2021年もいよいよラストスパート!今回はD2Cブランドの成功で注目される2人の対談でお楽しみください。マッスルブランド「VALX」のレバレッジ代表・只石昌幸さんと、スペシャルティコーヒーの定期便「PostCoffee」のPOST COFFEE代表・下村領さんによるMarketing Native LIVE vol.6です。
個性的な発言を次々繰り出す只石さんと、終始冷静な語り口の下村さん。下村さんを立てつつ場を大いに盛り上げる只石さんと、只石さんのアドバイスを熱心に聞き入る下村さんが好対照でありながら良い感じで交わり、モデレーターの秤代表・小川貴史さんの舵取りもあって、とても面白い対談になりました。
クリスマス休暇や年末年始にぜひお読みください。
(構成・文:Marketing Native編集部・早川 巧)
目次
D2Cブランド立ち上げに至るストーリー
小川 下村さん、私もPostCoffeeを飲み始めました。
下村 ありがとうございます!
只石 実は私ももう2年くらい前からPostCoffeeを飲んでいます。このイベントの前に顧客リストを確認していただけました?
下村 えっ!いや、ちょっと…気づいていなかったです。
只石 ええっ!ご存じなかったんですか!?僕、ロイヤルカスタマーですよ(笑)。この箱はハロウィンのときの仕様ですよね。オレンジ色で、手書きでTrick or drink coffee…こういうのが非常に勉強になるんです。
「VALX」(レバレッジ)代表・只石昌幸さん
下村 ありがとうございます!すごくうれしいです(笑)
小川 僕はこのイベント前に勉強を兼ねてPostCoffeeを飲み始めたのですが、只石さんはヘビーユーザーだったんですね。
只石 ロイヤルカスタマーなのになあ(笑)
小川 さすがです。それでは対談を始めます。まず下村さんからビジネス立ち上げの背景をあらためて教えてください。
下村 はい。私たちは兄弟でPOST COFFEEの経営をしています。もともとクリエイティブの制作会社を16年ほど経営していたのですが、自分がコーヒー好きなこともあって、東京・渋谷に勢いでコーヒー店を立ち上げました。そこで自分もバリスタとして店頭に立つうちに大きな気づきを得まして、それが「ほとんどの人は美味しいコーヒーを知らない」ということです。
ただ、ビジネスチャンスだとは思いつつも、コーヒー店1店舗だけで多くの人に美味しいコーヒーの存在を知ってもらうのは困難だとも思っていました。そこで制作会社で手掛けていたデジタルやクリエイティブの力を使って課題解決をしたいと考えたのがPOST COFFEE立ち上げのきっかけです。ですから、「D2Cブランドを立ち上げよう」ではなく、美味しいコーヒーを広めたいとの思いから始めたビジネスであり、たまたまD2Cの時代が来て自分たちの意識していないところでD2Cと呼ばれるようになったと捉えています。
POST COFFEE代表・下村領さん
小川 「D2C」の呼び方は後付けで、世の中がそう呼んでいるだけであり、原点・背景は美味しいコーヒー体験の普及にあるということですね。ありがとうございます。続いて只石さん、D2Cブランドのプロテイン(VALX)事業を立ち上げられた背景を教えてください。
只石 現在起業して16期目で、もともとはキーエンスにいました。キーエンスは営業に強い会社と思われがちですが、徹底したマーケティングドリブンの企業です。僕はキーエンスでは芽が出なかったのですが、起業してからも10年くらいはキーエンスで学んだことを活かして、営業をせずに受託の仕事をしていました。ただ、僕は何事も中途半端が嫌いで全力でやり切るタイプなので、0か100しかないんです。100で提案してお客さまから「やり過ぎだから60くらいでお願いします」と言われると、「こちらはお客さまの利益最大化を考えてご提案しているのに、なぜブレーキをかけるんだ」と考えてしまって、衝突することもありました。
