注目トピック
2021.11.24

みる兄さんとフラクタ河野貴伸が語り合う!デジタル時代の顧客体験とブランド価値の高め方――Marketing Native Live vol.5

今回のMarketing Native Liveも密度の濃い内容になりました。出演者はMarketing Nativeで「話題のプロダクトについて考えてみた」を連載中の匿名マーケター・みる兄さんと、企業のブランディングをトータルサポートするフラクタ代表の河野貴伸さん。

デジタル時代が進化する中、企業と消費者の接点が増加し、複雑化しています。消費者が4マス広告だけでなく、隙間時間にスマホをチェックして手軽に情報を入手できるようになったことで、ブランド担当者はECに商品を並べて広告を打てばいいわけではなく、Twitter、Instagram、YouTube、TikTok…と対応すべきことが増え続けています。

そんな時代に浮足立つことなく、ブランド価値と顧客体験を高めるにはどうすれば良いのでしょうか。日頃から企業のブランド担当として働くみる兄さんと、ブランディング支援会社代表の河野さんが語り合いました。ブランド担当者「あるある」話が満載です。

※スライド提供:株式会社フラクタ

(構成・文:Marketing Native編集部・早川 巧)

目次

ブランディングの2つの目的

みる兄さん お話を始める前に「そもそもブランドとは何か?」の認識が私と河野さんでずれていると先へ進めないので、まずブランド、ブランディングとは何か、解説をお願いできればと思います。

河野 書籍などに書かれている内容と大差はないですが、わかりやすく言うと、お客さまにどう思っていただくか、どのように感じていただくかの活動がブランディングだと考えています。ただ、手法については時代によって変化すると捉えていて、情報流通量の多い現代では、いかに自分たちを理解してもらうかだけでなく、どのような人たちにどんな価値を感じてもらうかを考えることも大切です。ですから、誰に何をどのように伝えるかを設計した上で、成果として実際にターゲットの人たちに自分たちが考える理想の姿を感じてもらえるようになるまでがブランディングだと思います。

みる兄さん まさに消費者の頭の中にどう思ってもらうかが大事なのですが、一方で「そもそもブランディングの目的は何か?」「ブランディングによってどんな変化や成果が上がるのか?」をおざなりにしたまま会話が進みがちな部分もあると感じます。

河野 よくお話しするのは「信頼」です。世の中に数多くの商品やサービスが存在する中で、消費者に選んでいただくには、信頼性の高さが1つの重要な基準になります。信頼があれば多少値段が高くても、あるいはちょっと手に入りづらくても、その商品・サービスを欲しいと思っていただくことは可能です。ですから信頼の醸成がブランディングの目的の1つと言えます。

もう1つは、1人の人が拡散力を持つ時代背景に基づく目的です。以前なら良い商品やブランドに出合ったとき、その良さを伝えられる相手はせいぜい会社や学校の友達、近所の方、家族くらいしかいなかったと思います。しかし現代ではSNSを運用されている方なら、100人から1000人、時には1万人のフォロワー数をお持ちの方もいます。つまりSNS運用者1人の発信によって1万人が動く可能性のある時代なのです。そのため、スライドにある「スタイリッシュでかっこいいし、ウィットなところが好き」というふうに情報発信に積極的な方々がブランドの優れた点を語りやすくすることもブランディングの大事な目的だと考えています。

みる兄さん 確かにブランドのどこが素晴らしいかがわかりにくいと、人に伝えるときも「何かいいんだよね」としか言えないですからね。それではSNSで伝わりにくいので、ブランドの長所がきちんと伝わる工夫をするという点は大事だと感じました。

河野 伝えやすいようにきちんと言語化することが大事で、そこまで作り込む必要があります。ただ、その際に注意したいことがあります。

上のスライドはブランディングが途中でストップする1つのパターンを書きました。ビジョンやフィロソフィー、パーパス、Whyなどを作ったからといってブランディングが完成するわけではなく、そこからは炎のような情熱と冷静な客観性の両立が必要で、そこが難しいのです。

みる兄さん ビジョン、ミッション、最近ではパーパスなどよく出てきますね。ここを外部のパートナーと決めるプロセスは大変なのですが、いざ完成すると、「で?」「だから何?」と、そこで止まってしまうケースは確かにありがちです。

