2022年もInstagramの運用に携わる方に向けて、注目トピックと具体的な活用方法をわかりやすくお伝えします。株式会社FinT代表取締役 大槻祐依さんの連載第5回のトピックは「お題スタンプ」です。
お題スタンプは昨年11月にリリースされたストーリーズに設置できるスタンプの1つで、大槻さんは「企業アカウントこそ活用してほしい」と言います。その理由と、活用時のポイントについて教えていただきました。
(構成:Marketing Native編集長・佐藤綾美)
目次
画像の投稿を促す、お題スタンプ
お題スタンプは、2021年10月に日本とインドネシアで試験的に実施されていたストーリーズの機能です。正直なところ、テスト段階では流行したようにあまり感じられませんでしたが、ユーザーの投稿を促すきっかけになったのか、テスト開始からおよそ1カ月(2021年11月2日)で正式にリリースされています。
お題スタンプの特徴は、ストーリーズに「今、何してる?」「今日のコーディネート」などのお題を設定できるところです。ユーザーは「お題に参加」をタップしてお題に参加すると、そのままストーリーズを投稿することができます。以前からある「質問スタンプ」は「おすすめの曲」を尋ねたり、テキストで質問の回答をもらったりできる機能で、お題スタンプはストーリーズとして画像を投稿できる点が異なります。
▲画像左:「お題」と書かれているのが、お題スタンプです。 画像右:お題スタンプを貼った状態。お題は自分で入力できるほか、サイコロをタップすると、「最近撮った写真」「昔を振り返って」など、もともと用意されているお題がランダムで表示されます(画像:Marketing Native編集部)。
お題を出題しているアカウントが「開始した人のクレジットを表示する」にしていれば、お題に参加しているユーザーがわかります。「開始した人のクレジットを非表示にする」になっていたり、お題に参加したユーザーが非公開アカウントだったりする場合は、出題しているアカウントしか参加者を確認できません。
UGCの増加とコミュニティの活性化が期待できる理由
お題スタンプはどんな企業アカウントでも活用が可能です。FinTのクライアント企業との取り組みを経て、フォロワーとコミュニケーションを取り、UGCの増加やコミュニティの活性化が期待できる機能だと実感しています。
UGCの増加につながる理由
お題スタンプがUGCの増加につながりやすい理由は、主に2つあります。1つは、「お題に参加」をタップするだけでストーリーズの投稿画面へ遷移できるという投稿へのハードルの低さです。もう1つは、お題に参加してくれたユーザーのフォロワーがそのストーリーズを見てお題に参加し、さらにまたそのフォロワーがストーリーズを見る…という形で参加者が広がっていく可能性があることです。
実際にFinTのメディア「Sucle(シュクレ)」で「最近、何買った?」とお題を出したところ、『「#Sucle」を付けて最近買ったものを投稿してね』とストーリーズに投稿するよりも、8倍のユーザーが参加してくれた事例があります。
▲「Sucle」での投稿例。
コミュニティの活性化が期待できる理由
コミュニティがある程度醸成されているアカウントであれば、お題を通じてフォロワーと双方向のコミュニケーションを取ることができます。参加者の投稿をシェアし、参加していないフォロワーの「投稿してみようかな」という気持ちを促すことも可能です。
また、コミュニティができていてフォロワーに世界観が浸透しているアカウントほど、そのアカウントの世界観に近い写真を投稿してもらいやすいため、お題スタンプの活用はおすすめです。「Sucle」ではすでにフォロワーの方々にアカウントの世界観が浸透しており、日頃「Sucle」が投稿しているのと同じような雰囲気の写真を投稿してもらえます。
お題スタンプを有効活用する3つのポイント
お題スタンプはきちんと取り組めば有効な施策になるので、以下の3つのポイントを押さえてチャレンジしてみてください。
お題の参加ハードルを下げる
