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インタビュー

学生層のアルバイト求人サイトで第一想起を奪取した「バイトル」のマーケティング戦略とは――ディップ マーケティング統括部長・堀一臣インタビュー

最終更新日:2022.10.05

The Marketing Native #46

ディップ マーケティング統括部長

堀 一臣

仕事やアルバイトを探すとき、多くの人がまずチェックするのは求人サイトでしょう。しかし、求人サイトによってアルバイトの求人広告の内容が大きく変わるわけではなく、差別化やシェア逆転が難しい領域かもしれません。

そこに新たな価値を創出すべく挑戦しているのが、ディップ株式会社でマーケティング統括部長を務める堀一臣さんです。堀さんが手がけた新プロモーションが若年層を中心に支持され、アルバイト求人サイトで学生層の第一想起を奪取。過去最高の応募数を記録した結果、コロナ禍で低迷していた売り上げのV字回復を達成しました。

どんなマーケティングが奏功したのか。今回はディップ マーケティング統括部長の堀一臣さんに話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)

目次

    求人広告の内容はどの求人サイトも同じ。そこでどう勝ち切るか

    ――まず堀さんの人物像を読者にお伝えしたいので、簡単に経歴や実績を教えてください。

    新卒で入社した資生堂からGame Withを経て、ディップには2021年にマーケティング統括部長として入社しました。資生堂ではマーケティング部に所属し、メンズスキンケアブランド「uno」(現在はファイントゥデイ資生堂)のブランドマネージャーを務め、5~6番手だったシェアをNo.1ブランドへと成長させたのが実績です。

    その後、GameWithでは新たにマーケティング戦略部を新設し、自ら部長を務めるとともに、同社で初となる有名タレントを起用した大型プロモーションをリードし、国内No.1ゲームメディアのポジションを確立させました。

    ディップに転職したのは、この会社が大切にしている「フィロソフィー」(企業理念)に共感し、ディップで働くことを通して、自分も社会課題の解決に貢献したいと考えたからです。

    ――なるほど…実際のところはどうですか。「フィロソフィー」「社会課題」というと、ちょっと遠くに感じてしまって…。

    そう感じられるかもしれませんが、「フィロソフィー」がお飾りの言葉ではなく、それぞれの業務の中に具現化されて社員全員に浸透しているところがディップの強みのひとつになっています。その点をお話ししていきたいと思います。

    ――わかりました。ディップではどんな仕事をしているのですか。

    「マーケティング統括部」という部署でマーケティングチームを率いる統括部長をしています。ミッションは売り上げと応募数を上げること。売り上げとは、「バイトル」や「はたらこねっと」などディップの求人サイトに、広告主である企業やお店の求人広告を掲載する対価として頂くお金のことです。もう1つ大事なのが、ユーザー(求職者)の応募数を増やす集客。ディップは売り上げと応募の両輪を回すことで成り立っている会社なので、toC、toB両方の数字を上げることが我々に求められています。

    ――競合他社と比較して、バイトルのシェアは何番手くらいですか。

    No.1を目指して、せめぎあっている状態です。

    求人業界に入社してから気づいた課題がいくつかあります。一番は価値の同質化で、求人サイトに掲載されている案件は基本的に他社も同じ内容になっています。ゆえにユーザーは求人サイトの違いまで把握しておらず、またその差を調べたりもしません。実際、バイトルのユーザーの約9割が競合サイトを併用しているというデータもあります。

    どの求人サイトも大して変わらないとユーザーに思われている限り、「アルバイト探しなら〇〇」の「〇〇」に各社のサービス名、ブランド名が入るプロモーションCMを体力勝負で打ち続けなければなりません。求人サイトに対する関与度が低い市場でバイトルが勝ち上がるためには、独自の価値や新たな市場をつくり、「バイトルだけを利用する」「バイトルだからいい」と考える人を少しでも増やしていく必要があります。

    「時給UP企業応援団」企画の記者発表会の様子。左から冨田英揮(ディップ代表取締役社長 兼 CEO)さん、秋元真夏さん、齋藤飛鳥さん、はじめしゃちょーさん。(画像提供:ディップ株式会社)

    国、企業、ユーザーが「三方よし」のプロモーション

    ――コロナ禍で休業や時短営業を余儀なくされた企業を中心に求人案件数が下がり、ディップも売り上げがダウン。その後2021年11月から始めた新プロモーションが成果を上げ、V字回復のきっかけになったとのこと。どんなプロモーションですか。

