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インタビュー

おやつカンパニー専務/マーケティング本部長・髙口裕之が明かす 「BODY STAR」発売1年目の通信簿と2年目の戦略

最終更新日:2022.03.25

The Marketing Native #40

おやつカンパニー 取締役専務執行役員/マーケティング本部長

髙口 裕之

ベビースターラーメンで有名なおやつカンパニーが、タンパク質訴求のスナック菓子「BODY STAR」を発売したのが昨年(2021年)3月15日。Marketing Nativeではその年の1月に、おやつカンパニーが「新たな歴史の1ページとなる新商品を発売します」という書き出しで、「BODY STAR」のマーケティング戦略に関する記事を掲載しました。

あれから1年。記事は多くの方に読まれましたが、最近、読者の方から「その後、BODY STARは売れているのですか?」と聞かれることがあり、私自身も気になったので、今回再び同社取締役専務執行役員でマーケティング本部長の髙口裕之さんをインタビュー。発売から1年間の自己採点と手応え、誤算、2年目の戦略を率直に語っていただきました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧 人物撮影:矢島 宏樹)

目次

    発売から1年間の手応えと誤算

    ――BODY STARを紹介したMarketing Nativeの記事はたくさんの方にお読みいただけました。同時に、「戦略の話は面白かったけど、結局売れたのですか?」という声を最近頂くようになり、ズバリお聞きしたいと考えた次第です。この1年間の目標達成、自己採点、手応え、誤算などいかがですか。

    会社としての目標はかなり高めに設定していますので、達成まではいまだ道半ばです。全体的に考えると、自己採点は60点くらいだと思います。

    まず誤算とは言えませんが、想像よりハードルが高いと感じたことが2つあります。1つは小売さんの導入で、広告の投下量が一定以上あるかどうかが極めて重要だとあらためて認識しました。テレビCMを入れると、小売さんとしても前向きに扱ってくれやすいのですが、弊社の場合、大手企業のように高いGRP(Gross Rating Point=延べ視聴率)の広告宣伝費を出稿できるわけではありません。今回、小売店の配荷を拡大することも目的の一つとして、少量ながらにも広告投下を実施しましたが、投下量の少なさとコンセプトの新しさから小売さんの導入が想定以下に留まりました。

    もう1つは小売のバイヤーさんに「従来通りの“おいしさだけを提供価値とするスナック類”の1つとしてどうか?」と評価されがちなことです。スナック類の中には「ポテトチップス」という巨大すぎる存在がいます。小売さんは基本的に坪効率商売ですから、同じ1平方メートルならなるべく老若男女多くの人に好かれやすい商品を置きたいのは当然です。もちろん、小売さんもBODY STARのような商品が注目されていて市場もこれから伸びるだろうと肌感覚的には認識しているものの、まだ少し様子見をするところが想定より多かったと感じました。

    ――手応えや成果はどうですか。

    ターゲットの消費者からの見られ方を最も大切にしているのですが、その点に関しては想定通りです。それを如実に感じ取れるのがAmazonの売れ筋ランキングで、常連のロングセラーブランドが肩を並べる中、まだ2年目を迎えたばかりのBODY STARが100位内に毎日のようにランクインしています。

    ソーシャルリスニングや意識調査をすると、主な購買層は「スナック菓子を食べたいけど、健康管理やボディメイクにも興味があって、実際に食事管理にある程度取り組まれている方」です。定性的なデータですが、その方々には「ボディメイクをする以上、スナック菓子は我慢しなければいけないと思っていたけれど、BODY STARのような商品があった」「スナック菓子を食べるならBODY STAR」と認識いただけたと考えています。

    ECの場合、単価100円台のスナックを1袋だけ購入するのは難しく、我々もケースやボールという単位で販売しています。「ボディメイク中だけど、鶏の胸肉やササミだけでは飽きるからスナック菓子も食べたい」と考えるターゲットの方々が、複数個入りのBODY STARをケース買いし、リピート購入していただいているからこそAmazonの売れ筋ランキングで安定的に動いているわけです。その傾向がはっきりと見えてきた点は大きな手応えになっています。

