Instagramでは年に1回、Facebook Japan主催で企業やマーケター向けの公式セミナー「House of Instagram」が開催されます。今年も昨年同様オンラインで行われ、2021年11月現在、アーカイブ動画を視聴できるようになっています。
Instagramの注目トピックをわかりやすく解説する株式会社FinT代表取締役 大槻祐依さんの連載第3回は、「House of Instagram 2021」の中で大槻さんが特に注目したテーマについてお話しいただきました。日々の業務が忙しくてセミナーを視聴できなかった方はもちろん、視聴した方もあらためて理解を深めるためにぜひご一読ください。
(構成:Marketing Native編集長・佐藤綾美)
目次
今回のセミナーで感じた3つの特徴
皆さんはもう「House of Instagram 2021」をご覧になりましたか。このセミナーでは、毎年異なるテーマでInstagramの活用方法や成功事例、今後の開発ミッションなどが紹介されます。今年は9月15日にオンラインで開催され、当日は私も配信を視聴しました。Facebook Japan代表取締役 味澤氏による基調講演のほか、「ブランディング」「コマース」「ポストCookie時代」「中小ビジネス」という4つのテーマでそれぞれセッションが行われました。
今回のセミナーの特徴は主に3つ。
- Instagramのビジネスにおける価値である「好きと欲しいをつくる」というメッセージが前面に押し出されていた
- Facebook社のミッション「コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する」に関連して、コミュニティづくりが強調されていた
- コマースに関連する機能や事例が多数紹介された
この中から私が特に注目したのは、コマースについてです。ショップ機能の導入方法に関する解説や活用事例の紹介などがあり、中でも「商品タグ付き広告」の印象が強く残りました。
コンバージョン率が向上する商品タグ付き広告
商品タグ付き広告とは、画像やカルーセル、動画に商品タグを付けて出稿できる広告です。広告はフィードや発見タブに配信できます。ユーザーの興味・関心に合わせた商品の広告を配信できるダイナミック商品タグ付き広告もすでに実装されており、出稿可能です。
- 商品タグ付き広告:画像やカルーセル、動画の広告に商品タグを付けて出稿できる
- ダイナミック商品タグ付き広告:ユーザーの興味・関心に合う商品をカタログの中から自動的に配信するダイナミック広告に、商品タグを付けて出稿できる
商品タグ付き広告が注目を集める理由は、コンバージョン率の高さにあります。今回のセミナーで紹介された事例では、商品タグ付きの広告と商品タグなしの広告でA/Bテストを実施したところ、商品タグ付きの広告は5.8倍コンテンツが見られ、3.6倍の高さでカートに追加されたとありました(※1)。商品タグが付いていると、その商品が気になったユーザーはタグをタップして詳細を知り、購入サイトへ遷移できるので、Webサイトで検索し直す手間がかかりません。また、商品タグが付かないタイプのInstagram広告はタップするとLPやECサイトなどの外部サイトに移動しますが、商品タグ付き広告ならInstagram内の商品詳細ページにいったん遷移します。そのため、ユーザーも違和感なく商品を閲覧できるのだと思います。弊社でも商品タグ付き広告を使用してみて、以前の画像だけの広告に比べて購入率が上がる傾向にあると感じています。
セミナーで発表されていたデータによると、日本のユーザーが商品タグ付きの投稿から商品を見る割合は、他国の平均の3倍以上もあるそうです(※2)。これは日本のユーザーの多くが、気になる商品の口コミを探したり、商品の使用例を調べたりするために、Instagram上で能動的に情報収集を行っているからではないでしょうか。日本のユーザーはハッシュタグ検索の回数がグローバル平均と比べて5倍というデータ(※2)があることからも、積極的に情報収集を行っていることがうかがえます。また、アライドアーキテクツによる新型コロナウイルス感染症拡大以降のSNSの利用状況に関する調査では、SNSを買い物の情報収集源としている人が増えたほか、Instagramを利用する理由で最も多いのは「趣味・好きなことに関する情報収集」というデータも出ています(※3)。
