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「SNSマーケティング」の内製化に必要なステップと重要なポイント――ハピラフ代表・富田竜介インタビュー

最終更新日:2024.01.10

これまで累計250以上のSNSアカウントを支援してきた経験を持つハピラフ代表の富田竜介さん。富田さんはこのたび、新著『99%の経営者は知らない 中小企業のための正しいSNSマーケティング』を出版しました。

書籍にはSNSを活用したマーケティングの基本となる考え方や、運用組織の作り方、KPIの設計の仕方などがまとまっているとのこと。今回は著書の内容を踏まえた上で、ターゲットである中小企業の経営者やSNS担当者向けに、「SNSマーケティング」内製化のためのアドバイスを聞きました。

(取材・文:福永太郎、構成:Marketing Native編集長・佐藤綾美、撮影:矢島宏樹)

目次

「SNSマーケティング」に課題を持つ中小企業経営者のために

――SNSを活用したマーケティングに関する書籍がさまざまある中で、今回新しい本を執筆しようと考えたのはなぜでしょうか。

YouTube、Instagram、X(旧Twitter、以下「X」)などの各プラットフォーム別のノウハウ本や、SNS担当者向けの実務本は多くありますが、中小企業の経営者を対象とした「SNSマーケティング」に関する書籍はあまりないと感じていたことが出発点です。

また、SNSを活用したマーケティングは、戦略設計の段階で成否が9割以上決まると考えており、戦略設計の仕方やポイントについて解説する内容であれば、課題を抱える中小企業経営者の力になれるのではと思ったため執筆に至りました。

富田竜介さん

――これまでの「SNSマーケティング」に関する書籍とは、どのような点が異なりますか。

本書はSNSを活用したマーケティングの具体的なノウハウよりも、心構えを中心にした内容になっているのが特徴です。SNSを運用する組織の在り方や、実務担当者とのコミュニケーションの取り方などについても書いています。

「SNSマーケティング」関連の本の中には、アルゴリズムの変更でノウハウが使えなくなるものもありますが、本書は経営者に必要な「SNSマーケティング」の知識が詰まっており、プラットフォームの変化に左右されずに使える内容になっています。

――富田さんはこれまで累計250以上のSNSアカウントを支援しているとのこと。最近の企業の課題はどのようなものが多いですか。

最近は「フォロワーを増やしたい」といった相談は減り、SNSを活用して売り上げを上げる方法や、SNSアカウントの在り方に関する相談が増えていると感じます。これは、近年登場したTikTokが、フォロワー数に関係なく、コンテンツ次第でリーチ数を伸ばせるレコメンドシステムを搭載しており、InstagramやYouTubeなど他のプラットフォームもそれに追随するように、リール、YouTubeショートといった機能を搭載するようになったことが影響していると考えられます。

「SNSマーケティング」の内製化がうまくいかない企業の特徴

――富田さんは企業の「SNSマーケティング」の内製化支援も行っています。SNSを活用したマーケティングを内製化すると、どのようなメリットがありますか。

まず、顧客もしくは見込み客と直接コミュニケーションを取れることが挙げられます。そもそもSNSは、ユーザーとコミュニケーションを図り、ファンを増やすためのツールです。SNS運用を外注やロボットで代用することは、ユーザーとのコミュニケーションを軽視しているともいえるのではないでしょうか。ファンを獲得してUGCを創出するには、企業自身の言葉で接することが大事です。

また、SNS運用を外注すると人件費だけでなく施策代やマージンもかかるため、内製化したほうが予算を抑えられます。さらに、内製化することで、SNS運用のノウハウを自社に蓄積していけることも大きなメリットでしょう。