そこで、自分でメディアを持ってブレーキをかけずに思いっきりアクセルを踏もうと考えて始めたのが「ダイエットコンシェルジュ」というパーソナルトレーナーとダイエットユーザーのマッチングメディアです。これは5年前にスタートして垂直立ち上げに成功しました。そこに登録している2000人ほどのトレーナーに「今後のビジネス展開で、プロテインの通販を始めたいんだけど、監修者として誰が勧めるプロテインなら飲みたいですか」とアンケートを取ったところ、700人くらいが回答してくれて、うち9割が「山本義徳先生」でした。
そこで「山本義徳先生とは一体、何者!?」という衝撃を受けまして、山本先生との出会いを経て、先生の知識・知見をYouTubeなどで配信してビジネスとして成立するレベルまで集客したところで、「先生が心から良いと思ったものを形にするので一緒にやりましょう」とお声がけして始まったのがVALXというブランドです。具体的に言うと、山本先生のYouTubeチャンネルは半年で10万人の登録者数を達成しました。10万人を達成したところで「VALX アミノ酸EAA9」を発売したところ、いきなり売れたんです。D2Cブランドの中には最初は赤字覚悟で大きな広告宣伝費をかける会社もあると思いますが、VALXは2019年10月の販売開始以来赤字の月はありません。
ブランド立ち上げ時に苦労したこと
小川 ありがとうございます。次にブランド立ち上げ時にご苦労された点についてお聞きします。下村さん、いかがですか。
下村 苦労しかしていないですね(笑)。強いて言えばユーザーの解像度を高めることに最初は苦労しました。解像度を高められない状態でコストをかけてβ版をリリースしたのですが、もともと自分が強く感じていたペインに対するソリューションとしてプロダクトを作ったはずなのに、リリースしたときにユーザーにハマらなかったのです。その失敗経験を基にユーザーインタビューを徹底的に行いながら解像度を上げ、ようやく2020年2月の正式版リリースにつながった形です。
小川 β版と正式版で解像度はどんなふうにズレていたのですか。
下村 β版のときに自分が強く感じていた「コーヒーを飲む人たちにとってのペイン」は、シンプルに言うと「朝コーヒーを淹れるときにコーヒーがないこと」でした。そのペインを解決したくて、最初iOSアプリを出したのですが、プロダクト、マーケティングなどさまざまな点で自分たちの未熟さがあり、そのペインを強く感じている人たちになかなかアプローチできませんでした。そこからユーザーインタビューを繰り返し、実は「コーヒーがないこと」ではなく「そもそも美味しいコーヒーを知らないのだから、まず出合いたい」がペインだと気づきました。そこでWebサイトに「コーヒー診断」という入り口を設けて、コーヒーに関する知識があまりない人でも好みに合ったコーヒーを選べるプロダクトに改善したところ、少しずつお客さまに支持されるようになりました。
小川 ありがとうございます。では、只石さんはいかがでしょうか。ご苦労された点はございますか。
只石 まずお話ししておきたいのは、僕は今、マーケティングにもブランディングにも99%関わっていないということです。VALXを立ち上げて最初の1年くらいは毎月の売れ行きや解約率などを見ながらいろいろ考えていたのですが、その後に何も生まれないことに気づいてやめました。それなのにVALXがなぜ伸びているかというと、優秀なスタッフが頑張ってくれているからです。いろんなところで「VALXの担当者はすごい」と評判を聞きます。本当に素晴らしいと思います。
小川 そうなんですね。ちょうど経営者としてマーケティングの戦術やクリエイティブにどれくらい介入されているかお聞きしようと思っていました。只石さんは介入せず、スタッフが自走できる仕組みを整えていらっしゃる、と。
只石 そうですね。僕は性格が細かいので、ランディングページにしてもYouTubeにしても、見たらつい口出ししたくなります。でも、口出しするたびにスタッフからロジカルに反論されるんです。それで「そうだよな。自分よりスタッフのほうがランディングページやYouTubeに心血を注いでいるんだから、中途半端に口出しするのは良くないな」と感じて反省しています。実際、裁量権を大幅に与えたスタッフが驚くような結果を出しているわけですから、今は任せたほうがいいと思っています。
