TikTokはZ世代を中心に利用され、ユーザー数が伸長しているアプリです。専用の広告配信プラットフォームが登場したり、TikTokと広告パートナーを結ぶ企業が増えたりするなど、TikTokは企業から熱視線を浴びていると言えます。しかし運用にあたり、きちんとした成果を出すのは難しいもの。企業が活用する場合、どのようなポイントがあるのでしょうか。今回は、TikTokを活用している企業の中から、成果を上げている3つの事例をご紹介します。
画像素材: curiosity / PIXTA
目次
TikTokとは
広告やキャンペーンなど、いたるところで目にするようになったTikTokですが、そもそもどのようなサービスなのか、おさらいしましょう。
TikTokは若い世代を中心に人気のモバイル向けショートムービープラットフォームです。アジア圏を中心に流行し、アプリのダウンロード数は10億にのぼります(※1)。
音楽に合わせてダンスや口パクを行うリップシンクなど、ユーザーは面白い瞬間や共有したい出来事を撮影し、自分なりに加工して動画を投稿します。TikTokに投稿される動画は15秒から1分(※2)という短い時間で構成されており、一つの動画を気軽に視聴できるのも特徴です。
また、アプリ内で完結して撮影→編集→エフェクト→投稿といった一連のアクションを行えるほか、投稿するテーマがあらかじめ提示されているといった動画制作に対するハードルの低さから、ユーザーの人気を集めています。
TikTokを企業が活用するメリットやマーケティングでのポイントなどは、下記の記事で詳しく取り上げています。合わせてご参考ください。
TikTokを活用したマーケティングで成果を上げるには?
※1:2019年2月時点。中国におけるAndroidのダウンロード数は含まない。TikTok Surpasses One Billion Installs on the App Store and Google Play SensorTower
※2:1分動画が撮れるのは一部ユーザーのみで、条件がある。
企業の活用事例と成果
TikTokを自社のプロモーションに活用する企業が増えています。ほかのSNSとフォーマットが異なるTikTokはこれまでと違った新たなリーチも可能です。今回は3つのアカウントに調査を行い、活用のポイントと成果を伺いました。
※記載の内容は記事制作当時のものです。
1万フォロワー達成!新規ユーザーを狙ったReluxの戦略
画像出典:Relux
Relux(@relux_travel)は、株式会社Loco Partnersが運営するアカウントです。同社は、厳選したホテル・旅館を紹介する宿泊予約サービス「Relux」を提供しています。
新しいつながりを求めて導入
Loco PartnersがTikTokをプロモーションに活用した目的は、これまでつながりが少なかった若い世代との接点を増やすことと、動画によりさらなる地域・旅の魅力や新しい宿泊体験を届けることです。TikTokの流行の先駆けである中国では、あまり知られていなかった宿泊施設や観光地がTikTokに投稿されることで人気を集めています。日本を含むグローバル版TikTokでも、中国版TikTokのように地域活性化を図れる環境をつくりたいと考えています。
ユーザー目線の動画を意識
TikTokはアルゴリズムにより質の高い動画が「おすすめ」に流れやすくなっています。
Loco Partnersが質の高い動画の作成にあたって意識した点は3つあります。動画全体のストーリー、動画と音源のマッチ、投稿文です。
動画は全体のストーリーをあらかじめ想定してから撮影・編集します。特に冒頭の1.5秒ほどで惹きつけることと、どこにインパクトのある場面を持ってくるかを意識しています。TikTokは「おすすめ」に流れる動画ですら、最後まで視聴されづらいため、動画の冒頭でユーザーに「最後まで動画を視聴したい」と思わせるような展開をつくれるように撮影・編集しています。
