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インタビュー

仕事がうまくいっていない人が実践したい、できる人の「思考アルゴリズム」とは――北の達人コーポレーション代表・木下勝寿インタビュー

最終更新日:2023.01.11

CEO Interview #23

北の達人コーポレーション

代表取締役社長

木下 勝寿

北の達人コーポレーション・木下勝寿社長の著書3冊が累計12万部を超える人気になっています。中でも昨年11月に出版された最新刊『時間最短化、成果最大化の法則』は、自身の経験に裏打ちされた実践的な内容と、多くの人に届くわかりやすい文章がビジネスパーソンに好評です。

スロースターター気味の人、多忙でチャンスを見逃しがちな人、流行語の「タイパ」を意識している人は、仕事のスキルを磨く以上に、この本に書かれた「思考アルゴリズム」(考え方のクセ)を取り入れて実践することで、人生が変わるレベルの大きな飛躍を遂げられるかもしれません。

今回は『時間最短化、成果最大化の法則』著者の木下勝寿社長に話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、写真:永山 昌克)

目次

    人生が変わる「ピッパの法則」

    ――拝読して、素直にいい本だと思いました。20代ビジネスパーソンなら必読級で、30代、40代でも忘れていたり、できていなかったりする人は、即実行して成長につなげたほうがいいと感じました。本には45の法則がありますが、日頃から書き留めていたのですか。

    基本的な内容は、社員教育用のテキストと、以前お客さまにお送りしていたニュースレターの原稿、あとはTwitter投稿など私が書き留めていた内容をベースにして再編集したものです。私の思考回路そのものを知りたいという読者の方の投稿がTwitterであったのを出版社の編集者が見て、本になりました。

    ――リクルート勤務時代からメモしていたものですか、それとも社長として部下を指導する際に感じたことですか。

    社長になってからの気づきがほとんどです。私も会社の設立(2002年)から20年以上経っています。ベンチャー企業なので、常に新しい人が入社してきますが、社員に何度も同じことを説明する際に、話す内容を一度文章として残しておくと抜け漏れが生じにくく、レベル感も以前話して良かったときと同レベルに統一しやすいので、メモとしてまとめてありました。

    ――ここまでかゆいところに手が届くくらいに書いてあっても、実際に実行する人はそれほど多くないのではないかと思います。それでもアドバイスするとしたら、何かありますか。

    やはり「ピッパの法則」(※)ですね。

    ※ピッパの法則
    ピッと感じたら、後でじっくりやろうと考えるのではなく、パッとやること。パッとできないときは、できる日をその場でスケジュールに組んでしまう。

    とにかく、ピッパの法則を身に付けるのがスタートラインで、それ抜きで他をやろうとしても難しいでしょう。私自身もピッパの法則で自分が大きく変わりました。

    人と話をしていても、ピッパの法則を知っているかどうかは別として、身に付いている人と付いていない人とでは、明らかに違いがわかります。身に付いていない人は、その場でメモを取っていなかったり、興味を持って質問をしてくる様子もなかったりするので、「後でじっくり考えようとしているな」「この人に今、話をしても無駄だな」と社内外を問わずわかってしまいます。

    ――後でじっくり考えようタイプは、自分もそうなので、本を読んで反省しました。

    後でじっくり考えて本当にいいものが出てくる確率はそれほど高くありません。一部まれに優秀なクリエイターの中にはいらっしゃるかもしれませんが、そういう人たちはその場のヒアリング能力が非常に高いと感じます。その場でしっかりと理解し、後でじっくり考えるわけです。一方、多くの人はその場でわからないから後で考えようとしているだけで、そのときにわからないところは、その後も大体わからないままです。

    優秀な社員に共通するキャパシティの広さ

    ――木下社長ご自身のリクルート勤務時代はどんな社員だったのですか。意識高く、がっついた感じですか。

    いや、決して優秀ではありませんでした。自分は人にものを伝える際、トークではなく、文章のほうが得意です。相手の反応に応じてアドリブで話すスキルは、普通の人より多少うまいかもしれませんが、リクルートの中では決してトップセールスパーソンではなかったですね。

    一方、何回も推敲しながら文章にして伝えるのは得意なので、著書を出すことができましたし、文章で説明することの多い通販でも成功できました。リクルートにはもともと起業の勉強、修行のために行きましたので、リクルートで在職中に大した結果は出せませんでしたが、私自身はあまり気にしていませんでした。周りの人は迷惑だったと思いますが(笑)

