また、LTVの計算方法は場面ごとで変わることもありますが、顧客数と売り上げがわかれば必要最低限のLTVは計算できます。事業のビジネスモデルに適したLTVの計算式を定めていく必要があります。

・LTVの数字を信じすぎないこと

LTVはさまざまな要因が絡み合って変化します。トレンドの変化や商品に少し手を加えただけで影響が生じます。顧客の生涯価値をいかに上げるかに気を取られすぎると、LTVを上昇させることが最優先の思考になりがちです。そうではなく、LTVは顧客満足度を向上させた結果として上昇するものだと捉えるのが良いでしょう。

LTVを最大化する6つの方法

LTVを最大化する方法を6つ紹介します。値上げすると一見、数字上は良くなりますが、チャーンレートが上がって逆にLTVが落ちてしまう可能性があります。根底にあるのは顧客視点の重要性です

大手企業や有名企業と取引する

BtoBの場合、低単価の商品を扱うスタートアップやベンチャー企業、中小企業と取引するより、大手企業、有名企業と取引したほうが個々の商品、サービスが高額な分、LTVも最大化できます。そのためには大手企業、有名企業と取引できるだけの信用とクオリティを自社が備える必要があります。

商品の単価を上げる

単純に値上げするだけではチャーンレートが上がるので、商品にプレミアムの付加価値を付けるなどして、より高価な商品購入へと導く方法がよく取られます。また、まとめ売りやセット売りも効果的で、定期商品の場合は1回目や2回目の単価を調整する方法もあります。

その際、アップセルやクロスセルの考え方を知っておくのも良いでしょう。アップセルは、ユーザーが普段購入している商品の上位のものを購入してもらうことを指します。上位の商品は値段が高いので、平均購入単価が上がります。クロスセルは、ユーザーが普段購入している商品に関連している別の商品を購入してもらうことを指します。ユーザーによっては上位商品を必要としていないことも多くあります。そういった場合には、すでに所有している商品に関連する商品やサービスをおすすめすることで、購入確率を上げます。これらはマーケティングオートメーション(MA)ツールを導入すると効率的に行えることがあります。

購入頻度(リピート率)を上げる

より多くの商品を購入してもらうのも有効です。ただ、購入後のアフターフォローが重要で、商品のなくなる頃に追加購入のお知らせをしたり、類似商品への買い替え時にメルマガなどで促したりします。これは基本的にBtoB、BtoCを問いません。顧客に負担を感じさせない頻度で、顧客が欲するような内容とともにユーザーとの接点を持つことを意識することで顧客ロイヤルティを高め、リピート顧客を増やすのが大切です。「ファン化」とも言われ、商品の機能性だけでなく、商品の背景にあるストーリーで顧客を魅了する手法も近年、一般的になりました。ファンを多く作ることで、競合より優位に立てたり、参入障壁を高くしたりもできるので、顧客と良好な関係性を築くためにも丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。

継続期間を延ばす

サブスクリプションや商品の単品を定期的に販売するコースなど、取引期間の最低ラインを契約で設けるのもよくある方法の一つです。新商品のお知らせ、価格の見直し、セール情報などを必要に応じて顧客の元に送ることでも、ユーザーをアクティブにする効果があります。そういった意味ではメルマガやステップメール、リマインドメールも同様の効果をもたらす場合があり、細やかなおもてなしを継続することで顧客にお得さや特別感を持ってもらうことも継続率向上に役立ちます。

顧客獲得・維持コストを下げる

LTVを上げるためにはコストを下げるのも施策の一つです。単純に、広告のクオリティを上げてCPAを下げることができればLTVは上がるので、スピーディにLTVが改善されます。ただし、コストを下げることでサービスクオリティが下がり、顧客ロイヤルティの高い方を逃してしまうおそれがあるので、注意が必要です。

チャーンレート(解約率)を下げる

LTVを低下させる最大の要因が解約です。解約のタイミング(利用開始、利用状況の変わり目、問い合わせ時)では適切な対応が必要となります。場合によっては、これらのタイミングで何らかのインセンティブを提供するのも良いかもしれません。もちろん、そうした小手先の策よりも優先すべきは、商品やサービスのクオリティを上げ、顧客満足度を向上させる取り組みです。

LTVの視点で既存顧客と良好で長期的で関係構築を

LTVは顧客との良い関係を長期的に構築することを前提とした重要な指標です。日本は人口減少で、物欲の低い社会になっており、新規顧客の獲得よりも既存顧客のリピート顧客化を重要視するのは時代背景に合った考え方とも言えます。LTV向上を経営課題の重要事項と捉え、マーケティングでどのように貢献できるかを考えてみると良いでしょう。

記事執筆者

Marketing Native編集部

Marketing Native(マーケティングネイティブ)は株式会社CINC(シンク)が運営しているメディアです。 CMOのインタビューやニュース、Tipsなど、マーケターに役立つ情報を発信しています。
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