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TikTokを活用したマーケティングで成果を上げるには?Natee・朝戸太將【ビタミンゼミレポート#08】

最終更新日:2022.06.23

若い世代の集客を目的に企業がTikTokを活用するケースが注目されています。しかし、活用を検討してみるものの、施策で得られる効果を測りかね、なかなか実行に移せない…と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。特に、スタートアップ企業の場合はリソースが限られていることもあって、やるべきか否か躊躇しているところもあると思います。

スタートアップのマーケティングを支援する「ビタミンゼミ」(※)のレポート第8回は、「TikTokを活用したマーケティング」をテーマにお届けします。講師は、TikTokを活用したプロモーションに関するサービスを一気通貫で提供する、株式会社Natee営業執行役員の朝戸太將さんです。TikTokの広告メニューや活用のメリット、実施の適切なタイミング、マーケティング事例をご紹介します。

(取材・文:Marketing Native編集長・佐藤綾美)

※ビタミンゼミ:ビタミン株式会社が運営し、スタートアップ企業の経営者やCMO候補のマーケターがゼミ生として参加するコミュニティ。コミュニティへの参加は有料で紹介制。Marketing Nativeでは、月1回開催される「朝ゼミ」の内容を不定期でレポートしている。

目次

TikTokの3つの特徴

朝戸さん(以下、朝戸) すでにご存じかと思いますが、TikTokは国内外を問わずユーザー数が伸長しているアプリです。グローバルの月間アプリダウンロード数で世界一になっていますし、累計のインストール数は20億を超えています。また、国内のソーシャルネットワークアプリの中では、TwitterやLINE、Instagram、Facebookを抑えて利用時間が長くなっており、存在感を増してきています。

画像提供:株式会社Natee

では、TikTokがここまで伸びて注目を集めているのはなぜでしょうか。プラットフォームの特徴と、TikTokユーザーの特徴の2つに分けてお話しします。

まず、TikTokのプラットフォームの特徴は、主に3つ挙げられます。「拡散性の高さ」「エンゲージメントの高さ」「広告の受容性の高さ」です。

拡散性が高い

YouTube、Instagram、TwitterなどのSNSは、検索やフォローといったユーザーのアクションをベースに情報が広がっていくのが特徴です。一方、TikTokはAIを利用した機械学習の精度が高く、ユーザーが自ら検索などの自発的な行動をとらなくても、おすすめによって気になるコンテンツを見られる仕組みになっています。そのため、フォロワーが全くいないアカウントでも、美容などの特定の領域に振り切って面白いコンテンツを発信していれば、美容に興味があるユーザーにコンテンツがどんどん拡散されていきます。

例えば、私がメンズメイクに関する30秒の動画をTikTokにアップし、それがいろいろな人に最後まできちんと視聴され、200回再生されたとします。すると、機械学習は「この動画は良い動画なんだな」と学習し、美容に関心があるフォロワー以外のユーザーにも私の動画をおすすめします。そして、動画の再生数が1000回、1万回、10万回と増えていく…という仕組みです。

こうした仕組みのおかげで、TikTokでは動画がバズり、フォロワーが1日で10万人増えることもあります。フォロワーの急増が起こりやすいプラットフォームなのです。

エンゲージメントが高い

TikTokは他のプラットフォームに比べ、コンテンツのエンゲージメント率が高くなりやすい傾向にあります(他のプラットフォームが0.3~1.1%に対し、TikTokは5.3%)。ユーザーが見たいコンテンツが届き、関心度が高い状態で視聴するためです。また、スマートフォンで縦長のフルスクリーン・音声ONで視聴すると没入感がある のも、エンゲージメントが高くなる理由の一つと考えています。

広告の受容性が高い

TikTokでは、1本1本のコンテンツの間に広告が流れるのではなく、ユーザーが指でスワイプすることにより、広告もそうでないコンテンツも同じように再生されます。テレビCMやYouTubeの広告は「見たいコンテンツを阻害するもの」として嫌がられることもありますが、TikTokはユーザーにとって面白く、合う内容になっていれば、広告に対する好感度も上がりやすくなっています。

