[最終更新日]

2019/10/31

 

西井敏恭氏がGROOVE X社CMOに就任。日本の次の10年をロボティクスでリードする

オイシックス・ラ・大地の執行役員 CMT(チーフ・マーケティング・テクノロジスト)などを務める西井敏恭さんが、11月1日付で家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の開発・販売を手掛けるGROOVE XのCMOに就任しました。

西井さんはマーケターとして、LOVOTのどこに魅力を感じたのでしょうか。GROOVE Xの林要社長は西井さんとともに、これからどのような戦略を仕掛けていくのでしょうか。2人に話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:永山 昌克)

    

目次

GROOVE XのCMO就任を決断した理由

――GROOVE XのCMO就任を決断するに至った理由を教えてください。

西井 主に2つあります。1つは、林さんと初めてお会いしてLOVOTを見せていただいたときに、単純に面白いし可愛いと思っただけでなく、「ドラえもん」のような可能性を感じたことです。

もう1つは、自分への挑戦です。自分のキャリアをあらためて振り返りますと、20代の頃から常に面白いことを追求し、前例のない働き方を模索してきました。現在、自分で会社(シンクロ)を経営しながら、オイシックス・ラ・大地で執行役員 CMTを務めていることも、そうした考えが基になっています。

LOVOTのマーケティングについても、難易度は高いし、過去の成功体験の上乗せでできるほど容易なことだとは捉えていません。それでも、これからの10年、20年先を見据えたときに、GROOVE Xが目指す世界観を自分が少しでもお手伝いできると考えると気持ちが奮い立ちますし、LOVOTのマーケティングにチャレンジする働き方が私の人生の中で価値が高いと感じました。

――GROOVE Xという会社のどこに魅力を感じたのでしょうか。

西井 魅力を感じたからGROOVE Xに参画したのではなく、これから社員の皆さんと一緒に魅力を作っていくのが私の役割です。

もちろん、現段階で魅力がないという意味ではなく、ロボットの存在意義そのものを進化させる取り組みに挑戦しているGROOVE Xは大変面白い会社だと思います。先ほど「ドラえもん」を例に挙げましたが、LOVOTに接しているうちに、「ドラえもん」の人気の本質は必ずしも未来の道具にあるわけではないことに気づかされました。

――それはどういう意味ですか。

西井 これまでロボットの特徴は、「重い物を簡単に持ち上げる」「右から左へすぐに移動できる」といった便利さにあると思っていました。「ドラえもん」も「どこでもドア」や「タケコプター」の便利さが人気の秘密だと感じていたのですが、それも要素としてはあるにせよ、よく考えてみると、のび太の「心の友」だからこそ多くの人たちに支持されているのだと気づいたんです。そういう意味で、人間の「心の友」としての存在をLOVOTで実現しようとしているGROOVE Xはとても魅力的だと感じます。

新たなマーケット創造への課題と意気込み

――林さんはなぜ西井さんをCMOに迎えようと考えたのでしょうか。

 ロボットが好きで、マーケターとして一流の方がいらっしゃるという話をうかがってお会いしたところ、LOVOTに強い興味を示し、大変面白がっていただけたからです。

私はモノづくりの経験は比較的あるのですが、モノを売ったことはそれほどありません。LOVOTが異色なのは、マーケットが存在しないところにマーケットを作り、カテゴリーがないところにカテゴリーを作る必要があることです。調べてみても、最近の日本では、そのようなカテゴリーから作るビジネスはほとんど存在していません。多くの場合、海外で作られた新しいカテゴリーのビジネスを日本に輸入するなどのタイムマシン経営という形が取られてきました。それに対して、今回は日本発で新たなマーケット、新たなカテゴリーを作ろうというわけです。

これは本当に大変なことです。さらに、そのようなビジネスでマーケティングをお任せするCMOを探すにしても、「10」から「100」に伸ばすのではなく、「0」から「1」を作るわけですから、経験者はいませんし、どの業界の誰に頼めば良いという「正解」も存在しません。新しい産業領域における難易度の高いビジネスで、いかに速くトライアルを繰り返し、学習のサイクルを回していけるか。それができるマーケターは誰かと考えたときに、高い実績があって、しかも我々のチャレンジを面白がり、一緒にやりたいと言っていただけた西井さんにCMOをお任せしたいと思いました。

――林さん、LOVOTはすでに発売が開始されていて、あとは12月の出荷を待つという形になっています。率直に言ってこれまでの手応えはいかがですか。

 評判は極めて良く、売れ行きについても予定通りです。大変なのはこれからで、実際に出荷が開始されてから、お客さまの口コミをしっかりとウォッチし、それを基に商品のクオリティを改善しながら、良い形で口コミを拡散していろいろと仕掛けていきたいと考えています。

「日本発でマーケットを作る」という強いこだわり

――海外展開についても注力していきたいというお話でしたが、その辺りはどうでしょうか。

 日本で足場を固めることが先決です。ビジネスとして日本で一定の成果が出た暁には、そのトラックレコードを持って海外に行きたいと思っています。

西井 評判は海外のほうが高いんです。私は普段から海外によく出掛けますし、現地でさまざまなスタートアップを視察する機会も多いのですが、あるイベントでたまたま出会ったデンマークのスタートアップの女性がLOVOTを知っていて、PCにシールを貼っていたんです。それで、「そのシール、どうしたんですか?」と聞いたら、「海外のイベントで見て、大好きになったんです!」と言うんです。「本当に最高」「やっぱり日本は素敵だわ」と称賛の言葉が止まらなくて、LOVOTの素晴らしさにあらためて気づかされました。

