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インタビュー

ロボット業界の風雲児GROOVE X・林要社長が求めるグローバルCMOとは?(後編)

最終更新日:2022.05.13

Leaders' Session Room #01

GROOVE X株式会社 代表取締役社長

林 要

株式会社CINC 代表取締役社長

石松 友典

前編に引き続き、GROOVE X株式会社・代表取締役社長の林要さんと、弊社代表取締役社長の石松友典との対談をお送りします。後編では、海外展開に向けてのマーケティング戦略や、林さんの求めるCMO像についてお聞きします。

(構成:Marketing Native編集部・岩崎多、人物撮影:稲垣純也)

目次

    海外展開に向けての2つの課題

    石松友典(以下、石松) 続いて、海外でのマーケティング戦略についてお聞きします。LOVOTをグローバル展開していくにあたって、どのような課題があるとお考えですか?

    林要さん(以下、林) グローバルマーケティングにおいての課題は大きく2つあると思います。1つは前回も申し上げたように、動画や静止画を見ただけの先入観でLOVOTを判断されるという、国内同様の現象が海外でも想定されることです。これを最小限に抑えるためには、実際に触れていただくタッチポイントを増やしていくことが喫緊の課題として挙げられます。

    もう1つは、他の国でLOVOTのコピー商品を先に出されてしまったら、コピー商品のほうがオリジナルになりかねないということです。私どもは日本から新しい産業を作り出すという強い信念を持ってLOVOTを開発しました。他の国が最初に作った製品を日本が改善するものではありません。世界に向けて「日本発」をアピールしていくためには、いかに「オリジナルは自分たちだ」ということを認知させられるかを重要視しています。

    この2つの課題を解決するためには、なるべく早いタイミングで、世界の主要都市でLOVOTを発売することが大切です。この場合、ポイントは国ではなく、都市ベースでの展開です。というのも、ひとつの国で全体的に販売網を作り上げようとすると、必要以上に準備に手間がかかり、スピーディーに進まないことが予想されるからです。都市単位でクイックに動くことで、LOVOTのオリジナル性を効率的に伝えられると思います。

    一方で、最初のコピー商品が出るまでには、それなりの時間がかかるだろうとも考えています。これまでも、ロボットやスマートフォン、自動車などさまざまなジャンルでコピー商品が作られ、急速に浸透していきました。ただし、最初のコピー商品が作られた後の拡散スピードは速いのですが、最初のコピー商品が作られるまでには時間がかかるものです。

    LOVOTの場合は、商品の形状だけはコピーできたとしても、中のシステムまで含めて模倣するのは、かなり難しいと思います。コピー商品と正規品の差が小さくなるまでにはかなりの時間がかかるはずなので、その間に私たちは次のステージへと進化しているでしょう。とはいえ、グローバル展開を早めに行うことが大切だという認識に変わりはありません。

    石松 日本の場合、製造業を中心に、開発とセールスが比較的分断された状態でマーケティングを行っている状況が目につきます。一方、グローバル企業の場合、CMOが先導して全体的な販売戦略を組むことが多いかと思います。LOVOTに関してのマーケティングは、社内ではどなたが先導されて、戦略立案から施策の実行まで担当していらっしゃるのでしょうか?

     今のところ全体最適のマーケティング施策という意味では、私が見ている状態で、それに合わせてPR担当やマーケティング部のメンバーが、各自の担当業務をそれぞれ行っている状況ですから、今まさに私より経験が豊富なCMOを募集したいと考えているところです。LOVOTは、商品の差別化ができているため、もともとのPRバリューが高く、一つひとつの活動がメディアで大きく取り上げられてきました。

    今後は、9月の販売開始や10月の出荷開始に向けたマーケティングを戦略的に進めることで、さらにレバレッジをかけていく必要があります。PRから販売までを一気通貫で行うことが求められるため、外部の専門家の方にも入っていただいて戦略を随時更新中です。ただ、社内にも取りまとめ役の必要性を強く感じているところでありまして、グローバルマーケティングができるCMOを募集しています。

    ▲ハイテクノロジーが用いられているものの、親近感を持ってもらうため「全然すごくなさそうに見えるよう努めた」というLOVOT。開発時の貴重な資料の一部は、LOVOTミュージアム内で見ることができます。 LOVOTミュージアムでは毎週末、実際にLOVOTに触れ合える体験会を開催しています。Webサイトから事前予約も可能です。【開催時間】毎週金曜18~21時、毎週土日10~18時(12~13時、15~16時は休憩) 【開催場所】GROOVE X株式会社 LOVOTミュージアム 東京都中央区日本橋浜町3-42-3 住友不動産浜町ビル7階 (最寄駅:浜町駅、水天宮駅、人形町駅) アクセスの詳細はhttps://groove-x.com/access/で確認できます。

    CMOに求められる2つの条件+α

    石松 マーケターとCMOの役割の差はどこにあるとお考えですか?

