[最終更新日]

2019/05/15

 

海外YouTuberマーケティングのコツや外国人向けツアーの口コミを集める方法とは?「Global Marketing Meetup」レポート(後編)

前回に引き続き、「Global Marketing Meetup」のイベントレポートをお届けします。後編では、「外国人観光客の口コミを発生させる方法」「海外YouTuberマーケティングの進め方」など、ライトニングトークで語られた具体的なノウハウをまとめてご紹介します。

(取材・文・撮影:Marketing Native編集長 佐藤綾美)

    

目次

ユーザー数を4.5倍まで伸ばした海外YouTuberマーケティングの秘訣

海外ユーザーが97%を占め、2018年には全世界からのアクセスを達成した英語・語学のQ&Aアプリ「HiNative」。グローバルなユーザーの獲得にはYouTuberをメインに活用し、1年半で100万ユーザーから450万ユーザーまで伸びています。そこで株式会社Lang-8の間地さんが紹介してくれたのは、海外YouTuberマーケティングの成果やノウハウです。

ヒット動画が2~3本誕生すれば流入は増える

実際にYouTubeで「HiNative」と検索すると、たくさんの動画が出てきます。これまでに作成した動画の累計本数は817本。1動画あたりのコストは5万~100万円くらいで、平均CPAは93円とのことです。国別のCPAは以下のようになっており、ロシアや西ヨーロッパ、東南アジアなどの国々が低価格なのがわかります。

海外YouTuberマーケティングでは、その国でヒット動画が2~3本生まれるだけで、アプリ内のランキングが伸びて、流入が増えていきます。動画をきっかけに口コミが増えていくため、自然流入と合わせると、ブレンデッドCPAは20円だそうです。

海外YouTuberマーケティングはコスパがいい

間地さんがYouTuberマーケットのメリットとして挙げたポイントは以下の3つです。

・リテンション率が高い
・コスパがいい
・国やジャンルをターゲティングできる

「HiNative」では海外YouTuberに動画内で新規登録やチュートリアルについても紹介するよう依頼しています。そのため、ユーザーは動画でアプリの内容を理解してからダウンロードするので、リテンション率が高いと言います。また、動画は一度制作すればYouTube内にずっと残るため、継続的に流入が発生します。国やジャンルに応じてターゲティングできるのもメリットです。

海外YouTuberマーケティングは根気強さが求められる

▲依頼するYouTuberを検索してから、料金を支払うまでの流れ。海外送金はPayPalが最もスムーズでおすすめとのことです。

海外YouTuberを起用してマーケティングを行う際の基本的な流れは、上記の通りです。例えばYouTubeで「Learning Japanese」と検索し、出てきたYouTuberのページに飛ぶと「About」にメールアドレスが載っているので、メールを送ります。メールを送るときは、お金を払う意思があることを記載すると、返信をもらいやすいそうです。

「そのYouTuberでどれくらいの動画再生回数が期待できるか」は、過去の動画の再生回数のうち、最高値ではなく最低値を参考にします。最高値を参考にしていると、それよりも低い再生回数になることがあるためです。予算よりも高い料金が提示された場合は、個別に交渉が必要です。

また、間地さんは「海外YouTuberの場合、公開する動画は事前確認を徹底しないと、勝手に公開されてしまうので注意が必要」とも言います。「事前確認しないと料金を支払わない」などと伝えておくのが良いそうです。

▲動画にはアプリのダウンロードURLを記載し、トラッキングリンクを設定します。同じ国で同時に異なる動画をリリースする場合に便利です。

海外YouTuberとのやり取りは、メールが返ってこないことも多く、我慢強さが求められます。ビジネス常識はあまり通用しないものと考え、取り組んだほうが良いとのことです。

また、Lang-8では、25名の外国人アルバイトがメール送信などの業務に携わっています。多数の国々からユーザーを集客したい場合は、国ごとにマーケターを用意するのがおすすめで、日本語学校や国際交流会に飛び込むと良いそう。Lang-8ではアルバイトの人たちのKPIに1時間あたりのメール送信数を設定しており、「リマインドを何通送信したか」というところまで確認し、成果を追えるようにしています。

▲海外YouTuberにメールを送ってから、動画を公開するまでのフロー。「Promise」のあとも、公開される動画が40%しかないのは驚きです。

端末の利用ユーザーを獲得するための2つの方法

海外旅行で余った外貨を電子マネーやギフト券に交換できる「ポケットチェンジ」。専用の端末は空港など国内約30カ所に設置されていますが、ユーザーを獲得するには、認知されるだけでなく、課題を持った状態で端末の前まで来てもらう必要があります。外貨は日常的に持っているものではないため、サービスが認知された瞬間=利用される瞬間とならないからです。

株式会社ポケットチェンジの中村さんがライトニングトークで紹介した、ユーザーを端末の前まで連れてくるための施策は主に2つです。1つは「ポケットチェンジ」の端末に近づいたら思い出させることで、もう1つは、誰かに端末までユーザーを連れてきてもらうことです。

