マーケティングに関するイベントは数多くありますが、外国人をターゲットにした事例やノウハウを知れる機会はあまり多くないかもしれません。訪日観光客や海外市場の外国人ユーザーをターゲットに商品・サービスを展開する場合、国内向けのマーケティングとは勝手が異なり、課題に直面しがちです。そこで2019年5月8日(水)に株式会社ポケットチェンジ(東京都港区)で開催されたのが、グローバルマーケティングをテーマにしたイベント「Global Marketing Meetup」です。計9社のスタートアップ企業が登壇し、事例やノウハウを紹介しました。
Marketing Nativeでは、今回のイベントの模様と、ライトニングトーク(LT)で語られたマーケティングノウハウの2回に分けてレポートします。
(取材・文・撮影:Marketing Native編集長・佐藤綾美)
目次
「Global Marketing Meetup」とは
画像提供:株式会社Lang-8
グローバルマーケティングに関する成功事例は数があまり多くなく、メディアでも取り上げられる機会が少ないのが現状です。今回は、イベントを主催した株式会社ポケットチェンジと株式会社Lang-8に加え、7社が登壇し、約1時間にわたってLTが行われました。
各社の持ち時間が約7分と限られたこともあり、時に駆け足で行われるLTに参加者全員が真剣に耳を傾け、スライドの写真を撮影する人もいました。
事業内容や事例を中心に紹介する企業もあれば、「ツアーコンテンツの集客方法」「海外YouTuberマーケティング」など、ノウハウを詳細に教えてくれる企業もあり、1時間があっという間に感じられる濃密な内容でした。
登壇企業とトークテーマ
登壇企業9社をトーク順にご紹介します。
株式会社ポケットチェンジ マーケター 中村元紀
株式会社ポケットチェンジは、海外旅行で余った外貨を電子マネーやギフト券に交換できるサービス「
ポケットチェンジ」を提供しています。成田空港や羽田空港など、国内約30カ所に専用の端末が設置されており、ユーザーはタッチパネルを操作して外貨を投入し、希望の電子マネー・ギフト券に交換する仕組みです。LTでは、ターゲットユーザーに端末の前に来てもらうためのマーケティング手法が語られました。
WAmazing株式会社 マーケティングプランナー 横山隼人
WAmazing株式会社は、主に台湾や香港に居住する訪日外国人を対象としたアプリサービス「WAmazing(ワメイジング)」を提供している企業です。訪日外国人の旅行中の悩みとして、無料公衆無線LAN環境の不備が多いことから、空港で無料SIMを提供。ユーザーは15日間500MBまで無料でインターネット通信を利用できるほか、アプリを通じてタクシーの配車や宿泊施設の予約、アクティビティの手配、決済なども行えます。リリース直後から自然と動画の再生数が増え、口コミが広がり、香港のApp Storeの旅行カテゴリーで4位にランクインするなど、人気を集めています。
株式会社クオン マネージャー 花形昌秀(はながた・まさひで)
株式会社クオンはキャラクター開発やライセンスビジネスなどの事業を展開する企業です。
社内にイラストレーターを抱え、300以上のキャラクターを有しており、国に合わせたキャラクター展開でインバウンドマーケティングを行っています。LTでは、これまでのプロモーション実績を紹介。海外市場においても、現地の人に好まれるキャラクターを活用すれば、認知拡大や新規顧客の獲得につながるとのことです。
株式会社LocalSquare 代表取締役 金川和也
観光業界の広告代理店事業を営む株式会社LocalSquareは、主にインバウンド向けにサービスを展開する宿泊施設や観光施設などを支援しています。LTでは、オープンから1年でトリップアドバイザーの口コミ評価を上げた事例を紹介。京都府京都市にある「京町家 楽遊 堀川五条」が「外国人に人気の日本の旅館ランキング」で、2017年に1位を獲得したときに、高い口コミ評価を得られたポイントが語られました。
