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インタビュー

「30年LTV」を目指す!オルビスのブランド戦略――代表取締役社長・小林琢磨インタビュー

最終更新日:2023.08.01

CEO Interview #26

オルビス 代表取締役社長

小林 琢磨

スキンケアを中心としたビューティーブランドとして知られるオルビス(ORBIS)。2018年に小林琢磨さんが社長に就任して以来、総合通販会社のイメージを一新し、付加価値が高く利益率も高いスキンケアを中心としたブランドへのリブランディングを行いました。

それから5年。価格帯が高めの主力商品が最も新規顧客を獲得していたり、新商品が大ヒットしたりするなど、売上構成が変化するとともに、コロナ禍で一時落ち込んだ顧客数も回復基調にあります。

オルビスはどのように好調さを取り戻し、事業を成長させてきたのでしょうか。そして、AI時代に求められる、さらなるリブランディングとは?

今回はオルビス代表取締役社長・小林琢磨さんに話を聞きました。社長として成果を出すために意識していることや、優秀な社員の特徴についても聞いています。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:海保 竜平)

目次

リブランディング着手から5年、収益構造が筋肉質に

――小林さんがオルビスの社長に就任したのが2018年。事業の在り方を大きく変える徹底したリブランディングを断行したことで知られます。それから今年(2023年)で5年。この5年間をどう評価しますか。

課題はたくさんありますが、1つの形にはできたと思います。例えば、オルビスのスキンケアには1,500円くらいのエントリーラインと付加価値の高い3,000円を超えるエイジングケアラインがあります。リブランディング前の売上構成比はエントリーラインが6割、エイジングケアラインが4割でしたが、今ではエイジングケアラインが7割くらいに伸びています。ブランドの同じカテゴリにおいてお客さまの購買するメインの商品価格がほぼ倍に伸びたわけですから、お客さまに商品の付加価値を認めていただき、一定のパーセプションチェンジに成功したと捉えて良いと思います。

――それは素晴らしいですね。

リブランディングというと、世界観やロゴの変更などの事例が多い印象を受けますが、私の中でのリブランディングとは構造改革です。大切なのは、同じ売上高でもお客さまから付加価値を評価される限界利益の高い状態にすることであり、ただトップラインを上げるのではなく、収益構造の中身、質の強化を徹底的に行ってきました。その結果、限界利益率が8ポイントから9ポイントくらい上がりましたので、構造改革の成果が出ていると考えています。

――直近の四半期の決算を見ても、オルビスは前年同期を上回る売上高を達成しているとのこと。こうした業績の伸びについては、どのようにお考えですか。

数字の事象としては、コロナ禍と比較してかなり回復基調にあり、高い伸び率になってきています。ただ、先ほども申し上げたように大事なのは売り上げの中身であり、限界利益のLTVが高いお客さまが増えていることを評価しています。単に「ヒット商品が出たから一時的に売り上げが伸びた」では、継続性がありません。収益構造がリブランディング前と比較して筋肉質になり、その上でヒット商品も出ているという点については、理想的な状態に向かって少しずつ成長していると感じます。

――ヒット商品とは具体的に何でしょうか。

オルビス リンクルブライトUVプロテクター」という美白とシワ改善が期待できるスキンケアUVが今一番ヒットしています。オルビスの日焼け止めはこれまで1,000円から1,500円くらいの商品がメインでしたが、このスキンケアUVは税込価格が3,850円です。オルビスとしては高価格ですが、美容誌のベストコスメを複数受賞しました。権威のある第三者に品質の高さを評価され、あわせてお客さまから好意的なレビューをSNSなどで頂けているのが大ヒットの要因だと思います。

――すごいですね。主力商品の中でヒットしているのは「オルビスユー ドット」ですか。

そうですね。好調な主力商品という土台の上に、新商品が売れている状態を作るのがとても大切です。「オルビスユー ドット」はオルビスの中でも付加価値が一番高い商品で、発売して4年目になりますが、今も前年比113%を記録しています。新規のお客さまの獲得構成比も「オルビスユー ドット」が一番です。つまり、一番高額な主力商品が新規のお客さまに最も購入いただけていて、しかも既存のお客さまにも評価されているということです。その結果、おかげさまで売り上げが前述のとおり今も2ケタの伸びを示しています。

「30年LTV」の実現に必要なブランドとプロダクトの信頼性

――新規顧客の獲得についてですが、「TwitterやYouTubeで美容インフルエンサーが勧めていたのを見たのが購入のきっかけ」という声をよく聞きます。実際はどんな経路が多いですか。

多くはネット広告のほか、オーガニックの指名検索、Instagramなどのインフィード広告経由です。とはいえ、それはあくまで最終段階の話であって、そこに至る過程ではクチコミが大きな影響を与えています。インフルエンサーさんの影響力ももちろん大きいですが、本当に大切なのはお客さまに評価される商品を作り、お客さまと良好な関係を築くことです。商品を高く評価いただいたお客さまの声や美容雑誌などの第三者評価がネットやSNSで常に上がっている状態にしておくのが重要で、そうした評価を見た人が「オルビス」「オルビスユー ドット」などと指名検索した結果、新規のお客さまの購入につながる流れになっています。

――小林さんの過去のインタビューを拝見すると、LTV最大化の話が出てきます。ポイント制度やキャンペーンなどのマーケティング施策ではなく、お客さまに寄り添う形で伴走して長く継続してもらえる関係性を作ることが大事ということですが、どうすればそういう関係性を築けるのでしょうか。

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・生成AIは「産業革命」。期待する2つの価値
・社長として成果を出すために取り組んでいること
・優秀な社員の特徴と、さらなる構造改革に必要なこと

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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