激しい競争が繰り広げられる自動車保険業界。その中で保険料などのスペック訴求ではなく、ブランドの世界観を前面に打ち出したテレビCMで売り上げを伸ばしているのがフランスのパリに本社を置くアクサ損害保険です。
CMを見た顧客が訪問するWebサイトのUIUXにも、ブランドの世界観を反映する試みが繰り返され、最終コンバージョン獲得へ向けた改善が行われています。
アクサ損害保険で売り上げのトップライン成長をリードするのがCMOを務める小原奈名絵さんです。しのぎを削る自動車保険業界で、小原さんはアクサダイレクトの売り上げをどのように伸ばしてきたのでしょうか。
今回はアクサ損害保険 執行役員CMOの小原奈名絵さんに話を聞きました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、人物撮影:永山 昌克)
※肩書、内容などは記事公開時点のものです。
目次
アクサ損害保険のマーケティングとCMOの役割
――まず経歴から教えていただきたいのですが、グロービス経営大学院のインタビュー(※1)によると、学生時代からマーケティングの魅力に惹かれていたとあります。
大学時代に消費者リサーチの会社で4年間アルバイトをしていました。その中にフォーカスグループインタビューの書記をする仕事がありまして、大手企業でコンシューマー・グッズを担当するマーケターの仕事ぶりを間近で観察するうちに、自分もマーケティングの仕事をしてみたいと思うようになりました。
――新卒での就職先もマーケティング関係ですか。
そうですね。初めは化粧品のマーケティングに興味を持って、化粧品会社の子会社に入社しました。その後、転職して鎮痛薬のプロダクトマネージャー、ブランドマネージャーを務め、そこから外資系金融機関2社を経て、現在のアクサ損害保険に至ります。
――鎮痛薬から金融に移られたのはなぜですか。
お客さまとの距離がもっと近い仕事をしてみたいと思ったからです。コンシューマー・グッズのプロダクトマーケティングは商品を作ってから、卸売、小売を流通させるのが一般的なので、実際にどのようなお客さまが購入しているかを把握するのが難しく、歯がゆさを覚えることがありました。
一方、金融のマーケティングはお客さまの個人情報をお預かりして取引しますので、距離の近さを感じられます。今も「アクサダイレクト」という商品名のとおり、お客さまとダイレクトにつながっていますし、取引のプロセスをカスタマージャーニーとして追求できる点に魅力を覚えます。
――保険会社というと、営業が強いというイメージがあるのですが、アクサ損害保険におけるマーケティングの役割とはどんなことでしょうか。
アクサ損害保険はほとんど営業がいないビジネスモデルです。90%以上がオンラインでの契約ですので、いわゆる営業パーソンは1人もいません。基本的にはテレビCMや検索エンジンのマーケティングを通じてWebサイトに集客し、そこから契約していただく形です。つまり、保険のイーコマースと考えていただければと思います。
インターネット契約ならではのリーズナブルな保険料を前面に打ち出して、ダイレクト型の生命保険や損害保険が登場したのは20年ほど前です。アクサ損害保険の場合はほとんどが広告で集客して、Webサイト上で契約していただくモデルなので、契約件数の増減に関してはマーケティング部門が責任を持っています。ですから、マインドとしては営業パーソンが営業成績を毎日追いかけるのと同じで、CMOとしての私の役割は目標達成へ向けた行動計画の策定や日々の進捗管理が大きなウエートを占めています。
※1「How One Woman Is Promoting Digitalization and Diversity for a New Age of Marketing」
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