ただし、僕が1つだけやっていることがあります。それはYouTubeチャンネルでもサプリメント作りでも、それぞれの領域のプロフェッショナルをたくさん連れてくることです。本当に大勢の人を連れてきます。YouTube1つを取っても、チャンネル登録者数の多いYouTuberからYouTubeのコンサル会社、YouTubeの企画編集会社の社長、YouTube動画制作会社の担当者ら20人くらいを連れてきましたし、今も連れてきて勉強会をしています。その点については日本で一番たくさんの意見を聞いているD2Cブランドである自信があります。おそらく僕ら以上に研究熱心な会社はないと思います。
小川 ありがとうございます。一方、そういうやり方をされている只石さんに対して、ご自身もクリエイティブ経験の長い下村さんは、経営者としてどの程度介入していますか。
下村 只石さんの姿が経営者としてあるべき姿だとわかってはいるのですが、クリエイティブについては自分たちのフィルターを通して発信するように心掛けています。
小川 おお、おふたりの方法が見事に分かれましたね。
只石 僕はFacebookを見ていて、たまにVALXの広告が入ると「ああ、こういう売り方をしているんだ」「キャッチコピー、案外うまいな」なんて見ています(笑)
小川 下村さんがクリエイティブ領域で特に気をつけていることは何ですか。
下村 スペシャルティコーヒーという存在自体に近寄り難さや面倒くささを感じさせる障壁がある気がするので、PostCoffeeはなるべくおしゃれさと親しみやすさを感じてもらうことを重視して、気軽に買っていただける商品になるよう心掛けています。
小川 心理的ハードルを下げて親しみやすさを感じてもらうことに気をつけていらっしゃるわけですね。
下村 まず入り口で足踏みしないように、すっと入ってきてもらうことを意識しています。
秤代表・小川貴史さん
新規顧客獲得のポイント
小川 なるほど、ありがとうございます。次にお聞きしたいのが新規顧客の獲得についてです。デジタルマーケティング担当者にとって新規顧客の獲得は避けて通れないことだと思いますが、下村さんはどんなことに注力していますか。
下村 UGCをいかにたくさん生むかに注力しています。シンプルなところで言うとコーヒーの入ったボックスを開けた時点で写真を撮ってInstagramやTwitterにアップしたくなる環境の構築に力を入れています。そのためには全体的なブランド感をきちんと作り込んでおく必要があると思いますので、そうした点を全部含めてUGCを生みやすい環境作りを行っています。
小川 冒頭で只石さんにPostCoffeeハロウィン版のパッケージをご提示いただきましたけど、例えばそういうクリエイティブに注力されているということですね。
下村 そうですね。ボックスには配送スタッフによる手書きのメッセージも入っているのですが、それもスタッフによってイラストが入っていたりテイストが違ったりして、いろんなバリエーションがあります。そういうのもUGCを生む1つの仕掛けになっていると思います。
小川 手書きなんですか!
下村 全部手書きですね。
只石 印刷ではなく間違いなくマジックで書いてあります。
小川 何と…。CPAがいくらとか、デジタルマーケティング従事者はついそういう思考に陥りがちなのですが、本質はそこではないというお話ですね。ありがとうございます。では、只石さんは新規顧客の獲得方法についていかがでしょうか。
只石 これに関してはちょっと問いかけをさせてもらいたいのですが、小川さんと下村さんは最近本を買いましたか。
小川 データ分析マニアなので、本はよく買います。
下村 私もよく読みます。
只石 下村さんが本を買うきっかけは何が多いですか。
下村 最近はやはりSNSに投稿された誰かのレビューが多いですね。
只石 そうなんですよ。僕も本が好きでよく読みますし映画館にも行きますが、テレビCMなどの広告を見て「面白そう」と思うことはあまりなくて、尊敬する人の「面白かった」「勉強になった」というレビューを見た瞬間にAmazonで買ったり、映画の上映時間を調べたりすることが多いんです。要するに「誰が勧めるか」が大きいと気づいたんです。もちろん、現場のスタッフは新規開拓を一生懸命頑張っていますが、僕がVALX全体として大事にしているのは「誰が勧めるか」です。それは大きな頂点で言うと山本先生が勧めるVALXであり、そのVALXを僕らのパーソナルトレーナーの人たちやボディメイクの大会に出る人たちが勧めてくれるから購入する動機になっているのだとSNSを通じて感じます。
