スポットコンサルサービス「ビザスク」は、自分が必要とするビジネスの知見やノウハウを持つアドバイザーに時間単位で相談できるサービスです。アドバイザーの登録者数は11万人を突破、今年3月には東証マザーズへ上場しました。
しかし、新規性の強いビジネスモデルということもあり、サービス開始当初は投資家の支援を得られず、登録者数も伸び悩んでいたそうです。
では、ビザスクはどのように壁を乗り越え、ここまで成長してきたのでしょうか。また、そこにマーケティングはどのような形で貢献してきたのでしょうか。
今回は、株式会社ビザスクの代表取締役CEO・端羽英子さんと、同社役員でマーケティング業務を統括する宮崎雄さんに話を伺いました。
(取材・文:Marketing Native編集部・岩崎 多、人物撮影:矢島 宏樹)
目次
創業のきっかけは1時間のダメ出し
――ビザスクは、さまざまなビジネス領域の経験者(アドバイザー)に、1時間から相談できる「スポットコンサル」サービスとして有名です。なぜこのようなサービスを思いつくに至ったのか、創業のきっかけから教えてください。
端羽英子さん(以下、端羽) 起業時に思いついていたビジネスは、現在のビザスクとは異なるECサービスでした。起業前は投資ファンドに勤めていたのですが、当時の同僚から「ECで起業するつもりなら、業界の経営者に話を聞いたりして、もっとよく調べてから動いたほうがいい」とアドバイスをもらいました。それで、ECに詳しい起業家を人づてで紹介してもらい、自分のビジネスモデルを説明したところ、1時間ほど徹底的にダメ出しされたんです。
そのとき私はへこむ気持ちよりも嬉しい感情が勝りました。そして、「もっと早くこの人に出会いたかった」と感じただけでなく、「早く会えるのであれば、お金を払っても良かったな」と思ったんです。求めている知見を持つ人と、人を介さずに直接出会えるサービスの必要性を感じたこの経験が、ビザスクを立ち上げたきっかけです。
――ビジネスモデルを100通りくらい作ったとお聞きしたのですが、なぜその中からECサービスに絞ったのですか。
端羽 さまざまな方にお会いしていく中でビジネスモデルが淘汰されたり形を変えたりしながら、自然にECサービスに絞られていきました。起業前にお会いしたことのあるベンチャーキャピタルの方から「端羽さん、家事代行で起業する予定ではなかったのですか」と言われたことがあります。それくらい、同時進行で複数のビジネスモデルの実現可能性を模索していました。
宮崎雄さん(以下、宮崎) 家事代行はどこで消えたんでしょうね。
端羽 金融で働いていたときの習慣で、すぐにリスクを考える癖があります。家事代行サービスを思いついたきっかけは、もともと自分が家事を苦手にしていて、必要性を感じていたからです。
しかし、ビジネスの可能性をリサーチしていた頃、家事が苦手なある若い男性に家事代行サービスを利用したいか尋ねてみると、「可愛い人が来てくれるなら」と言われたことがありました。そこで自分のリスクセンサーが働いて、別のビジネスモデルに切り替えました。
そのころ「SHARE」を読んでUberのような、個人が売り手になれる新しいサービスについて知ったこともあり、自分の経験からものをおすすめするキュレーション型のECサービスを思いついたのですが、結果的には、先ほどのECに詳しい起業家の方にダメ出しされ、実現しませんでした。
――どんなふうにダメ出しされたんですか。
端羽 「なるほど」と思ったのは、「これから事業を立ち上げるのに、あなたが見ているビジネスはすでに年商がある状態ではないですか」と指摘されたことです。例えば創業間もない頃は、倉庫会社との契約時でも、預ける商品在庫が少なくて立場が弱いため、条件を交渉することができません。ほかにも、売り上げがほぼない時期でもカスタマーサポートの固定費が必要だったりと、厳しい状況はいろいろと想定できます。そういうときにどう対処するつもりかを細かく聞かれました。実際に立ち上げたことがある人ならではの意見です。自分は立ち上がった後の状態しか見えていなくて、甘さを痛感しました。
ビジネスモデルに必要な3つの条件
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