『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系列・土曜21時55分~ ※一部地域を除く)でプロデューサーを務める芦田太郎さんのインタビュー後編です。
後編では、芦田さんが入社したての頃、1秒でも早くディレクターになるために取っていた一種の「あざとい」行動と、現在プロデューサーとしての自分が部下からあざといアプローチを受けたときの考え方、さらに田中みな実さんが見せる天性のあざとさの凄みについて語ってもらいました。
ぜひご一読をお願いします。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、人物撮影:永山 昌克)
※肩書、内容などは記事公開時点のものです。
目次
認められたくてギンギンに尖っていた20代
――芦田さんご自身についてお話を伺いたいのですが、芦田さんはあざとさを見せることは得意ですか。
得意ではないです。「あざとい」と相手に思われた段階で、計算しているのがバレているわけですから、それはもうあざとさではありません。気づかれずに相手を気持ちよくさせるのがあざとさなので、そういう点で僕は得意ではないと思います。
――しかし過去のインタビューを拝見すると、すごく頑張って努力していることをアピールしていたんですよね。
あれもあざといというのかなあ…そうか、確かにそうかも。編成局長の西(新=あらた=取締役総合編成局長)さんが当時、僕の直属の上司で、すごく熱い方なんですけど、その頃、僕も西さんに認められて1秒でも早くディレクターになるために、ギンギンに尖っていました。
――どんなふうに尖っていたのですか。
当時、ゴールデンの番組にADで付いていたのですが、『めちゃイケ』を見て育った大学出たての23~24歳の人間が、情報番組などをやっていると鬱屈としてくるんです。「やりたいのは、こういうことじゃない」「バラエティがやりたい」と。本当はそこで頑張ることも大事なんですけどね。
僕が考えた企画を1秒でも早く実現させるためには企画書を書くしかない。それで西さんに「この企画、考えたんですけど」「また考えたんですけど」と、今考えると大学のサークルレベルの企画書なのですが、とにかく出しまくっていました。西さんは最初こそ「おお!今日も考えてきたか」という反応だったのですが、だんだん「お前さ、これ本当に考えている?」「ただ思いついたことを書いているだけだろ」みたいに言われだしまして(笑)。それでも諦めずに企画を出し続けていたら、次第に「芦田って、やる気はあるみたいだな」と覚えてもらえるようになりました。
そうすると、そのやる気がたまに引っかかって企画書が編成に上がり、「芦田ってヤツ、1年目なのに頑張っているな」「2年目にしてはやる気あるな」と目に留まるようになってきます。自分で言うのは恥ずかしいのですが、そんなふうに上司や周囲の人に名前を覚えてもらったり、「やる気のある人」という印象を与えたりする努力は、会社員としてとても大事なことだと思います。自分が若い社員と接していて、「あまりやる気なさそうだな」と思うと、そんな人に残業時間だけ増やされても困るし、無難な仕事しか振らなくなります。
――今、芦田さん自身が注目される立場になって、部下が「芦田さん!」と猛烈にアピールしてきたら、「あざといなあ」と思いませんか。
思わないですよ。自分の企画をやりたいという気持ちはすごくわかるので、むしろどんどんアピールしてほしいですね。でも、意外とそういう人は少ないかな。
どの部署も一緒かもしれないけど、バラエティは労働時間的な費用対効果が悪すぎて、やる気のない人にはただひたすら苦行だと思います。何となく仕事をする部署ではないですし、明確に志を持っている人と僕も仕事をしたい。だからやる気があることをアピールしてくれるのは、あざといというよりシンプルにうれしいですね。
田中みな実さんが見せる「プロのあざとさ」への驚きと尊敬
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