    乃木坂46の齋藤飛鳥さんや秋元真夏さん・山下美月さん、動画クリエイターのはじめしゃちょーさんらを起用した時給アップキャンペーンで、正確には「ディップ インセンティブ プロジェクト」といいます。

    ディップは以前から自社で定めた「フィロソフィー」(企業理念)に基づいて(※)、社会課題の解決に貢献するようなアクションを取っていました。例えば、コロナ禍の2020年以降、コロナに感染した有期雇用労働者のユーザーに半月分の収入相当額を支給したほか、ワクチンを接種したユーザーに対して、時給アップや特別手当、特別休暇の取得を企業に働きかける「ワクチンインセンティブプロジェクト」を実施するなど、求人サイトとしては異例のアクションを取った実績があります。

    (※)ディップの企業理念:「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」

    そうした流れに加えて、政府主導の最低賃金引き上げムードもあり、社長の冨田から、「時給アップを企業に働きかけ、働く人の待遇を向上させよう」というアイデアが発信されました。

    ――具体的にはどんなふうに進めたのですか。

    マーケティングチームの役割は、全体の戦略設計図を描いた上で実行し、ビジネスにつなげていくことです。

    まずターゲットの理解から始めました。我々のターゲットは高校生・大学生・フリーターら若年層がメインで、その人たちの気持ちを知ろうと、デプスインタビュー(対象とインタビュアーが1対1で行う定性調査)を大量に行いました。

    その結果、ユーザーのインサイトについてわかったことが2つあります。1つは、広告然としたものに対する嫌われやすさ。もう1つは社会的な取り組みに対する好感度の高さです。これはSDGsやダイバーシティなどの大きな話だけでなく、周りの人に対する優しさや気遣いなど身近な配慮がリスペクトされる傾向にあることを意味します。例えば、電車でお年寄りに席を譲ったり、お皿に料理を取り分けてあげたり、人の話を怒ったりして遮らず、最後まで優しく聞いてあげるような日常生活の中での行動です。

    さらにもう少し掘り下げて、求人サイトに対する考え方を聞いたところ、これも大きく2つのことがわかりました。1つは広告と同様、「信用できない」という気持ちの強さです。なぜそう感じるかというと、求人サイトの内容と実際の労働環境にギャップがあったりして、がっかりする経験をしている人が少なくないからです。「企業からお金をもらっているから、求人広告には良いことばかり書いてあるのでは?」と疑いの目で見られているのかもしれません。

    もう1つは、アルバイト選びのチェックポイントは、やはり時給がトップだということです。家や学校からの距離、人間関係などの条件も気になるものの、一番重視するのは時給。しかし、自分から「時給を上げてください」とはアルバイト先で言いづらいし、お願いしてもなかなか上がらないだろうというジレンマを抱えていました。

    そうした人たちを対象に始まったのが、「ディップ インセンティブ プロジェクト」です。具体的には、企業に対してディップが時給アップ、待遇向上を働きかけるキャンペーンで、時給の高い求人が増えると、当然ユーザーは喜びます。一方、企業側も待遇向上を行うことで、求人への応募が増え、従業員のやる気が上がり、定着率も上昇します。政府も企業に対して賃上げを働きかけていて、最低賃金も上がっている状況にありましたので、まさにユーザー・企業・国にとって「三方よし」の施策になったと考えています。

    「できるわけがない」を乗り越えるときに大切な“大義名分”

    ――国も時給アップを働きかけているとはいえ、コロナ禍で経営が大変な企業も多い中、時給を上げてほしいとお願いすることに反発はありませんでしたか。

    まさにそのような不安が社内外の一部にありました。そのときに大事だったのがフィロソフィーです。他社でいうところの「パーパス」にあたると思います。ディップ(dip)は社名の「d」「i」「p」を構成する「dream(夢)、idea(アイデア)、passion(情熱)」を持って社会を改善する存在になることや、ユーザーファーストなサービスの追求をフィロソフィーとしています。フィロソフィーを基準に、ユーザーのためになるような社会課題を解決すれば、結果的にバイトルに対する顧客満足度も上がるに違いない。そう考えることで社内が一丸となり、時給アップキャンペーンに全員で取り組むことができました。このように社内がまとまったのは、フィロソフィーがディップにとってお飾りの言葉ではなく、実用的で価値の高い大義名分になっている証拠だと思います。

