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インタビュー

おやつカンパニー専務/マーケティング本部長・髙口裕之が明かす 「BODY STAR」発売1年目の通信簿と2年目の戦略

最終更新日:2023.08.01

The Marketing Native #40

おやつカンパニー 取締役専務執行役員/マーケティング本部長

髙口 裕之

ベビースターラーメンで有名なおやつカンパニーが、タンパク質訴求のスナック菓子「BODY STAR」を発売したのが昨年(2021年)3月15日。Marketing Nativeではその年の1月に、おやつカンパニーが「新たな歴史の1ページとなる新商品を発売します」という書き出しで、「BODY STAR」のマーケティング戦略に関する記事を掲載しました。

あれから1年。記事は多くの方に読まれましたが、最近、読者の方から「その後、BODY STARは売れているのですか?」と聞かれることがあり、私自身も気になったので、今回再び同社取締役専務執行役員でマーケティング本部長の髙口裕之さんをインタビュー。発売から1年間の自己採点と手応え、誤算、2年目の戦略を率直に語っていただきました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧 人物撮影:矢島 宏樹)

※肩書、内容などは記事公開時点のものです。

目次

発売から1年間の手応えと誤算

――BODY STARを紹介したMarketing Nativeの記事はたくさんの方にお読みいただけました。同時に、「戦略の話は面白かったけど、結局売れたのですか?」という声を最近頂くようになり、ズバリお聞きしたいと考えた次第です。この1年間の目標達成、自己採点、手応え、誤算などいかがですか。

会社としての目標はかなり高めに設定していますので、達成まではいまだ道半ばです。全体的に考えると、自己採点は60点くらいだと思います。

まず誤算とは言えませんが、想像よりハードルが高いと感じたことが2つあります。1つは小売さんの導入で、広告の投下量が一定以上あるかどうかが極めて重要だとあらためて認識しました。テレビCMを入れると、小売さんとしても前向きに扱ってくれやすいのですが、弊社の場合、大手企業のように高いGRP(Gross Rating Point=延べ視聴率)の広告宣伝費を出稿できるわけではありません。今回、小売店の配荷を拡大することも目的の一つとして、少量ながらにも広告投下を実施しましたが、投下量の少なさとコンセプトの新しさから小売さんの導入が想定以下に留まりました。

もう1つは小売のバイヤーさんに「従来通りの“おいしさだけを提供価値とするスナック類”の1つとしてどうか?」と評価されがちなことです。スナック類の中には「ポテトチップス」という巨大すぎる存在がいます。小売さんは基本的に坪効率商売ですから、同じ1平方メートルならなるべく老若男女多くの人に好かれやすい商品を置きたいのは当然です。もちろん、小売さんもBODY STARのような商品が注目されていて市場もこれから伸びるだろうと肌感覚的には認識しているものの、まだ少し様子見をするところが想定より多かったと感じました。

――手応えや成果はどうですか。

ターゲットの消費者からの見られ方を最も大切にしているのですが、その点に関しては想定通りです。それを如実に感じ取れるのがAmazonの売れ筋ランキングで、常連のロングセラーブランドが肩を並べる中、まだ2年目を迎えたばかりのBODY STARが100位内に毎日のようにランクインしています。

ソーシャルリスニングや意識調査をすると、主な購買層は「スナック菓子を食べたいけど、健康管理やボディメイクにも興味があって、実際に食事管理にある程度取り組まれている方」です。定性的なデータですが、その方々には「ボディメイクをする以上、スナック菓子は我慢しなければいけないと思っていたけれど、BODY STARのような商品があった」「スナック菓子を食べるならBODY STAR」と認識いただけたと考えています。

ECの場合、単価100円台のスナックを1袋だけ購入するのは難しく、我々もケースやボールという単位で販売しています。「ボディメイク中だけど、鶏の胸肉やササミだけでは飽きるからスナック菓子も食べたい」と考えるターゲットの方々が、複数個入りのBODY STARをケース買いし、リピート購入していただいているからこそAmazonの売れ筋ランキングで安定的に動いているわけです。その傾向がはっきりと見えてきた点は大きな手応えになっています。