新聞広告に新刊の案内が載っていても情報としては見ているけど、僕の場合はAmazonを開くきっかけにはなかなかなりません。確かにLTVを計算して、それに対する広告費で広告運用するのも大事かもしれませんが、一方で誰が商品を勧めてくれたら購入してくれるだろうかと考えることも悪くないと思います。
注力すべきSNSの選び方
小川 ありがとうございます。次はそのSNSの活用方法についてお聞きします。まず下村さんからお願いします。
下村 迷走の末にようやく使い方が見えてきました。当たり前かもしれませんが、Twitterはユーザーやマーケットとのコミュニケーションに重きを置いています。PostCoffeeのことをつぶやいている人にメンションしてコミュニケーションを取ったり、「コーヒー サブスク」で検索してツイートしている人にメンションしたりしながら、マーケットが何を求めているかを探っています。一方、Instagramはインスタメディアを作ったりいろいろ試したりした結果、今は世界観の構築やブランドの醸成をやりきることに決めました。理由としてはUGCからPostCoffeeのアカウントに飛んだときに、初見で「おしゃれだな」「素敵なコーヒーライフを送っているな」とユーザーに感じてもらうことが重要で、実際に結果につながっているからです。
小川 逆に「あまり合わなかったな」と感じた施策はありますか。
下村 例えばアフィリエイトはPostCoffeeとマッチしないと感じました。PostCoffeeというプロダクトの本質をアフィリエイトでは十分に伝えられないとわかり、むしろもっとプロダクトに磨きをかけてユーザーがお勧めしたくなるように改善したほうがいいと考えて、アフィリエイトから撤退しました。
Instagramのメディア化も一旦手を引きました。メディア単体での成長はできるのですが、そこからサブスクへのコンバージョンが難しくて、方針を変えました。会社やプロダクトのフェーズと施策それぞれのタイミングが合わなかったことも大きいと思います。
小川 只石さんは公式で運用するSNSに関してどんな考えをお持ちですか。
只石 VALXはYouTube、Twitter、Instagram、TikTok、Pinterestなどあらゆることをやっています。とにかく全部を圧倒的にやると決めているんです。売り上げ構成比率ではYouTubeが一番ですね。今VALXの成功体験を基に、演者さんと契約してVALXの名前を出さずにいくつかのアカウントを運用しています。おそらくアカウント総数は100万くらいいっているはずです。タイミングを見つつ、そのアカウントからいろいろなブランドを少しずつ出していこうと計画しています。
「もうYouTubeは遅いのでは」と言う人がいますが、そんなことはありません。YouTubeはいいですよ!僕自身、これからYouTubeチャンネルを立ち上げようとしていますし、実際にそれくらいYouTubeで人やモノが動きます。
ただ、僕がPostCoffeeの担当者だったら今はYouTubeよりTikTokをお勧めするかな。
下村 なるほど!すごくいいアドバイス、ありがとうございます!
只石 僕の後輩がやっているD2Cが今、TikTokでものすごく売れ行きを伸ばしているんです。TikTokは人を動かすメディアとして非常に優れていると感じます。あとはInstagramストーリーズ。両者ともYouTubeほど動画を作り込まなくていい点も魅力です。今の時代は動画ですよ、動画。
下村 今まさに弊社もYouTube、TikTokに挑戦しようとしていて…。
只石 いくらでもうちの会社に相談に来てくださいよ。自分の考えだけでやっていてはダメです。プロに聞くのが一番。YouTubeのプロを紹介します。
下村 ありがたいです!ぜひお願いします!!
