インタビュー
2020.10.15

アクサ損害保険CMO小原奈名絵が語る「ダイレクト型・自動車保険で売り上げを伸ばしたマーケティングとブランディング」

The Marketing Native #25

アクサ損害保険 執行役員CMO

小原 奈名絵

激しい競争が繰り広げられる自動車保険業界。その中で保険料などのスペック訴求ではなく、ブランドの世界観を前面に打ち出したテレビCMで売り上げを伸ばしているのがフランスのパリに本社を置くアクサ損害保険です。

CMを見た顧客が訪問するWebサイトのUIUXにも、ブランドの世界観を反映する試みが繰り返され、最終コンバージョン獲得へ向けた改善が行われています。

アクサ損害保険で売り上げのトップライン成長をリードするのがCMOを務める小原奈名絵さんです。しのぎを削る自動車保険業界で、小原さんはアクサダイレクトの売り上げをどのように伸ばしてきたのでしょうか。

今回はアクサ損害保険 執行役員CMOの小原奈名絵さんに話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、人物撮影:永山 昌克)

目次

アクサ損害保険のマーケティングとCMOの役割

――まず経歴から教えていただきたいのですが、グロービス経営大学院のインタビュー(※1)によると、学生時代からマーケティングの魅力に惹かれていたとあります。

大学時代に消費者リサーチの会社で4年間アルバイトをしていました。その中にフォーカスグループインタビューの書記をする仕事がありまして、大手企業でコンシューマー・グッズを担当するマーケターの仕事ぶりを間近で観察するうちに、自分もマーケティングの仕事をしてみたいと思うようになりました。

――新卒での就職先もマーケティング関係ですか。

そうですね。初めは化粧品のマーケティングに興味を持って、化粧品会社の子会社に入社しました。その後、転職して鎮痛薬のプロダクトマネージャー、ブランドマネージャーを務め、そこから外資系金融機関2社を経て、現在のアクサ損害保険に至ります。

――鎮痛薬から金融に移られたのはなぜですか。

お客さまとの距離がもっと近い仕事をしてみたいと思ったからです。コンシューマー・グッズのプロダクトマーケティングは商品を作ってから、卸売、小売を流通させるのが一般的なので、実際にどのようなお客さまが購入しているかを把握するのが難しく、歯がゆさを覚えることがありました。

一方、金融のマーケティングはお客さまの個人情報をお預かりして取引しますので、距離の近さを感じられます。今も「アクサダイレクト」という商品名のとおり、お客さまとダイレクトにつながっていますし、取引のプロセスをカスタマージャーニーとして追求できる点に魅力を覚えます。

――保険会社というと、営業が強いというイメージがあるのですが、アクサ損害保険におけるマーケティングの役割とはどんなことでしょうか。

アクサ損害保険はほとんど営業がいないビジネスモデルです。90%以上がオンラインでの契約ですので、いわゆる営業パーソンは1人もいません。基本的にはテレビCMや検索エンジンのマーケティングを通じてWebサイトに集客し、そこから契約していただく形です。つまり、保険のイーコマースと考えていただければと思います。

インターネット契約ならではのリーズナブルな保険料を前面に打ち出して、ダイレクト型の生命保険や損害保険が登場したのは20年ほど前です。アクサ損害保険の場合はほとんどが広告で集客して、Webサイト上で契約していただくモデルなので、契約件数の増減に関してはマーケティング部門が責任を持っています。ですから、マインドとしては営業パーソンが営業成績を毎日追いかけるのと同じで、CMOとしての私の役割は目標達成へ向けた行動計画の策定や日々の進捗管理が大きなウエートを占めています。

※1「How One Woman Is Promoting Digitalization and Diversity for a New Age of Marketing」

How One Woman Is Promoting Digitalization and Diversity for a New Age of Marketing

全業種の中の10選に選ばれた画期的なCM制作の背景

――小原さんの代表的な成果は何ですか。

公表できる内容としては、テレビCMがCM総合研究所による2019年度の「消費者を動かしたCM展開 10選」に選ばれたことと、「作品別 CM好感度 金融業界・保険カテゴリー」で第1位(※2)を獲得したことです。特に「消費者を動かしたCM展開 10選」はCM好感度はもちろん、業績への貢献につながったことを評価する賞で、全業種の中の10選に選定されたのは代表的な業績と言えると思います。

