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インタビュー

ピップにファンを!フジモトHD CMO久保田達之助インタビュー「老舗企業にデジタルマーケティングを導入して、定番商品をさらに愛されるロングセラーへ」

最終更新日:2023.08.30

The Marketing Native #34

フジモトHD 執行役員CMO/ピップ 取締役 商品開発事業本部長

久保田 達之助

明治41年(1908年)創業という老舗企業ピップ。「ピップエレキバン」や「SLIM WALK」(以下「スリムウォーク」)などの商品で有名です。

ピップの親会社であるフジモトHDにCMOとして2018年6月に就任したのが、JTBやドクターシーラボでマーケティング部門の責任者を務めた久保田達之助さんです。久保田さんは早稲田大学と明治大学でマーケティングの授業を担当する講師でもあります。

フジモトHDとピップの社長の後押しを受け、112年続く老舗企業にドクターシーラボで培ったデジタルマーケティングの知見を導入しようと奮闘する久保田さん。就任からの3年間でどんな実績を上げ、さらにこれから同社をどのように変えていこうとしているのでしょうか。

今回はフジモトHD執行役員CMOでピップ取締役 商品開発事業本部長の久保田達之助さんに話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)

目次

CMO就任時に感じた課題と3年間の実績

――フジモトHDのCMOに就任したのが2018年6月なので、3年経過しました。就任時、ピップにはどんな課題があり、久保田さんはどのように貢献できると考えたのですか。

最初に感じたのはPRの弱さです。それまでのピップの情報発信はテレビCMなどの広告が中心となっており、一方通行な発信になっていました。私がマーケティング責任者を務めていた前職のドクターシーラボは、少しでもメディアへの露出を増やすべく攻めのPRをしていましたので、ピップのPRの低調さにまず違和感を覚えました。

そこで、テレビ局に勤めていた行動力のある人を1人採用し、現在は計4人でチームを組んで積極的なPRに努めています。

――ほかにはどんなことを変えましたか。

自社ECの全面リニューアルです。ピップはメーカーと卸売りの両方の機能を併せ持つ会社で、実は9割以上を卸売りが占めています。

ピップにもECサイトはありましたが、ただ商品を売るだけのサイトで、使い勝手も良くなくマーケティングにも活かしにくかったため、システムから全面的に入れ替えました。これからECに力を入れ、顧客データの分析を徹底的に行う方針です。

――久保田さんは2つの大学で教えているそうですが、3年間の自分に点数をつけるとしたら何点ですか。

道半ばの50点ですね。改革できたところもあれば、課題も山積しています。私としては2025年を1つの目標に置いていて、そのときまでにメーカー事業の売り上げを少しでも拡大したいと考えています。現在はコロナの影響でマスクや消毒剤など衛生用品の需要が高まったこともあり、卸事業が好調です。今はメーカー事業を立て直すため、あるべき姿を作り、現状とのギャップを埋めて改革に取り組んでいます。改革を進めるにはトップとのコミュニケーションが重要ですので、両社長と月2回雑談会を設定して相談しています。

山積する課題の解決に向けてこれから全社的に注力していくのはデジタルマーケティングです。リニューアルしたECはもちろん、ドラッグストアの協力を頂きながらアプリなども活用してデジタルマーケティングでしっかりと成果を出していきます。

――いきなりデジタルマーケティングといっても、社内で対応できる人材は揃っているのでしょうか。

人材についてはデジタルの開発と運用に強い3名を中途採用した上で、同時にプロパー社員の育成にも力を入れています。両社長とも今の世の中においてのデジタルマーケティングの重要性を十分理解していますので、関心も強く、とても取り組みやすい環境にしていただいています。これまでデジタルマーケティングにあまり手がついていなかったのは、知見やノウハウが蓄積されておらず、どのようにヒト・モノ・カネを投資して軌道に乗せれば良いのかわからなかっただけです。

全面リニューアルしたピップのECサイト。
https://shop.pipjapan.co.jp/shop/c/c1010/

休眠顧客の掘り起こしも狙う50周年記念プロモーションの展望

――定番商品、既存品のマーケティングについてお聞きします。ピップエレキバンやスリムウォークなど、すでに多くの人が知っている商品の売り上げをさらに伸ばすために、どのような施策を打っていますか。

まずはタッチポイントの強化です。ピップはタッチポイントに対する捉え方に課題があります。例えばスリムウォークのCMを流したら、ドラッグストアの店頭にCMと連動したスリムウォークの商品がポップ付きできちんと並んでいることが大前提です。そうした基本的なことがまだ十分ではありません。

消費者からすると、リピート顧客でない限り、CMで認知しても存在をすぐ忘れてしまいます。その後、店頭に並べてあるのを見て「CMで見た商品だ。気になるから買ってみようかな」と思い出すわけです。それなのに目立つところに商品が置かれていなかったり、どこにあるのかさえわからなかったりするのでは、大きな機会損失になってしまいます。ECでも同じです。2021年4月から俳優の伊藤沙莉さんにピップエレキバンのCMキャラクターをお願いしておりますが、ECサイトでも伊藤さんがすぐ目に飛び込んでくるようにしています。そんなふうにタッチポイントを意識するだけで、売り上げは変わってくるものです。

――基本的なことが大事なのですね。

泥臭い努力の積み重ねが大切です。資金も規模感も違う有名な外資系企業や日系大手企業のカッコいいマーケティングを真似する必要はありません。それよりも急成長しているベンチャー企業のマーケティングを参考にしたほうがいい。現場を歩いて、顧客を見て、肌で感じたことを実践してトライアル&エラーを繰り返す。そういう積み重ねの大切さを社内で訴えています。

――私も昔ピップエレキバンを使っていたのですが、そういえば最近使っていないなと取材前に感じました。そういう「そういえばもう何年も使っていない」という休眠顧客は大勢いると思います。そんな人たちを振り向かせるために、どんな施策を考えていますか。

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・PR強化のために指示した3つの方法
・競合とのシェア奪い合いよりも市場の拡大に注力
・ファン化を促し、100年続く商品へ

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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