TikTokユーザーの特徴は大きく「10代~20代が多い」「直観的・行動的」の2つです。1995年以降に生まれた10代~20代で、「新しい商品はすぐに購入する」「衝動買いをする」「生活を楽しむためにお金を使う」など、直観的・行動的なユーザーがTikTokには多い傾向にあります。

ビタミンゼミ・高松さん(以下、高松) TikTokユーザーは、ほかのSNSユーザーと被っていないと聞いたことがあります。

朝戸 YouTubeを見ている人、Instagramを使っている人ももちろんいるので、ユーザーが被っていないというよりは、視聴態度が異なるのではないかと考えています。

  • YouTube:若い人たちはテレビ代わりに見ていて、20時になったらバラエティー番組を見る、自分で気になっているものを検索して見るなど、能動的に見ている
  • Instagram:友達の近況が気になって見ている、好きなファッションブランドの世界観に共感したり、憧れたりして見ている
  • TikTok:一番ダラダラしたい時間に受動的に見る

TikTokはダラダラしたい時間に見るので、ユーザーが「暇だから漫画でも読むか」くらいの受動的な気持ちでいるときに、企業の情報を届けられます。他のSNSとは視聴態度が異なるため、TikTokで広告を配信してみると、これまでリーチしたことのないユーザー層に接触できることがあります。

画像提供:株式会社Natee

TikTokの広告メニュー

TikTokにはさまざまな広告メニューがあり、媒体の純広告に当たるのが、下記の「1」~「3」です。

  1. ハッシュタグチャレンジ
  2. Top View
  3. 起動画面広告
  4. タイアップ
  5. 運用型広告

ハッシュタグチャレンジは、オリジナルの音源やダンス、スタンプをTikTok内に作り、プロモーションできる広告メニューです。おすすめフィードに企業の告知動画を流せるようになっています。ユーザーがチャレンジページを参考に公式動画を真似した動画を作成・投稿し、ハッシュタグの付いたUGCがどんどん生まれる仕組みです。

Top Viewはアプリ起動時に最大60秒の動画広告を流せるメニューです。起動画面広告はアプリ起動時に3秒の静止画または5秒の無音動画を流すことができます。

タイアップは、TikTokクリエイターの個人アカウントで最大60秒の動画をPR投稿することです。TikTokクリエイターのフォロワーだけでなく、動画の内容に興味のあるユーザーにも拡散していくところが魅力です。

運用型広告は、年齢や性別でターゲティングを行い、最大60秒の動画を企業の広告アカウントで配信してLPやアプリストアへの遷移を促します。ほかのSNSと比べてCTRは高くなり、CPCが下がる傾向にあるのが特徴です。

画像提供:株式会社Natee

高松 タイアップはどのようなフローで制作するのでしょうか。

朝戸 タイアップは実施の決定から投稿まで、3週間~4週間くらいかかります。企業と打ち合わせを行い、商品やサービスの伝えたいポイント、NG事項を決めたら、TikTokクリエイターに共有します。それから「字コンテ」と呼ばれる動画の構成案をTikTokクリエイターに作ってもらい、我々が内容を調整し、企業の合意を得ます。そして動画を制作し、初稿を企業に確認してもらい、修正があれば対応します。企業からOKが出たら投稿です。

企業がTikTokを活用するメリット

企業がTikTokを活用するメリットは大きく3つあります。

1つは圧倒的にリーチ効率が良いことです。TikTokの広告メニューの中でもハッシュタグチャレンジは、ユーザーが一緒になってチャレンジに参加してくれるため、UGCが広がりやすく、テレビCMと比較しても高いリーチ効率を誇ります。

2つめは、バズ・トレンドを創出できることです。AIのおかげで動画の拡散性が高く、UGCがまた新たなUGCを生む構造にもなっているため、TikTokはバズやトレンドが起こりやすくなっています。

3つめは、購買にも貢献することです。エンゲージメントが高く、直観的・行動的なユーザーが多いため、認知から購買までを一気につなげるような、クリエイティブジャンプを起こせる可能性があります。