富田竜介さん

――SNSを活用したマーケティングの内製化がうまくいかない企業に共通する特徴を教えてください。

よくある失敗の原因は、経営陣と現場の実務担当者との間でSNSに対する理解に乖離があることです。

40〜50代の経営陣の中にはSNSに触れる機会が乏しい人もいて、未だにフォロワーの増加が売り上げに直結すると考え、フォロワー数や投稿のリーチ数を目標に設定しがちです。XやInstagramの以前のアルゴリズムであれば、フォロワー数の増加が多くのリーチ数を獲得することにもつながっていましたが、投稿のエンゲージメントが重視されている昨今では、やみくもにフォロワーを増やしてもあまり意味はありません。例えばプレゼントキャンペーンを乱発しても、懸賞に応募するためだけに利用されている「懸賞アカウント」のフォロワーが増えるだけで、自分たちの顧客が増えているわけではないからです。

また、投稿のリーチ数に執着すると、Instagramならマガジンのような形式での情報発信が有効ですが、商品紹介を含まない場合がほとんどなので、リーチ数は伸ばせても商品の認知獲得や指名検索数の増加にはあまり寄与しません。

フォロワー数や投稿のリーチ数を目標に置いてSNSを運用すると、目標は達成できても「SNS経由の流入や売り上げが増加していない」という状況に陥りやすく、それを見た経営陣が「さらにフォロワー数やリーチ数を増やす必要がある」「成果が出ないのでSNSをやることに意味がない」と考えがちです。そうした経営陣の考え方や評価に納得感が持てず、実務担当者が退職してしまうこともあります。ハピラフが今まで支援してきた会社の半数以上に、このような課題が見られました。

KPI設計時の重要なポイント

――SNSを活用したマーケティングの成否は戦略設計の段階で9割以上が決まるとのこと。戦略を設計する際は具体的に何から始めればよいか、手順を教えてください。

戦略設計で主にやるべきことは「工数の把握と人員確保」「KGI・KPI設計」の2つです。

最初にやることは、工数の把握です。SNSアカウントを運用する際は、撮影や投稿、編集などの工程にそれぞれどのくらい時間がかかるかを計算し、必要な人員を確保しましょう。その際、SNSの運用担当者は兼任ではなく専任で用意するべきだと考えています。最低限必要な人員の目安はひとりで、難しい場合は月60時間は確保したいところ。リソースが限られるなら、運用するSNSのプラットフォームをひとつに絞るのも手です。拡大できる見通しがついたタイミングで、他のSNSにも手を広げるとよいでしょう。

SNSプラットフォームをひとつに絞る際、マーケティングファネルの「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購入」でとくに注力したいフェーズから逆算して考える方法と、自社のターゲットがよく使っているプラットフォームを選ぶ方法があります。例えば「女性がターゲットならInstagramを運用するのがよいだろう」というのは先入観であり、人によって行動パターンは異なるものです。お客さまの解像度を上げ、行動パターンを知るためにも、ユーザーインタビューを実施することをおすすめします。

マーケティングファネルとSNSの活用イメージプロセスごとに活用するSNSの例(図:Marketing Native編集部)

KGI・KPI設計は、大半の企業が間違えやすいポイントです。同業他社の事例を参考にするのはよいですが、ビジネスモデルやリソースによってKGI・KPIは変わってくるため、鵜呑みにするのは危険だと思います。また、各SNSプラットフォーム内で完結しないようにKPIを設計することも重要です。

例えば、マーケティングファネルのフェーズごとに使用するプラットフォームを分けてKPIを設計する方法もあれば、異なるプラットフォーム同士を掛け合わせてひとつのKGI達成を目指す方法もあります。

KPIの設計方法の例KPI設計方法の例(図:Marketing Native編集部)

さらに、SNSは目に見えない部分で売り上げに貢献していることが多く、SNS以外の指標にも目を向けることも大切です。指名検索数やユーザーアンケートの回答なども施策の効果を判断するうえで役立つでしょう。例えば、Googleのリスティング広告経由でコンバージョンを獲得した場合、リスティング広告の成果と捉えがちです。しかし、お客さまにインタビューしてみると、実はInstagramの発見タブで商品を認知し、その後XとGoogleで口コミを調べ、評価が良さそうだったので商品名で検索して購入に至っていた――などと、SNSが売り上げに貢献していたとわかることがあります。こうした事実は、お客さまにヒアリングしてみないとわかりません。