河野 あとは変に争いを避けてしまうのも良くないですね。私は「闘争」という言葉を使うのですが、クリエイティブの部署と営業などビジネスの部署の人たちがバトるくらいに語り合い、切磋琢磨していかないとブランドは磨かれないし、最終的に生き残るのは難しいと感じます。「ブランドビジネス」ですから、売れるため、買っていただくためにブランディングで決めたことをどのように活用し実践していくのかを考え続けるのが重要です。

ブランドのアイデンティティを考慮しながらチャネルを絞る

みる兄さん ありがとうございます。次のテーマに移ります。

河野 デジタルでの接点増加にとどまらず、コロナが経営の意思決定方法に大きな影響を及ぼしたと感じます。これまでは過去から未来をある程度予測できる、もしくは確度高く予測できなくても一定のレベルなら先を見通すことが可能だったので、目的を達成するために何をすれば良いかを見つけだすのは今ほど難しくありませんでした。

ところが現在は、コロナの影響で未来の予測が極めて困難になりました。「何が起こるかわからない」という状況はコロナが収束気配にある今も変わらないと思います。そんな時代ですから未来予測に必要以上のリソースを割くのではなく、自分たちができることは何か、提供できる価値は何かを考え、それを喜んでくれるお客さまや市場を一緒に作り、成長させていくことが大事だというふうに経営の意思決定方法が変化していると感じます。

みる兄さん 私もそれに近いことを感じる機会がよくあります。勤務先の会社はレガシー寄りですが、中長期で戦略を立てるより市場に出してトライアル・アンド・エラーで競争しながら成長しようと模索する方向にシフトしつつあると感じます。河野さんもお客さまとのやり取りの中で、その点を肌身に感じるということですか。

河野 そうですね。そこで注意したいのは、全ての面で長期的な戦略立案が意味をなさないわけではないということです。コロナ禍にECやSNSの重要性があらためてクローズアップされましたが、ソーシャルメディアはやはりフロー型で刹那的な役割を担うことが多い印象です。ですからソーシャルメディアを頑張る一方で、ストック型のコンテンツや、先ほど申し上げた「信頼」の重要性に注目することも大切です。つまり、広告など刹那的な施策を大量投下して市場を占有する動きもある半面、お客さまの感情面を考えながら一緒に需要を作って市場を大きくしていく流れも生まれてきているというのが私の意見です。上のカスタマージャーニーにあるオレンジ色の線がその感情曲線を表しています。

みる兄さん 企業としてやることが増える一方、お客さまも昔の4マス中心の時代と比べて隙間時間にスマートフォンでいろいろな情報を見られる時代ですから、接点が非常に複雑になっています。そんな中で、刹那とは異なる、積み重ね施策の重要性をパートナーを含めたチームの共通認識として押さえておくのが大事ということですね。

河野 そうですね。そのためにはインナーブランディングとして、日々の業務の中で「これは自分たちらしくない」「これはちょっと違う」と、やらないことを決めておかないと長期的にぶれてくるおそれがあります。私はそれを「ブランドの法律」と呼んでいます。

みる兄さん チャネルを絞ることが1つのポイントになりますね。今はSNSを見てもTwitterもあれば、Instagramもあり、Facebookはそれなりにきちんとやらなければいけない、さらにTikTokが出てきました、YouTubeはどうしましょう、LINEアカウントはどうする、メルマガは…といろいろ出てくる中で、焦って手を広げすぎるのではなく、ぶれない軸を決めるのが大事だ、と。

河野 ブランドさんの中にも「そんなにいろいろ考えなければならないの?」「商品を作ってECで並べたら売れるんじゃないの?」と期待される方がいます。そんなときは「オーケストレーション」と呼んでいるのですが、オーケストラの演奏をイメージしてほしいと伝えています。例えば、ある楽器はあるパートでは音を鳴らさないけど、その曲が一番盛り上がるところでは音を大きくするという具合に、伝えたいこと、感動させたいところにできる限りのエネルギーを投入できるようにしたほうが良くて、逆にそれ以外についてはできる限りエネルギーを使わないほうがいいと話しています。これだけデジタルでの接点が増えた時代に全てに全力で当たっていると担当者の身心が消耗しやすくなります。テクノロジーの力を借りて効率化できるところはそうしたほうがいいですね。

みる兄さん 施策ベースでいろいろと動き始めると、パンクして収拾がつかなくなるおそれもありますが、最初に自分たちがどういう存在で、お客さまはどんな人で、だからこんなふうにアプローチしていこうと見えていれば、「Facebookは省力化して、Instagramで頑張ろう」などと絞ることが可能です。ただ、担当者の好みが出すぎたり、競合の事例でちょっとバズ的な記事が出たりすると、腰が浮きがちなんですよね(笑)。「TikTokがキテますね」などの話に敏感すぎるくらいに反応して、ブランドのアイデンティティに対する配慮を欠いたまま施策のトレンドを追いかけてしまうのはありがちなパターンです。