加えて、昨年は私の責任範囲において、新規契約の件数が約2割伸びたことと、ペット保険の契約件数も半年で2倍にすることができました。その2つの事業で結果を残せたことは社内で評価されています。

※2  2019年度 作品別CM好感度 金融業界・保険カテゴリー(CM総合研究所調べ)対象期間:2018年11月度~2019年10月度・年間累計

――それはすごいですね。CMの内容や企画意図を教えてください。

俳優の岡田将生さんが甥っ子役の男の子を貴重な天体ショーに連れていってあげるCMです。星空に感動するなか、甥っ子がうっかり天体望遠鏡の三脚を車にぶつけて傷をつけてしまうのですが、反省する甥っ子に岡田さんが笑顔で「大丈夫、気にするな」と励まします。車のことは後でアクサダイレクトに相談すればいいからというわけです。その言葉に安心した甥っ子と岡田さんは、天体ショーを心から楽しむことができ、2人にとって大切な思い出となった、という様子を描きました。車にトラブルがあっても、アクサがあれば安心して大切な時間を楽しめることを表現したものです。

ダイレクト自動車保険のCMは、保険料の満足度や補償内容などスペックを伝えるスタイルが一般的で、当社も以前はそうでした。ただ、いろいろと調査してみると、それではCMとしての面白みを視聴者に感じていただけず、ほとんど内容を覚えてもらえていないことがわかったんです。それでは施策として数十億円を投資しても、広告としての魅力がないので結果につながりません。

加えて、アクサにはブランドを大切にするカルチャーがありまして、グローバル戦略の一環として、日本におけるブランドの強化が位置づけられています。その2つの考えの掛け合わせから、エモーショナルベネフィットに軸足を置いたCMの制作にチャレンジしたというのが経緯です。

――そのCMの成果として、売り上げに大きな貢献をしたことが認められて、CMOへの昇進につながったわけですね。

CMはまず覚えてもらうのが重要で、広告認知が高いと成果にも良い影響を与えます。そのCMの成功でWebサイトのトラフィックにとどまらず、契約件数の伸びに顕著な効果がありました。さらに、ROASを意識して、単価が高いセグメントを意識したクリエイティブにしています。そこまで考えた上で施策を打ったのが、売り上げの伸びにつながったのだと思います。

――スペック訴求からガラリとCMの内容を変えることで、反対や不安視する声はありませんでしたか。

もちろんありました。そのため、万一CMがうまくいかなくても業績に大きな影響が出ないように、オンライン施策を強化するなどのリスクヘッジを十分に行いました。

また、ダイレクトマーケティングでは、CM中にブランド名を最低3回言うのが基本と言われますが、そのときはリスクヘッジの意味で「アクサ」の名前を4回入れました。

――4回(笑)。そう言われると、結構入っている印象ですね。

はい(笑)。ブランドを重視したCMを意識しながらも、ダイレクトレスポンスのエッセンスを外さないように心掛けたことも成功の要因だと思います。

アクサダイレクトのWebサイト(PC)https://www.axa-direct.co.jp/

ブランドの世界観を前面に打ち出したUIUX

――そうしますと、お客さまがアクサダイレクトを認知する入り口はテレビCMであり、そこから指名検索でアクサのWebサイトにたどり着くのが最も多いわけですね。コールセンターはいかがですか。

新規の契約のために見積もり依頼の電話をしてくるお客さまはかなり減りましたので、そこから契約に結びつく件数は減っています。

――パンフレットのような紙の販促ツールはどうでしょうか。

すでに、ほとんどデジタルに変わってきています。

――PCとモバイルの割合はどうですか。

モバイルが8割ですね。

アクサダイレクトのWebサイト(モバイル)

――なるほど、PCに顕著なのですが、以前のUIを見ると、バイク保険やペット保険へのリンクのほか、「業界最高水準のインターネット割引 最大○円」などのクリエイティブが大きめに打ち出されていたのに、今は文字の占める割合が小さくなって、その分ビジュアルが大きくなっています。CTAボタンも「いますぐお見積り!」と主張していたのが、少し小さくなって、表現も「自動車保険 お見積り」と控えめになった気がします。そのあたりの理由を教えてください。

