Marketing Native編集長の佐藤です。皆さん、東京・お台場で3月1日に新しく開業した「イマーシブ・フォート東京」はご存じでしょうか。イマーシブ体験(完全没入体験)ができるアトラクションばかりがそろった新感覚のテーマパークです。
Marketing Nativeでは、開業前の2023年12月に同テーマパークでプレジデントを務める田村考さんを取材。多種多様なアトラクションの紹介やイマーシブ体験の魅力を聞いて「体験してみたい!」という気持ちがおさまらなくなりました。そして、ついに開業日前日の2月29日に開催された合同取材ツアーに参加!本当に「人生、全とっかえ。」の感覚を体感できたのか!?今回は、イマーシブ・フォート東京の体験レポートをお届けします。
(取材・文:Marketing Native編集長・佐藤 綾美、撮影:永山 昌克)
目次
ヴィーナスフォートの面影残る街並みで非日常へ
イマーシブ・フォート東京は、イマーシブ体験(完全没入体験)に特化したアトラクションのみで構成されたテーマパークです。森岡毅さん率いる刀が企画から運営まで行い、2022年3月に閉館した東京・お台場のヴィーナスフォートの建物を活用して作られています。
ゆりかもめ「青海(あおみ)駅」の改札を出て左に歩いて行くと、すぐに「IMMERSIVE FORT TOKYO(イマーシブ・フォート東京)」とある建物が見えます。パーク内に入場してまず目に入るのは、扉が開くような映像とともに浮かび上がる「IMMERSIVE FORT TOKYO(イマーシブ・フォート東京)」の文字です。ちょっとした演出ですが、「今日1日どんな体験ができるのだろう」と気持ちを盛り上げてくれます。
道なりに進むと、2022年3月に閉館したヴィーナスフォートの面影が残るヨーロッパ風の街並みが広がっています。かつて噴水だった場所は水がなくなり、「ゴールデンプラザ」という名を冠したきらびやかな舞台に変わっていました。
会場マップ(筆者撮影)。2階と3階にわたってアトラクションが用意されている
写真上:通りの様子、写真下:ゴールデンプラザ
今回私が参加したのは、メディア向けの合同取材ツアーです。参加したメディアはいくつかのグループに分かれ、決められたアトラクションを順番に体験しました。私が体験したアトラクションは以下の6つです(順不同)。
- ザ・シャーロック -ベイカー街連続殺人事件-
- 第五人格 イマーシブ・チェイス
- イマーシブ・ストーリーズ~誰も知らなかったヘンゼルとグレーテル~
- ザ・キャバレー
- スパイ・アクション
- ジャック・ザ・リッパー ホワイトチャペルの殺人鬼
イマーシブ・フォート東京のプレジデント 田村さんは「お客さまには喜怒哀楽さまざまな感情を体験してほしい」と話していました。一体どのような体験が待ち受けているのでしょうか。早速印象的だったアトラクションをご紹介しましょう。
シャーロック・ホームズの謎解きを間近で体感
イマーシブ・フォート東京の目玉となるアトラクションといえば、やはりイマーシブシアターです。イマーシブシアターとは、観客が物語の当事者として演出に巻き込まれるエンターテインメントのこと。イマーシブ・フォート東京で該当するアトラクションは「江戸花魁奇譚」と「ザ・シャーロック -ベイカー街連続殺人事件-」の2つです。
「ザ・シャーロック -ベイカー街連続殺人事件-」の物語の舞台は19世紀のロンドン。シャーロック・ホームズが、「婚約者の失踪」と「連続殺人事件」という2つの事件に隠された真実を解き明かしていくストーリーです。体験時間は約90分…イマーシブシアター未経験の私にはどのようなショーが繰り広げられるのか想像もつきません。
入り口で黒いバンダナを1人1つずつ受け取り、いざ入場します。入ってすぐのエリアには、大きく×と書かれたマスクを着けた男性がおり、そこでアトラクションの説明が行われました。どうやら、入り口でもらった黒いバンダナで口元を隠すと、その場に存在しない存在(アノニマス)になり、自由に動き回れるのだそうです。参加者はバンダナで口元を覆い、準備万端。撮影やSNSでのシェアに関する注意事項などの説明も受け、ショーが始まりました。