    実際にプロモーションを開始してからユーザーの評価は高く、企業からも同様の評価を得ています。フィロソフィーとは、ユーザー・企業・社員・株主など全てのステークホルダーが同じ方向に進んでいくために必要な大義名分だと解釈しています。競合からシェアを奪うだけでは広く社会から認められない時代になってきており、だからこそサービスを支持する根拠としてフィロソフィーのような大義名分が求められているのだと思います。

    ――デプスインタビューで「時給アップ」が一番の要望になっても、「そりゃそうだよね」で終わりそうなのに、よくキャンペーンの実施と成功まで結びつけましたね。

    最低賃金引き上げの世論が背景にあったのが大きいのと、もう1つはインサイトを探るときに「モチベーションとバリア」の考え方を大切にしているからだと思います。「時給が高いとうれしい」がモチベーション。「でもなかなか言えない」「言ってもどうせ上がらない」がバリアです。今回は「モチベーションとバリア」の両方の強さがヒントになりました。基本的には、このどちらかが欠けても人は動きません。モチベーションだけあってバリアがない状態は、すでに満たされていることを意味するので行動変容する必要がありません。同様に、コストをかけてでも解決したいほどのバリアがないと、人は行動変容しないものです。

    ――わかりました。実際にプロモーションやCMを打つにあたって、意識したポイントは何ですか。

    「HOW」になりますが、「ディップ インセンティブ プロジェクト」のタイトルや「待遇向上」などは、ユーザーがわかりづらい言葉ではなく、できるだけ平易な表現で価値を伝えようとしました。これはかなり意図的に行っていて、CMやWebサイトでも「時給が上がるバイトル」などわかりやすい表現を使っています。根っこの提供価値自体は「待遇向上することで三方よしになる施策」とし、「HOW」の部分ではわかりやすいプロダクトベネフィットに落とすという、その2つを意識しました。両方がかみ合わないと持続的にユーザーから選んでいただくことは難しいと考えています。

    ほかにも「HOW」で意識したのは、ファクト開発と訴求です。求人サイトに対するユーザーの懐疑的な気持ちを解消する施策を打つにあたり、ただ「時給アップします」ではなく、時給アップにまつわる数字を全てリサーチして「平均時給178円アップ」「3人に1人が時給アップ」「時給アップ求人20万件以上」と具体的な事実として開発して提示しました。その結果、「本当に自分も上がるかもしれない」「バイトルを選ばないと損するかもしれない」と求人サイトを信用してもらうための訴求ができたと思います。

    画像提供:ディップ株式会社

    「誰が、何を言うか」を追求し、学生層の第一想起を初獲得

    ――テレビCMだけでなく、はじめしゃちょーさんやヒカルさんら動画クリエイターを起用してのYouTubeやTikTokの展開も話題になりました。

    YouTubeやTikTokの施策には主に2つの意味があります。1つは若年層の第一想起を獲得するために、テレビCMだけではリーチしきれない若年層に対して有効であること。もう1つは、求人サイトの信用性に疑問を持たれがちな現状に対して、我々が「信じてください」と言うよりも、若年層に身近で人気の動画クリエイターから熱量を持って伝えてもらったほうが共感されやすいと考えたことです。

    具体的に行ったのは、はじめしゃちょーさんら複数の動画クリエイターを起用して結成した「時給UP企業応援団」の施策です。動画で「時給アップするのは本当か」「なぜ時給アップできるのか」「時給アップしたらやる気が出るよね」ということを、はじめしゃちょーさんご本人のアルバイト体験を交えながら語ってもらい、視聴回数は140万回以上を達成しました。


    【特殊】こんなアルバイト実在するの?!