私たちはWebサイトのABテストを何度も繰り返し、年間100パターンくらい改善を行っています。デザインに関しては文字数の増減、文字の大小、CTAボタンの色などさまざまな意見がありますが、今のところ引き算したほうが結果は出やすいと感じます。

いろいろな言葉がたくさん書いてあっても、お客さまは自分の見たいものにしか目が向かないものです。自分に関係ないと思ったら視点は止まらず、求める情報を探しにいきますので、それであれば最初から最低限必要な情報だけにとどめておいて、余計な要素を削除しておくと次のページにスムーズに進み、最終コンバージョンが上がりやすいという結果が出ています。

――文字数を減らしてビジュアルを全面に展開しているのはシンプルさを意識したのですか。

ブランドの世界観や、バリューフォーマネーというバリュー・プロポジションを大切にしています。品質が高いものを低価格で購入できると、品質と価格のギャップにバリューを感じるものです。ですから、「品質が高そうなサービスを低価格で購入している」、あるいは「投資した金額以上のものを得ている」とお客さまに感じていただくためにも、タッチポイントでのデザインに上質感を出そうと意識しました。

――上質感を出す意味で、「!」マークや保険料がいくら割引されてお得か、などの表現を変えた、と。

自動車保険は基本的に1年で更新になります。新しいお客さまの契約獲得ももちろん重要ですが、継続して更新いただくのも大事なミッションです。

自動車保険は毎年、更新時に保険料が上下するのが一般的です。同じ金額なら問題なく継続するお客さまも、高くなると判断に迷われることがあると思います。そんな中、「多少保険料が上がっても、この会社の世界観が好きだから」という理由で継続していただけるお客さまがたくさんいらっしゃいます。それがブランドの力だと思います。Webサイトのデザインについても、アクサのブランドをまず感覚的に好きでいただけるようにすることが大切だと考えています。

――Webサイトに関連してですが、グロービス経営大学院のインタビュー記事を拝見すると、顕在的に不満のある人は苦情を言ってくるが、クレームをつけるまでにはいかない段階にあるお客さまの潜在的な不満をデータ化したという記載があります。これはどういう意味ですか。

例えばWebサイトの滞在時間や離脱率がよくポイントに挙げられますが、滞在時間が長いのは良いことかというと、使いづらいから迷って長くなっているケースもあります。それを可視化するためにWebサイトの脇にページ毎に評価やコメントを書き込めるアンケートツールを導入しました。そのツールを使えば、満足度の低かった人がどういうWebサイトの使い方をしていたかを動画のリプレイでさかのぼってチェックできます。

その結果、「このクリエイティブは違う意味に解釈されている」「このクリエイティブをずっと見ているということは、わかりづらいのかもしれない」「このボタンをタップするのに数秒かかっている。ボタンの位置を変えたほうがいいかもしれない」などと見えてきます。こうしたお客さまの声なき声を可視化し、1つずつ改善を図っているところです。

競争優位性を高めるブランド力と知覚品質の強化

――自動車保険のマーケティングにも特有の難しさがあると思います。小原さんのキャリアの中で携わってきた鎮痛薬のマーケティングと比較して、どんなところに魅力があり、難しさがあると感じますか。

消費財は基本的にニーズが顕在化していて、「頭がズキズキするから頭痛薬が欲しい」と意識的に欲することが多いと思います。一方、保険は率直に言って、できればそんなに考えたくないし、ニーズもそれほど顕在化していない低関与商品です。それだけに、ニーズが顕在化していない商品を売る難しさと面白さがあります。私自身は、「できるだけお金をかけたくないし、そんなに欲しくもない」と思われがちな商品をどう売るのかを考えることに面白さを感じています。

それに保険は、欲しいと思っている人ほどリスクが高い傾向があるので、欲しいと思っていない人にたくさん契約をしていただかないと、健全性が保ちにくい商品でもあります。そういうパラドックスのようなところが普通のマーケティングとは違うところですね。

――確かに生活習慣病を抱えた中高年は、生命保険への加入が難しいですからね。保険のことをなるべく意識したくない潜在層に、保険の重要性を認知させるのがCMの役割ということですね。

