毎日の食卓に欠かせない商品が並ぶMizkan(以下「ミツカン」)。
すでにトップシェアのブランドも含め、まだ全体的に伸びしろがあるはずと、ネスレ日本で「キットカット オトナの甘さ」シリーズを立案しヒットさせたことなどで知られる槇亮次さんが、ミツカンにジョイン、戦略の見直しを図っています。
具体的にどんな施策を手掛けているのでしょうか。今回はミツカン 代表取締役専務 兼 COOの槇亮次さんに話を聞きました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)
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ネスレ時代、「オトナの甘さ」のヒットでシェア1位に
――槇さんは新卒でネスレマッキントッシュ(現・ネスレ日本)に入社し、2023年3月にミツカンにジョイン。ネスレではマーケティング部長をはじめ、スイスの本社勤務時代にグローバルブランドマネージャーを務め、帰国後は執行役員まで昇進しています。マーケティングで有名なネスレですごいキャリアだと思いますが、具体的にどんな実績を上げられたのですか。
マーケティングマネージャーとしてネスレのマーケティング全般を担当していた2012年頃に、チョコレート菓子の国内シェアでグリコさんのポッキーを抜いてトップブランドになったことがありました。なかなか1位になれない時代が続いていたので、これが1つ大きかったと思います。
具体的な施策としては、売り上げを作る第2の柱の構築です。1つはEC。2009年に自社ECを立ち上げ、新しい需要を作りました。そのECは「チョコラボ キットカット」という名前で、お客さまご自身がアップロードした写真などを使って、パッケージをデコレーションできるサービスです。通常のキットカットと比べると、売価は2倍以上になりますが、ギフト使用として評判になりました。現在も利用されています。
もう1つは、キットカットという大きなブランドの中で、それまで取り切れていなかったお客さまにアプローチする新しいシリーズを作りました。それが大人向けに甘みを抑えた「キットカット オトナの甘さ」というプレミアム商品です。日本独自の取り組みだったのですが、新しい顧客獲得に成功し、ECと合わせてシェア1位獲得につながりました。
実行力の強みと戦略立案力の機会点
――「オトナの甘さ」シリーズの発案者だったとは、すごいですね。その後、2023年3月にミツカンにジョインしたわけですが、ネスレでは執行役員の職にあったのに、なぜ転職を決断したのですか。
自分がどんなときに真の充実を感じるかを考えたとき、やはり対消費者向けの仕事をやりきれたときだと思いました。役職など外見上のカッコよさに満足するのではなく、消費者からの良いフィードバックに充実を感じるのだとすると、当時の社内ポジションのまま満足していていいのか、もっと消費者と直接向き合えるところに特化した会社はないかと探して、出合ったのがミツカンです。ミツカンは企業理念として2つの原点を掲げています。1つが「買う身になって まごころこめて よい品を」で、シンプルに言うと“コンシューマーセントリックなマーケティングをしましょう”というカルチャーが綿々と続いています。
もう1つが「脚下照顧に基づく現状否認の実行」。要は改善点は常にあるので、“PDCAを回しながら、お客さまに常に最良なものを届けていこう”という精神であり、私はその考え方に共感しました。
槇亮次さんが作成したライフチャート
――入社後に感じたミツカンの強み・弱みは何ですか。
実直な人が多いのは強みだと感じます。人事評価に関するサーベイなどを見ても「実行力」が高く出ています。得意分野のカテゴリがいくつもあり、さらにカルチャーとして社員に実行力があるからマーケットシェアも1位に上がっていったのだと思います。
一方、伸びしろだと感じるのは、新規チャネルの開拓やプレミアム商品作りなどマーケティングの戦略立案に関する取り組みです。前職では、ECやブティックを立ち上げたり、外国人観光客を目当てにしたギフトショップへの配荷の強化など新たなビジネスモデル開発や販売先のチャネル開発、販路開拓を行ってシェアを伸ばしたのですが、ミツカンは新規開拓という点でまだ機会があると考えています。もちろん、販売チャネルはスーパーマーケットが多く、ECやドラッグストア、ディスカウントストアも構成比としてはありますが、新規チャネルを積極的に探しているかというと、まだ十分でない気がします。
――日本ではミツカンの商品を知らない人は少ないでしょうし、シェアNo.1ブランドを複数所有しています。ジョインしたはいいものの、ここからさらにシェアを上げ、目覚ましい成長をさせるのは大変だと思います。どうお考えですか。
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