    ――リクルート時代も含めて、「優秀な社員」として思い出す人に共通する特徴はありますか。

    共通するのはキャパシティの広さです。大量の仕事をこなしながらも、カツカツの状態になることはなくて、どこか楽しそうにバリバリと進めています。ピッパの法則が自然と身に付いているので、普通の人よりキャパシティが3~5倍広く、後回しにしないからスピードが速いですね。

    弊社の副社長(堀川麻子さん)はその典型で、例えば一緒に仕事をしていて良い出来事があったとします。そのときは「ああ、良かった」「達成して良かったね」と言い合って、ふとそれぞれが自分の仕事に戻ると、まだ私は余韻に浸っていることも多いのですが、彼女はもう次の仕事に取り掛かっているのです。一緒に出張に行っても、合間、合間にあちこちに電話をかけているから大体夕方にはスマホの電源が使えなくなっている感じで、キャパや実務能力は私より副社長のほうが高いなと感心しています。

    ――そういう人は集中力の切り替えがうまいのでしょうか。

    切り替えのうまさですね。ピッパの法則や「後でじっくり考えない法則」が身に付いていて、効率の良い仕事の段取りが頭に入っているのだと思います。

    ――わかりました。リクルート時代から起業して社長になった現在も含めて、ご自身の大きな成長を実感した経験があれば教えてください。

    それがまさにピッパの法則で、リクルート勤務時代に営業などでお話しさせていただいた社長さんから、「ピッと思いついたら、パッとやる」「いつかやろうではなく、その場ですぐやる」「その場でできないときは、いつやるかをその場で決める」と教わり、実行してから私の行動量は約10倍に増えました。

    私自身、スキル自体は25~26歳以降そこまで大きく伸びていなくて、営業トークが上手になったわけでもなければ、人より少しはうまいであろう文章力も、圧倒的に秀でているわけではありません。今考えても、スキルは伸びてもせいぜい3倍程度。一方、自分が知らなかったピッパの法則のような思考アルゴリズムについては50倍もの差がつくことがあります。

    私もピッパの法則によって、「着手が遅い」「スピードが遅い」という欠点を直しただけで、会社を起業してここまで成長させることができました。

    長所を伸ばしたところでたかが知れていると思っていて、それよりは「約束は必ず守る」「期限に遅れない」などの思考アルゴリズムを取り入れて実行するだけで、人はそれなりに成功すると思っています。だから、ピッパの法則を知ってから、スキルを磨こうとするだけの従来の考え方を「努力の方向が違う」と思うようになりましたし、思考アルゴリズムのほうが圧倒的に大事だと考えています。

    ――とはいえ、一代で東証プライム上場企業をつくってしまうのだから、木下社長も自分では気づかないだけで、特別な優秀さがあったのではないでしょうか。

    起業に関しては、ビジネスパーソンとしての能力の高さとは違って、「向き・不向き」が大きいと思います。リクルート時代、私より優秀な先輩はたくさんいました。私が今、どこかの会社に入ってビジネスパーソンとして成果を出し、出世できるかというと、成果を出すのも出世するのもまた別の能力が必要で、おそらくできないでしょう。

    一方、起業して成功するのもまた別の能力が必要で、リクルート時代の同僚の多くの人たちより、起業については私が一番うまかったかもしれません。でも、もう一回皆でリクルートに戻って一緒に仕事をしようかといったら、絶対にその人たちには勝てないです。だから、起業は向き不向きがあると思います。

    ――優秀というだけで、起業向きでない人が木下社長の真似をして起業しても、うまくいく確率は低い、と。

    ある程度ものがそろった状態をより良くすることは得意だけど、ゼロから物事を進めるのが得意でない人は起業向きではないですね。

    例えば、トップセールスパーソンの多くは、自分が売るのはうまいですが、なぜ他人が売れないのかを理解するのが苦手な傾向があります。この人たちが独立しても、なかなか良い組織を作れません。だから営業代行を一人でやるわけです。トップセールスパーソンと一緒に働いていたときは「この人、すごいな」と思っていたのですが、それは自分一人だけのスキルであって、経営に向いたスキルではありませんでした。経営に向いたスキルとは、「自分は何でも売れる」ではなく、「普通の人が売れるような商品を企画する」ところから始まり、「売れる仕組みを作る」ことです。それはトップセールスパーソンが持つ資質とは、ある意味相反しているのです。

    45の法則のうち大事なのを3つ挙げるとしたら…

    ――次に、よく聞かれる質問だと思いますが、45の法則のうち大事なのを3つ挙げるとすると、何ですか。

    1つならピッパの法則ですね。自分も変わったし、即効性があります。社員が取り組んでみたところ、多くの場合にキャパが3~4倍になったと言っていたので、多くの人に効果があると思います。