    一方、オフラインの店舗で購入したい方も大勢いらっしゃいます。我々に寄せられる問い合わせの多くも「どこで買えるのか?」「どこに売っているのか?」です。その点は先ほど申し上げたように流通・小売さんの様子見の状況からまだ露出を取りきれておらず、興味・関心を持ったお客さまを創れたとしても、スーパーを回っても売っていないし、試しに1袋だけ買ってみたいのにいきなりケース買いするリスクも取りたくないしで、そういうお客さまをECへつなげるところに課題があることも見えてきました。

    ですから今は時間をかけて、BODY STARのような新しい健康志向商品のゾーニングも品ぞろえとして置いていくことが必要だと流通・小売の方々に認識いただけるよう努めているところです。それができればファーストトライアルが取れて、気に入っていただければECでケース買いという流れにスムーズにつながると思います。

    画像提供:おやつカンパニー

    西川貴教さんもリピート購入

    ――AmazonなどECでまとめ買いしてくれるリピート顧客は獲得できてきたということですね。

    そうですね。初年度だけの数字ですが、おやつカンパニー社の中で売り上げのウエイトのうちECの構成比が20%を超えているのはBODY STARだけです。ベビースターラーメンはほとんどECの数字が出ませんし、「ブタメン」という小さなカップ麺はネットでまとめ買いされる方がいらっしゃるものの、それでも5%未満。つまりオフラインでなかなか売っていないという要素はあるにせよ、ケース単位でリピート購入していただく構造についてはすでに1年目で構築できつつあると見ています。

    ――ボディメイクをしている人に「BODY STARなら食べていいんだ」という認識ができつつあり、その中からリピート購入していただける固定客をこの1年間である程度はつかめた、と。

    とはいえ、まだ顧客ピラミッドの一番上に存在する一部の方々だけだと思います。代表的なのはミュージシャンの西川貴教さんで、我々から直接アプローチしていないにもかかわらず、BODY STARをご愛用いただいているというツイートを頂き、感激しました。

    西川さんのように情報感度のアンテナが高く、自分が食べていいものを常に探されている、まさに顧客ピラミッドの最上位に位置するような方にはご愛用いただけている状況なのだと思います。そこまでは予測通りなので、あとはどれだけピラミッドの下部に位置する方々にまで浸透させられるか。そのために、ゆくゆくはコンビニエンスストアでもスーパーでもあちこちで普通に買える状態を作ることが大事なので、そのための布石としてのオフラインの施策も並行して進めます。

    ――コンビニ、スーパー、ドラッグストアの中で最も買いやすいのはどこですか。

    ドラッグストアですね。スーパーはドラッグストアに比べると配荷が遅れています。コンビニはこれから本格的に開拓するところですが、5月末に1社、コンソメ味とバーベキュー味が導入予定です。やはりBODY STARのようなコンセプトに注目が集まっていることは流通さんも認識されている一つの証拠だと思います。

    ――コンビニというと、棚落ちが早いと聞きます。熾烈な競争になりますね。

    その通りです。コンビニの場合はそもそも新商品を1回入れたら、半年間棚に並んでいることは滅多にないと言われます。ロングセラーブランド以外は、「入る・落ちる」の繰り返しですが、今はそれでいいと思います。「入る・落ちる」の激しい繰り返しの中でBODY STARを求める消費者が増えてくれば、自然と市民権を獲得して、少しずつ店舗に置かれるようになっていくはずです。その繰り返しが新しい市場を創ることへとつながります。ですから我々は繰り返せるだけのノイズを上げたり話題を作ったり、ECでブランドを盛り上げたりして、流通さんが無視できない環境を作ることがこれからの課題です。

    コンセプチュアルだからこそ買っていただける

    ――どんな媒体で宣伝しているのですか。

    当初は流通さんへの導入を効果的に促進するために少量ながらテレビCMを使ったり、プロのトレーニーとして活躍されているJINさんや田上舞子さんを起用したWebムービーを作成したりしました。現在は自社のSNSアカウントで定期的に情報を発信しています。

    そして2年目を迎えたこれからの戦略は、いろいろな大学の体育会やスポーツジムで徹底的にサンプリングを行うことを考えています。強豪大学の体育会で活躍している選手やボディメイクに関する意識の高い人に、実際に食べてもらって商品を知っていただく活動を地道にやっていきます。その結果、気に入っていただけた人がSNSで発信したり、友人・知人らに口コミで伝えたりしてくれれば、顧客ピラミッド上部の方々への浸透に効果的だと見立てています。