また、動画を編集する際は、旅や動画のイメージに合う音源を選ぶように工夫しています。音源に合わせて動画を編集することで、動画と音源をマッチし、ユーザーがより「いいね」を押したくなるようにするためです。
さらに、若い世代に深くリーチするため、相互にコミュニケーションを取れるように投稿文も工夫しています。下記の動画にある「コメント欄で叫んで、ストレス解消してみて! 」が、その例です。企業が一方的に情報を発信している状態を避け、親近感を持ってもらえるよう、コメントのなかでコミュニケーションを取って楽しめる場を提供しています。
毎日の投稿×一定の質がカギ
1日1回以上の投稿と一定の動画の質を担保することを心がけています。お客様満足度の高い宿泊施設や、外部の協力者によるサポートもあり、ユーザーが思わず見入る質の高い素材を集めています。Loco Partnersの代表がSNSなどを通じ、動画提供の協力を呼びかけることもあります。
結果、フォロワーは1.7万人を突破。動画の累計視聴数は2000万回を達成し、当初の目的であった新しい層とのつながりも創出できています。ちなみに、2019年1月末にByteDance社と行ったキャンペーンでは、指定したハッシュタグによる動画投稿が約2万件、TikTok内のキャンペーンLPの閲覧数が58万PVという成果を収めています。今後はReluxアプリへの流入や宿泊施設への送客なども目標に設定し、運用を図るとのことです。
TikTok外でもムーブメントを起こしたAbemaTVの秘策
画像出典:今日好き@AbemaTV
今日好き@AbemaTV(@kyosuki_official)は、インターネットテレビ局AbemaTVで毎週月曜夜10時から放送されている恋愛リアリティーショー「今日、好きになりました。」のアカウントです。
若い世代を狙ってTikTokを活用
「今日、好きになりました。」は、初対面の高校生男女が2泊3日で本気の恋愛をするという、恋愛リアリティーショーです。AbemaTVは番組を総合的にプロモーションしていく施策の場の一つとしてTikTokを活用しています。恋愛リアリティーショーの視聴層は10代を中心とした若者が非常に多く、TikTokユーザーとの親和性は抜群です。
TikTokを使ってない層へのリーチも意識
AbemaTVが動画コンテンツの制作にあたり、意識した点は番組の文脈を持ったコンテンツにすることです。例えば、恋愛リアリティーショー「今日、好きになりました。」の主題歌をTikTokナイズさせ、TikTokユーザーが親しみやすいよう編曲したり、番組に出演している高校生自らがダンスを考えたりして動画を制作しています。
また、TikTokと外部を連携させる工夫も行っています。TikTokの導線設計上、ダンス動画が話題になっても、そのままダイレクトにAbemaTVの番組視聴にはつながるわけではありません。そのため、TikTok内で起こった話題から、番組を視聴するというアクションにつなげる点が課題となっていました。
そこで、AbemaTVはアプリ内で完結させるのではなく、TikTok外でムーブメントを起こす施策を打ち出しました。話題促進のために「今日好きダンス選手権」を開催し、優秀者を「今日、好きになりました。」公式Instagramで発表するなど、TikTokを使っていない層にもリーチするよう設計したのです。
1.5倍の新規視聴者を獲得
「今日、好きになりました。」の「今日好きダンス」はWebニュースやテレビで話題となり、番組視聴数が160%も増加しました。また、恋愛リアリティーショー「太陽とオオカミくんには騙されない♥」で制作した「オオカミくんダンス」は、TikTok上で累計視聴回数が約5500万回を突破し、初めて番組を見る人が1.5倍に増えるなど、大きな反響を呼んでいます。
画像提供:株式会社サイバーエージェント
狙いは非オタク系?Vtoker1位で知名度アップ!