スタートアップ企業は「グロースのお供にTikTok」

ここからは、スタートアップ企業の皆さんがTikTokを活用するにはどうすれば良いか、私なりの考えをお伝えします。覚えていただきたいのは「グロースのお供にTikTok」ということです。

TikTokの活用を検討するのにおすすめのタイミングは次の2つです。

  • ユーザー数を飛躍的に伸ばしたいとき
  • PMFしてきて、SNS広告の運用を横並びで進めるとき

TikTokはほかのSNSに比べてユーザー層が若いため、「資金調達の直後で一気にユーザー数を伸ばしたい」「資金調達前に、ユーザー数がすごく伸びていることを資料で見せたい」などのタイミングでターゲットを拡張し、高いエンゲージメントで新たなユーザーを獲得するのに向いています。

おすすめの商材は、無料アプリ・ゲーム・プチプラ系コスメです。この3種類の商材はTikTokユーザーと相性が良く、効果を出しやすいと思います。というのも、ユーザーが若いゆえに所得が多いわけではないのと、「すぐにインストールできる」「無料でも始められる」ものへの反応が速いという特徴があるからです。

また、TikTokユーザーはコスメ情報に詳しい人が多い傾向にあります。日頃から多くの情報に触れていることもあって、実年齢より10歳くらい上の人たちが知っているような美容の知識も把握していると考えたほうが良いと思っています。ただ、知識があっても何を買えばいいのかはわからないので、TikTokなどの普段見ているメディアで触れる情報ほど、優先度高く購買の参考にするようです。

取り組むにあたっては、注意点もあります。1つは、初動(CPCやCPA)がかなり良くても、効果はROASやLTVまで見て判断したほうが良いことです。過去のクライアントでは、CPAは良いけれど、ROASやLTVで見たら離脱が多いケースもありました。TikTok広告は最初の反応が出やすいので、後々の継続まで見られる座組を作り、検証していけると良いでしょう。

もう1つの注意点は、高級商材や高単価系の健康食品はCPAやROIが合わないケースが多いことです。「50代向けにTikTokで何かやりたいです」となっても、現状はあまり向かないと思います。

高松 ROASやLTVまで効果が出ていないケースは、クリエイティブの問題なのでしょうか。それとも、商品自体がダメな傾向にあるのですか。

朝戸 両方があり得ます。ただ、TikTokユーザーは検索して興味を持つ人たちとは異なり、「フィード欄での偶然の出合いからアプリをインストールした」などと意図せず知る人がほとんどで、熱しやすく冷めやすい傾向にあります。

高松 TikTokのように情報がフロー型のプラットフォームで、ユーザーが反応しやすいのは、広告のクリエイティブが良いときでしょうか。

朝戸 そうですね。8割くらいの割合でクリエイティブが成果に影響を与えると思います。

高松 では、スタートアップ企業がいざTikTokを活用しようと思ったら、なんとなくではなく、きちんとしたクリエイティブが打てる状態でないと難しいのですね。

朝戸 Facebook広告などを運用して、クリエイティブや訴求軸の勝ちパターンが見えているときにTikTokを始めるのが良いと思います。「この訴求軸ならユーザーを獲得できそう」「このクリエイティブは数字が良かった」といった経験があれば、それがTikTokでも成り立つのか検証できますから。

TikTokを活用するうえでのポイント

「TikTokがよくわからない」という悩みには、2種類の「わからない」があると思います。1つは「媒体がよくわからない」で、もう1つは「若者がよくわからない」です。そうした2種類の謎が、TikTokの活用を難しくさせているのではないかと考えています。

若者のインサイトを理解し、TikTokの媒体特徴を知ったうえでプランニングし、そのうえでキャスティングを検討しながらクリエイティブを作っていくと、TikTokの強みを最大化できると思います。