そうですね。ただ、自動車保険の場合は「欲しくないし関心もないけど、入らないといけないので探しています」というのがお客さまの基本的なスタンスです。

また、自動車保険のマーケティングのもう1つの特徴として、保険内容に大差がなくて、差別化しようとしてもすぐに真似をされる点があります。社内では「差別化の賞味期限が短い」という言い方をしています。ですから、差別化できるポイントを探すよりも、スペックは業界のスタンダードを維持しつつ、ブランド力に加えて、「アクサは良いサービスを提供してくれそうだ」というお客さまの知覚品質を強化するほうに注力しています。

――競合商品ではなく、アクサに新規契約してもらったり、継続してもらったり、競合から乗り換えてもらったりするために意識していることは何ですか。

それもやはりブランド力、お客さまの知覚品質を高めて、「アクサに入っておけば間違いないだろう」という安心感を与えることです。

「10社比較して一番安い保険と契約したい」と考える価格感度の高い方は、どうしても価格に引っ張られて、保険料が安いところを次々と乗り換えていく傾向があります。しかし、自動車保険業界の価格競争は非常に激しく、持続的に勝ち続けるのは難しい領域です。価格競争においても後れを取るわけにはいきませんが、そこを必要以上に深掘りするよりは、「アクサに入っておけば安心だろう」と思っていただけるようなお客さまを増やしたほうが当社のライフタイムバリューが上がります。そこが大きなミッションです。

一流ブランドを目指すには、ブランド品質を支えるルールの徹底順守から

――先ほどからブランドの話がたくさん出てきますが、ブランディングという点で意識していることは何ですか。

社内で意識しているのが、ブランドのロゴをはじめとするデザインの徹底的な順守です。色のトーンや書体をはじめ厳格なガイドラインをフランスの本社で作っていて、社員にもしっかりと守っていただいています。なぜかというと、ブランドの本物らしさはデザインの精緻さから来ていると考えるからです。例えば、ルイ・ヴィトンの本物と偽物はロゴをよく見れば区別できます。偽物はやはりバリューが低く見えるものです。

企業のブランディングも同じだと思っていて、ロゴの置き方や色の使い方について非常に細かいルールを設けています。中にはあまり気にしないで制作物を作ってしまう人もいますが、一切認めていません。一流のブランドを目指すからには、ブランド品質を担保する細かいルールを絶対に守っていただくようにしています。

――実は私もロゴなどはあまり気にしないタイプなのですが、ルイ・ヴィトンの話で納得しました。次に、小原さんが携わった中でうまくいかなかった施策があれば教えてください。

数年前に手掛けたテレビCMで結果が出なかったことがありました。CMを作るときにコアターゲットを設定するのですが、そのときはコアターゲットのお客さましか魅力を感じないくらいにスペックを尖らせすぎてしまったんです。CMを制作した当初は問題ないと思っていたのですが、テレビは当然コアターゲット以外の方も視聴します。実際にCMを流してみたところ、コアターゲット以外のお客さまからの反応が非常に悪く、しかもそうしたCMにピンときていないセグメントのほうが単価が高いものですから、結果的に全体の売り上げが落ちてしまいました。

そこから得た教訓は、メディアのターゲティングの精度をしっかりと見極めるべきだということです。テレビが最もターゲティングの精度が低くて、地域のターゲティングこそできますが、それ以外はほとんどできないに等しいというのが実感です。

一方、デジタルマーケティングは、他のセグメントが混入しないくらいに尖らせることが可能です。チームのメンバーがいろいろな制作物を作っていますが、セグメントの混入度合いを意識して、尖らせ具合の匙加減に気をつけるよう必ずアドバイスしています。

好みやセンスで部下を振り回すCMOにならないために

――次にマネジメントの話をお聞きします。執行役員CMOとして、組織を動かす上で意識していることは何でしょうか。

自動車保険の業界は基本的にコモディティなので、考えることは他社も大体同じです。そんなにユニークなことを思いつかないのであれば、同じことでもより質を高く、スピーディに実行できるかどうかが勝負を決めると思います。ですから、実装が速くてマルチタスクの得意な人が活躍できる場にしていきたいと考えています。

――実装の速さはわかるのですが、マルチタスクを重視しているのはなぜですか。

マーケティングはいろいろな領域で細分化されていて、それぞれにスタンダードな手法があると思いますが、それだけに凝り固まってしまうと、他社と同じ発想しか出てこなくなりがちです。私が見る限り、複数の領域を跨いだときにアイデアが生まれやすいと感じます。