※1 出典:HOUSE OF INSTAGRAM JAPAN『「欲しい」気持ちを購買につなげる、Instagramコマース入門編』
※2 出典:HOUSE OF INSTAGRAM JAPAN「好きと欲しいをつくる Instagramの進化」
※3 出典:アライドアーキテクツ株式会社「新型コロナウイルス感染症拡大以降の「新しい生活様式」における、消費者のSNS利用実態調査」
コマースについてはほかにも、ライブコマースとまとめ機能が推されていました。どちらの機能もアップデートは特にありませんが、活用事例の紹介が多数見受けられたためです。ライブ配信中にそのまま商品を購入できる機能は、Instagramにまだ実装されていません。しかし、インスタライブを活用して売り上げを上げたI-ne(アイエヌイー)やCOHINAなどの事例がセミナーでは紹介されていました。
一方、まとめ機能は、テーマに合わせてフィードの中から投稿を選び、タイトルを付けたり、見出しや説明を加えたりして1つのコンテンツを作成できる機能です。例えばコスメブランドならアイテム別に作成したり、弊社のメディア「Sucle(シュクレ)」では「関東のおすすめ穴場カフェ5選」などとまとめたりしています。企業のInstagram活用について日頃サポートしている中で、以前よりも活用するところが増えてきていると感じる機能の1つです。
▲弊社で運営しているSucleのアカウントで作成した「ホカンスにおすすめのホテル5選」。出典:@sucle_
Instagramがコマースを推進する理由は主に3つあると考えています。1つめは、オフラインの店舗を中心としていた企業もコロナ禍でオンラインの施策に力を入れ始め、SNSを積極的に活用する事例が多く見られるようになったこと。2つめは、ユーザーがSNSを利用する時間も増加傾向にあることです。3つめに、Instagramが以前からマーケットプレイスの実現を目指しており、そのためには企業の参加が欠かせないことが挙げられます。
まずは商品タグを設定し、機会損失を防ぐ
日本のInstagramでは、決済機能がまだ実装されていません。しかし、将来的に実装されれば、ショッピング機能を利用するユーザーはこれまで以上に増加するでしょう。Instagramで商品を紹介している企業の方は、ユーザーの多くがショッピング機能を利用するようになるタイミングに備え、今のうちから準備しておいたほうが良いと思います。
まず、商品を紹介している投稿には、くまなく商品タグを設定しておきましょう。商品タグはフィードの投稿だけでなく、ストーリーズやIGTV、リールにも設定が可能です。商品を1つずつ登録するのに手間がかかるせいか、意外と注力できていない企業が多いと感じています。
商品タグを付けていれば、ユーザーを商品詳細やECサイトへ誘導し、購買につなげられる可能性があります。どれくらい売り上げにつながったのか効果を測定するには、GoogleアナリティクスやShopifyとInstagramを連携させ、Instagram経由の売り上げ数値を確認しましょう。
Amazonのようなプラットフォームや自社のECサイトで商品を購入できる環境が整っている企業も、Instagramのショッピング機能を活用するメリットは十分にあると思います。なぜならInstagramは投稿を通じて商品の良さやブランドの想いを伝えられるほか、コミュニティを構築してユーザーと双方向のコミュニケーションをとることもできるからです。売り上げの向上に悩む企業の方は、活用を検討してみてはいかがでしょうか。
【Profile】
大槻 祐依(おおつき・ゆい)
株式会社FinT代表取締役。
1995年生まれ。早稲田大学在学中の2017年3月にFinTを学生起業。「世界をまるごとハッピーに」というビジョンのもと、Sucle(シュクレ)という若年層女性向けSNSメディア(総合70万フォロワー)やSNSマーケティング事業を展開。主要事業であるInstagram運用代行にて、大手企業を中心に累計100以上のアカウントを企画、撮影から投稿までサポートしている。日経ビジネスやマネー現代、DIAMOND SIGNAL(ダイヤモンド・シグナル)などの媒体に、SNSマーケティングの最新傾向やSNSのユーザーインサイトに関する記事を多数寄稿している。
株式会社FinT:https://fint.co.jp/