    ――個人的には「後でじっくり考えない法則」「武器入れ替えの法則」「1時間集中すれば必ず答えが出る法則」あたりが響きました。

    それは早川さんの価値観ですね(笑)。人によると思います。私はあと2つ挙げるとすると、「10回に1回の法則」「最終目的逆算思考の法則」です。

    ――起業家らしいですね。「10回に1回」は、それだけ失敗するのだから、諦めないことが大事だということですか。

    諦めないのも大事ですが、起業家で失敗する人の典型的な事業計画が1、2回でうまくいく前提の資金繰りなっていて、そのことに驚くのです。1、2回で全部うまくいってバラ色に進むなんて、よほどのことがない限りないと思います。最初は失敗して精神的にショックを受けるものです。私は最初から9回くらいは失敗すると思っていたので、いちいち傷つきませんでした。精神力が強いわけではなく、知っていたから傷つかなかっただけです。いきなりうまくいくことはなくて、10回トライする前提なら資金も10分割して少しずつ使っていけますが、失敗する人は最初からうまくいくと信じて、資金1000万円をいきなり投入してしまう傾向があります。それは大変でしょうね。

    ――「最終目的逆算思考の法則」を選んだのはなぜですか。

    「ボールペンより鉛筆を探す法則」に書いた話と似ています。NASAで宇宙の無重力状態でも、上下逆にしても、水の中でも書けるボールペンを10年の年月と莫大な費用をかけて作ったのに対し、ロシアは「書ければ別に鉛筆でいいよね」で話が終わったという、真偽はやや不明ながら本質的だと感じた話があります。

    「最終目的逆算思考」も同様です。積み上げ型の考え方をしていると、NASAのように原因を1つずつ解消していく思考になりがちですが、「結局、何がどうなりさえすればいいのか」と最終目的を特定し、そこから逆算で思考していけば、「書けたらいいのであれば、無重力で使えるボールペンがなくても、鉛筆でいいのではないか」と考えて無駄を省くことにつながります。多くの人が無理と判断しても、「最終目的逆算思考」で考えたら、完璧な解決策ではなくても、打開策が見つかることがあるでしょう。

    ――わかりました。ありがとうございます。次にMarketing Nativeの読者からよく寄せられる悩みについてお聞きします。木下社長は30代半ばを過ぎての転職をどうお考えですか。本人はプレイヤーもマネジメントもある程度経験して、飽きが来ている、と。しかし、家族もいるし年齢的にも失敗が許されにくい。人生100年時代、思い切って転職すべきか、そこに骨を埋めるべきかというものです。

    個人が置かれた状況によって違うでしょうし、都心部か地方かという生活環境によっても変わってくると思うので、一概にどちらが良いとは言えません。ただし、本に「年代ごとステップアップの法則」を書いたように、年代ごとに身に付けておくべき4つのスキルがあります。

    1. 業務スキル
    2. チームマネジメントのスキル
    3. 未知問題の解決スキル
    4. 仕組みを作るスキル

    本当にチームマネジメントをやり切ったのか、経験値で問題解決したのではなく、未知問題の解決策を自分で編み出し、それを仕組み化するところまでできたのかと言われれば、できている人は少ないと思います。

    何度も申し上げるように、スキルは3倍の差しかつきません。転職で職場を替えると、役員・幹部クラスで入らない限り、また業務スキルに逆戻りします。一方、後から入った若い人がどんどん伸びてきますから、状況的には厳しくなるでしょう。だからスキルではなく、スキルを活用したマネジメントや、未知問題の解決、仕組み作りに取り組んだほうがいいのではないかと思います。もちろん、個人の考え方次第ですけどね…。

    ブランディングに取り組む前に、すべきこと

    ――次に、本にも出てきますが、リモートワークネイティブのお話を教えてください。リモートワークについてはどのようにお考えですか。

    これも人によります。リモートワークは社員の成長という観点では向いていないので、もっと成長しないと戦力にならないレベルの人がリモートワークというのはあり得ない話です。例えばエンジニアでも、成長途上の人のリモートワークを認めると、クラウドソーシングの受託と同様な感じになっていって、低賃金の人を生み出すことになるだろうと思います。ただ、人によってはすでにハイレベルなスキルを身に付けていて、リモートのほうが集中してアウトプットしやすい人がいるかもしれないので、どちらにすべきだとは申し上げません。