    また、動画に加えてPR用のリアルイベントを開催したところ、オフラインとYouTube、デジタルの掛け合わせで高いPR効果を得られました。はじめしゃちょーさんが乃木坂46のファンであることを公言していた文脈も含めて内容を構成した結果、よりPR効果を高められたと思います。ここで大事なのは、出演者の皆さんが時給アップの取り組みに心から共感していることです。本心なのか、仕事だからセリフを言わされているのかなど、すぐ見透かされるので注意が必要です。

    ――交通広告も大きく展開しましたね。

    交通広告はtoCへのリーチとtoBの営業支援の両方の目的があります。エリアや掲出場所ごとにクリエイティブを出し分けました。例えば、大宮駅なら「大宮のみなさんの時給があがりますように!」というクリエイティブにしたり、時給アップを意識してエスカレーターや階段が上がっているところに展開したりして、モーメントを捉えることを意識しました。交通広告を見る時間は2秒なので、誰向けのメッセージなのかわかるアテンションや、便益を直感的に理解していただく工夫が必要です。

    画像提供:ディップ株式会社

    そうした施策を重ねた結果、ディップ史上初めて学生層においてアルバイト求人サイトの第一想起を奪取し、過去最大の応募数を獲得。プロモーションによって売り上げは前年を大きく上回り、コロナ禍からのV字回復を達成しました。

    画像提供:ディップ株式会社

    ――でも、競合も同様に大々的なプロモーションを手を替え品を替え打っていると思います。その中でなぜバイトルは学生層の第一想起を獲得できたのですか。

    動画広告の接触率が競合よりも上がっていたので、作成した動画の量の多さと内容への評価が一番の理由ではないでしょうか。内容に関連して申し上げると、今はメディアプランも大事ですが、それよりも大事なのが、「誰が、何を言うか」だと考えています。

    よく「若者のテレビ離れ」と言われますが、テレビCMを打つと若年層の想起は上がります。だからテレビを完全に見なくなったわけではなく、「テレビをつけつつ、スマホも触りつつ、YouTubeも見つつ、SNSもやりつつ」のように、「ながら」で同時に消費しているというのが私の考えです。その結果、テレビの消費構成比は下がったものの、情報の絶対量は爆発的に増えています。

    テレビ以外にも消費するメディアの総量が増える中で、広告然としたものを避ける気持ちが強い若年層の心を動かすには、単純にメディアを押さえればいいわけではありません。誰が、どんなストーリーで語るかが重要で、動画クリエイターを起用するにしても、ご本人の言葉で熱量高く語っていただき、共感を得るようなプロモーションにすることが大事です。その点を追求できたのが成果につながったと考えています。

    マーケと営業の密な連携で、さらなる成果を

    ――わかりました。この結果を受けて、さらに改善していきたいと考えている課題があれば教えてください。

    求人サイトのビジネスは複雑で、企業からの求人数とユーザーからの応募が相関します。良い求人がたくさんないと応募は集まらないですし、応募が少ないと求人案件を出稿しようと考える企業も多く集まりません。片方が下がれば、もう片方も下がってしまいます。

    求人も応募もこれまで以上に伸ばしていくには、マーケティングチームと営業チームとの連動が大切で、もっと細かくタイミングを合わせて動きたいと考えています。例えば、重点エリアや商圏、職種を決めたときに、マーケティングチームだけがプロモーションを打つのではなく、営業の皆さんとともにタイミングとリソースを集中し、営業が求人数を集めて売り上げを上げ、同時にマーケティングチームが応募者を集客するという形で両輪を回し、成果を一気に出せるようにしたい。それが次のチャレンジです。これは消費財でいうところの店頭の山積み(品揃え)とプロモーションが合わさったときに一気にPOSが上がるのと同じ考えです。

    ――社会的な役割や責任についてはどうですか。アルバイトが集まらなくて、時短したり休業したりしているお店は少なくないと聞きます。そういう状況の中でディップの果たすべき役割も大きいと思うのですが、これから取り組んでいきたいことはありますか。

    大きく2つあります。1つは新規事業として「バイトルPRO」というサービスを昨年ローンチしました。医療・保育・介護など、いわゆるエッセンシャルワーカーを対象にしたサービスです。エッセンシャルワーカーの人手不足の問題は待ったなしの状況にあり、そこに対するサービスを伸ばすことで、少しでも社会に貢献できればと考えています。プロモーションも打っていて、この領域の求人数No.1になっていますが、さらに価値を上げていきます。

    もう1つはBtoBのビジネスです。人手不足の問題を改善するのも大事ですが、企業にとってはDXも大きな課題です。ディップは面接の自動設定や採用ページの作成など業務の効率化を推進するSaaSサービスのDX商材も手がけていますが、企業への導入はまだ十分ではありません。ですから、求人サイトからたくさんの応募者を供給するとともに、DXで作業効率化を促すというワンストップのソリューションをもっと提供していきたいと考えています。