画像出典:トリップアドバイザー
カプセルジャパン株式会社 マネージャー 佐藤亨紀
カプセルジャパン株式会社は、YouTuberなどのクリエイターのマネジメント、動画番組の制作、クリエイターを起用したマーケティングサービスなどを提供するグローバルカンパニーです。LTでは、2019年3月に台湾で初めて開催した専属YouTuber25組を集めたイベントの様子が公開されました。「台湾の原宿」とも言われている西門町(せいもんちょう)に無料でYouTuberと交流できる場を設けたり、グッズを作成したりし、大盛況に終わったそうです。
日本の企業や自治体のインバウンドの需要を受け、YouTuberを起用した動画を制作して認知拡大につなげる支援も行っており、西武鉄道株式会社、居酒屋「北の家族」などとの実績があります。
株式会社 LIFE PEPPER マーケター 對馬聖哉(つしま・せいや)
株式会社LIFE PEPPERは、訪日外国人の集客や海外マーケティングの戦略支援を行っています。同社は2014年に創業後、アンケート調査事業の受注やメディアの立ち上げ、台湾インバウンド市場への参入などを経て、2017年頃よりデジタルマーケティング市場に本格的に参入。同年、韓国を対象としたプロモーション事業も始めています。韓国人の約75%はGoogleやYahoo!ではなくNAVERを使っており、NAVERブログ群が上位に表示されるNAVERには一般的なSEOが通用しません。LTでは、同社が韓国向けの施策の中で最も良い成果を上げた施策が紹介されました。
株式会社ジェイノベーションズ 代表取締役社長 大森峻太
行政の委託による観光案内所の運営(例:渋谷駅ハチ公前の青ガエル観光案内所)や、ガイドの人材育成、ツアーコンテンツの提供などを行っている株式会社ジェイノベーションズ。LTで紹介してくれたのは、ローカルツアー「Hang Out Japan」での集客方法と、口コミを増やすポイントです。ちなみに、日本で最も日本のメディアに取り上げられるインバウンド企業で、1週間の半分以上が取材で埋まっているそうです(ただし、外国人の集客にはほとんど影響しないとのこと)。
株式会社 Lang-8 マーケティングマネージャー 間地悠輔(まじ・ゆうすけ)
株式会社Lang-8は、語学学習サービス「Lang-8」やネイティブ同士が教え合う英語・語学のQ&Aアプリ「HiNative」などを開発・運営しています。
登録ユーザーの97%が海外在住という「HiNative」は、2018年に全世界からのアクセスを達成。WebサイトのUU(ユニークユーザー数)が800万人/月と、数多くの海外ユーザーを獲得しています。LTでは、海外YouTuberを起用したマーケティング手法のノウハウが詳細に紹介されました。
株式会社Spotech Co-founder COO 渋谷悠佑
iOSアプリ「SPOTECH」を開発・運営しているSpotech。「Spot」×「Tech」の略称である「SPOTECH」は、世界中にいるIT人材とIT業務を依頼したいクライアントをAIによりマッチングするアプリです。「SPOTECH」で依頼可能なエンジニア人材は基本料金が1人あたり20万円と、国内で人材を採用する場合に比べて圧倒的にコストを抑えることができます。LTでは、そんな「SPOTECH」をわずか45日間で開発できたポイントが語られました。
記事の後編では、LTの内容の中から以下のテーマについて、さらに詳しくお届けします。
・課題を持つユーザーに、端末の前まで来てもらうための施策
・スノーアクティビティブッキングプラットフォームによるマネタイズ
・トリップアドバイザーの口コミ評価を上げるコツ
・レンタカー比較サイトで韓国人観光客のシェア獲得を伸ばした方法
・ローカルツアーコンテンツの集客方法と口コミを増やすコツ
・海外YouTuberマーケティングのコツ
・45日間でプロダクトを創出した方法
後編はこちら。