画像出典:大蔦エル
TikTokに動画を投稿するVTuberのことを「Vtoker」と呼びます。そんなVtoker市場にいち早く参入したのが、中京テレビのVTuberアナウンサー・大蔦エル(@otsuta_l)です。
TikTokはブルーオーシャン
中京テレビがTikTokに参入した目的は、VTuberのキミノミヤと大蔦エルの認知度向上です。TikTokはVTuberを知らない非オタク系の若者ユーザーが多く、参入当時(2018年10月)はまだVtuberの参加者が少なかったことから、新たな市場の開拓につながりました。
インパクトのある動画を作る
動画では、短い時間でインパクトが残るよう、クリエイティブに力を入れています。TikTokは出演者の知名度が低くても、動画のクオリティが高ければ評価される傾向にあるためです。
特に、サムネイルで興味を引かせるために、VTuberと生身の人間のコラボを増やしたり、背景のデザインにバリエーションを出したりするなどの工夫を施しています。
Vtoker総選挙で1位を獲得
早くからVtokerとして活動したこともあり、2018年11月に開催されたTikTokのVTuber No.1を決める「Vtoker総選挙」で、大蔦エルは1位を獲得しています。これによりファンが増え、キャラクターの知名度が以前よりも上がりました。「Vtoker総選挙1位」という肩書きは、大蔦エルの新たなブランドの確立につながっています。
TikTokだからできること
企業の活用事例からもわかるように、TikTokだからこそできるプロモーション施策があります。ここでは、TikTokを活用したプロモーションでできることをご紹介します。
隙間時間に見られるコンテンツを配信できる
TikTokで配信されている動画は、隙間時間で視聴できる長さのコンテンツばかりです。最短15秒から、長くても1分の動画で、YouTubeやライブ配信アプリなどのコンテンツと比べ、圧倒的に短い時間で視聴できます。通勤・通学中や手持ち無沙汰な時間に気軽に見ることができるため、ユーザーが視聴しやすい動画プラットフォームと言えるでしょう。
ただし、一つひとつの動画が短く視聴しやすいぶん、見終わったユーザーがほかの動画へ遷移しやすい設計になっています。そのため、ファーストインプレッションでユーザーを惹きつける工夫が必要です。
世界観を構築しやすい
TikTok最大の武器は音楽です。豊富な種類の音楽を活用し、ユーザーの関心を惹く動画を作成できます。また、音楽を活用することによって、企業がユーザーにイメージしてほしい世界観の演出も可能です。15秒という短い時間で世界観を伝えられるサービスと言えるでしょう。
ユーザーを巻き込んだキャンペーン施策が打てる
TikTokは、ユーザーを巻き込んだキャンペーン施策を打ち出すことができます。
TikTokはタイムラインの表示のされ方がほかのSNSと大きく異なります。基本的にTwitterやInstagramは、自分のフォローしているユーザーの投稿がタイムライン上に流れます。もし、フォローしているユーザー以外の投稿を見たい場合は、ツイートや#(ハッシュタグ)での検索が必要です。しかしTikTokでは、アプリを開くと、フォローしているユーザーだけでなく、おすすめ動画が流れるタイムラインが表示されます。また、「#ぴょんぴょんダンス」「#振り振りダンス」といった投稿テーマをユーザーが決められるうえ、流行りのテーマを真似して投稿するという文化もあります。
キャッチーだったり、面白いテーマであったりすれば、その「#○○」での投稿が増えるため、より多くの人に参加してもらい、キャンペーンを訴求できます。ユーザーが自然とキャンペーンや流行している投稿を目にする設計になっており、人から人へと伝播していく流れができやすく、話題を集められれば幅広いユーザーにリーチできるSNSと言えるでしょう。
短い時間でいかにインパクトを与えられるか
TikTokは簡単に使えて参入しやすいものの、難しいポイントもあります。今回調査した企業は難しかったポイントとして、「基本的に映像のみで勝負するところ」「TikTok外のアクションにつなげるところ」「アカウントをフォローしてもらうこと」と挙げていました。
今回ご紹介した成功事例の共通項は「ユーザー目線を意識すること」です。どの企業も、ユーザーの印象に残るような工夫をしています。TikTokはキャンペーンに関するユーザー投稿が発生しやすいSNSであるため、ユーザーの印象に残り、参加しやすいテーマの設定がカギとなるでしょう。また、視聴率の上昇や購入者数の増加といった目的がある場合は、TikTok内で完結させず、ほかの媒体と連携し、成果に結び付けることも大切です。TikTokの活用を検討している方は、今回ご紹介した事例をぜひ参考にしてみてください。
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