端末に近づいたら思い出させる

「ポケットチェンジ」は、ユーザーが端末に近づいたときに思い出してもらえるよう、スマートフォンに通知が来るシステムを採用しています。端末の半径10メートルくらいにユーザーが近づくと、「ポケットチェンジが近くにあります」といったメッセージとクーポンコードが届く仕組みです。

誰かに端末までユーザーを連れてきてもらう

ポケットチェンジでは自社でアフィリエイトシステムを開発し、運用しています。プロモーションコードがあり、「ポケットチェンジ」を利用した人と紹介した人の両方に、利用者が交換した金額の2%が報酬として発生します。

また、アフィリエイターの紹介報酬の支払い方法には、「WeChatPay(※1)」を選べるようにしているのも特徴です。
※1:中国のテンセントが開発したSNSアプリ「WeChat」内のモバイル決済機能。

▲3割くらいの人が「WeChatPay」で払い出しをしていたため、選べるようにしたそうです。

 

トリップアドバイザーは口コミの量と質、密度が大切

株式会社LocalSquareは、旅館「京町家 楽遊 堀川五条」のトリップアドバイザー上の口コミ評価を1年ほどで最適化し、宿泊客の増加につなげました。トリップアドバイザーでは、口コミが多いほど検索時に上に表示されやすいため、口コミの量と質、密度が重視されます。

画像出典:トリップアドバイザー

「京町家 楽遊 堀川五条」の口コミは285件(2019年5月時点)。オープン当初は、とにかく口コミの評価を上げることに力を入れたと言います。LocalSquareの金川さんが意識したポイントは主に3つで、デメリットの事前説明、旅館スタッフと宿泊客のコミュニケーション活性化、レビューへの即対応です。

狭い空間も日本の良さとして売り出す

「京町家 楽遊 堀川五条」は8部屋ほどの小さな旅館です。狭い空間を日本ならではの良さとして売り出し、事前説明するようにしたところ、口コミの量と質を担保できるようになったと言います。

こぢんまりとした空間は、身長の高い外国人観光客には狭く感じられます。オープン当初は特に説明しなかったところ、「部屋が狭い」というコメントや5.0中1.0の評価をもらうこともあったそうです。

情報提供でコミュニケーションを活性化する

もう1つの施策では、受付に付近で開催している祭りや着物を着られる施設などアクティビティの情報を書いた黒板を置き、スタッフと宿泊客のコミュニケーション活性化を図りました。京都を訪れる外国人観光客は、アクティビティを探していることが多いためです。黒板があることによって宿泊客は「旅館の人に聞いても良い」と考え、積極的に聞いてくれるようになるそうです。旅館スタッフと宿泊客の密なコミュニケーションは、満足度の向上や、口コミ評価の創出につながります。

口コミには1週間以内に返信する

金川さんは、宿泊客に感想をもらった後、1週間以内に返信することを徹底したと言います。ユーザーとコミュニケーションを取っていることをトリップアドバイザーのアナリティクスが認識し、京都の旅館の中でも30~20位だった順位が徐々に上昇したとのことです。

レビューの依頼が意外と効果的

株式会社ジェイノベーションズが提供するツアーコンテンツ「Hang Out Japan」は2018年1月からスタートし、自社サイトとOTA(※2)で販売されています。大阪や東京のツアーが中心です。日本のツアー企業の多くは「Airbnb」や「トリップアドバイザー」「Viator」「Booking.com」といったOTAに頼ってツアーを販売していることもあり、ジェイノベーションズの大森さんはOTAでの集客方法と口コミの増やし方を紹介しました。

※2:Online Travel Agentの略。オンライン上だけで商品販売や仲介といったやり取りを行う旅行会社のこと。OTAでツアーコンテンツを販売すると、手数料が発生する。

OTAはとにかく口コミをためることが大切

OTAは評価が0のうちは予約が入りません。評価がたまっていくとページの上に表示されるようになるため、まずは口コミ100件を目安に集めるようにします。最初の口コミを作るには、ツアーの値段を下げるか、友人や知人に依頼する方法が有効とのことです。

欧米系の参加者には、リアルプロモーションが有効

大森さんによると、欧米系の参加者を集めたいときは、外国人観光客が集まる場所でのリアルプロモーションが効果的とのこと。例えば、日本の土産店やホテル・ホステル、総合ディスカウントストアの「ドン・キホーテ」、観光案内所などにチラシを置いてもらうといった手法です。

「Hang Out Japan」の渋谷のツアーでは欧米系の参加者が多く、2年ほど前までは2週間前の予約が多かったのが、ここ1年ほどは3日前くらいに予約するケースが増えているそうです。3日前に予約するということは、旅行の計画が緩く、現地でプランニングしている可能性が高いため、店や宿泊施設が重要なマーケティングの場所になってきます。

口コミを増やすポイントは3つ

大森さんは、「口コミを増やすポイント」として以下の3点を挙げました。

・コンテンツ
・ゲストと仲良くなる
・口コミをお願いする

まずはツアーコンテンツの内容を良くすることが大切です。2つ目に、ゲストと仲良くなるほど口コミは発生しやすくなります。1時間のツアーでは短く、1時間30分くらい一緒にいると仲良くなりやすいと大森さんは言います。最後の「口コミをお願いする」は行わない企業が多いものの、実は重要なポイントです。例えば、東京都千代田区にある「VR忍者道場」という施設では、イベントの最後に師匠役の人がレビューを書くよう参加者に依頼しており、お願いすると、お客さんは意外と口コミを書いてくれるのだそうです。

