恋愛や就活に関する著書で知られるライターで元P&Gマーケターのトイアンナさんが、オンラインのビジネススクールを立ち上げました。
テストプランとして昨年末に「マーケティング基礎講座」を開催したところ、募集2日目にして500名の定員がほぼ満席になり、顧客満足度も100%を達成したことを受けての起業です。
ビジネスパーソンを対象にしたスクールやセミナーはオンライン、オフラインを問わず複数存在する中で、なぜ昨年末の講座は大成功したのでしょうか。そして今からオンラインスクール業界に参入して勝算はあるのでしょうか。
その前に、そもそもトイアンナさんとは一体、何者!?
今回はトイアンナさんに話を聞きました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)
※肩書、内容などは記事公開時点のものです。
目次
2つの学生起業を経て、P&GとLVMHへ
――オンラインビジネススクールの話の前に、そもそもトイアンナさんが何者なのかを明らかにしておきたいと思います。大学卒業後、P&GやLVMHで働いていたとのことですが、就職先にP&Gを選んだのはなぜですか。
2つ理由がありました。1つ目はマーケティングを学ぶ必要性があったこと。私は大学時代に「骨壺の販売」と「帰国子女向けの通信教育」という2つの事業を起こし、両方とも潰しています。それも、失敗と呼ぶ以前に全然売れなかったり、仲間割れしたりと、とても恥ずかしい終わり方でした。なぜうまくいかなかったのかを分析したとき、私にはマーケティングの知識が圧倒的に不足していると気づき、将来起業するためにも学んでおきたいと考えました。
2つ目は男女差別がないことです。私が就活をした2011年当時は、面接で「結婚したら辞めてくれる?」と質問されたり、「女性は幹部職にいりません」と言われたりする風潮がまだ残っている時代でした。マーケティング部は経営企画部などと並んで比較的幹部候補になりやすい部署だと思いますので、男女差別の残る環境では私の望む「マーケティングを身に付ける」目的が達成できないかもしれないと思い、女性・男性という単語すら使われず、「残るべき人が残り、離れたほうが幸せな人が離れる」会社へ進みたいと考えました。
P&Gではジョイとファブリーズを担当し、いずれも当時の史上最高シェアを達成しました。しかし、これはP&Gでは当たり前のことなので特に評価されるものではないのと、私の採用責任者で同じブランドで働いていた伊東正明さん(現・𠮷野家常務取締役)ら優れた上司・カウンターパート・後輩あってのことなので、私が成果について詳細を語るのは適任ではありません。
――トイアンナさんの採用責任者は伊東さんでしたか。伊東さんはトイアンナさんのどこを評価したと思いますか。
ダイバーシティ枠(笑)。面接で骨壷を売っている話をしたり、そのお金で当時の彼氏に貢いでいることまで話したりしたら、大笑いされました。きっとめちゃくちゃな人が来たと思ったはずです。それなのに真っ当な同期の人たちに交じって採用していただけたのは、間違いなくダイバーシティ枠でしょう。
――いくらダイバーシティ枠でも、めちゃくちゃなだけでは伊東さんも採用しないでしょう。学生時代から起業するような行動力を評価されたのかもしれませんね。
P&Gの採用基準は明確に定義されていまして、オープンになっているのはリーダーシップとオーナーシップです。リーダーシップには「ストロングシングルプレーヤー」と「ストロングチームビルダー」の2つの概念がありまして、ストロングシングルプレーヤーは「自分に付いてこい」というジャイアン・タイプ。一方のストロングチームビルダーは「今このチームの中で欠けている役割は何だろう?」「チームを強くしてみんなで成功するにはどうすればいいのだろう?」を考えるリーダーシップで、P&Gが採用したがっているのはチームを強くするストロングチームビルダーのほうです。
――オーナーシップはどうですか。
ひと言で表すと、責任感ですね。「引き受けた以上は責任を持って最後までやり切ろう」という意味ですが、そもそも日本人は責任感が他国に比べて強いと感じますので、日本で審査基準になった記憶はありません。世界は広いですから、日本を基準に責任感のレベルを考えていると、たまに信じられない経験をすることがあります。
ですから「オーナーシップは強いけど、リーダーシップの強い人が少ない」のが典型的な日本の採用像かなと思います。
「P&Gの伝説」伊東正明さんから学んだこと
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