河野 トレンドを追いかけるのが売りのブランドなら良いのですが、そういうブランドは少数派です。それでも、ブランドらしさにテクノロジーが紐付いてくる場合は良いと思います。例えば、若者向けの動画を活用したコミュニケーションで躍動感を伝えたいのであれば、TikTokが合うでしょう。活用しているチャットツールによって、ブランドにスタートアップ感が出がちなのもちょっと面白いですね。

みる兄さん 確かにありますね。インナーのカルチャーはどうしてもにじみ出てしまうものですし、それがツールと合っていれば、お客さまから「っぽいよね」となって信頼を得られ、継続しやすいとは思います。一方、ぶれていると「また新しいことを始めた」「またやめた」となってお客さまにネガティブに伝わることがあります。特にソーシャルメディアで怖いのは、一旦始めたけどうまくいかなくて閉じたときです。お客さまはそこまで気にしていないだろうと思いつつも、ちょっと詳しい方には「ああ、やっぱり閉じちゃったか」と残念な感じに受け取られてしまいがちなんですね。「中の人、苦労しているんだな」というムードが外部に漏れ出てしまうのでは、やる意味があまりないと感じます。

河野 はい。ブランディングは「ING」、現在進行形なので、無理なく続けられることも大事な要素です。

顧客がオンライン接客に求める5つの「E」

みる兄さん では、次のスライドです。ここからは事例を交えて具体的な話をしていきたいと思います。

河野 お客さまが何を価値と感じるかはブランドによって異なりますから、まず何が価値なのかを考えることが大切です。私は一時期、土屋鞄製造所で取締役をさせていただいたことがあるのですが、土屋鞄はお客さまの感じ方を非常に重視する会社で、例えばソーシャルメディアの発信1つ、カスタマーサポートのメール1通を取っても、「その情報発信によって、お客さまにどんなふうに感じてもらいたいか」を考え抜きます。

私は特にコロナ禍においてお客さまがオンラインに感じる価値を次の5つと考えました。

1つ目はExperience、体験。オンラインだけでは完結しないのですが、店舗や商品のパッケージ、商品の使用感、カスタマーサポートとのやり取りなどを含めた体験です。

2つ目はEvangelism、共感、共有。自分のフォロワーに対して「この商品、すごく良かった。ぜひ使ってみて」と価値を共有していく考え方です。

3つ目はEverywhere、利便性。どこでも、いつでも購入できて、すぐに手に入る。さらにデジタルでもリアルでもほぼ同じ体験ができるという期待感です。

4つ目はExchangeで、交換価値。社会や環境に対してコミットしている、ただお金を払って購入しているのではなく、少しでも世界が良くなることに貢献しているという最近広がり始めた考え方です。

5つ目がExistence、そこに「今」存在している「ライブ感」です。コロナ禍で強く求められた部分で、お店に行けずに接客を受けるのが難しくなり、そこに人間味が薄れがちだと受け止められた背景から、ライブ感が非常に重要になりました。

この5つの価値をどんなバランスでお客さまが求めているのかを考えた先に、インスタライブをするのか、ライブコマースなのか、Zoom接客なのかといった集客や売り方、あるいはWebサイトのデザイン設計の話が来て、それら全てが顧客体験につながるわけです。

その際に大事なのは物語の設計です。5つの価値を連携させて素晴らしい顧客体験を得られるようにするには、自分自身がワクワクするような物語の設計が重要になります。

みる兄さん そうですよね。実は私が社会人大学院で書いた研究論文のテーマが「ストーリーマーケティング」なんです。とあるサービスを体験していただいたお客さまの感情がその後どのように変化していくかをプロトタイプで小説のように書くことは今もやっています。例えば、OMOの店舗で自分がお客さまになり、店員さん、レジ周り、スマートフォンでの接点をはじめ、こんな体験ならワクワクするし楽しいというストーリーを作成して、作りたい世界観を会社に提案しています。パワポのスライドで作るより物語風にしたほうが未来像が見えやすいので、共感されて熱量が伝わりやすいと思います。