お題はできるだけ多くのユーザーが投稿しやすいよう、参加ハードルの低いテーマを設定しましょう。以下の点を意識して考えると良いと思います。
- わざわざ撮影する必要がない
- すでにカメラロールにある写真を使って投稿できる
- 撮影が必要であるとしても、その場で簡単に撮れる
OKのお題例:
「一番好きな香りを教えて」
「プレゼントでもらって一番嬉しかったもの」
「今年買って一番よかったもの」
「おいしいケーキ屋さん」
「京都のおすすめスポット」
「おすすめのコーディネート」
「お気に入りの服」
幅広い人が参加しやすいテーマを設定しましょう。一方、避けたいのは以下のようなお題です。
- すでに終了している出来事で、写真を撮っていない可能性がある
- ユーザーが投稿できる写真を持っていない可能性が高い
- 写真で投稿するのが難しい
NGのお題例:
「朝ご飯、何食べた?」
「新商品で気になるものは?」
「新商品の感想を教えて」
「朝ご飯、何食べた?」は、一見参加しやすそうではありますが、すでに終わっている出来事で、ユーザーが撮影していない可能性が高いお題です。また、発売されたばかり、もしくはこれから発売される新商品に関するお題も、ユーザーが投稿できる写真を持っていない可能性が高く、参加者が集まりづらいので避けることをおすすめします。意外かもしれませんが、「新商品の感想を教えて」のような、テキストでないと回答できないお題も出題されがちです。画像で投稿できるお題になっているか、確認しましょう。
投稿の例を示す
ストーリーズを投稿する際は、お題スタンプと一緒に投稿の例を載せましょう。投稿の例があると、ユーザーはより参加しやすくなります。
▲投稿の例を掲載するイメージ(画像:Marketing Native編集部)。
参加者の投稿をまとめてストーリーズで公開する
参加者から投稿が集まってきたら、ストーリーズでまとめて公開するのがおすすめです。さらなる投稿の活性化につながります。
お題スタンプはコミュニケーションツールの1つとして活用を
最後に、お題スタンプを活用するタイミングについて、アカウントのタイプ別にアドバイスします。
商品やサービスの投稿を中心に行うホームページ型のアカウントは、頻繁に実施しても回答率が下がるおそれがあるので、1カ月に1回程度が投稿頻度の目安です。活用のポイントで触れたように、新商品に関するお題は参加者が集まりづらいため、既存の商品を盛り上げたいときに活用すると良いでしょう。
一方、情報に関する投稿を中心に行うメディア型のアカウントは、コミュニティが醸成されてきて、さらに活性化したいタイミングで使用するのがおすすめです。ただし、アカウントの世界観がフォロワーにまだ浸透していない場合は、大きなテーマでお題を出題してもアカウントの世界観とは異なる投稿が集まる可能性があります。節約アカウントなら節約ハックに絞るなど、そのメディアの特徴に合わせたお題を設定してみてください。
お題スタンプは、Instagramがコミュニティの活性化を目的に実装した機能だと思います。現段階で企業アカウントによる活用はあまり進んでいないようですが、私はUGCの増加が期待できる良い機能だと感じています。まだ使ったことがない方も、フォロワーとコミュニケーションを取れる1つのツールと考えてぜひ活用してみてください。
【Profile】
大槻 祐依(おおつき・ゆい)
株式会社FinT代表取締役。
1995年生まれ。早稲田大学在学中の2017年3月にFinTを学生起業。「世界をまるごとハッピーに」というビジョンのもと、Sucle(シュクレ)という若年層女性向けSNSメディア(総合70万フォロワー)やSNSマーケティング事業を展開。主要事業であるInstagram運用代行にて、大手企業を中心に累計100以上のアカウントを企画、撮影から投稿までサポートしている。日経ビジネスやマネー現代、DIAMOND SIGNAL(ダイヤモンド・シグナル)などの媒体に、SNSマーケティングの最新傾向やSNSのユーザーインサイトに関する記事を多数寄稿している。
株式会社FinT:https://fint.co.jp/