一方、オフラインの店舗で購入したい方も大勢いらっしゃいます。我々に寄せられる問い合わせの多くも「どこで買えるのか?」「どこに売っているのか?」です。その点は先ほど申し上げたように流通・小売さんの様子見の状況からまだ露出を取りきれておらず、興味・関心を持ったお客さまを創れたとしても、スーパーを回っても売っていないし、試しに1袋だけ買ってみたいのにいきなりケース買いするリスクも取りたくないしで、そういうお客さまをECへつなげるところに課題があることも見えてきました。

ですから今は時間をかけて、BODY STARのような新しい健康志向商品のゾーニングも品ぞろえとして置いていくことが必要だと流通・小売の方々に認識いただけるよう努めているところです。それができればファーストトライアルが取れて、気に入っていただければECでケース買いという流れにスムーズにつながると思います。

画像提供:おやつカンパニー

西川貴教さんもリピート購入

――AmazonなどECでまとめ買いしてくれるリピート顧客は獲得できてきたということですね。

そうですね。初年度だけの数字ですが、おやつカンパニー社の中で売り上げのウエイトのうちECの構成比が20%を超えているのはBODY STARだけです。ベビースターラーメンはほとんどECの数字が出ませんし、「ブタメン」という小さなカップ麺はネットでまとめ買いされる方がいらっしゃるものの、それでも5%未満。つまりオフラインでなかなか売っていないという要素はあるにせよ、ケース単位でリピート購入していただく構造についてはすでに1年目で構築できつつあると見ています。

――ボディメイクをしている人に「BODY STARなら食べていいんだ」という認識ができつつあり、その中からリピート購入していただける固定客をこの1年間である程度はつかめた、と。

とはいえ、まだ顧客ピラミッドの一番上に存在する一部の方々だけだと思います。代表的なのはミュージシャンの西川貴教さんで、我々から直接アプローチしていないにもかかわらず、BODY STARをご愛用いただいているというツイートを頂き、感激しました。

西川さんのように情報感度のアンテナが高く、自分が食べていいものを常に探されている、まさに顧客ピラミッドの最上位に位置するような方にはご愛用いただけている状況なのだと思います。そこまでは予測通りなので、あとはどれだけピラミッドの下部に位置する方々にまで浸透させられるか。そのために、ゆくゆくはコンビニエンスストアでもスーパーでもあちこちで普通に買える状態を作ることが大事なので、そのための布石としてのオフラインの施策も並行して進めます。

――コンビニ、スーパー、ドラッグストアの中で最も買いやすいのはどこですか。

ドラッグストアですね。スーパーはドラッグストアに比べると配荷が遅れています。コンビニはこれから本格的に開拓するところですが、5月末に1社、コンソメ味とバーベキュー味が導入予定です。やはりBODY STARのようなコンセプトに注目が集まっていることは流通さんも認識されている一つの証拠だと思います。

――コンビニというと、棚落ちが早いと聞きます。熾烈な競争になりますね。

その通りです。コンビニの場合はそもそも新商品を1回入れたら、半年間棚に並んでいることは滅多にないと言われます。ロングセラーブランド以外は、「入る・落ちる」の繰り返しですが、今はそれでいいと思います。「入る・落ちる」の激しい繰り返しの中でBODY STARを求める消費者が増えてくれば、自然と市民権を獲得して、少しずつ店舗に置かれるようになっていくはずです。その繰り返しが新しい市場を創ることへとつながります。ですから我々は繰り返せるだけのノイズを上げたり話題を作ったり、ECでブランドを盛り上げたりして、流通さんが無視できない環境を作ることがこれからの課題です。

コンセプチュアルだからこそ買っていただける

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記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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