案内された先を見ると、そこにはベイカー街の街並みが広がっていました。流れるままベイカー街を歩いてみると、すぐそばを登場人物が通ったり、何か話していたりしています。「こんなに近くで演技をするのか」「このまま真っすぐ進めばいいのだろうか」などと考えているうちに、通りの奥のほうから大きな声が聞こえてきます。物語の世界に突然放り込まれたようで、最初のうちは「一体何が起こっているのだろう?」と、状況をうまく理解できませんでした。日常生活に置き換えてみると、街中を歩いていたら近くで事件や騒ぎが起こり、突然の事態に状況をよく飲み込めない…そんな感覚に似ていると思います。
ベイカー街を抜けると見えてくる、教会広場での様子
ショーが行われるエリアは約3000平方メートルと広大で、ベイカー街だけでなく、教会広場やシャーロック・ホームズのオフィスなど、さまざまな場所があり、そのあちこちでシャーロック・ホームズやワトソン、ロンドン警視庁のレストレード警部ら48もの登場人物それぞれの演技が進行するので、当然ながらすべてを追うことはできません。観客席に座って劇を見るのとは違って、誰を追い、どこでどのような体験をするかは参加者自身に完全に委ねられており、人によっては事件の目撃者になったり、登場人物に話しかけられたりと、まさに「百人百様の個別体験」ができます。自分のすぐ近くをシャーロック・ホームズやワトソンが通り過ぎることもあります。私も登場人物に話しかけられる機会があり、どぎまぎしてしまいました。
アトラクション内でどのように行動するかは自由ですが、物語をしっかりと理解したい場合は、「この人」と決めた登場人物を追って動くのがおすすめです。アトラクションの冒頭でもそのような説明があったのに、場の空気に飲み込まれて、私は途中まですっかり失念していました(笑)
事件現場での様子
要領をつかむのに少々時間を要したものの、物語の世界に引き込まれ、あっという間の90分でした。イマーシブシアターのファンの中には、同じショーを何度も体験しに訪れる人がいると聞いたことがありますが、その気持ちを少し理解できたような気がします。これだけ同時に多数の物語が展開されていると、「次はあの登場人物の物語を追いたい」という気持ちが湧いてくるからです。
田村さんから聞いていた「演者と観客の垣根を越えて自分も演者側に取り込まれていくような感覚」を味わえるアトラクションでした。
「ザ・シャーロック -ベイカー街連続殺人事件-」の登場人物たち
SHERLOCK HOLMES, DR. WATSON, and are trademarks of Conan Doyle Estate Ltd.®
異なるイマーシブ度合いを楽しめるアトラクション
イマーシブ・フォート東京には、イマーシブシアター以外にもさまざまなイマーシブの度合いのアトラクションが用意されています。没入感が大きいと感じた「ザ・シャーロック -ベイカー街連続殺人事件-」以外に、個人的に印象的だったアトラクションをご紹介します。
第五人格 イマーシブ・チェイス
若年層を中心に世界的な人気を誇る非対称対戦型マルチプレイゲーム「Identity V第五人格」の世界観を楽しめるアトラクションです。参加者は腕に端末を身に着け、6人1チームでミッションに挑みます。
登録したユーザー名が端末に表示される(筆者撮影)
恐ろしいハンターから逃げながら、「弁護士」「心眼」など、それぞれに与えられた能力を活用してミッションをクリアし、制限時間内に脱出できれば成功です。筆者は「Identity V第五人格」をプレイしたことはありませんでしたが、キャラクターたちが丁寧に説明してくれたので、比較的すんなりと世界観に入り込むことができました。気付いたら背後にいたハンターにすぐ捕まってしまいましたが…(怖かったです)。
