榎本亮さんは、NECが誇る約120年の歴史の中で初めてとなる外部採用のマーケティング担当役員です。現在はCMOとして全社マーケティングを統括しています。約11万人もの従業員(連結)を擁するNECが、なぜ榎本さんを迎え入れる必要があったのでしょうか。
そんな疑問を抱きながら、やや緊張して東京・芝にそびえ立つNECの本社ビルを訪問すると、現れたのは実にフランクで飾らない、親しみやすさ全開の敏腕マーケターでした。世界的な大企業の役員にあって、初対面でこれだけ胸襟を開き、気さくにお話をしていただけたことに驚きました。
今回はNECの執行役員兼CMO、榎本亮さんをインタビュー、企業で活躍中のマーケターだけでなく、マーケティング志望の学生にも役立つ話をいろいろと聞いてきました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:豊田 哲也)
※肩書、内容などは記事公開時点のものです。
目次
大変革の渦中で行うチェンジマネジメントの魅力
――榎本さんは1899年(明治32年)から続くNECの歴史の中で、初めてとなる外部採用のマーケティング担当役員と聞きました。従業員約11万人のNECが、なぜ榎本さんを必要としたとご自身ではお考えですか。そして、榎本さんはなぜNECへの参画を決断したのでしょうか。
マーケティング担当役員として初めての外部採用という話は入社してから聞いたんです。私自身が「なぜ?」と驚きました。
入社前の2014年にNECの役員の方々と6、7回お話をする機会があったのですが、NECはその年、「社会価値創造企業への変革を目指す」と宣言していて、社会のライフラインを支えるBtoB企業への大変革を実行している真っただ中でした。
実に興味深い局面でしたので、転職のことを知人に相談したところ、「榎本がビジネスコンサルとして取り組んできたことは、組織の変革/チェンジマネジメントだろう。であれば向いているのでは」とアドバイスをもらいました。ましてや自分が専門としてきた領域は事業戦略からマーケティング/営業といったCRM領域だったこともあり、全社変革の真っただ中でマーケティングの舵取り役を求めるNECで、「スケールの大きなチェンジマネジメントの仕事に携わりたい」という気持ちが高まり、NECへの入社につながった形です。
――NECも変革を求めていたとはいえ、巨大組織に外資からいきなり執行役員が来たことで、ギクシャクするところはなかったのでしょうか。
当然覚悟の上だったのですが、ほとんどと言っていいほどありませんでした。身内褒めになりますが、入社以降周りの人たちに恵まれました。利害関係の両側で対立するよりも、一緒にマーケティングの変革を進めようと同じチームになれたように思います。
「共創」をテーマにしたショールーム「NEC Future Creation Hub」は榎本さんの主導で設置された。
CMOの役割と、1社だけでできることの限界
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