画像提供:株式会社Natee

1990年代中盤から2010年頃に誕生したZ世代の人たちは、生まれてから好景気をあまり経験したことがない世代です。作られた世界に対して違和感を抱きやすく、きれいすぎるものよりも不完全さや駄目なところが見えるものに好感を持つ傾向にあります。また、世間体を気にしつつ、個性を大切にする多面性を持つのも特徴です。小学生くらいからスマートフォンを持っているので、1日に触れる情報やコンテンツの量が多く、深く情報を理解するよりも、広く浅く情報をかじって意思決定する傾向にもあります。

キャスティングにおいては、芸能人よりもTikTokクリエイターを起用したほうが広告効果は出やすいです。TikTokの調査により、テレビで活躍するタレントよりもTikTokクリエイターのほうが、広告想起率は高いという結果が出ています。

画像提供:株式会社Natee

Awareness(認知や再生)を生むには、クリエイティブはクリエイターらしさが必要で、Intention(購入意欲)を高めるには商品訴求が欠かせません。再生回数を増やすだけなら、そのクリエイターならではのクリエイティブを作ってもらえば良いですが、限られた予算を使って購入までつなげるなら、企業側が商品の訴求の仕方まできちんと考慮することが大切です。

高松 TikTokがブランディングの文脈で使われるケースはありますか。

朝戸 ファッション誌の広告のようなきれいな世界観でブランディングしているケースはほとんどないと思います。

高松 クリエイティブはどう作れば良いでしょうか。

朝戸 TikTokでもSMB(Small to Medium Businessの略。中小企業のことを指す)向けにクリエイティブツールキットを提供しています。画像やロゴ、テキストなどをアップロードして動画クリエイティブを作成できるツールです。

TikTok For Business クリエイティブツールキット
https://tiktok-for-business.co.jp/archives/5725/

TikTokに必要なのは、広告運用力はもちろん、クリエイティブを量産したり変更したりできるスピードだと感じています。

TikTokを活用したマーケティング事例

最後に、弊社でTikTokの活用をご支援して、成果を上げたマーケティング事例を紹介します。
※具体的な企業名は伏せてお届けします。

企業A

TikTokクリエイターを10名ほど起用し、エンタメ系・商品レビュー系・ダンス系と3つの系統に分けてヘアケア用品のプロモーションを行いました。再生数を高めるためには完全視聴率のほかにエンゲージメントも重要であったため、仲のいいクリエイター同士をキャスティングし、コメント欄を賑やかにするなどの工夫も行いました。

結果、再生回数もKPIを大きく達成し、通常時と比較して売り上げが200%アップしました。

企業B

高校生をターゲットにしたアプリを提供している企業で、ブランディング目的でTikTokの運用を実施しました。結果、アプリダウンロード数が増加した事例です。

複数人のTikTokクリエイターに同時にプロモーションを行ってもらい、TikTok上で「あの人もこの人も●●をPRしているよね」という状態を作りました。動画の内容はアプリに関連するもので、なおかつ高校生にとって関心の高いテーマにしました。

TikTokのタイアップではリンクを設置できないため、この事例でもアプリダウンロードの導線は設置していません。しかし、タイアップ後はアプリダウンロードが通常と比較して増加しました。

 

【今回の講師Profile】
朝戸 太將(あさと・だいすけ)@asato_natee
株式会社Natee 営業執行役員
東京大学経済学部卒。2016年、株式会社リクルートキャリアに新卒入社。HR領域で採用や育成、組織づくりのコンサル営業に従事。個性と才能あふれる世界の実現に共感し、2019年5月よりNateeに参画する。創業期よりTikTok事業の統括を務め、広告主の多様なニーズに対してTikTokを軸としたソリューションを提供。


【ビタミン株式会社】

高梨大輔(たかなし・だいすけ)@dtakanashi
高松裕美(たかまつ・ひろみ)@_romihee_
株式会社リジョブ(現株式会社じげんグループ)の創業役員の2人が2015年に創業し、エクイティファイナンス型のスタートアップを専門に、インハウスマーケティング支援やエンジェル投資活動を行う。100名を超える紹介制ビタミンゼミでは、信頼できる専門家から「一次情報」や業界の最新情報をスタートアップに届ける活動をしている。
https://vitaminzemi.studio.site/

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記事執筆者

佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。
X:@sleepy_as
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