「テレビ離れ」という言葉が囁かれ始めて久しいですが、毎週水曜日に放送されると、必ずTwitterのトレンド入りを果たすバラエティ番組があります。TBSの藤井健太郎さんが総合演出を担当する「水曜日のダウンタウン」です。裏付けや根拠のない「説」を検証するバラエティ番組ですが、企画の独自性が話題となり、お笑い芸人のクロちゃん(安田大サーカス)がブレイクするきっかけとなりました。
この他にも藤井さんは、有名人を検索した際に出てくる「消えた」「うそつき」などネガティブな関連キーワードで人名を連想で当てるコーナーで人気を博した「クイズ☆タレント名鑑」や、1月に「今年起こりそうなこと」を予想するパートを収録して年末に生放送で答え合わせを行う「クイズ☆正解は一年後」など、一筋縄ではいかない番組を多く制作しており、放送時にはSNSで話題になっています。
藤井さんの担当する番組はなぜ若者の心をつかむのでしょうか。また、人を引きつけるために何を意識して番組を作っているのでしょうか。「水曜日のダウンタウン」総合演出の藤井健太郎さんにお話を伺いました。
(取材・文:Marketing Native編集部・岩崎 多、撮影:永山 昌克)
目次
集中して見たくなるものを作る
――「水曜日のダウンタウン」が若い世代にも支持されている理由について、ご自身ではどのようにお考えですか?
自分ではあまりよくわかりませんが、最近、仕事以外では若い人と接する機会が多いので、同世代よりはその感覚を理解できているかもしれません。
ただ、「こういうのが好きなんでしょ」と若い人の趣味嗜好に「合わせにいく」という感じは違うと思っています。おじさんが若い子に合わせにいっても大体いいことがありません。間口は広く取るほうが良いとは思いますが、自分も上の世代が作る番組を見ていたとき、「合わせに来ているな」と感じるものに格好よさや面白さを感じたことがあまりなかったからです。
若い世代に支持されている要因を何か一つ挙げるとしたら、横並びのライバルがテレビ番組だとはあまり思っていないことかもしれませんね。テレビ番組同士の戦いの中でどうするかという意識は割と少ないです。
――ライバルは他の娯楽ということですか?
そうですね。それこそYouTubeだとかNetflixだとか、今の人たちはスマホに多くの時間を使っていますよね。その中でのパイの奪い合いになっているじゃないですか。もちろんテレビのライバルはスマホだけではないですけど。
その状況を踏まえた上で、僕は単純に人が見て面白かったり、反響があったりする番組を作ることに力を注いでいます。スマホに対抗してどういうビジネスをするかということは、僕の専門ではないので、会社のそういう担当の人が収益化できるモデルを考えてくれればいいと思っていますが。
――そのような、人の興味を引く番組を作る上で、藤井さんが大切にしていることは何ですか?
今は、何もなくてもとりあえずテレビをつけるという時代ではないですよね。これまでは家に帰ったらテレビをつけるのが当たり前の時代でしたが、今はまずテレビの電源をつけてもらわなければなりません。
そういう意味では、視聴者に能動的に見てもらうために、コンテンツは少し「刺激の強いもの」「強度のあるもの」にしたほうが良いのではないかと思っています。なんとなく雰囲気がいいとか、作業しながら流し見できるような番組ではなく、「集中して見たくなるもの」を作ることができれば、テレビをつけるハードルを超えて見てもらえるだろうと思います。
――番組の企画を練る上で、事前に市場調査みたいなことは行うのですか?
会社にマーケティングを扱う部署があるので、もちろん情報も上がってきますが、そこまで強くは意識していません。もちろん、人の話を全く無視して作っているわけではありませんが、市場調査はあまり気にしていないかもしれないですね。基本的には自分が肌で感じる世間の温度感と、自分が面白いかどうかという基準で決めることが多いと思います。
視聴者の熱量を評価する仕組みが必要
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