そのため、事業のサイズ感に合わせて適切な人材採用と配置を考慮しつつ、1人の人に違う領域の仕事を担当してもらうようにしています。例えば、SEO担当の人がテレビのメディアの買い付けをしたり、ほかには商品を2つ受け持ってもらったりすることを意図的に行っています。

――違う領域の仕事をさせると、たまに斬新なアイデアは出るかもしれませんが、つたないところも出やすいのではないですか。

そこは周りが支援するのが大事で、アイデアを出した人が絶対に担当しなければならないわけではなく、チーム内のベストな人に任せるように配慮しています。「アイデアを出すと自分が担当する羽目になる」と思われると、アイデアを出す人が減少する傾向があります。そのため、「アイデア」「業務」「評価」はそれぞれ適切な形で分断させておくことを心がけています。

――チームのメンバーが対立したときのジャッジはどうしていますか。

対立しているときは、それぞれの正義があるものです。大体、皆さん責任感が強いから対立するわけです。だからその正義や責任感の根っこにあるのは何かを深掘りするようにしています。例えば、「コールセンターの人に負担をかけないのが私の正義です」という人もいれば、「会社のために利益を出すことが正義だと思います」という人もいて、同じ会社で働いているはずなのに、それぞれの正義は意外と異なるものです。そこをまずしっかり聞いてあげることが大事です。

対立するときは大体、心配していることがあるものです。その不安の根っこにあるものをしっかりとすくい上げ、「それはこういう手当てをするので大丈夫」と1つ1つ解きほぐしてつぶしていくと、対立を解消できるケースは多いと思います。また、その際、対立しているどちらかに議論の勝敗がつかないようにすることも気をつけています。

――いい話ですね。では最後に、CMOを目指す読者に向けてアドバイスをお願いします。

先ほどの話に通じるのですが、CMOを目指す方は、いろいろなマーケティング領域を担当してみるべきだと思います。マーケティングの世界は、例えばSEO担当ならSEOの世界だけに生きていたりして細分化されている傾向があると感じます。ですから、機会があれば、異なる領域の仕事に越境して挑戦することをおすすめします。もし物理的に難しくても、セミナーに参加するくらいは自分でできるはず。そうすると新たな発見を得られることが多いと思います。明日からでも取り組んでみてはどうでしょうか。

――小原さんもそういう経験を積んできたのですか。

私、30代前半までデジタルの仕事をしたことがなかったので、自分で手を挙げて挑戦しました。最初はすごくつらかったですね。同じマーケティングでも、こんなに考え方のスタイルが違うのかと驚きました。

ただ、慣れるまではきつくて自信をなくしてしまっても、思考スタイルの違う領域で成果を出せるようになると、その後はそれほどつらさを感じることなくいろいろな領域に広がっていくことができました。

――どんなふうに勉強したんですか。実践ですか。

初めは割と近しい、メールマーケティングから手をつけたり、Webサイトの制作やネット広告を担当したりしました。自分より若い人から新しい手法を学ぶことも多かったです。今は書籍などの教材も豊富ですし、やる気さえあれば勉強しやすい環境が整っていると思います。

CMOはいろいろなことに目を向けなければならないので、それなりに何でも経験しておかないと、好みやセンスで部下を振り回すCMOになりかねません。そんなCMOにならないためにも、マーケティングに関するさまざまな領域を経験しておくことが大切だと思います。

――本日はありがとうございました。

Profile
小原 奈名絵(おばら・ななえ)
アクサ損害保険株式会社 執行役員CMO。
早稲田大学卒業後、鎮痛薬のブランドマネージャーなどを経て、外資系金融機関のダイレクトマーケティング部門でデジタルマーケティングやコーポレートブランディングを担当。2014年にアクサ損害保険に入社。社内のデジタルトランスフォーメーション推進のほか、2019年に手掛けたテレビCMがCM総合研究所「消費者を動かしたCM展開10選」に選定される。グロービス経営大学院の第16回「グロービス アルムナイ・アワード」(2020年度)変革部門を受賞。

早川巧

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
Twitter:@hayakawaMN
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