    ――BODY STARの姉妹品のような「大豆プロテインスナック」という商品もあります。普通のBODY STARも大豆プロテインなのに、なぜ袋に「大豆プロテインスナック」と大きく打ち出した商品を発売したのですか。

    画像提供:おやつカンパニー

    BODY STARは「数字で語れる」というストイックさをコンセプトにしていて、パッケージもコンセプトを体現した形になっています。ところが、BODY STARのような尖ったスナック菓子はあまり市場に存在しないので、流通さんが二の足を踏んでしまうのではないかと、社内から心配されました。そこで、もう少し一般向けに寄った商品も追加で出そうということになったのです。タンパク質を通常のBODY STAR から5グラム減らした15グラムにし、パッケージのカラーもパステルなど明るくして、一般消費者にわかりやすく「大豆」という言葉を前面に打ち出して追加発売したのですが、フタを開けるとやはりコンセプチュアルな通常のBODY STARのほうがよく売れるのです。結局、コンセプトに共感して買ってくださる方は曖昧な商品に興味がなく、スナック菓子をよく食べる一般消費者にも評価されにくいとわかりました。

    コンセプトが尖っていると、初期の段階では市場を創るのに多少の苦労は必要ですが、それでもやはりターゲットとのエンゲージメントは確実に取りやすいと学びました。そのため今後は通常のBODY STARだけに絞って勝負していくことにしました。

    ――わかりました。次に、消費者の反応から学んだことは何かありますか。検索すると、「売っていない」「どこで買えるのか」のほかに、「味がおいしい、おいしくない」という反応を多く感じます。

    味に関して申し上げると、目的を持った方は「○」を付けてくださり、お菓子の一つとして購入した方は「△」を付ける傾向が明確です。バリューをどこに置いて買っていただけるかで反応が大きく分かれるので、あらためてコンセプトの明確化を重視していきます。

    ECで徹底的に売り上げを伸ばす

    ――1年目の自己採点は60点。あらためて2年目の戦略を教えてください。

    ECで徹底的に伸ばします。1年目にわかったのは顧客ピラミッドの上部にいる本当にコアなターゲットの方々は、商品を見つけてさえくれればまとめ買い、複数買いのリピート購入に進んでいただける可能性が高いということです。だからAmazonの売れ筋ランキングに常に入り続けているのだと思います。

    とはいえ、顧客ピラミッド上部にいる方々全員がまだお客さまになっていただけているわけではなく、BODY STARを食べたことがなかったり、そもそもご存じなかったりする方もたくさんいらっしゃいます。2年目はそうした方々にファンになっていただけるよう注力します。併せて、ECサイトのSEOや、商品・コンセプトを伝わりやすくしたランディングページの改善を進め、リピート購入しやすい環境を整えます。

    ほかには、非常にメジャーなポータルサイトでブランド認知を高める策を打って、瞬間的であってもブランドのリーチを拡大し、そこからECサイトへの導線を作ってコンバージョンに結びつける施策を行う予定です。

    もちろん、ECだけでなく、オフラインでの認知獲得施策も抜かりなく進めます。BODY STARに興味を持ってクリックしてくださる方はどこにいるかというと、多くの方はジムにいらっしゃいます。したがってジムでのサンプリングを精力的に行い、オンラインとオフライン施策の合わせ技をもって、顧客ピラミッドの頂点にいるターゲットの方々だけでもほぼ100%の認知を取り、トライアルを促進する「選択と集中」を徹底的に実行します。

    ――コンセプトについてはいかがですか。健康志向的な訴求を強めた印象を個人的には受けたのですが、この1年で何か変えたり、強めたりしたことはないですか。

    コンセプトは変えていません。ブランディングを始めたばかりでコンセプトを変えてはいけないし、変えるつもりもありません。

    それに、健康志向に寄せていくと普通のスナック菓子のように見えてしまい、味覚重視の世界に入っていくおそれがあります。そうするとどうしてもギルティな美味しさに軍配が上がります。BODY STARはあくまでもヘルシーさを訴求しているのであり、その点でブレることはありません。

    ギルティな美味しさを持つスナック菓子をお腹いっぱい食べたい方はベビースターラーメンブランドに価値を感じてもらい、節制する必要があって本当はスナック菓子を食べてはいけないけど、食べたいという方はBODY STARを召し上がっていただきたい。BODY STARブランドを立ち上げたときから、そういうポートフォリオで考えていましたし、同じような世界にいくつもブランドを立てることは基本的に行いません。