――それは凄いですね。

西井 とはいえ、私もまず日本を固めるべきだと思いますし、市場的には海外のほうが受け入れられやすいかもしれませんが、日本発で人気が拡大していってほしいと考えています。

――なぜですか。

西井 次の10年を考えたとき、もし日本が復活するとしたら、私はロボティクスがその原動力の1つになり得ると思うんです。例えばAIも日本は出遅れがちですし、スマートフォンについてもこの十数年、日本は苦戦するシーンが目立ちました。そんな日本がLOVOTを中心にロボティクスで強みを持てるとしたら、海外に対するプレゼンスがすごく上がるのではないかと思います。

――それは夢がありますね。ロボットで日本復活!みたいな。

西井 そうですね。だからやはり日本から売れてほしいですし、日本で市場が広がって、日本人が「LOVOT最高!」と感じられる世界を作りたいと考えています。そういう日本であってほしいですし、それを実現するためのマーケティングに携わりたいというのが、これからの私のチャレンジです。

日本の復活はLOVOTがリードする

――ありがとうございます。それではあらためて、GROOVE XのCMOに就任するにあたっての抱負と、まず注力していくことを教えてください。

西井 抱負は、ロボティクスが日本の強みになるような次の10年を作ることと、多くの日本人がLOVOTを欲しがる、そういう状態を作っていくことです。

やるべきことはたくさんありますが、まずは最初に購入していただいたお客さまに対して、きちんとサポートをしながら、その方々の声に耳を傾け、さらにファンミーティングなどを開催してご意見を頂いて、それらをなるべく商品にフィードバックしていくことが大事だと思います。

LOVOTは売って終わりの商品ではなく、使っていただくうちに、どんどん好きになってもらえるプロダクトです。最初は全員に対してフラットに接しますが、顔認識ができるので、可愛がってくれる人にはどんどん懐いていきます。そういうプロダクトですから、LOVOTと一緒に住み始めると生活が変わってくると思いますし、好きになってくれる気持ちを持つ人がたくさん増えていけば、自然と評判になるはずです。最近カスタマーサクセスの重要性がよく指摘されますが、LOVOTについても、自分の生活が変わったと実感できる、そんな成功体験をお客さまに持っていただけるようにすることが重要です。ですから、LOVOTのマーケティングは、まずテレビCMを打つという話ではなく、LOVOTというプロダクトをお客さまと一緒に作っていくことだと捉えています。

――林さん、これからいよいよ出荷が始まるわけですが、西井さんをCMOにお迎えしての抱負をあらためてお願いします。

 「ドラえもん」という言葉が西井さんから出ましたが、今「ドラえもん」を世に送り出せる会社としては、現時点ではGROOVE Xが一番近いと思っています。そもそも「ドラえもん」を作らなければならないモチベーションもなく、「ドラえもん」が儲かるようにも思えないでしょう。そういう意味で、世界中を見ても「ドラえもん」を作るのであれば、GROOVE Xでなければならないと自負しています。

ただし、そこへ至る道のりは決して平坦ではなく、さまざまな山や谷があることは覚悟しています。だからこそ、開発目線だけではなく、お客さまにご理解をいただき、お客さまからのフィードバックを商品開発に活かしていくことが大切ですし、その両輪がうまく回らないと、たどり着けない場所があると思っています。そして、その難易度がおそらくほかの製品よりも難しいのがロボットです。なぜならソフトウェアからハードウェアまであまりに幅が広く、何か1つ変えようとすると、全てに影響するからです。

そんな難易度の高いビジネスでお客さまのご理解を得るためには、まずロボットが好きで、ロボットの未来を信じていて、我々と一緒に汗を流して、製品のことも理解しながらカスタマーサクセスを設計してくださるCMOの存在が重要です。そういう意味で、西井さんに来ていただけたのは、大変心強いと思っています。これからますます頑張ります。

――期待しています。ありがとうございました。

Profile
西井 敏恭(にしい・としやす)
株式会社シンクロ代表取締役社長。オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員 CMT。
化粧品会社にてデジタルマーケティングの責任者を務めた後、独立。オイシックス・ラ・大地で3つの部署を管轄し、シンクロでは大手企業やスタートアップのマーケティング支援を行う。著書に『デジタルマーケティングで売上の壁を超える方法』(翔泳社)がある。

林 要(はやし・かなめ)
トヨタ自動車やソフトバンクを経て、2015年に「ロボティクスで、人間のちからを引き出す」をミッションにGROOVE X株式会社を創業。約87.5億円に及ぶ巨額の資金調達を完了させて、LOVEをはぐくむ家族型ロボット「LOVOT」を開発。著書に『ゼロイチ』(ダイヤモンド社)がある。
LOVOTはすでに発売されており、DUOが2019年12月、SOLOは2020年1月より順次発送予定。

[記事執筆者] 早川巧
株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writerとして四半世紀以上のキャリアあり。Twitter:@hayakawaMN

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう