元P&Gマーケターのトイアンナさんに寄稿いただきました。トイアンナさんは現在もWebメディアのマーケティング・企画を中心に仕事をしています。
昨年(2021年)4月に公開したインタビュー記事は大変多くの方に読んでいただくことができました。今回は主に入社1~3年目の社員や4月入社を控える学生を対象に、トイアンナさんがP&Gで学んだ「スケジュール管理のコツ」についてお書きいただきました。
新卒でP&Gに入社し、無我夢中で働く中で身に付けたTipsだけに実践的です。若手社員の中には意外とできていない人も多いのではないかと思います。ぜひご一読ください。
目次
【寄稿】
こんにちは。P&Gでマーケターとして働き、現在もWebメディアのマーケティング・企画を中心にお仕事をしているトイアンナと申します。
P&Gでは仕事の進め方を叩き込んで……いえ、丁寧に教えていただいたと思っていますが、中でも若手社員のうちで最も役に立ったのは「スケジュールの管理」だったと記憶しています。
というのも、若手社員が仕事で失敗する原因の多くが「スケジュール管理ができていない」ことに起因するからです。
新卒が最も苦手とするのが「助けを適切なタイミングで呼ぶこと」
「いつでも、わからないことがあったら声をかけてね」
この一言を、若手社員は何度も聞かされたことでしょう。そして、何度も聞かされたにもかかわらず、わからないことを放置して失敗した経験があるのではないでしょうか。
というのも、「最低限わからないことは調べるべき vs. わからないなら上司や先輩に聞くべき」という2つの指導で板挟みになって、どうすればいいかわからなくなってしまうからなのです。
確かに、私も上司となった今「弊社の正式名称って半角ですかね、全角ですかね?」あたりは自分で調べてくれよ……と思ってしまいますし、さりとて15分もそれで悩むくらいなら「私に聞いてくれればよかったのに」と思ってしまうわけです。
上司だってこう悩むわけですから、若手が悩むのは当然のこと。何は質問していいのか、どこまで自分で考えるべきなのか。これは若手が日常でいつも悩まされる話でしょう。
結論ですが、上司に相談すべきタイミングとは「残り時間を考えたときに、間に合わない」と考えられる時です。たとえば、同じ課題を与えられていても、残り1週間あればじっくり考えながら取り組んでも構いません。けれどあと15分で答えを出す必要があるなら、上司へすぐさま相談すべきでしょう。
適切に上司や先輩へ助けを求めたり、「これって、自分では無理じゃない?」と把握したりするためには、自分の残り時間……すなわち「スケジュール管理能力」が求められるのです。
そこで、適切に助けを呼ぶスキルに直結する、スケジュール管理のコツを、ここではお届けしたいと思います。
スケジュールはお尻から考える
まず、スケジュールは「期限であるお尻」から逆算して考えます。たとえば、3日後に定例レポートを出すとしましょう。
3日後 | 09:00 定例レポートを出す |
2日後 | 上司の最終承認を13:00までにもらう |
12:00までに上司へ承認依頼を出す | |
明日 | レポートの第二稿を書いて退社 |
上司のチェックを13:00までに戻してもらう | |
12:00までに上司へ確認依頼を出す | |
今日 | レポートの第一稿を書く |
……と、3日後が締切の仕事なのに、スケジュールはそれなりにパツパツなことがわかります。新卒なら上司のチェックは3回ほど必要でしょうから、さらに間を詰めなくてはなりません。また、上司がこの時間、空いているかどうかもカレンダーでチェックしておきたいところです。
いきなり上司へ書類を持っていって「見てください」と詰め寄っても、上司も忙しければ後回しにされてしまうかも。あらかじめ15分ずつ「定例レポートご確認依頼」と、会議予定を押さえる方が望ましいでしょう。
このように、スケジュールは「お尻から考える」と、どれくらい余裕があるか、あるいは無いかが見えてきます。仕事が定例レポートだけならまだしも、複数プロジェクトになればなおのこと。最初はスプレッドシートで自分の予定を全て可視化するくらいが望ましいでしょう。
スケジュールにバッファ(予備)を入れる
続いて、スケジュールにバッファ(予備)を入れます。たとえば、先程出した定例レポートのスケジュール。どこにも予備がありませんから、もしも上司が「ごめん、やっぱりリスケ(日程変更)して!」と言ってきたら一巻の終わりです。
何より、上司の日程がお昼に入っていますね。これでは、上司がリスケを依頼してくる可能性は高そうです。そこで、予備時間や予備日を入れることで、急な予定変更へ耐えられるようにします。
予備まで入れた、定例レポートのスケジュールはこちらです。
3日後 | 09:00 定例レポートを出す |
2日後 | 上司の最終承認を17:00までにもらう |
12:00までに上司へ承認依頼を出す | |
09:00 定例レポートを直す | |
明日 | 上司のチェックを17:00までに戻してもらう |
12:00までに上司へ確認依頼を出す | |
今日 | レポートの第一稿を書く |
先程と比べて、ずいぶんと自分や上司に余裕のあるスケジュールとなりました。これで上司が風邪で倒れでもしない限りは、定例レポートが出せそうです。
ん?
上司が風邪で……倒れでも……しない限り?
そう、上司も人間。風邪で倒れることもあります。というわけで、理想は「予備時間」ではなく「予備日」を含んだ日程を組むこと。
再度、スケジュールを作ってみましょう。
3日後 | 09:00 定例レポートを出す |
2日後 | 予備日 |
明日 | 上司の最終承認を17:00までにもらう |
12:00までに上司へ承認依頼を出す | |
09:00 定例レポートを直す | |
今日 | 上司のチェックを17:00までに戻してもらう |
12:00までに上司へ確認依頼を出す | |
09:00レポートの第一稿を書く |
さあ、ここまで組めば、定例レポートが出せなくなる事態は防げそうです。慎重すぎると思うかもしれません。
しかし、これが上司と自分だけの関係ならいざしらず、複数名が入るプロジェクトでは誰かが倒れたり、リスケを依頼してきたりすることもよくあります。予備日は必ず入れた上で、行動するようにしましょう。
まあ、本当にプロジェクトが忙しいときは予備日も会議で埋まりますが……(小声)
スケジュールを「赤・黄・青信号」で判断する
そして、スケジュールをぱっと見て「今は全く問題ない・このまま行くと回らなくなる恐れがある・もう回っていない」の3段階で評価します。
なお、私はプロジェクトごとに
- 回っているプロジェクト
- このまま行くと回らない恐れがあるプロジェクト
- もう回っていないプロジェクト
で、色をつけていました。
プロジェクトごとに一覧化すると、こんな具合です。
原稿 | 登壇イベント | 企画 | 私事 | |
1月15日 | 執筆 | |||
1月16日 | 執筆(予備日) | |||
1月17日 | Marketing Native締切 | |||
1月18日 | 準備 | |||
1月19日 | 執筆 | A社登壇 18:00 | 準備(予備日) | |
1月20日 | 執筆(予備日) | Webメディア提案 | ||
1月21日 | Cメディア締切 | B社登壇 16:00 | 準備 | Zoom飲み |
1月22日 | 準備(予備日) | |||
1月23日 | Dメディア締切 | 戦略提案会議 | ||
1月24日 | 友達の誕生日 |
*スケジュールは架空のものです。
こうして横一列にすると、Webメディア提案とCメディア締切がほぼ重なっていて、かなり1/19~21が忙しいとわかります。
ここで黄信号になったら、すぐ上司へ相談しましょう。新卒1年目のうちは、上司へスケジュールそのものを見せて「自分では気づいていないのですが、もし危ういと感じるスケジュールがあればご教示ください」と教えてもらうのもよいと思います。
「今の自分なら何時間かかると思うべきですか」と上司に質問する
新卒2年目くらいまでは、上司と毎週1対1の面談を設定し、スケジュール管理を支援してもらうのが望ましいです。とはいえ、会社によってはそれがかなわないこともあるでしょう。
もし上司が忙しいなら、せめて「いまの自分の力で、何時間くらいかかると思いますか」と、上司に工数を想像していただくのも手です。自分は1回のチェックでいいと思っていた書類が、上司は3回の手直しを想定している重要書類かもしれません。
上司との齟齬をなくし、適切なタイミングで助けを求めるためにも。上司が新卒だったときを思い出していただき、どれほど時間をかけていたか、教えてもらうと良いでしょう。
わからないことを「何度も、わかるまで」質問する勇気
最後に、マインドセットの話をしておきます。仕事は、終えたもの勝ちです。それまでに何回質問したか、そして上司の迷惑になったかどうかは、究極的には成果と関係ありません。たとえ「前にも言ったよね」と嫌味を言われようが、上司が話しかけにくいタイプだろうが、質問して成果へたどり着いた社員が偉いのです。
新卒のころこそ、質問をしづらいものです。しかし、何度も、わかるまで質問すれば、それだけあなたの成長も早くなります。もし15分調べてもわからないことがあったら、上司に「調べてみたのですが」と謝りながら聞いてみましょう。
そこでわかってくれない上司ですが、私が脳内でやっつけておきます。頑張れ!
Profile
トイアンナ
ライター。外資系企業にてマーケターとして勤め、独立。累計5,000人以上の人生相談を受けた経験を受け、恋愛とキャリアを中心に執筆している。これまでにWebを中心に100媒体以上で連載を持つ。
書籍に『モテたいわけではないのだが』『確実内定』『やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本』など。
Twitter: @10anj10