45日間でプロダクトを創出した「0→1」の考え方

株式会社Spotechは2018年9月に設立されたばかりですが、すでに累積損失を回収し、黒字化している状態です。iOSアプリ「SPOTECH」は、わずか45日間で創られています。イベントのライトニングトークでSpotechの渋谷さんが語ったのは、45日間で新規プロダクトを創出し、3カ月で黒字化した方法です。

海外向けのプロダクトなら、海外の人を雇うべき

渋谷さんは「海外向けにプロダクトを作る際は、PM、デザイナー、エンジニアともに海外の人を雇うべき」と言います。そもそも日本人の人件費が高いという理由もありますが、そのほうがPDCAを早く回せるためです。

プロダクトを作る際は上記のサイクルをいかに早く回せるかが重要で、日本企業の多くは問題定義から市場調査・思考までに時間がかかり、サイクルがうまく回らない状態にあります。

渋谷さんの場合は、上記のように0→1の考え方と進め方でプロダクトを創出します。日本では、こうした考え方と進め方をできる人があまりいないそうです。

上記プロセスの「1」の段階でマーケティングを行うため、そもそもプロダクトを開発する時点で「どうしたら世の中のためになるプロダクトを創れるか」を考えます。

お金をかければうまくいくわけではない

プロダクトを創るときから話題になる仕掛けを用意しておくことも重要です。そうすれば、広告費はかかりません。時代の流れに沿った、必要とされるプロダクトだったからこそ、「SPOTECH」にはユーザーが集まったと言えます。

人件費や広告費など、お金をかければプロダクトがうまくいくわけではありません。海外向けのプロダクトリリースには現地の人の採用が不可欠で、いかに速くリリースし、効果検証を行えるかが重要です。渋谷さんは「細かいマーケティングを行うよりも、大胆に進め、微調整は後回しにしたほうがいい」と話しました。

台湾の人気キャラクターを起用してスキー場に送客

画像出典:WAmazing SNOW

訪日外国人を対象としたアプリサービス「WAmazing(ワメイジング)」を提供するWAmazing株式会社。同社のマネタイズに貢献しているのが、スキー場のリフト券や宿泊を手配できるプラットフォーム「WAmazing SNOW」です。現時点で国内400カ所中263カ所のスキー場・周辺ホテルと直接契約しており、ユーザーはアプリ上でリフト券や宿泊施設、道具のレンタル、スクールの手配などが行えます。

2018年にはガーラ湯沢スキー場で、台湾のキャラクター「LAIMO」を起用したプロモーションを実施し、「LAIMO」がスキー場を滑る動画を制作しました。WAmazingの横山さんによると、インフルエンサーにブログ執筆を働きかけるなどして50件ほどのコンテンツが生まれ、ガーラ湯沢スキー場への送客につなげたとのことです。

韓国人観光客のシェア獲得にブログを活用

株式会社LIFE PEPPERの對馬(つしま)さんがライトニングトークで紹介してくれたのは、韓国向けの施策で最も良い成果を上げた事例です。クライアントはレンタカー比較サイトの運営企業で、韓国人観光客のシェア獲得に課題を抱えていました。

そこでLIFE PEPPERが打ち出した施策は、「日本旅行で車を使うトレンドを作ること」です。5つの地域に韓国人ブロガーを1人ずつ招待し、車でなければ行けないスポットを回ってもらいます。そして、ブロガー1人につき1記事を作成してもらい、投稿するという施策です。結果、計600件の予約獲得につながったと言います。

韓国人の約75%がインターネットで利用しているNAVERは、NAVERブログ群が上位になり、一般的な検索結果はその下に表示されます。そのため、影響力のあるパワーブロガーを起用した施策が効果的です。

取材後記

【全体を通じて感じたポイント】

  • 外国人をターゲットにしたマーケティング戦略には現地の人の採用が重要
  • スピーディーにPDCAを回して成果を上げている企業が多い
  • 口コミを書いてもらうためには、意外と「お願いすること」が大切

外国人をターゲットにしたマーケティングには、国内向けの手法とは違った難しさがあります。外国人YouTuberを起用したり、外国人向けのプロダクトを創出したりして成果を上げている企業は、現地の人を採用してスピーディーにPDCAを回しているところが多いと感じました。

ツアーコンテンツについては、自発的な口コミを促す働きかけを行った事例がある一方で、「実はお願いしたほうが口コミを書いてくれる」という意見があったのも印象的でした。海外市場や訪日外国人をターゲットにした商品・サービスで成果を上げた事例を、これほど一挙に知れる機会はあまりありません。今回のレポートが、これからグローバル展開を検討している企業の方の参考になれば幸いです。

記事執筆者

佐藤綾美

佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。Twitter:@sleepy_as

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