事業会社に勤務する匿名マーケター・みる兄さんの連載がリニューアルスタートします。
これまではみる兄さんが気になる「話題のプロダクト」を考察した寄稿をお届けしてきましたが、もうそれでは我慢できないとばかりに、今回からみる兄さんが話題の人物に直接話を聞く『みる兄さんの「キーパーソン深掘り!」』が始まります。
第1回のキーパーソンは、株式会社ユナイテッドアローズ 執行役員CDO(チーフデジタルオフィサー)の藤原義昭さん。
同社の2023年3Q(22年4~12月)連結決算は、売上高が前年同期比10.6%増、営業利益が同247.7%増、純利益も同234.9%増と増収増益。業績好調の背景をみる兄さんが深掘りしました。
事業会社に勤めるマーケター同士ならではのインタビューをぜひご覧ください。
(文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:永山 昌克)
※肩書、内容などは記事公開時点のものです。
目次
既存顧客にはInstagram、潜在層にはTwitter
みる兄さん ユナイテッドアローズは業績が好調。背景としては値引き抑制が奏功し、デジタルではECサイトとアプリの両方をリニューアルした効果が出ていると別のインタビュー記事で読みました。ユナイテッドアローズではマーケティングを「集客・接客・CRM」の3つに分解して取り組まれているとのこと。ここを少し深掘ってお聞きしたいと思います。
藤原 おっしゃるようにマーケティングを「集客・接客・CRM」の3つに分けていて、それぞれ担当者も違います。集客にはデジタルとリアルがありますが、リアルで見ると、ユナイテッドアローズは路面店がほとんどなくて、多くはファッションビルショップのデベロッパーさんのところに入っている業態です。したがって、基本的にはデベロッパーさんの集客施策に合わせて販売促進策を打つのが主な集客方法です。
藤原義昭さん
今回は新規のお客さまに関して話をさせていただくと、デジタルはデジタル広告、ソーシャルメディア、SEOと基本的な施策は概ね注力しています。もちろん、全ての施策は独立したものではなく、つながっていますし、販売促進のような短期ではなく中期で集客の全体像を設計しています。その際、テクニカルな集客施策だけに絞るとファッション企業としてのブランドが落ちてしまうので、ROASの合わない非効率なブランディング施策も予算の範囲で取り組んでいます。
他社の皆さまと同じと思いますが、デジタル広告については、社名ワードと指名ワードでの獲得をしっかりと行いつつ、顕在層だけでなく、潜在層の超新規のお客さまにも想起が起きるように少し拡大しながら接触に取り組んでいます。
ソーシャルメディアに関しては、昨年下期10月に課を立ち上げて専門部署にしました。ファッションはソーシャルメディアと相性が良いとあらためて感じます。一般的にはInstagramが良いと言われますが、既存のお客さまをナーチャリングするのに適したメディアという認識で、まだ出会っていないお客さまへの拡散力はやはりTwitterが優れています。テクニカルな部分は外部パートナーの協力を仰ぎつつも、外部から専門の人材を採用してチームを組成し、社内で運用に取り組んでいます。既存フォロワーにとどまらず、新規ユーザーに拡散させるにはテクニックが必要ですが、今ではいろいろなユーザーから少しずつUGCが発生して、認知が購買につながりやすい「積層型」になっています。
私はブランディングも含めた施策の全体感として、アセット(資産)になるお金の使い方をしたいと考えています。フォロワーの獲得もCRMもそうですが、その場だけの販促で終わるお金の使い方ではなく、お客さまに2回、3回、4回と買っていただくことが大切でです。いわばBS(Balance Sheet=バランスシート、貸借対照表)的な考え方で、BSの左側に資産として顧客を貯めていくことを重視しています。
みる兄さん
260にも及ぶKPI。重視して追うのはこの2つ
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