小川 すごいですね。リアルにプロダクトを立ち上げて、実際にSNSのプラットフォームごとにトライアル・アンド・エラーをしながら成功されてきたおふたりのお話なので、本当に学びになります。ありがとうございます。
大事なことはUGCより「TTK」
小川 それでは次に視聴者の皆さまとのQ&Aに移りたいと思います。まずはこちら。「SNSを集客用のチャネルと捉えていますか、あるいはブランディングと捉えていますか」。
下村 集客用のチャネルにするのはすごく難しいと感じます。VALXさんのように登録者数が50万人くらいになるとチャネルになると思うのですが、弊社のように1万人レベルではチャネルとまでは至らず、まだブランディングに注力している段階です。
小川 只石さんはいかがですか。
只石 チャネルとかブランディングとかよりも、ビジネスですから売れなければダメなんです。だからチャネルかブランディングかではなく、どうすれば売れるか、お客さまに買っていただけるかを考えています。D2Cの業界ではブランディングや世界観といった言葉をフワッと使っている人が少なくない気がします。でも「世界観って何なんだ!?」と思うんです。そういう抽象度の高い言葉ではなく、とにかく必死になって売る。お客さまに支持されるプロダクトを作る。そのためにはどんな世界観を作ればいいのかと考えていかないとD2Cはうまくいかないと思います。
小川 九州でD2Cビジネスの立ち上げを担当している方からは「試行錯誤の毎日で只石様のTwitterで勉強させてもらっています。立ち上げ時に失敗したこと、これはやってみて良かったということがあれば教えてください」という質問を頂いています。
只石 その方が九州でどんなD2Cのブランドを立ち上げるかわからないですけど、本当に変な疑問とか思わずに5人のアドバイスを聞いてみてください。僕はD2Cを立ち上げるときにTwitterなどで毎日おそらく100人くらいに連絡します。返ってくるのは4~5人です。でも4~5人返ってきたら1人は会えます。それが積み重なっていくと、いつの間にか資産になります。それなのに日本人の奥ゆかしい性格のせいか、人に聞くことになかなか踏み出せない人が多いですね。奥ゆかしい人はビジネスでうまくいかないのではと思っています。
皆さんはよく3文字の「UGC」とかっこよく言っていますけど、僕も今日、1個だけ3文字のマーケティング用語をレクチャーしたいと思います。「TTK」です。「徹底的に聞け」。これに尽きます。
小川 金言ですね。
只石 聞くのが一番です。僕、このイベントの最中もFacebookで下村さんに友達申請しました。PostCoffeeの世界観をどう作るのか聞きたいんですよ。世の中、本当に温かくて聞くと何でも教えてくれる人がたくさんいます。教えてもらったら今度は恩返しで「あなたのおかげで自分はこんなに成長できました。そして友達がいっぱいできたので今度紹介させてください」と言えば、教えてくれた人にも喜ばれやすいんじゃないですか。大事なのはTTKです。
小川 TTK!徹底的に聞く!ありがとうございます。また只石さんに質問です。「なぜそんなに初期の段階でYouTubeの視聴者数、登録者数を伸ばせたのでしょうか」。
只石 徹底的に聞いたからですよ。僕HIKAKINさんにまで連絡しましたからね。もちろん返信なんかないですよ。ないけど、出すのは自由じゃないですか。そこなんですよ、本当に。礼を持って丁寧に連絡すれば、怒られることもありません。無視されるだけです。そしたら次に行けばいいんです。
小川 次の質問も同じ流れですが、「専門家に聞いたほうが良いとの話がありましたが、只石さんはどこ経由で専門家に依頼されていますか」。
只石 それはすごくいい質問です。本屋さんなんです。例えばD2CやYouTubeの本を5~10冊買ってきて、しっかりしたことを言っている人にFacebookやTwitter、Instagramから本の感想と合わせて連絡するんです。ただメッセージを送るのではなく、本を読んだことでどんな気づきがあったかなどを添えることが大事です。
クレームとの向き合い方
小川 ありがとうございます。次はおふたりにお聞きします。「プロダクトに対するクレームはないでしょうか」。
