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2020.05.14

「NEWWORLD2020」開催レポート総合版「立ち上がるマーケター、そして新たな時代へ」

「#NEWWORLD2020」(株式会社ホットリンク主催)は、開催期間7日間、申し込みが4,500名、連日のクチコミ数は1,000件という自粛期間中におけるマーケティング関連のオンラインカンファレンスとしては最大級の規模となりました。

Marketing Nativeでは初日の模様を「速報版」としてお伝えしましたが、大型連休明け後には、気温の上昇とともに街にビジネスパーソンの気配を確かに感じられるようになり、コロナ後の世界へ向けた力強い足取りが聞こえ始めました。

今回は既報の初日を除き、ゲストが登場した2日目から6日目までの中から、これから先の取り組みを中心に、編集部として特に印象に残ったお話を選んでご紹介します。

速報版も含めてあらためて読み通すと、さまざまな意見に接することができます。マーケターとしてこれから仕事をしていく上で、気づきを得られたり、指針の構築に役立てたりしていただけることがあれば嬉しく思います。

(取材・文:Marketing Native編集部、画像提供:ホットリンク)

※掲載は順不同

※速報版はこちらから。

目次

マーケターに求められる3つの行動

鈴木健さん
(ニューバランスジャパン マーケティング部 ディレクター)

自由と責任のバランスが問われる

リモートワークになると、自分の自由な時間が増える。自由度が上がると、仕事によっては副業ができたり、マルチタスクで社会に貢献したりできる機会が拡大するだろう。

一方で、スキルの自主管理が求められ、責任も上がる。これまでは基本的に会社に行っていれば給料をもらえたが、アウトプットだけでなく休憩時間の過ごし方まで責任を持って自主管理できないと、自由とのバランスが取れない。個性やスキルを活用して最大限社会に貢献してほしいと思う一方で、セルフコントロールや責任の度合いが重くなるという自覚が重要になるだろう。

新たな価値創出への取り組み

マーケターのコミュニケーションの一番のオーディエンスは社員で、二番目が顧客。消費者のことを考えるのはもちろん大事だが、自分たちが何を考えているかをきちんと伝えると社員も安心するし、ロイヤル顧客の人たちにも響く。自分たちの思想や考えていることを形にして発信することが大切だ。

次にすべきは自分たちの提供する価値を見直し、それを基にどのようなビジネスを継続できるかを考えること。個人レストランが閉店せざるを得なくなったときに、食材やレシピの販売で事業継続を図る事例が以前紹介されていたが、そういう発想だ。10個つながっていた価値を1個ずつバラバラにしたり、2個つないで売っていくようなアイデアの提案がマーケターに求められる。

この2つが生き残るために必要なことだとすれば、3つ目はコロナで変わってしまった世界に対して新しいビジョンを提示することだ。新たな世界における価値創出は難しい課題だが、自分も取り組んでいる。

主語はコロナではなく「お客さま」

木村まさしさん
(オールユアーズ代表)

商売の本質は変わっていない

誤解を生む表現かもしれないが、コロナさえもひとつのトレンドだと感じる。商売の本質は変わっていない。自分たちのお客さまは誰なのか、どうしたら喜んでいただけるのか。そこを追求する本質は同じであり、変わったことだけでなく、変わらないことは何かを考えるのが大事だ。今課題になっているのは、これまでのやり方は通用しないということ。本質を見失わずに自分たちがどう変われるか、軸を移さずに表現、アウトプットをどう変えていくかが重要だと思う。

お客さまはコロナではない。コロナを主語にしていると、どんどん動けなくなっていく。変わらないのはお客さまのことを考えること。コロナではなくお客さまを主語にしたときに、今何ができるかを考え、みんなで一緒に取り組んでいけば、良い方向に進むと信じる。

ブランドの在り方を再定義する

越智将平さん
(ナノユニバース経営企画本部WEB戦略部部長)

店舗の価値再評価への期待と準備

みんな口をそろえてECと言うが、店舗に行けないからECが売れるという単純な話ではなく、ECの力を磨く必要がある。

僕らみたいなブランドは、存在そのものを見つめ直さないといけない。全国展開をしているファッションブランドは、いろいろな地域にチャネルをつくることでブランド性を保っていたところがある。それがECだけになったときに本当に保てるのかというテーマを突き付けられている。

店舗は表現の場としてさまざまなことが可能だ。店舗で表現できていた世界観をECで実現できるのか、しっかりと考えないと、ブランドに対する世の中の認識が変わっていくのではないか。もっとユーザーに近いブランドであるという世界観を作るために、ブランドの在り方を再定義していく必要がある。

一方で、変わらない面もあるだろう。EC化が進めば店舗がなくなるかと言えば、そんなことはないはず。今回初めてECで洋服を買った人も多いだろうが、同時に「ネットで買ったらやはりサイズが違った」など、お客さまをハッピーにしていないことも多発しているのではないか。だから、店舗で試着して確認してから買いたいという当たり前のことが再評価されると思う。変わらないこと、店舗としての価値をもう一回見つめ直しながらafterコロナに取り組んでいく。

透明性が信頼獲得のポイントに

松尾茂起さん
(ウェブライダー代表取締役)

ロジカル+エモーショナル

SEOコンテンツはロジカルさが重視されている。僕はロジカルさにエモーショナルな要素をかけ算する、寄り添い型の言葉の使い方が重要になると思う。

その上で、SNSを活用してコンテンツを作っている会社や人の素性、印象を伝えていく必要がある。SEOの世界は、検索意図を分析してみんな同じことを書いているから記憶に残りにくい。知りたかった情報にたどり着ける一方、情報収集で完結して、オウンドメディアやブランドが意識に残らない面もある。

その欠点を補うのが、SNSでタッチポイントを増やすことだ。検索意図を意識して完成度の高いコンテンツを作ることは変わらないが、その中からコンテンツをひとつずつ抜き出して、SNSやYouTubeに横展開することで、どこにいってもその会社のコンテンツに遭遇するという状況が作れれば、「この会社のコンテンツはいい」から「こういうコンテンツを作れるのはいい会社だ」になっていける。

さらに、最近僕たちは「透明性」を大切にしている。透明性とは、記事や商品が完成に至るまでのプロセスを見える化することだ。文脈や背景の情報が伝わりにくくなると、今まで見せていなかった情報を開示してバランスを取ることが大切になる。

お客さまの中には、僕たちがミーティングしているだけの様子を収めたYouTube動画を見て、「こんな感じでミーティングをしているのなら安心できる」と評価していただき、受注につながったことがあった。見える化して透明性を高めることが信頼獲得という点でも重要になるだろう。

困っている人たちを助ける行動が未来につながる

江藤美帆さん
(栃木SC マーケティング戦略部長)

地元やサポーターへの感謝を新たに

もともとホームタウン、地元自治体の大切さはわかっていたつもりだったが、あらためて自分たちのビジネスがどのように成り立っているのか理解できた。サッカーができるのはご支援いただく企業さまや、見に来てくださるサポーターが健康で元気な状態でいられるからこそ。私たちも地域の方々を支援する活動を行っている。皆でコロナを乗り越えた後に試合を見に来ていただければと思う。

Jリーグの開幕は、無観客試合になる可能性がある。観客を入れられたとしても、満員のスタジアムでの興行は当面難しいのではないか。収容率を40~50%で開催しなければならなくなると、今季は非常時として対応できても、来季も続く場合、チケットの値段を上げざるを得ない気がする。そうなると気軽に観戦に行けるものではなく、プレミア感のあるエンターテインメントになっていくかもしれない。

栃木SCの新しいスタジアムは27,000人収容で、J2のスタジアムとしては大きい。席を埋めるために招待券を配布するなど、チケットの価値が下がるようなマーケティングをせざるを得ないところがあったが、席数が絞られて、収容率50%という対応が求められるようになると、有料のお客さまの率が上がる。そうなるとチケットの価値も上げられるので、集客、マーケティングという点で席数の限定はポジティブな面もあると考えている。

また、バスケットボールのBリーグで無観客試合が行われたときに、投げ銭のシステムが一部導入されているのを見た。試合観戦に行けなくてもライブ動画を見ながらワンタップで簡単に投げ銭して応援できるのなら、プラットフォーム手数料の課題はあるものの、機能するのではないかという期待もある。

人のため、周りのための行動を

自分よりも人のため、周りの人のために動いておくことが未来につながるのではないか。震災のときもそんな感じだった。生きるために必要な自己防衛をしつつ、周りで困っている人たちをサポートしながら明るい未来へつなげていきたい。

営業に行く前に勝負を決める時代に

枌谷力さん
(ベイジ代表)

フルオンラインにおける考え方と行動

在宅勤務の拡大に伴い、デジタルトランスフォーメーションから1ステップ先のフルオンラインの世界が広がっている。デジタル化に遅れていた企業にとっては、いきなり2ステップ先のフェーズに直面していることになり、厳しさを感じているところもあるだろう。

フルオンラインは、アナログの合理化であるデジタルトランスフォーメーションではなく、既存セオリーの破壊だ。物理的制約から解放され、現実空間と仮想空間の主従が逆転している。それはこれまでも一部で起きていて、例えばポケモンGOは、ゲーム内の体験を心地よくするために、人が公園に集まったりすることがある。これは仮想空間の中で優位に立つために現実空間の行動を決める動きであり、それがゲームだけではなく日常の仕事や生活に起きているというわけだ。

今後さらに、オンライン上でのやり取りや立ち居振る舞いによって評価され、仕事につながる状態が続くと、オンラインでより良い体験をしたり優位に立ったりするために現実世界の行動を決めるという考え方や動きが浸透するだろう。

リモートワークでコミュニケーションが活性化

固定観念を壊していかなければならない。これまでリモートワークはどちらかというと反対派だったが、むしろコミュニケーションは活性化している気がする。ベイジ特有の言語化する文化も、リモートワークにしたからといってなくならないだろう。GoogleやSalesforceの企業文化を人と会うことで感じているかというと、そうではなくオンライン上の情報だけで感じ取れている。だから生活も働き方も「これでいい」「こうでなければいけない」という固定観念を壊しながらやっていく必要がある。

コンテンツとソーシャルがBtoBマーケのポイント

仕事をお願いする際は3要件を満たすのが基本だ。3要件とは、価格や納期などの「必須要件」、独自性や優位性、効果、実績に当たる「機能要件」に加えて、信頼性や印象の良さといった「情緒要件」である。情緒要件はこれまで営業パーソンが対面で担う部分が大きかったが、オンラインによって表現しにくくなった。そのため、オンライン営業のテクニックを磨きつつ、営業に行く前に勝負を決めるのが重要になるだろう。

それを支える肝になるのがコンテンツとソーシャルだ。良質なコンテンツと強いアカウントを作り、SNSでの影響力を高めることが大切だ。特にBtoB系の企業は良質なコンテンツの作成に加えて、他社との差別化という点でSNSは未開の地であり、そこで影響力を高められる企業が有利になる時代が来ると感じる。

顧客を勝たせないと未来はない

阿部圭司さん
(アナグラム代表取締役)

商売の本質を見つめ直す

短期、長期両面で売り上げに結びつきにくい指標は排除され、商売の本質をあらためて見つめ直すことになるだろう。ブランドも売り上げも顧客満足度の観点だけでは不十分で、本来の意味でのカスタマーサクセスが求められる。社員にも「顧客を勝たせないと未来はない」と話している。CPA至上主義ではないが、ROAS(広告費用の回収率)を見てすべての手を打つようなレベルにしないと、代理店、コンサルが生き残るのは難しい。

思想型ビジネスが注目される時代に

比較検討のような行動は今後縮小化し、代わってD2Cに代表される思想型のビジネスが優位になる時代が来ると考えている。

店舗型のビジネスは大きく変わる。店舗は三密になってしまうところが多く、付随するビジネス、不動産、オフィス、人材、交通、流通など人の流れがすべて変わる。店舗内の動線設計も難しい。そんな時代の到来に合わせて消費がどう変わっていくのかを見極めなければならない。

さまざまな意見があり、問題も多いが、決して悲観的ではなく、「チャンスだ」とポジティブに捉えている。僕らは今「やってやるぞ!」という気持ちに満ちている。

今までにない地殻変動が起きている

西井敏恭さん
(オイシックス・ラ・大地執行役員CMT)

EC業界にとっての衝撃

20年近くECに関わっているが、今までにない地殻変動が起きている。例えばLOVOTの価格は約30万円だが、これまでは多くの場合30万円の商品をECのみで購入する人は少なかった。ソーシャルで見つけて店頭に行き、いろいろ話を聞いて帰宅してから買うのが一般的だった。

ところが店舗が閉まっていると、商品を直接触りに行けないので、ネットで情報を調べただけでECから購入する流れに変わっている。これはかなり衝撃だ。FacebookでもファッションのEC広告をよく見かける。ファッションはサイズや素材などを確かめるため、お店で買うというユーザー行動が多かったが、お店に行けなくなると、ECで購入している。これがさらに進むと、将来的には住宅や車の購入も、オンラインだけで完結する時代が来るかもしれない。それに備えて、売る側の意識も変えていく必要がある。そう考えると、EC業界にとってポジティブな面もあると考える。

