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注目トピック

サブスクリプション機能の実装で起こるインフルエンサーマーケティングの変化とは?クリエイターとの共創で成功したメルカリの事例【大槻祐依のInstagram注目トピック第7回】

最終更新日:2022.04.28

Instagramが2022年1月にサブスクリプション機能のテストを開始したことを発表しました。2022年3月8日時点ではアメリカの一部のクリエイターを対象に試験的に運用しているもので、日本ではまだ機能を確認できません。

サブスクリプションはクリエイターの収益化を支援する機能で、企業アカウントにはあまり関係がないように思えるかもしれません。しかし、株式会社FinT代表取締役 大槻祐依さんは、企業とインフルエンサーの関係性に影響を与える可能性があるとして注目していると言います。Instagramの注目トピックをわかりやすくお伝えする連載第7回は、サブスクリプション機能の追加の影響と、それに伴いインフルエンサーマーケティングに起こりうる変化ついてお話しいただきました。

(構成:Marketing Native編集長・佐藤綾美)

目次

SNSプラットフォームで広がるサブスクリプション機能実装の流れ

アメリカで一部のクリエイターを対象に試験的に運用されているサブスクリプション機能では、クリエイターが月額料金を設定し、有料会員限定のライブ配信やストーリーズの投稿を行えるようになります。クリエイターがサブスクリプションの登録ボタンを有効にすると、プロフィール欄に「Subscribe」のボタンが表示され、ユーザーがそのボタンをタップして登録できるようになる仕組みです。サブスクライブしたユーザーは限定のコンテンツを閲覧できるほかに、コメントやDMをすると名前の横に紫色のバッジが付くようになっています。

こうしたサブスクリプション機能の実装やテストがTwitter、TikTok、InstagramとSNSで相次いで行われており、プラットフォームがクリエイターを支援する流れが出てきています。背景には、クリエイターがプラットフォームの外に出て行くのを防ぎたいとする各SNSの思惑もあるのではと考えています。

TwitterやTikTok、InstagramなどのSNSは、クリエイターの恩恵もあって利用者を伸ばしてきました。クリエイターが良いコンテンツを投稿してくれれば、プラットフォームの利用者や滞在時間の増加につながるためです。しかし、TwitterやTikTok、Instagramでフォロワーがいくら増加しても、クリエイターはプラットフォームで稼ぐことができません。そのため、アメリカではクリエイターが独自にブランドを立ち上げたり、ニュースレターでマネタイズを図ったりするなど、プラットフォームの外へ出ていく動きが起こっています。そうした背景もあって、各SNSはサブスクリプション機能の実装により、クリエイターの支援を図っていると考えられます。

インフルエンサーマーケティングはクリエイターとの共創が鍵に

Instagramのサブスクリプション機能実装のニュースは、企業とも無関係ではありません。以前に比べて、クリエイターはファンのためになるPR案件を選ぶようになってきているのです。サブスクリプション機能が実装されてクリエイターがマネタイズできるようになると、その流れが加速し、企業がインフルエンサーマーケティングでクリエイターをアサインする難易度が高くなるのではないかと予測しています。

かつては、どちらかと言うとクリエイターよりも企業のほうが立場は強く、費用を払えばPR案件を受けてもらえる傾向にありました。そのため、フォロワー数の多いクリエイターにPRしてもらい、投稿のリーチ数を伸ばす手法が主流でした。

しかし、今後のインフルエンサーマーケティングは「クリエイターとの共創」が鍵になると考えています。近年はPR案件の増加に伴い、投稿のリーチ数を伸ばすだけでは企業が成果を上げるのが難しくなってきているだけでなく、自身のコミュニティやファンを大切にするクリエイターが増えており、ファンのためにならないPR案件を受けない人も多くいるためです。また、サブスクリプション機能の実装でクリエイターが自身で稼げるようになれば、企業のPR案件を無理に引き受ける必要もなくなります。企業は投稿のリーチ数を伸ばすだけでなく、ターゲットに届けられるようなコンテンツをクリエイターと共創することが大切です。

企業はクリエイターとどのように共創すべきか?

では、企業とクリエイターの共創をどのように進めれば良いのか、FinTで支援しているメルカリのインフルエンサーマーケティングの事例をご紹介します。

メルカリでは、「100人100通りのメルカリ」と題して、インフルエンサーとのコラボライブ配信を2021年7月より行っています。古着やキャンプ、コスメなどさまざまなジャンルのインフルエンサーをゲストに呼び、事前に集めた質問に答えていただく形で、その人が詳しいジャンルに関する事柄やメルカリの活用法を紹介してもらう企画です。

▲画像左:垢抜けるメイクハックを発信している美都【Mito】さん(@mito_makeup)とのコラボでは、残りわずかなシャンプーやコンディショナーをメルカリで購入し、自身の髪に合うか試しているとの活用法が紹介された。画像右:女性も楽しめるキャンプの情報を発信する森風美さん(@fu_u.m)は、個人が作成したギアを探したり、限定品のテントのスペアを購入したりするのにメルカリを活用していると紹介した。
参考:
https://www.instagram.com/tv/CXlZSE4ILBD/
https://www.instagram.com/tv/CV5REx8oNFl/

「100人100通りのメルカリ」の配信により、インフルエンサーのファンの人たちがメルカリに興味を持つようになったり、メルカリのInstagramアカウントのフォロワーが増加したりといった良い成果が得られました。また、インフルエンサーとのトークを通じて、メルカリユーザーのインサイトが得られる点もこの取り組みのメリットです。

