みる兄さんの連載「話題のプロダクトについて考えてみた」が、おかげさまでご好評をいただいております。
読者の皆さまの中には記事に興味を持てば持つほど「みる兄さんとは一体、何者!?」と疑問を感じられる方もいると思います。そこで今回のインタビューはみる兄さんを取り上げ、事業会社のマーケティング部門に所属しつつ、「匿名アカウントなマーケター」として骨太の記事を書き続ける、仮面の下の「素顔」に迫りました。
仕事や勉強の仕方で、読者の皆さまにも参考になるところがあると思います。ぜひお読みください。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:永山 昌克)
目次
衝撃的だった競合の出現と社会人大学院での大きな学び
――事業会社のマーケティング部門所属とのことですが、みる兄さんのキャリアから教えてください。
新卒で事業会社に入社してから数年間、営業をしていました。ただ、就活のときから企画の仕事をしたいと思っていて、入社後も積極的に企画の提案をしていたら、入社5~6年目の頃に社長から「そんなに言うならやってみろ」と言われ、転属の形でマーケティング部に入りました。「意見を言うだけでなく、実行が大事」との考え方が浸透している会社で良かったと思います。
その後また5~6年ほどサービスやプロダクト開発を担当していたのですが、マーケティングに携わっていく中で、仕事の範囲を広げるためにお客さまにもっと近いところで価値を伝えたり広げたりする仕事がしたくなり、希望して宣伝広告や販売促進のプロモーションを担当する部署に転属となりました。
入社10年目くらいの頃、転機が訪れます。競合他社が我々には考えもつかなかった新しいコンセプトを基にプロダクトを開発し、今で言うSNSを活用したマーケティングやファン向けイベントなどの当時としては先鋭的なマーケティング施策を打ってきたのです。世間的にも話題になり、私も良い意味でショックを受けて、「競合はなぜそんなヒットする斬新なマーケティング施策を思いつくのだろう」と興味を持つと同時に、「自分もコツコツと目の前の仕事に向き合いキャリアを積んできたつもりだったが、自社内で得られる経験値だけでは衝撃的な戦略も企画も、マーケティングの全体像も描けない」と危機感を覚えました。
その後、話題の施策を担当している競合の若手社員の一人が、社会人大学院で学んでいるとの噂が伝わってきました。たまたまその少し前に高校時代の友人から「大人になって社会人大学院で学ぶと、視野が広がり、仕事が構造化されて課題や悩みを解決しやすくなる」と聞いていたため、「もしかしたら社会人大学院でマーケティングを学ぶと、上流から下流まで整合性のあるマーケティングプランを作れるようになるかもしれない」とピンと来て、もう一度勉強し直そうと決意したのが、キャリアの中で一番大きな転機です。それが2014~15年のことで、社会人大学院には2年間通いました。
――2年間は結構長いですね。勉強は大変でしたか。
大変でした。中学から大学まで勉強らしい勉強をしてこなかったのですが、30代半ばに自分のカネで学費を払い、どの先生に師事するかを自ら決めて勉強をすると、意気込みや集中力が全く違います。「とにかく投資回収だけは絶対にしよう」と思って勉強に励み、2年間は土日などほとんどなし。仕事が終わると帰宅せずに大学院へ行き、自習室で勉強。その後、またちょっと仕事して就寝…の毎日で、同級生の中でもトップクラスにやり切りました。結局、首席こそ取れなかったのですが、競い合うレベルで結果を残すことができ、満足しています。人生で一番勉学に励んだ時期だったと思います。
ただ家族はというと、そのときには結婚して子供もいたのですが、ほぼ2年間家にいなかったので、さすがに妻は引いていましたね(笑)
――社会人大学院では、ブランド論を勉強したのですか。
そうですね、教授の専門ジャンルがブランド論、ブランディングだったので、いわゆる経営戦略やマーケティング、アカウンティングファイナンスなどビジネスの基礎を押さえつつ、マーケティング、ブランディングに関しては特にしっかりと学びました。具体的には、古典的なマーケティングから最新事例まで、ひたすら理論とケーススタディ分析を行い、レポートを毎月書き続けて、最後は修士論文を提出するという2年間でした。
――その後「ブランディングを学んだので、業務で活かしたい」と会社に伝えたわけですか。
すぐ実務に活かしたいところですが、会社から社会人大学院に派遣されたわけではなく、自分の危機感で通っただけなので、それほど簡単な話ではありません。ただ、基本的に好奇心旺盛なので、社会人大学院で徹底的に行った自社分析を何度も役員に伝えていたら、「会社としても販売促進のためのマーケティング・プロモーションだけでなく、会社全体のブランディングも強化していく必要がある」と理解していただき、「それなら自分でやってみたらどうか」と担当を任されました。現在は個々の製品やサービスのブランドではなく、ブランド戦略の形で企業ブランドと宣伝部のようなコミュニケーション戦略全般、あとは新規事業も担っています。
みる兄さんの寄稿(連載)一覧と記事内で使用された図解。
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