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ひとりで立ち上げ!食のtoBメディア「Yellowpage」が注目されるまで――渥美まいこ寄稿

最終更新日:2023.12.19

食の文化やトレンドに関する考察をSNSで発信するほか、月見文化を研究するコミュニティ「OTSUKIMI.」の運営なども行う渥美まいこさん。渥美さんは今年(2023年)夏に勤めていた会社を辞めて独立後、食のビジネスメディア「Yellowpage」を立ち上げ、運営しています。驚いたことに「Yellowpage」の制作期間はわずか3ヶ月、ページのデザインなど一部は外注したものの、ほぼひとりで立ち上げたと聞き、具体的な工程を寄稿していただきました。

渥美さんがあらためて「今、なぜメディアなのか」と考えた理由についても書いていただいています。

ぜひご覧ください。

目次

 

はじめまして、渥美まいこといいます。

私はこれまでレシピサイトのマーケティングに関わり、トレンドの分析や食文化を考察して発信してきました。Marketing Nativeさんでもこれまで食トレンドに関する記事をいくつか寄稿させていただきました。そんな私が15年間にわたる会社員人生を卒業し「ほぼひとりで、制作費25万円程度でメディアを立ち上げた」とMarketing Nativeの編集部のみなさんに共有したところ、「変わったことをしますね!」と興味をもってくださり、立ち上げの背景や制作過程についてまとめたこの記事を作成する運びとなりました。デザイナーやエンジニアといったキャリアを経験していない私が、どのようにメディアをほぼひとりで立ち上げ、運用しているのか。生々しい格闘の記録が、みなさまの参考になれば、とても嬉しく思います。

食のビジネスメディア「Yellowpage」とは

はじめに、メディアの概要です。

主なターゲットは食品製造や流通など食品業界の方々で、特に中小企業やスタートアップ従事者などコンパクトな組織で事業に取り組む方々をコアターゲットにおいています。その方々は経営企画やマーケティングに時間や人といったリソースを投下しづらく、情報収集においても課題をもっています。そうした人たちが本当に求める粒度の情報と、事業の可能性・選択肢を広げる外部の人材資本との接点をメディアの中で担いたいと思い、メディアのコンテンツは主に国内外のトレンドや社会変化をまとめた記事と、Yellowpageが出会った食のクリエイターをページごとに紹介するリストで構成しています。

左:Yellowpageのトップページ上部のキャプチャーとクリエイターのページ
右:クリエイターの紹介ページ

メディア名「Yellowpage」は電話帳という意味。

日々進化する食品産業において“全体像”が見えにくいと感じていたころから、今本当に必要なのはAからZまで順番を追って情報にリーチできる電話帳のような存在かもしれない、と思い名付けました。今年9月にサイトをローンチし、まだまだ理想のコンテンツ量・質ではありませんが、新規メールマガジン登録数は月100件以上で推移し、11月には日本テレビ系列の情報番組「ZIP!」に出演する機会をもらえるなど、メディアを知っていただける機会が増えてきています。

なぜ、メディア「Yellowpage」を創ったのか

Yellowpage立ち上げのきっかけは、私自身のキャリアの変化でした。

出産、保活、コロナ禍をなんとか乗り越えてきたものの、リアル回帰の中で仕事と子育ての両立が限界を迎え、この夏に会社員を辞めることに。チームでゴールを目指すことは性に合っていましたが「子供がもう少し大きくなるまではスケジュール面で融通が利く働き方にシフトしよう」と決めました。独立に際しホームページでも準備しようかとノーコードでサイト制作ができるツール「STUDIO」を調べていた時、CMS機能が実装されていることを知ります。

STUDIOとココナラを活用し、
制作期間3ヶ月でメディアをローンチ

「ノーコードでメディアが作れるのか!」と驚き、“守り”だった私の気持ちが一瞬にして“攻めたい”という感情に変わりはじめます。メディアが作れるならば、食品業界に対しての愛を込め、メディアの編集長時代にやり残したことを全部やろうと考え、次第にこれまでのメディア制作・運営における勝ちパターン—――toBメディアのあるべき理想像、記事量や更新頻度、ビジネスモデル――を全て取り払い、「体験として新しいものを作ろう」と覚悟がうまれ、その内容をデザインツールの「Figma」にまとめていきました。

Figmaにまとめたメディア構想。ロゴやサイト方針、サイトマップ、初期のワイヤーや参考にしたWebサイトのデザインを貼っている。

当初はSTUDIOを使って自力でのサイト制作を検討していましたが、メディアとしてのページが増えたことで制作の難易度が上がり、素人のスキルではパワーポイントレベルしかできないと悟ります。ならばと、テレビCMで記憶していた「ココナラ」に初めてアクセスし、STUDIOの実装に詳しいデザイナーさんにトップページや記事一覧ページ、クリエイターページなど、合計5ページ分の制作を15万円で依頼することに。