取り組む上でのポイントは主に2つあります。1つは、Instagram内にはクリエイター起点のさまざまなコミュニティが存在する点に着目したことです。もう1つは、インフルエンサーの選定の仕方にあります。メルカリは、サービス名の認知は十分獲得できているものの、未利用者からのサービス理解に課題がありました。「どれだけ簡単に出品できるのか」「何を購入するのがお得感があるのか」などは、メルカリを使いこなしている人でないと、なかなか語れません。そのためFinTでは、フォロワーが多いインフルエンサーではなく、独自のコミュニティを持っていて、メルカリを日常的に活用している人を探しました。「#メルカリ」と付けて投稿する人はほとんどいないため、さまざまなクリエイターのストーリーズを1つずつ閲覧し、メルカリを利用していないか確認したのです。こうした選定の仕方は現在も続けており、地道ではありますが、施策の成果につながっていると考えています。

インフルエンサーに依頼する流れとポイント

インフルエンサーマーケティングは、流れや依頼のポイントを押さえれば、支援会社に依頼しなくても実行できます。インフルエンサーに依頼する際の流れをまとめると、次の通りです。

【依頼の流れ】

  1. 自社のターゲットを理解する
  2. インフルエンサーに依頼する内容を決める
  3. 依頼するインフルエンサーについてチェックする
    ・フォロワーがターゲットに近いか
    ・フォロワーの質は良いか
    ・発信している内容や訴求の仕方が自社商品にマッチするか
  4. インフルエンサーに依頼する
    ・企業の課題は何か
    ・二次利用や謝礼など
  5. インフルエンサーにコンテンツを作成してもらったら、投稿前にチェックする
    ・入れてほしい言葉や伝えたい内容は含まれているか

流れの中でも特に大切なのは、自社のターゲットを理解することと、インフルエンサーに依頼する際に企業の課題を伝えることです。

例えば、ダイエットに関連するサービスの場合、ターゲットは「痩せたい人」ではなく、「運動せずに痩せたい人」や「運動しながら痩せたい人」など、細かく設定する必要があります。ターゲットがどちらかによって、アプローチの仕方が異なるためです。ファスティングサービスを提供しているとしたら、ターゲットは「運動せずに痩せたい人」になり、そのターゲットにマッチしたインフルエンサーを選定することになります。

また、インフルエンサーには「このようなコンテンツを作成してください」と依頼するのではなく、企業の課題を共有するのもポイントです。ファンにマッチするコンテンツはインフルエンサー自身が最もよく把握しています。企業側の要望を伝えてもファンにとってマッチする投稿になるかはわかりませんし、かといってインフルエンサーに自由に作成してもらうと、企業が求める内容になるとは限りません。そのため、企業側の課題を伝え、その課題を解決できるようなコンテンツをインフルエンサーに作ってもらいましょう。

Instagramにサブスクリプション機能が実装された後は、上記に加えて以下もインフルエンサー選定時のポイントになると思います。

【サブスクリプション機能実装後の選定ポイント】

  • サブスクライバーの数はどれくらいか
  • 投稿のいいね!やコメントに対するサブスクライバーの占める割合は高いか

実際にサブスクライブしてみて、ファンとの交流の仕方をチェックしてみても良いでしょう。

サブスクライバーの数が第三者も見られるかどうかは現時点(2022年3月8日)でわかりませんが、ユーザーが安心して課金するための1つの指標となるので、オンラインサロンの参加人数などのように表示されるのではないかと推測しています。もしサブスクライバーの数が表示されるのであれば、人数の多さはファンの多さを示すことになり、インフルエンサーを選定する際の1つの指標となるでしょう。コアなファンがいるクリエイターを選定しての依頼もできるようになります。

また、PRの選択肢に、サブスクライバー向けのコンテンツの中でコラボレーションしたり、宣伝してもらったりする方法も加わります。インフルエンサーのフォロワーの中でも特にエンゲージメントの高い層に絞ってアプローチできるため、小規模のコラボレーションがどんどん生まれるかもしれません。

サブスクリプション機能の実装により、インフルエンサーに依頼する難易度は上がっていくことが予想されます。商品やサービスをPRするだけの案件は受けられにくくなり、企業とインフルエンサーが商品やプランを一緒に開発するなど、共創する形が主流になる可能性もあります。インフルエンサーとの共創を検討している方は、今のうちから関係構築に努めることをおすすめします。

【Profile】
大槻 祐依(おおつき・ゆい)
株式会社FinT代表取締役。
1995年生まれ。早稲田大学在学中の2017年3月にFinTを学生起業。「世界をまるごとハッピーに」というビジョンのもと、Sucle(シュクレ)という若年層女性向けSNSメディア(総合70万フォロワー)やSNSマーケティング事業を展開。主要事業であるInstagram運用代行にて、大手企業を中心に累計100以上のアカウントを企画、撮影から投稿までサポートしている。日経ビジネスやマネー現代、DIAMOND SIGNAL(ダイヤモンド・シグナル)などの媒体に、SNSマーケティングの最新傾向やSNSのユーザーインサイトに関する記事を多数寄稿している。
株式会社FinT:https://fint.co.jp/

記事執筆者

佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。
X:@sleepy_as
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