只石 ありますよ。SNSをやっていると「だまができる」「久々に飲んだらプロテインが固まっていた」などと来ることがあります。「“久々に飲んだら”って…」と思わないでもないですが、僕らはできる限りお客さまの意見を受け入れて今後の開発のヒントにしたいと思い、参考にしています。一方、怒鳴り散らして理不尽な内容を電話してくる人もごくたまにですが、いらっしゃいます。ただ、今後はブランドとしてそういう方との付き合いは考えなくてはならないと考えています。お客さまはもちろん大切ですが、ブランドを守ることも重要です。僕、何かあったときのために空手をやっているようなものですから(笑)
小川 何かあったときって(笑)。ブランドが大きくなるにつれてお客さまと向き合う機会も増えますが、「お客さまは神様です」ではなく、きちんとした向き合い方を模索していくことが大事ということですね。下村さんはどうでしょうか。
下村 弊社にもたまにいろんなツイートやお電話を頂くことがあります。その多くは我々のミスや改善点なので、なるべく優先的に解決するように動いています。一方、例外のクレームについてはまず全てを聞くということをやっています。ただ、実際にその内容をプロダクトに落とし込んでしまうと全ユーザーが影響を受けるおそれがあります。ユーザーやブランドを守る観点として正しいかどうかという点はしっかりと精査して取り組んでいます。
小川 お客さまの声に向き合いつつも、守るべき大事なポイントを見失わずにやっていくというところでしょうか。ありがとうございます。
本日はMarketing Nativeの読者にとっても、そして私にとっても学びの多いウェビナーになったのではないかと思います。只石さん、下村さん、あらためてありがとうございました。
――それでは最後に登壇者の皆さんから一言ずつお願いします。
只石 僕らもVALXを立ち上げてまだ2年で、もがき続けています。ただ間違いなく言えるのは本気でやっていることです。おかげさまで今、年362%成長ということで表彰されたりもしています。本当に今、仲間を募集しています。日本最高峰レベルのD2Cで働きたい、もしくは今やっている知識をもっと活かしたいという方はWebサイトや僕のTwitterアカウントにメッセージをください。うちは裁量権しかないです。VALXの責任者は新卒4年目で、全部彼がやって成果を出しています。
下村 すごく楽しいお話が聞けて自分も勉強になりました。弊社も社員を募集しています。弊社はまだ正社員が7人しかいなくて、プラス自分の弟と自分を合わせた経営者2人を合わせて計9人の会社です。これから1年から1年半くらいかけてプラス10人ほど社員を迎え入れたいと思っていますので、WantedlyやGreenから気軽にメッセージを頂けるとうれしいです。
小川 僕も今日いろんな学びを得ましたけど、1つ挙げるとしたら「マーケターはかっこつけずにTTK!」ですね。以上です。
只石 覚えましたね(笑)
――本日は皆さん、ありがとうございました。
Profile
下村 領
POST COFFEE株式会社代表取締役。
1999年フリーランスのWebデザイナーとして独立。2005年にデジタルクリエイティブ制作を手掛ける株式会社ヘレティックを設立。自身もデザイナー兼エンジニアとして16年経営後,スタートアップ企業のCTOを経験。2015年スペシャルティコーヒー専門のコーヒーショップを渋谷にオープン。2018年9月PostCoffee創業。
Twitter:@cyberryo
只石 昌幸
株式会社レバレッジ 代表取締役。
大学卒業後、キーエンスに入社。退職後、レバレッジを創業。日本最大級のパーソナルトレーナーマッチングサイト「ダイエットコンシェルジュ」を立ち上げ、事業を軌道に乗せる。2019年にD2Cブランド「VALX」を立ち上げ、ブランドコンセプトや山本義徳氏の起用、商品企画などに携わる。「EAA9」をはじめとする人気商品を数多く世に送り出す。
Twitter:@kodawari_ceo
小川 貴史(モデレーター)
株式会社秤 代表取締役社長。
イベント会社で映像機器オペレーター、ディレクター、プロデューサーを経た後、総合広告代理店へ転職。2011年にDAサーチ&リンクに転職し、新規営業を担当した後、2012年に電通ダイレクトフォース(現・電通ダイレクトマーケティング)へ転籍。2017年よりネットイヤーグループのアカウントマネージャー職、2018年よりカーツメディアワークスに執行役員兼デジタルマーケティング事業部長シニアコンサルタントとして勤める。2019年12月に自身が代表取締役社長を務める秤を立ち上げ、研修やコンサルティング事業などを提供している。著書は『Excelでできるデータドリブン・マーケティング』(マイナビ出版)。
Twitter:@dancehakase