サイト制作をはじめて1ヶ月、7月末には既にトップページをはじめ数ページが完成間近となっていました。Webサイトの全体像が見えはじめたので、このタイミングでサイト公開日を約1ヶ月後の9月6日とし、リリース初期のKPIを「閲覧者の好意的な反応と、メルマガ登録数」と決め、コンテンツ制作を進めていきます。

誰とも約束していないけれど、公開日に執着する

どんなに必死で準備しても公開直前は徹夜になってしまうのがWeb制作。

横で心配そうな表情をする家族が「公開日をずらしたら?」と真っ当な提案をくれますが、公開日は死守しようと決めていました。上司も顧客もいない――誰とも期日の約束を交わしていない状態で、自分を律しメディアを予定通りに作ることは、自分自身を試す意味合いもあったのだと思います。「本当にひとりでメディアをやりきれるのか。公開日をリスケするくらいの中途半端な熱量ならば、ローンチなんてしないほうがいいだろう」。そう、自分の気持ちを反芻させていく中で運用の覚悟もできたのだと思います。

そして公開日の9月6日12:00。気がつけばデイリーで1万弱のユーザーに閲覧され、SNSを通じてデザイン面に関して好意的なメッセージを予想以上にもらいました。特に嬉しかったのが、前職で一緒にメディアを作っていたメンバーからの「Yellowpageは、2年前に渥美さんがやりたいと言い放っていたことが全部詰まっていますね」というコメント。数年間にわたる欲望を回収できた感覚と「当人は忘れていたけど、私は2年間もやりたいことが変わっていなかったのか。ならば、このメディアを私は10年も20年も夢中になって取り組み、愛し続けられるな」と自信につながりました。

Yellowpageのデザイン制作は全て「Canva」。ツールを活用して制作したホワイトペーパー「食カレンダー2024」は年中行事や旬の食材、食の記念日を網羅しており、メルマガに新規登録するとダウンロードできる。

この時代にWebメディアを創る意味。
プラットフォームではなく独自でWebサイトを作った理由

Yellowpageの公開後には「Webメディアは冬の時代。大きなメディアでもクローズが続いているよ」とお言葉をいただくこともありました。まさにその通り。情報を買う時代でもないし、TikTokやYouTubeといったSNSの充実、noteの普及によって、人数と費用をかけてメディアでマネタイズを目指すのは難しいのかもしれません。オウンドメディアという役割だとしても、ROIが成立しにくいのもまた事実。

ただ、ひとりの運用であればコストがほぼ発生しないため、速やかな収益化を前提にしたコンセプトやターゲットの整理からうまれるメディアのコモディティ化を避けることができます。デザインや記事方針においても自由度高く、中長期の目線で戦うことができます。少なくとも食業界においては所属や企業サイズも問わず、業界に関する情報を包括して読めるような“場所”が必要だと思ったので“検証という名の挑戦”を私なりにしたいと思っています。

また「なぜnoteやSNSを使わなかったのか」という質問も多くいただきました。

noteは私にとって大切なプラットフォームで、これからも発信していく予定ですが、今回独自でメディアを創設した理由は、長野県東御市の山の上にある「パンと日用品の店 わざわざ」さんではありませんが、大通りからフラッと訪問していただくのではなく、「わざわざYellowpageに訪問してくれた人たちに向けて発信したい」と思ったからでしょう。SNSに関しては、アルゴリズムの変更が頻繁なプラットフォームの中で、勝負をしようとは到底考えられませんでした。

食のコモンズとなってイノベーションを加速させるYellowpageの目指す先

敬愛する食品業界に対し、私はどんなかたちなら役に立つのだろうか――そんな想いから始まったYellowpageの目指すゴールは二つあります。一つ目は、所属も世代も超えた食づくりのコモンズ(※)を作り、育み、情報や人をめぐらせること。二つ目は、メディアのターゲットを拡張し、業界と一部の生活者(中でも、発信力のあるインフルエンサー)が接触する拠点に進化させることです。食の作り手と食べ手が同じ課題感を共有し、食料安全保障の問題やサステナビリティ、培養肉などへの関心を高めていくことが、地球規模の課題へのアクションを早めることにも繋がるでしょう。どちらも、製造でも流通でもなく、意思のあるメディアのような存在が担うべき役割だと考えています。これからのYellowpageにぜひ、ご期待ください。

※編集部註:共有地を指す言葉。コミュニティに所属する共有の場所を指して使われることもある。

 

記事執筆者

渥美まいこ

あつみ・まいこ
クックパッドで食品企業のマーケティングと食品業界メディア「FoodClip」の事業責任者を経たのち、シグマクシスのフードチームにコミュニティマネージャーとして参画。2023年秋に独立、食のビジネスメディア「Yellowpage」を運用しながら、企業の事業支援を行っている。
X:@atsumi_maiko
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