    ――BODY STARに対する社内の反応はいかがですか。

    「本格的なボディメイクを目指す方でも食べられる、高タンパク質のスナック菓子」というそれまで存在しなかった市場の商品を伸ばすのは簡単ではないと実感しつつも、BODY STARが世の中の健康志向ニーズを捉えている認識は社内で共有されています。そのため今後は全社的な戦略としてBODY STARを育てていく方針です。

    それだけでなく、さらにこれからも健康的なコンセプトの商品やブランドを多めにローンチしていこうと考えています。例えば、BODY STARは健康面をニュートラルからプラスにブーストする目的の商品ですが、今度はマイナスをニュートラルにするようなコンセプトでもブランド開発を行っています。

    認知と市場を拡大して強いブランドへ

    ――おやつカンパニーは祖業品のベビースターラーメンブランドを強化しつつ、健康志向のスナック菓子にも力を入れていく、と。

    健康志向でいうと、もう1つ「素材市場」というブランドをローンチしまして、昨年8月に発売した「さばのスナック」と「いわしのスナック」の初動が良く、その後も好調に推移しています。

    画像提供:おやつカンパニー

    ――スナック菓子にさばといわしとは意外な組み合わせですね。なぜ好調なのでしょうか。

    BODY STARのようなストイックさではなく、青魚が持つ健康的なイメージと手の届きやすい価格が消費者に評価されているのだと思います。

    青魚を練り込んだスナックなのですが、機能的にカルシウムやDHA、EPAなど青魚の栄養成分の量をUSP(Unique Selling Proposition=独自の強み、売り)にしているわけではありません。もともとはここ数年さば缶ブームが続いているのを見て、青魚の栄養成分を取り入れたスナックは売れるのではないかと考えていたところ、すでに「素材市場」より高価格で、栄養成分も多いスナック菓子が存在し、売れていることがわかりました。それなら、ポジショニングとして、青魚が入った健康的なイメージを保ちつつ、スタンダードな価格帯のところにホワイトスペースがあると考えたのが発売のきっかけです。売れている先行商品より価格を抑え、独自のポジションにある商品はやはりすぐに数字が出やすいと感じます。

    ――コンビニでも買えますか。

    スーパーでは比較的並んでいると思います。コンビニは一部か、これからですね。

    ――BODY STARも素材市場もコンビニで購入できるようになると大きいですよね。

    そうですね。その一方で、もう1つ大事なことは置き続けてくれる店舗を丁寧に増やすことです。リピートしない理由を調査すると、「買おうと思ったけれど、以前購入したところに置いてなかった」という回答が少なくありません。スナック菓子全体が非常に改廃が激しく、リピート購入するためには買い場があることが前提です。ECを徹底的にやろうとしているのは、リアル店舗の買い場に左右されないことも理由にあります。

    ――ECでスナック菓子を買うときは基本、箱買いなのが強いですね。

    ポテトチップスの場合はバラエティシーキング型で毎回いろいろなブランドを購入される方も多いと思いますが、BODY STARは指名買いです。だから回転がずっと安定しています。スナック菓子は発売後、一気に売れて、しばらくするとストンと落ちるのが一般的ですが、BODY STARの安定ぶりはかなり特徴的です。あとは時間をかけて認知を上げ、市場を拡大し、一般的なPLC(プロダクトライフサイクル)のカーブに持っていくのがこれからの課題です。

    ――本日はありがとうございました。

    Profile
    髙口 裕之(たかぐち・ひろゆき)
    株式会社おやつカンパニー取締役専務執行役員/マーケティング本部長。
    1969年、神奈川県生まれ。大学卒業後、中埜酢店(現Mizkan HD)に入社。営業からマーケティングの部署へ移り、さまざまなグループのブランドマネジャーを歴任、多くの新商品を開発する。MBAを取得後、規格外農産物流通会社の起業や食品マーケティングコンサルタントを経て、日系PEファンド投資先食品メーカー代表取締役就任。バイアウト後の2017年、米系PEファンド投資先のおやつカンパニーに参画、現在に至る。

    早川巧

    記事執筆者

    早川巧

    株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
    Twitter:@hayakawaMN
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