河野 まさしく、そういうチャレンジ、訓練が重要ですよね。

みる兄さん では弊社でもメンバーに「その企画書を一度、小説っぽく書いてみて」と言ってみようかな。ペライチでいいので、旅のしおりのように時系列で作ると、カスタマージャーニーをきっちり作る手前のイメージは出しやすいし、まず作っている自分がワクワクすることが重要だと理解しやすいかもしれないですね。

ブランド担当者がやりがちなことと、やってはいけないこと

次のスライドに行きましょう。しくじり体験的なところは共通項が多いし、再現性も高いと思います。

河野 今日一番伝えたかったことです。私も過去の経験を振り返ると本当に申し訳なく思いますし、皆さんにも絶対にやってはいけないこととしてお伝えしたいのが、「ブランディング」という免罪符です。「これはブランディングなんです」「ブランディングのために必要なんです」と言い始めると、うまくいかないことが多いですね。成果として説明しにくいものに「ブランディング」と名づけて投資をしても基本的には検証できませんし、再現性もない中で湯水のようにお金を使って終わりという形に陥りがちです。

みる兄さん 私も以前、ブランドの担当者として予算を持ったときに、AppleやNikeのムービーに感化されて、ちょっとおしゃれなことがしたくなり、「うちもこういう動画を作りませんか」と提案したことがあります。そんなとき「何の意味があるの?」と聞かれて「ブランディングです」と答えると、魔法の言葉のように意外と通ってしまうんですよね。そこは、しくじりがちなところだと感じます。

河野 そうですね。次のスライドを見てください。

「船頭多くして船山に上る」という話です。上でコントロールする人がそれぞれの役割の人たちを切磋琢磨させてうまく収めている分には良いのですが、EC、ブランド、マーケティングなどそれぞれの部門でトップがいたり、あるいはトップが2人いたりする場合や、複数の会社が絡んでいると、うまくまとまらないケースが出てきます。「船頭」は1人にしたいです。

みる兄さん これも「あるある」ですね。

河野 例えばD2Cはパッケージの体験が大事だと言われていて、私も開封体験の重要性には同意します。ただそれも配送料などのバランスの中で最高の体験を作ることが大事なのであって、どう考えても赤字になるような箱を作ったりして過剰投資するのは間違っていると思います。船頭が2人以上いると、そういうことをしがちなんです。

みる兄さん 船頭の多さ以外にも、部分最適で部門ごとに細分化、専門化されていると起きがちですね。EC、SNS、配送などとアメーバ組織的な感じに分かれてしまって、ブランドの世界観を統括するトップが不在のままそれぞれの部門が強くなり綱引きを始めると崩壊への一歩という気がします。でも、そういうクライアントが来ることはないですか。

河野 そうですね、ECと店舗の問題もいまだに起きますからね。

みる兄さん ECと店舗で「売り上げやコストをどちらに付けるか問題」は本当に多いですよね。

河野 究極は人事評価制度まで変える必要があります。特に大手企業や老舗企業の場合は人事評価制度のコンサルティングに入ってもらって一緒にやることが多いですね。ブランディングを本格的に始めると10年は止まれませんので、人事評価制度をしっかりと作っておくことが大切です。

みる兄さん よくあるのは、担当者はブランドに対しての危機感を持っているけど、会社全体としてはそうでもないときにどうすれば良いかという問題です。経営者がトップダウンで人事評価制度から変えようとGOサインを出せる場合は良いですが、ボトムアップで進めるのは難しいと思います。

河野 そうですね。次のスライドがそこに関わる問題です。

ブランディングやリブランディングに関して私たちに相談があったとき、「刷新したい」と言われることがあります。「今の若い人向けのかっこいい感じに」「ミニマルなデザインに」などの話をよく頂くのですが、企業の中には過去から脈々と伝統や資産を受け継いでいるところも多いので、そういうブランドが過去からの連続性がない施策を行うと崩壊しがちです。

みる兄さん ブランド担当者あるあるですね。「かっこいいことしたくなる」あるあると、過去を1回断ち切って「自分主導でリブランディングしたくなる」あるあるです(笑)

河野 ECシステムでも同じことがよく起きます。ECの責任者が変わると、リプレイスしたくなる現象です。でもそれはすごくリスキーで、本当にそれをお客さまが望んでいるのか、社内、ステークホルダーを巻き込んで本当に前に進めやすくなるのかを考えないと、その責任者の自己満足で終わってしまいます。「かっこいい」の定義はそもそも自分たちではなくお客さまが決めることで、ブランドを見るよりブランドのお客さまを見るべきです。私もそのポイントに気づいてからは「そこは変えないほうがいいですよ」と言うようになりました。