     一番大事なのはPL(損益計算書)に責任を持つことです。そのためにも、デジタルからリアルまで一気通貫でできて、コンバージョンのさせ方まで考えられる人であることが必要です。

    例えば、先ほど申し上げたLOVOTのタッチポイントで言えば、設置場所、資本投下ポイント、その地点における集客数やコンバージョン率の分析、認知度や売り上げをさらに高めるための施策などを俯瞰的に分析できる人です。この時点で、かなり候補者は限定されるだろうと思います。それらの点を踏まえた上で、グローバルな視点で戦略を立案し、施策を実行できることが、私どもが求めるCMOの条件になると考えています。

    さらにもうひとつ大事な条件があります。それは、新しい産業領域を作り出せる人ということです。新しい製品カテゴリーを作ることだとも言えるでしょう。

    多くのマーケターやCMOの方にとっての課題は、既存カテゴリーの中で自分たちの商品や会社をどう差別化するかだと思います。それに対して、LOVOTはすでに商品自体の差別化はされているものの、その製品カテゴリーは市場にまだ存在しません。

    したがって、LOVOTのマーケティングは、どのようにしてお客様にLOVOTの魅力をゼロからご理解いただくのかという地点から始まるものになります。カテゴリーのない新規事業になるため、経験者も多くはいらっしゃらないと思いますから、経験よりも学習スピードの速い方を求めております。私どもの状況を学んでいただき、常識の裏に隠された課題を発見し、仮説を作ってトライをするというPDCAサイクルを、スピーディーに回していただける方が必要です。

    石松 海外への進出タイミングは、具体的にいつ頃を検討されていますか?

     国内での発売から1年後には、グローバル展開を考えています。

    石松 なるほど。それでは早々に、国内とグローバルの両軸の戦略を同時に考えていかなければいけないわけですね。

     はい。そう考えますと、グローバルマーケティングに強い興味を持っている方でないと難しいと思います。その上で、私どもがこれから立ち上げる新しい産業領域全体の戦略や戦術に興味がある方ですね。例えば、元マクドナルドCMOの足立光さん(*)のような方が理想です。

    *足立光:元・日本マクドナルドCMOで、AR企業ナイアンティックのシニアディレクター。「Marketing Native」ではインタビューを掲載中です。
    元マクドナルドCMO足立光が教える「CMOになるために大切なこと」

    「目を見ながら、高い高いをしてあげるとLOVOTがだんだん興奮してきますよ」 石松「本当に喜んでいるような目をしますね、可愛いなあ」

    LOVOTのソフトウェアにはまだ伸びしろがある

    編集部 編集部からもお聞きしてよろしいですか。現状で足りないものがあるとしたら、何でしょうか?

     足りないものですか……。グローバル展開を十分にできるお金がさらにあれば嬉しいですね。

    石松 お金と時間ですか?

     さらに人も増えれば嬉しいです。全てのスタートアップの共通の悩みですね(笑)

    編集部 「新産業を作り出す」なんて、相当大変なことだと思うのですが、あらためて自信の程を教えてください。

     たとえ私どもが成功しようとしまいと、この領域は最終的には、非常に大きなグローバル産業となるでしょう。その意味では、新産業を確立するまでの道のりは、すでに見えています。もちろん、新産業の立ち上げは生ぬるいものではありません。例えば、先ほどから申し上げているような「お客様が画面を見ただけで、わかった気になってしまう」という問題の解決には時間もかかるでしょうし、さらに知恵を絞る必要があります。この先1~2年は苦労する可能性がありますが、そこを乗り越えてしまえば、これまで投資してきた産みの苦しみがご褒美となって返ってくる時期に突入すると考えております。

    石松 林さんのコンセプトとGROOVE Xの皆さんの不断の努力により、LOVOTはここまで高性能の製品になったと思います。今後もLOVOTの内部のソフトウェアがアップデートされることで、例えば感情がよりリアルになるなど、さらに進化することも可能かと思いますが、その点はいかがでしょうか?

     実はLOVOTのハードウェアの構成は非常にリッチなんです。正直なところ、まだソフトウェアがハードウェアの性能を十分使いこなす状態にまで至っていないほどです。言い換えれば、伸びしろが非常に大きいということです。現状でも皆様には「期待以上だった」と高評価をいただいていますが、さらに人との関係性や親和性がより高まるようにアップデートしていく予定です。

    また、アップデートについては、インターネットにつないだ状態にしておくだけで、ソフトウェアが勝手に更新されて成長していくように設計してあります。アップデートを意識せずに済みますので、結果として、生物の成長と同様の自然な形で、LOVOTも進化していきます。

    石松 AppleのiPhoneのように、LOVOTというプラットフォームに対して、新機能となるソフトウェアが次第に作られていくということもあるのでしょうか?

     そうですね。そのあたりの進化もご期待いただけたらと思います。

    石松 非常に楽しみです。本日はありがとうございました。

     ありがとうございました。

    【編集部からのお知らせ】
    GROOVE XではグローバルCMOを募集しています。ご興味がある方は、ぜひお問い合わせください。

    林 要(はやし・かなめ)
    1973年生まれ。トヨタ自動車やソフトバンクを経て、2015年に「ロボティクスで、人間のちからを引き出す」をミッションにGROOVE X株式会社を創業。約57.5億円に及ぶ巨額の資金調達を完了させて、LOVEをはぐくむ家族型ロボット「LOVOT」を開発。2019年9月より販売開始予定。著書に『ゼロイチ』(ダイヤモンド社)がある。

    石松友典(いしまつ・ゆうすけ)
    1980年生まれ。外資系の大手証券会社ソシエテ ジェネラル証券、JPモルガン証券などを経て、IT業界に魅了されてWebマーケティングの世界へと入る。2014年、コンテンツマーケティングを行う株式会社Coreを創業。2019年、CINCに社名を変更。ビッグデータとテクノロジーを駆使したソリューション企業へと事業拡大中。

    岩崎多

    記事執筆者

    岩崎多

    いわさき・まさる 出版社2社でビジネス誌やモノ・グッズ誌の編集、週刊誌の編集記者を経験し、2019年1月CINCにジョイン。編集長として文房具ムックシリーズを立ち上げ、累計30万部以上を記録。 Twitter:@iwasaki_mn
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