友達や家族に楽しんでもらえるコンテンツを作り続ける

安達裕哉さん
(ティネクト代表取締役 Books&Apps編集長)

ポジティブな情報発信を

afterコロナがどうなるかと聞かれても、率直に言ってわからないと答えるしかない。医療の専門家でもないし、政府や専門家の中でも意見が統一されていない。だからそんなことを予想しても仕方がないので、どうなるかではなく、どうしていきたいかを考えて、自分のやりたいことをやったほうがいい。医療従事者と比較して私ができるのは大したことではないが、でも頑張るぞという気になっている。

自粛期間中、インターネット、SNSをよく見るようになった。これはいろんな人にとってチャンスであり、面白い発信ができる人は自分の経験や会社で起きていることを発信するだけでも興味を持つ人が出てくると思う。怒っている人をよく見るが、怒っていない人を見たい。ポジティブな発信は喜ばれると思うので、やってみたらどうだろう。

コンテンツ発信で重要なのは「友達がちゃんと見てくれる」こと。マーケティングの経験が長い人はすぐターゲットやペルソナの話をするが、SNSでいきなりターゲットには届きにくい。届けられるのは今つながっている人、友達だ。まず友達が見てくれることが結構本質で、友達にウケるコンテンツなら作りやすいのではないか。次は家族。両親は今も記事を読んでくれて、たまにコメントをくれる。家族や友人の前で世の中をあおったりヘイトの話をしたりはできないはず。そうなると、一番良い検証方法が家族や友人に楽しんでもらえるかどうかであり、これが本当のSNSの活用法だと思う。

望む未来の実現は、習慣の再構築から

モリジュンヤさん
(inquire Inc CEO)

afterコロナで変わること、変わらないこと

東日本大震災のときも社会の変化についてさまざまなことが言われていた。実際に変わったこともあれば、元に戻っていったものもある。

PCの父と呼ばれるアラン・ケイに、「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」という言葉がある。afterコロナがどうなるかを話すよりも、今できることを積み重ねていった先に望む未来が現れてくるのではないか。どんな未来を実現したいかを考え、新しい行動を形にする習慣を作る。習慣の再構築を行うことがwithコロナでやれることだと思う。

スピード感をもって行動することも大事だが、同時に一回立ち止まってじっくりと考えることも重要だ。そのほうが中長期的に価値のあることを実現できるのではないか。そういうことを実行しやすいタイミングである。

業界の枠を超え、連帯して乗り越えたい

辻愛沙子さん
(arca CEO /クリエイティブディレクター)

それでも立ち上がり、前へ進む

大きな課題を目の前にすると、普段から社会のことを考えて仕事をしている方は自分のフィールドで何ができるだろうかと考える人が多いと思う。もちろん、飲食業の方など考えざるを得ない厳しい状況に置かれている方もたくさんいらっしゃるだろう。社会を一気に変えるアクションをひとりで起こすのは難しい。

私もそうだったが、苦しんでいる人たちの声がすぐそこで聞こえているのに何もできず、無力さを感じている人がいると思う。それでも立ち上がり、考えて前へ進むことでしか何も変わらないし、誰かのことも救えないだろう。自分ができることをよく考え、意思を持って進みながら、いろんな業界、領域で連帯して、皆で乗り越えていきたい。

想像よりも早く、想像した未来がやってくる

jigen_1さん
(謎のツイッタラー)

未来を切り拓く若者たちの出番が来た

バブル崩壊後の失われた20年、30年の中で、日本の企業はデフレやリーマン・ショック、ITバブル崩壊をゆるやかに乗り越えてきた。一方、世界ではGAFAをはじめここ10年、20年の間に新たな産業が誕生しており、日本の企業はことごとく抜かれてしまった。令和にまで、こうした状況を持ち越してはならない。

afterコロナとは、実は多くの人が薄々感じていた未来のことではないか。例えばAIの進化で消える職業の話やSNSマーケティングの台頭、EC化の進展、ネットスーパーの拡大など、それぞれの業界において想像していた未来があったと思うが、おそらくそれはそうなるだろう。

だから劇的な変化がafterコロナで起こるというよりも、今まで想像していたことが早回しで想像した結果のほうに向かっていくと考えたほうがいい。劇的ではなく、日本で遅々として進まなかった状況が、加速して進むようになるだけだ。

新しい日本、新たな時代を作るため、若い人たちの出番が増えていくだろう。早回しで進んでいく未来をやわらかい頭で切り拓いてほしい。

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