ネットスーパーと店舗受け取りサービスの人気の背景

みる兄さん ECの流れでOMOに関する質問を2つ思いつきました。1つはネットスーパー系のECアプリです。資金調達のニュースが流れたりして活況になっていますが、徒歩圏、あるいはちょっと自転車で出かけられる距離にスーパーがある人も一定数いる中で、それでもネットスーパーにシフトしてくる人がそんなにいるのか、どれくらいの需要があるのか気になります。

河野 ネットスーパーに関しては日本にとって大きな課題である超高齢化社会を見据えた動きもあるのだと思います。つまり要介護の人たちがすごく増えてきて、私たちのようにちょっと歩けばリアルのスーパーで買い物ができる状況ではない人が今後増えていくと、ネットスーパーの需要は大きいと考えられます。

みる兄さん なるほど、確かにそうですね。

河野 ほかにも、ご老人しか住んでいない地方の町や村にスーパーをつくることはなかなか難しいので、そうした問題の1つの解決策としてネットスーパーは考慮の対象になるのではないでしょうか。

みる兄さん わかりました。もう1つの質問は、クリック&コレクトの店舗受け取りサービスについてです。ワークマンさんのEC注文の57%(2021年3月期)、しまむらさんもEC注文の約9割(2021年2月期)が店舗受け取りだと知って、「本当!?」とびっくりしました。主観ですが、ECの利便性は自宅に届くところにあると思っていましたので、そうではない人たちが主流派とは一体どういうことだろう、と感じたのですが。

河野 そこは私も調べました。大きくは2つ理由があると思います。1つは、梱包するダンボールの処理が嫌いという人が意外に多いことです。

みる兄さん 確かに(笑)。ダンボールを捨てるのは面倒臭いんですよね。マンションですと2週間に1回しか回収に来ないところもありますし。

河野 梱包がしっかりしているのは良いことなのですが、ECを頻繁に利用していると、いつの間にかダンボールが大量に溜まりますからね。

それから、ワークマンさんに関連してですが、アメリカではキャンプ用品がクリック&コレクトというより「カーブサイド・ピックアップ」でよく売れているという話もあります。「今週末、キャンプに行くぞ」となったときに、ECで注文しておくとキャンプへ行く途中にある店舗の駐車場で店員が事前に用意しておいた商品を車のトランクに積んでくれるサービスです。もちろんその分、コストが上乗せされるのが一般的です。

みる兄さん なるほど、そういう動線もあるのか。需要の起点が少し違いますね。キャンプの予定日までにアウトドア用品を入手したいけど、自分が在宅している時間と配送時間の関係などいろいろ考えると受け取れるかどうかわからない、そんなときに便利ですね。特に小物をいくつも購入するときは、事前に店員さんが用意しておいてくれて、店舗へ行けばトランクに積んでくれるという体験をしてしまうと、意外とリピート顧客が多くなりそうな気がします。

河野 もう1つは、送料の問題が大きいですね。

みる兄さん やはりそこですよね。400円から600円くらいとはいえ。

河野 そうですね。事情もいろいろありますし、まとめ買いすると無料になることもあるので一概には申し上げにくいところですが、いくつも注文していると、送料は少し高いと感じる人は多いと思います。

※後編はこちら

Profile
みる兄さん(みるにいさん)
匿名アカウントなマーケター。事業会社のマーケティング部門に所属している。
Twitter:@milnii_san

河野 貴伸(こうの・たかのぶ)
株式会社フラクタ代表取締役。
Shopify 日本初代エバンジェリスト、株式会社Zokei 社外CTO、ジャパンEコマースコンサルタント協会講師、元株式会社土屋鞄製造所デジタル戦略担当取締役(~2020/3/31)。
1982年生まれ。東京の下町生まれ、下町育ち。2000年からフリーランスのCGクリエイター、作曲家、デザイナーとして活動。美容室やアパレルを専門にデジタルコミュニケーション設計、ブランディングを手がける。
現在は「日本のブランド価値の総量を増やす」をミッションに、ブランドビジネス全体とD2Cブランドへの支援活動、およびコマース業界全体の発展とShopifyの普及をメインに全国でセミナーや執筆活動を行う。
Twitter:@TakaKouno

早川巧

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
Twitter:@hayakawaMN
メルマガ
メルマガ
メルマガ
メルマガ