――ユーザーインタビューを行う方法やポイントがあれば教えてください。

まず購入者やヘビーユーザーに対して「インタビュー回答で、Amazonギフト券5,000円分をプレゼント」などのメールを送付し、30分~1時間のインタビューの依頼を受けてもらいます。

インタビュアーが1人だけでは、相手の本音を見逃してしまう可能性もあります。書記とヒアリングに担当を分けるなど、複数名で実施し、相手の表情も見ながら真意を探りつつインタビューするのが効果的でしょう。

インタビューする顧客の人数は、5〜10人のパターンもあれば1人に3回くらい聞くパターンもあります。実施する人数に明確な基準はありませんが、自分たちの中で手応えのある回答が得られた時点で終わるとよいでしょう。

――KPIの設計について、具体的な例はありますか。

ハピラフの法人支援事業の場合は、私のXアカウントで興味関心をもったユーザーにYouTubeを視聴してもらい、その後LINE登録からナーチャリングを行うといった設計です。Xではリーチ数やエンゲージメント数を、LINEは友だち登録数をKPIとしてチェックしています。YouTubeはターゲットに刺さる動画を作ることのみを意識し、数値目標の設定はありません。

ハピラフが運用しているSNSのKPI設計例ハピラフが運用しているSNSのKPI設計(図:Marketing Native編集部)

YouTubeの数値目標がないのは、弊社においてYouTubeは他のプラットフォームとの接着剤的な役割を果たしているからです。問い合わせの8~9割がYouTubeを何かしらの形で経由しており、YouTubeの動画を見てから会社名を調べるケース、Xで興味を持ったユーザーがYouTubeで動画を見て問い合わせるケースなど、さまざまなパターンがあります。

現在のようなKPI設計になったのは半年前くらいで、それまではYouTubeのチャンネル登録者数や動画の再生回数を追っていました。「1万フォロワーまで最速で伸ばす方法」「Instagramのアルゴリズムを徹底攻略」のような動画を投稿していて、個人の方に視聴されるものの、問い合わせにはあまりつながっていませんでした。

そこで、企業の経営者やSNS担当者を対象に、SNSの概念や在り方を伝える動画を作成するよう方針を転換しました。ターゲットが絞られる分、チャンネル登録者数や再生回数は伸びにくくなる一方で、企業の経営者やSNS担当者に動画を見てもらえるので、現在は問い合わせ数が増加しています。

富田竜介さん

「SNS売れ」につなげるためのコツ

――SNSを活用したマーケティングを成功させるために「これだけは押さえておいたほうがいい」というポイントを教えてください。

以下の3つのポイントを意識することが大切です。

  1. SNS運用は長期戦であると理解する
  2. アカウント運用を始めたら止めてはいけない
  3. SNSの中の人が自信をもってすすめられるよう、プロダクトを磨く

まず長期戦であることを理解しましょう。SNS運用は、「広告で成果が出ていない」などと必要に迫られて、短期的な施策として実施されることがあります。しかし、バズによる拡散は狙ってできるものではなく、SNS運用で成功を収めるには、ある程度の期間が必要です。

そもそもSNSは、ユーザーとのコミュニケーションを取り、ファンを増やす場です。ファンの感情に寄り添い、関係性を構築するにはどうしても時間がかかるので、結果が出るまでは少なくとも2〜3年の投資を見越したほうが良いでしょう。早急な成果を求めてモチベーションが続かず、半年ほどで運用を止めてしまうケースも見ます。SNSは最小限のリソースでも持続可能な運用体制を構築し、マラソンのように一定のペースで継続することが重要です。

