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インタビュー

Twitterの月間エンゲージメント総数が1年で19倍!日本バナナ輸入組合「バナナ大学」が行ったエンゲージメントを増やす投稿の工夫

最終更新日:2023.07.21

日本バナナ輸入組合

佐藤 豊 山田 結子

FinT

村井 萌

バナナの輸入に関する調査・統計の発表、広報活動などを行う日本バナナ輸入組合。バナナは誰もが知る食材ですが、実は60代、70代と比較して、50代以下にあまり食べられていないというデータがあります。そこで、バナナの栄養素や健康面での魅力などを積極的に発信するため、日本バナナ輸入組合が2021年に始めたのがTwitterアカウント「バナナ大学」です。

「バナナ大学」のフォロワー数は約42,000人(2023年7月時点)と、運用当初から順調に増加しています。驚くのはエンゲージメントの向上施策で、2022年から2023年で月間のエンゲージメント総数が約19倍にも伸びています。では、「バナナ大学」は、どのようにエンゲージメント総数を伸ばすことに成功したのでしょうか。

今回は、日本バナナ輸入組合の広報委員会 委員長代理 佐藤豊さんと広報室 主任 山田結子さん、そしてTwitter運用を支援した株式会社FinT  SNSマーケティング事業部 ディレクターの村井萌さんに、「中の人」のキャラ設定や投稿ネタの考え方、ツイートで工夫した点などを聞きました。また特別に、日本バナナ輸入組合 事務局長の明石英次さんにも同席いただいています。

(文:工藤 麻里子、取材・構成:Marketing Native編集長・佐藤 綾美、撮影:矢島 宏樹)

目次

バナナの購入量が少ない50代以下をターゲットに運用

――日本バナナ輸入組合とは、どのような組合ですか。

日本バナナ輸入組合 山田(以下、山田) 日本バナナ輸入組合は輸入会社や青果会社など21社から成る組合です。1965年(昭和40年)に設立し、現在はバナナの魅力を伝えるための広報活動やバナナの輸入に関する調査・統計の業務などを行っています。

日本バナナ輸入組合の佐藤豊さんと山田結子さん、FinTの村井萌さん▲写真左から、日本バナナ輸入組合の佐藤豊さんと山田結子さん、FinTの村井萌さん。

――日本バナナ輸入組合では、Twitterアカウント「バナナ大学」を2021年3月から運用しているとのこと。それより以前からWebサイトの「バナナ大学」でも情報は発信していましたが、Twitter運用を始めた背景は何でしょうか。

山田 Webサイトの「バナナ大学」はユーザーが何か調べたいことがあって検索したときにたどり着く場所で、どちらかというと受け身のメディアと考えています。Twitterアカウントの運用は、自ら積極的に発信を行うための手段として始めました。栄養面、健康面を中心にバナナの魅力を伝え、バナナに関する情報の認知拡大やイメージ向上を図る手段のひとつとして活用しています。

バナナ大学のWebサイトトップページ▲Webサイトの「バナナ大学」(https://www.banana.co.jp/)。

バナナ大学Twitterアカウントのトップ▲Twitterアカウントの「バナナ大学」(https://twitter.com/banana_univ)。

――情報発信を積極的に行おうと考えたきっかけは何でしょうか。

日本バナナ輸入組合 佐藤(以下、佐藤) 組合で行っている調査の結果や個人の体感などから、バナナの機能性や健康面で期待できる効果、更には美味しさがまだ広く知られていないと感じています。特に、若い人たちにもっと「バナナを食べたい」と思ってもらえるよう、受け身の姿勢ではなく自分たちから情報を発信していく必要があると考えました。

組合では毎年、バナナの食用・購入実態の把握を目的に「バナナ・果物消費動向調査」を実施しています。2022年に行った調査では「朝食に食べるもの」で最も多いのがパン(67.0%)で、次にごはん(49.6%)、ヨーグルト(34.6%)と続き、バナナは4番目の25.7%でした。年代別に見ていくと、男性は70歳以上、女性は60歳以上と年齢層が高いほど朝食にバナナを食べている人が多く、若い人ほど少ないことがわかりました。

日本バナナ輸入組合提供の資料より「朝食に食べるもの」資料提供:日本バナナ輸入組合(クリックまたはタップで拡大します)

さらに、総務省統計局の「家計調査」によると、1世帯あたりの年間のバナナの購入量や支出額は60代と70歳以上が高く、50代以下が低いという結果が出ています。

バナナはかつて輸入を制限され、高価であったため、自由に食べられない時代がありました。その時代に生まれ育った60代、70代の方々は、特に情報発信をしなくても自然とバナナを食べることが習慣化されています。しかし、50代以下の方々にはそういう傾向は見られません。おやつもデザートのフルーツも、現代はバナナ以外に食べるものが数多く存在しています。若い人たちがバナナを食べる機会を増やすためにも、若い世代に親和性が高く、拡散力のあるSNSなどの発信型メディアを活用することにしました。

日本バナナ輸入組合の佐藤豊さん

――ありがとうございます。「若い人たちがバナナを食べる機会を増やす」ということは、「バナナ大学」のTwitterアカウントのターゲットは20代、30代でしょうか。

山田 組合の広報活動はもともと40代、50代をメインターゲットとし、20代、30代はサブターゲットに設定していました。Twitterは幅広い年齢層の方々が利用していることもあり、少し欲張りですが20代から50代くらいをターゲットにしています。