    マーケターが言ってはいけない、このひと言

    ――最後の質問です。現在35歳。皆さんにお聞きする恒例の質問なのですが、大手企業にあって、年齢的にも同世代と比較して早い出世ですよね。資生堂やGame With時代の活躍もそうですが、ご自身は自分で他の人と比較したときに、どんな点が優れていると思いますか。その点を踏まえて、若い読者にアドバイスがあればお願いします。

    私は上司に恵まれ運が良かっただけですが、そこを踏まえた上でお伝えしたいことが3つあります。私が仕事のスタンスで大切にしている価値観であり、マーケティングチームのメンバーにも共有していることです。1つめは「アチーブメント」、目標を達成する力です。ビジネスをしている以上、結果を出すのは大前提。どんなに仲良くしていても、結果が出なければ解散ですし、どんなに厳しくて大変でも結果が出ていれば、チーム全員の評価は良くなります。

    2つめは「ストレングス」、強みを活かすことです。私も凡ミスをすることがありますが、ミスはリカバリーすれば済むので大したことではなく、それよりも自分の特性を理解し、自分にしかできない強みを活かした方法で加点して、チームを目標達成に近づけていくほうが重要です。全部うまくやろうとするのではなく、少々ミスをしてもいいから、自分のほうが人より楽にできることでチームに貢献してほしいと思います。減点しないのではなく、加点するのがポイントです。

    3つめが「オーナーシップ」。マーケティングにおいて、とても大切なことだと思います。ここでのオーナーシップは自らのプロジェクトに自分が責任を持って、オーナーとして引っ張っていくという意味です。そのためには、ビジネスやユーザーのことを社内で自分が一番よく知っている必要があります。その領域については、上長よりも自分のほうが知っているようにしなければなりません。そうなって初めて、自分がオーナーシップを持って、プロジェクトを推進していけるのです。

    ただ、マーケティングの部署にいると、急に戦略が変わったり、時には突然中止になったり、不本意なことが起きたりすることがしばしばあります。そのとき代理店さんら外部の人に「上司がこう言っているんで、そのようにしてください」と言いそうになるのですが、それは絶対に言ってはダメです。

    ――なぜですか。

    そんなことを言ってしまったら、もうその人が介在する意味がなくなってしまいます。当然、相手も「では、上司の方と調整します」となるでしょう。言いたくなる気持ちはよくわかります。私も過去何度か「上司が変えろって言うから変えてください」と喉元まで出かかったことがあります。でも、それは禁句。上司の指示に納得していないなら、納得するまで上司と話すべきです。納得した上で、自分の言葉で「(自分が)こうしたいから、このように変えてください」と言うべき。それは社外だけでなく、社内を説得するときも同様です。そうしないと、マーケティング部の一員として誰も耳を貸してくれなくなります。

    ――私も「〇〇さんが言っていました」と言われると、「〇〇さんはいいから、キミはどう思うの?」と聞き返します。「〇〇さん」は上司だけでなく、社内の他部署やクライアントも含まれるので、つい言いがち。気をつけたいですね。

    そうですね。ほかにもマーケティングの部署では、「このプランで合っていますか」「A・B・Cのどれが正解ですか」という会話が聞かれることがあると思います。しかし、ビジネスに唯一絶対の正解はないでしょうし、他人にいきなり正解を求めるのは思考停止と責任の棚上げです。まず自分で考え抜いて、自分の言葉でレコメンドを持って主張するのが重要であり、それがあってこそフィードバックが学びとして身に付きます。私自身、実体験として、そう感じます。

    ――本日はありがとうございました。

    Profile
    堀 一臣(ほり・かずおみ)
    ディップ株式会社マーケティング統括部 統括部長。
    慶應義塾大学卒業後、2010年に資生堂入社、当時最年少でマーケティング部ブランドマネージャーを務める。2020年GameWithへ転職、マーケティング戦略部 部長。2021年ディップに転職、マーケティング統括部 統括部長に就任、現在に至る。
    「バイトル」や「はたらこねっと」などの求人サービスを展開するディップのマーケティング責任者として、戦略立案から実行までをリード。

    ディップ株式会社
    https://www.dip-net.co.jp/

    早川巧

    記事執筆者

    早川巧

    株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
    Twitter:@hayakawaMN
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