次に大切なのが「アカウント運用を始めたら止めてはいけない」ということです。とくにInstagramがそうなのですが、SNSアカウントは継続して動かすことが大事です。運用を止めてしまうと、リーチ数やエンゲージメント数が伸びづらくなったり、ブランドイメージやフォロワーからの信頼を損なったりするおそれがあります。運用が長期間止まるようであれば、そのアカウント自体使えなくなるという覚悟を持ったほうがよいでしょう。

そして最後に、自社のプロダクトがSNSの中の人から見ても魅力的であることが重要です。SNS担当者が自信を持っておすすめできないようなプロダクトでは情報発信もスムーズにいきませんし、まずはプロダクトの改善を優先したほうがよいでしょう。プロダクトを円滑に改善できるように、フィードバックを忌憚なく伝えられる会社の風土づくりも重要といえます。

富田竜介さん

――ありがとうございます。SNS担当者の多くが内製化と同じくらい気になっているであろう「SNS売れ」についても教えてください。SNSで話題になり、商品が売れる「SNS売れ」につながりやすいプロダクトの特徴はありますか。

共感が得られやすいプロダクトは、エンゲージメントが高まり、ファンを集める傾向にあるため、SNS売れにつながりやすいと思います。例えば、300円のアイテムを中心に展開する「3COINS(スリーコインズ)」のようなブランドです。低単価でありながら便利なアイテムは「欲しい」と共感を得られるでしょうし、店舗数が豊富なのでSNSで見た商品にアクセスしやすい点もSNS売れにつながるポイントだと感じます。

――どうすれば「SNS売れ」につなげることができますか。

企業の一方的な情報発信のみで、SNS売れにつなげられることは稀です。SNSに存在するアカウントの約9割が個人アカウントであるのを踏まえ、第三者と共にコミュニティを構築することが重要です。インフルエンサーの方とのコラボレーション企画を実施したり、タイアップを依頼したり、第三者を巻き込んだ施策にも取り組むべきでしょう。

――最後に、あらためて書籍のPRをお願いいたします。

実務担当者に任せているだけでは、SNS運用はうまくいきません。成果を上げるには、経営者や事業責任者がきちんと戦略設計したうえで運用することが重要です。本書がその手助けとなり、SNSを活用したマーケティングに本気で取り組む企業が増えるきっかけになればうれしく思います。また、タイトルは『99%の経営者は知らない 中小企業のための正しいSNSマーケティング』ですが、経営者だけでなくSNS担当者にも有益な内容になっていると思うので、気になる方はぜひ手に取ってみてください。

富田竜介さん

Profile
富田 竜介(とみた・りゅうすけ)
株式会社ハピラフ 代表取締役CEO。
2016年、サイバーエージェント子会社のマイクロアドに新卒で入社。広告運用と新規開拓営業に従事した後、2017年にD2Cベンチャーのマーケティング部に転職。2018年よりフィットネス系のスタートアップ企業にてマーケティングの事業責任者を務め、事業の拡大に貢献。2019年にブライダル系のスタートアップ企業に転職し、同年10月に合同会社ハピラフを立ち上げ、代表に就任。2020年6月より、クックパッドに新規事業のマーケターとしてジョインし、同年12月に株式会社ハピラフを登記。2021年1月にクックパッドを退職後、完全独立し、現職に至る。主な著書に『99%の経営者は知らない 中小企業のための正しいSNSマーケティング』(幻冬舎)。
X:@tommy_output
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UC-7yeBSVfYVxh5o5ZLV9P2Q
株式会社ハピラフ:https://happylaugh.jp/

『99%の経営者は知らない 中小企業のための正しいSNSマーケティング』の書影

 

 

 

 

 

 

記事執筆者

福永太郎

ふくなが・たろう
WebメディアのSEOチームに所属後、フリーに。現在はビジネス系メディアをはじめ、複数のWebメディアで執筆。
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