    ――北の達人ではいかがですか。

    基本的にほぼ出社で、リモートワークの人は最初からリモートワーク採用にしています。この人たちは業務に求められる必要最低限のスキルを持っていることが前提ですが、基本的には教育をしないので、マネジメント側としてはプロセスの管理をする必要がありません。「サボっているかもしれないから管理しよう」としている会社はありますが、そうではなく評価指標を明確にして「結果だけで判断します」とすると、間を見なくても済みます。弊社ではそうした管理の仕組みがある程度整ってきたので、「リモートワークでもいいですが、成長しづらい環境です。最後は成果だけで判断しますが、大丈夫ですか」と確認してから採否を判断しています。

    ――なるほど、微妙で難しいところがいろいろと出てくるわけですね。

    そうですね。経営していると、「収益には直接つながらないけど、やったほうがいい」ことが出てきます。例えば、SDGs推進を目的とした財団運営などもありかなとは思うのですが、それしかしない社員が出てくると、その人たちは採算とは違う世界で生きていくことになります。そういう採算から離れた人や仕事のマネジメントは難しいと感じます。

    ――利益に紐づいていないと厳しいということですか。

    その通りです。そこが明確でないと、お金を使ってばかりの部署が出てきます。そこにずっと染まっていると、発想が企業とは異なる組織で働く人のようになってきますので、会社の中にそういうムードのある組織を作るわけにはいきません。

    ――いわゆるブランディング目的でも認められないですか。

    ブランディングをしたら、何がどうなってどうなるのかと本当にわかった上で私のところに言ってきているのかと思うのですが、そこまでではないようです。私はブランディングを否定しません。それどころか、ブランディングの活動と成果を結びつける計算式を必死に今、考えているところです。その計算式がないまま実行したときに、「キミ、ブランディングがうまくいったとか、うまくいっていないと言ってくるけど、判断基準がないよね。そうなると、キミが好き勝手に言っていることになるよね」となり、「それは経済活動としては認められない」となってしまいます。ブランディングは絶対取り組んだほうがいいですが、計算式ができてからの話です。

    ――計算式を考えているのですか。

    考えています。弊社には北海道に子会社のラジオ局があるので、そこでずっとブランディング広告を打って、データ計測をしています。計測したデータを基に仮説を立てながら、具体的に何をどれだけ実行すれば目に見える成果になるのかを検証していきたいと考えています。それもなく、とにかく認知度を上げましょうと言われても、「認知度を上げたからどうなの?」「良いイメージで見られたから、何?」と思います。

    ――わかりました。最後の質問です。これから先、将来の夢のようなものはありますか。

    よく「〇〇塾」や「〇〇団体」を作って「後進の育成をしませんか」と言っていただくのですが、あまり気が進まなくて、今のままで幸せだと感じています。

    以前、仕事を辞めて何をして遊ぼうかなと思ったこともあるのですが、結果的に一周回って今の仕事を続けるのが一番面白いだろうという結論になりました。

    ただし、パブリックカンパニーとして、年齢的には若い世代を中心にしていく必要はありますので、いつまでも自分が会社の中心にいて老害のような存在にならないよう注意しないといけないとは感じています。

    ――では、この本を読もうか迷っている人、あるいはこのインタビュー記事を読んで興味が出てきた人にPRの言葉をお願いします。

    この本に書いてあることを真剣に読んで、やったけど1つも成果が出なかったという人は、ご連絡いただいたら書籍代を返します。

    ――今回もですか(笑)。前回インタビューした『ファンダメンタルズ×テクニカルマーケティング』の記事のときと似ていますね

    決めていますから。やれば成果は出るはずなので、やるかやらないかだけの話だと思います。

    ――本日はありがとうございました。

    Profile
    木下 勝寿(きのした・かつひさ)
    株式会社北の達人コーポレーション代表取締役社長。株式会社エフエム・ノースウエーブ取締役会長。
    1968年神戸生まれ。大学在学中に学生企業を経験し、卒業後はリクルートで勤務。2002年北の達人コーポレーション設立。独自のWebマーケティングと管理会計による経営手法で東証プライム上場を成し遂げ、一代で時価総額1000億円企業に。紺綬褒章8回受章。著書は『時間最短化、成果最大化の法則』『売上最小化、利益最大化の法則』(以上ダイヤモンド社)、『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』(実業之日本社)があり、著作累計12万部を超える。

     

     

     

     

     

     

    Twitter:@kinoppirx78

    北の達人コーポレーション
    https://www.kitanotatsujin.com/

    早川巧

    記事執筆者

    早川巧

    株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
    Twitter:@hayakawaMN
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