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インタビュー

note「P&G流マーケティングの教科書」が40万PV超え!Marketing Demo代表・石井賢介が語る「マーケティング思考の学び方」

最終更新日:2023.09.07

Marketing Demo代表取締役社長

石井 賢介

「【1時間で分かる】P&G流マーケティングの教科書」というタイトルのnoteが、公開から2週間で約40万のPV数と1万2500以上のスキを集めました。100以上のスキが付いていれば人気記事とも言われる中、1万以上の数値は非常に珍しいケースであり、多くのマーケターに驚きをもって受け止められました。

このnoteの著者である石井賢介さんは、商社の営業からP&Gのマーケターへと転職した中途入社組です。石井さんはP&Gに転職後、担当するブランドで大きな成果を出すことに成功しますが、なぜ、石井さんは結果を残すことができたのでしょうか。また、今後どのようなチャレンジを目指しているのでしょうか。

今回はMarketing Demo代表取締役社長・石井賢介さんに話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・岩崎 多、人物撮影:豊田 哲也)

※会社名、内容などは記事公開時点のものです。

目次

P&Gで実感した商社とのギャップ

――執筆されたnoteがすごく反響を呼びました。スキの数が1万を超えているnoteは、かなり珍しいのではないかと思います。執筆者がどのような方か注目している読者も多いと思うので、まずは、石井さんのこれまでの経歴から教えてください。

大学卒業後は住友商事に入社して、「30歳までに社長になりたい」と考えていました。当時は会社で結果を出し続けることが、唯一社長になる方法だと思っていて、まずは関連子会社の社長になろうと頑張って仕事をしていました。

商社では主にアルミニウムのグローバルなトレードの仕事をしていたのですが、2年目で大きな長期契約を獲得できましたし、かなり結果を残せたと思います。しかし、先輩や上司の昇進の速度を考えると、このペースで実績を上げていっても子会社の社長になれるのは早くて40代だろうと気付き、転職を意識し始めました。

そこで経営者を多く輩出しているような企業や業界を調べることから始めました。Googleで「経営者になる 仕事」などで検索していると、該当する企業の多くは、マッキンゼーやBCGなどの外資系コンサルティング会社と、ゴールドマン・サックスやJ.P.モルガンなどの外資系金融機関であることがわかりました。

そうした企業が並ぶ中で、目を引いたのがP&Gのマーケティングでした。

自分はコンサルティングや金融業界に友人が多くいるので、その業界がハードワークであることは知っていましたし、優秀な友人たちと既に数年分の差をつけられているところに新参者として入社しても勝ち目がありません。一方で、友人にマーケティングをしている人間はおらず、当時はサントリーがハイボールを流行らせていた時期でもあったため、ブームを作ったマーケティングという職業に興味を持ちました。

――30代で社長になれる可能性がある仕事を探したときに、P&Gのマーケターが候補として出てきたのですね。

今となって考えると愚かな発想ですが、プロの経営者になる近道になるだろう、くらいに思っていました。今ほどではないですが、すでにP&G出身者というクラスターがあり、国内外問わず、P&Gのマーケティング出身で活躍されている経営者が目立ち始めていました。そうした条件が重なり、P&Gのマーケティングに応募し、採用されたので転職しました。

――営業からマーケターへ職種を変えることに対して不安はなかったのですか。

良くも悪くも楽天的なので、不安は感じていませんでしたが、P&Gに入ってからはそれなりに苦労しました。

まず、商社出身の自分にはマーケティングそのものが全く持って未知のもので、全体像がわかりませんでした。わからない状態で、コンセプトを考えたり、チャネル戦略を練ったり、広告を作ったりと、暗闇の中でタスクがたくさんある状態に戸惑いました。実務で学ぶだけではあまりに時間がかかると判断し、業務の質を上げるためのインプットとしてマーケティング関連の書籍を読み漁り始めたのもこの時期です。

その中でも、最も苦労したのは「消費者が何に困っているか」という超ミクロな消費者課題を理解することでした。商社では、B2Bかつ究極のコモディティである金属資源を扱っていたこともあり、マクロな目線でしか仕事を考えたことがありません。例えば、「電気自動車が浸透していくにつれ自動車の軽量化が進む」→「軽量化のために自動車部品が鉄からアルミニウムに代わっていく」という流れがあると、今後は「電気自動車が主流となる先進国を中心にアルミニウムの需給がひっ迫する」ので、「今のうちにアルミニウムを購入しておこう」といった視点です。