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ザ・キャバレー
フレンチレストラン「ザ・キャバレー」で行われるのは、イマーシブ・ショーレストランです。歌や演奏、ダンスなど、圧巻のライブパフォーマンスが目の前で繰り広げられます。観客がステージの中心に招待され、キャストと一緒にカンカンダンスを踊るような場面もあり、盛り上がっていました。個人的には歌に圧倒されたので、実際に席に座っていたら、食事もせずにショーに見入ってしまいそうです。
イマーシブ・ストーリーズ~誰も知らなかった本当のヘンゼルとグレーテル~
グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』の世界を描いたウォークスルー型のアトラクションです。「魔女」と「ヘンゼルとグレーテル」 の2つの視点を選べるようになっており、参加者は最初にどちらのストーリーを体験したいか選択します。
※筆者撮影
私は「ヘンゼルとグレーテル」、カメラマンは「魔女」のストーリーを体験しました。案内に従って進んでいくと、美しい映像とともに『ヘンゼルとグレーテル』の物語が繰り広げられます。カメラマンが体験した「魔女」のストーリーは、『ヘンゼルとグレーテル』を魔女側の視点で描いており、一般的によく知られている物語とはひと味異なっていて面白かったそうです。「魔女」のストーリーも気になります。
画像左:魔女側のストーリー 右:ヘンゼルとグレーテル側のストーリー(筆者撮影)
合同取材ツアーでは体験できませんでしたが、このほかのアトラクションには、アニメとコラボレーションした「東京リベンジャーズ イマーシブ・エスケープ」「【推しの子】 イマーシブ・ラリー」もあります。『東京リベンジャーズ』は、コラボレーションしたイマーシブ・カフェ「喫茶フラワー」もあり、ファンの方々のUGCが生まれそうです。
「東京リベンジャーズ イマーシブ・エスケープ」のキャスト陣
「喫茶フラワー」の店内(筆者撮影)
©和久井健・講談社/アニメ「東京リベンジャーズ」製作委員会
言葉を尽くしても伝えきるのが難しい、イマーシブ体験ならではの感動
合同取材ツアーの後はオープニングセレモニーが行われ、刀代表取締役CEOの森岡毅さんより、開業にあたっての挨拶がありました。
刀代表取締役CEOの森岡毅さん
森岡さんはイマーシブ・フォート東京で得られる体験を「10人が来たら、10人とも感じ方や体験の質が異なってくる。同じ人が10回来たら、10回とも体験が違う。自分しか知らない体験や感動、見られない情報が随所にあふれている」「従来のテーマパークとはハラハラドキドキの度合いが異なる」と説明したうえで、「どれだけ一生懸命広告を打ち、体験した人の言葉を伝えても、お客さま自身が体験しないと伝わりきらない感動というのがある。イマーシブ体験をまだ経験したことがない、どのようなものなのかよくわからないという方はこぞって体験してほしい」と話しました。
物語の世界に没入し、当事者として楽しめるイマーシブ体験。イマーシブ・フォート東京 プレジデントの田村さんへのインタビューでイマーシブ体験の魅力を聞いたとき、なかなか想像するのが難しいと感じていましたが、今回イマーシブ・フォート東京で初めてイマーシブシアターを体験し、やっと「没入感」を味わうことができました。おそらくこのレポートでもそのすごさが伝わりきらないと思いますので、興味がある方は、実際に体験してみてはいかがでしょうか。
※筆者撮影
イマーシブ・フォート東京
施設名称:イマーシブ・フォート東京 (英語表記: IMMERSIVE FORT TOKYO)
場所:東京都江東区青海(りんかい線:東京テレポート駅 徒歩3分、ゆりかもめ:青海駅直結)
開業日:2024年3月1日
Webサイト:https://immersivefort.com/