佐藤 若い人たちは情報の拡散力が高く、Twitterの年代別利用率が高いのも20代なので、まずは若い世代に向けて情報を発信し、拡散されることで、上の世代である40代、50代も含めて広範囲にアプローチすることが効率的であると考えています。

――Twitterアカウントは何人体制で運用していますか。

山田 組合側で運用に関わっている人数は全部で8人です。組合には広報委員会があり、委員長代理の佐藤さんのほか、5つの企業の委員が携わっています。日々の投稿など実務的な作業はバックヤードメンバーの3人で実施しています。

日本バナナ輸入組合の山田結子さん

佐藤 広報委員会の定例会議を毎月実施しており、その中でFinTさんから前月の数値や分析に関する報告、次月の大まかな方向性の説明を受けています。投稿内容についてはFinTさんからメールで提案をもらい、それを広報委員会のメンバーがチェックして、問題なければFinTさんに投稿文や画像を作成してもらう流れです。完成した投稿内容は広報委員会で確認し、必要に応じてフィードバックを行います。

投稿ネタに関しては基本的にFinTさんから提案してもらっていますが、定例会議の中で次月に取り入れたいネタや投稿のタイミングについて話すこともあります。また、広報委員会から何か要望があった場合は、それを取り入れて進めてもらう流れになっています。

――TwitterアカウントではどのようなKPIを追っていますか。

FinT 村井(以下、村井) FinTでは2022年からバナナ大学のTwitterアカウントの運用を支援しています。バナナの三大栄養素であるカリウム・糖質・食物繊維の認知拡大のため、1年目は主にツイートがどれだけ多くの人に見られたかを示すインプレッション数を重視していました。

佐藤 三大栄養素の認知拡大を重視している理由は、バナナの栄養素について知っている人のほうが、知らない人よりもバナナの消費量が多い傾向にあるからです。組合が実施した「バナナ・果物消費動向調査」の結果で、バナナを食べる頻度の高い人は「健康によい」「栄養が優れているから」という理由で選ぶ割合が多いことがわかっています。

一方で、バナナの三大栄養素に対する40代、50代の認知度は、約10年前と比較して下がっています。そのため、まずはバナナの栄養素について知ってもらうことが消費量の増加にもつながると考えたわけです。

村井 FinTが支援して2年目からはバナナの三大栄養素の認知拡大に加え、バナナ大学のファンを増やすことに重きを置くフェーズへ移行しています。フォロワーさんの熱量を高めてバナナ大学のファンになっていただければ、「バナナを食べる人の増加」にもつながるからです。ファンを獲得するには質の高いフォロワーさんを増やすことが重要と考えているため、現在はツイートのインプレッション数に加えてエンゲージメント数やエンゲージメント率も追っています。なお、投稿ごとのニーズを把握し、よりフォロワーさんにマッチした投稿内容を企画するうえでも、エンゲージメント数は重要な指標です。

FinTの村井萌さん

月間のエンゲージメント総数・インプレッション数、フォロワー数が増加

――「バナナ大学」のツイートには「ナナミちゃん」というキャラクターが登場します。ナナミちゃんはどのようなキャラクターですか。

村井 ナナミちゃんはバナナ大学に通うバナナが大好きな女子大学生です。2022年3月まではバナナ大学の学長と秘書のナナさんが投稿している設定で、ツイートの文面は今よりも少し硬い印象がありました。しかし、バナナの知識に関して未熟で勉強中の学生というキャラクター設定のほうが、フォロワーさんも投稿内容に親近感が湧き、自分事化しやすいのではないかと考え、女子大学生のナナミちゃんを考案したのです。また、学長や秘書のキャラクターでは一方的に教える形のコンテンツになりがちですが、フォロワーさんと一緒にバナナの知識を学んでいく学生の設定であれば、SNSの強みである「双方向のコミュニケーション」も生まれやすいだろうと意図しました。

バナナ大学のツイートよりナナミちゃん最初の投稿▲ナナミちゃんの最初の投稿。
https://twitter.com/banana_univ/status/1499313330967617536?s=20

――Twitter運用で得られた定量的な成果を教えてください。

村井 約1年間の運用で月間のエンゲージメント総数とインプレッション数、フォロワー数がそれぞれ増加しました。具体的には、月間のエンゲージメント総数は支援当初の420から7,992と約19倍、インプレッション数は252,156から987,060と約3.9倍、フォロワー数は約25,000人から約42,000人と約1.7倍になっています。中でもエンゲージメント数は投稿内容が面白くなければ伸びづらい指標なので、大きく伸ばすことができてよかったと思います。

また、三大栄養素の中でも糖質の認知度が低かったのですが、繰り返し投稿することにより向上しつつあると感じています。Twitterの投票機能を活用してフォロワーさんにクイズを出題し、三大栄養素がどのくらい認知されているか定期的に調査しています。

バナナ大学のツイートより三大栄養素に関するクイズ▲定期的に出題している、バナナの三大栄養素に関するクイズ。
https://twitter.com/banana_univ/status/1593105168291495936?s=20

――エンゲージメント総数を伸ばせた理由は何でしょうか。

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残り4,462文字

・「レシピ」「豆知識」「ユーモア」に分けて投稿内容を工夫
・5月からはTikTokアカウントの運用も開始

記事執筆者

佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。
X:@sleepy_as
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