一方で、マーケターとして最も求められるのはそんなことではなく、「目の前の消費者が何に困っているか」です。消費者インタビューをして出てきた些細な発言に、先輩や同僚が「今の発言にはどんな意味があるのかな?」と話しているのを聞いていて、「いや、適当に答えているだけじゃないの?」とか「結局値段でしょ」と思ってしまい、全く理解することができない時期が続きました。

例えば、店頭に貼るポップ1枚でさえ、P&Gではブランドマネージャーから「どのような消費者のインサイトがあって、どのような戦略に基づいて、このポップにしたのか」と問われます。初めは「赤字で書けば目立つから売れると思いました」程度しか答えられない状態でした。というのも、これまで1回の売買が数億~数十億円だったB to Bの経験だけの自分にとって、数百円で買う日用品は「適当に選んで買うもの」と思っていたからです。

当時の自分からすると取るに足らないと感じても、そのディティールが実は重要で、売れるか売れないかの決定要因であることを理解するのに時間がかかりました。消費者のミクロな課題を理解することが、マクロなトレンド以上に重要であるとP&Gで知りました。この経験が、マーケティングについて深く勉強する必要性を強く感じるようになったきっかけです。

成長を促してくれた上司と本

――勉強が必要だと感じたときに、参考になった先輩社員の方はいらっしゃいましたか。

ロールモデルにしてトレースしようと決めた特定の方はいなくて、皆さんから学ばせていただいたと感じています。中でも特に影響を受けたと言えるのは、シンガポールに赴任していた頃のフィリピン人の女性上司です。

自分がまだアシスタントブランドマネージャーだった頃、ブランドマネージャーが産休に入ったため、上司と自分の2人で日本のマーケットを担当する機会があったのですが、上司が「日本のマーケットは石井に全部任せる」と言ってくれたんです。本来であれば上司もかなり不安だったはずです。なぜ任せてくれるのかを聞いたとき、「君にはポテンシャルがあると思うから、心配する声はあるが任せる」と言われ、「ここまで信頼されたら、この上司を裏切るような結果を出したくない」と強く感じたことを覚えています。

そのときから初めて「このキャッチコピーで本当に売れるのか」など超細かい部分を真剣に考えるようになり、調査部による消費者インタビューの調査結果だけで満足せず、自らも消費者インタビューを行って、本当に調査結果が正しいのか確認するようになりました。「自分がブランドの生命線を握っている」という感覚が生まれたのだと思います。この状態になってから、これまで本で読んだ知識が頭の中で有機的につながり始めたのです。

この上司にはほかにも、経理や営業など他部署を巻き込むための人心掌握のテクニックも教えていただきました。それまで自分はミーティングで承認を得ようとする際も、単に自分が考えている理由を説明できれば、すぐ説得できると考えていました。その際にすべき社内営業や交渉なども教えていただき非常に参考になりました。

――本で学んだことが有機的につながったというのはどのような状態ですか。

知識として断片的に知っていたことが、自分の中で体系立てて整理されてきたという状態です。例えば「消費者のことを考えることが重要」と言葉では断片的に知っていたことが、経験を重ねることで「このフェーズではこういうことを指す」というように体系立てて理解できるようになりました。

本の良いところは他者の経験を効率よく自分に吸収できるところです。本に書かれてある断片を読んで「自分に置き換えた場合どういうことになるだろう」と考えることで、成長速度を速めることができます。自分はP&Gに5年いて、担当ブランドが変わるのは大体2年ごとに1回でした。裏を返せば2年ごとに1回しか新しいブランドマネジメントの経験ができません。自分の経験だけでは成長速度が遅くなりがちで、本はその不足を補ってくれます。

――特にその時に役立った本でおすすめのものがあれば教えてください。

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・成果を出すために重要なこと
・目指すのはマーケティングの民主化

記事執筆者

岩崎多

いわさき・まさる
出版社2社でビジネス誌やモノ・グッズ誌の編集、週刊誌の編集記者を経験し、2019年1月CINCにジョイン。編集長として文房具ムックシリーズを立ち上げ、累計30万部以上を記録。
X:@iwasaki_mn
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