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マーケティング

Z世代対象のマーケティング施策検討時に押さえたいポイント【特徴・消費傾向・アプローチ方法】

最終更新日:2022.10.03

Z世代とは、「ポストミレニアル世代」とも呼ばれる若い世代のことです。これから将来的に消費の主役になっていくことから、企業各社が注目する重要なターゲットとしてクローズアップされ、話題を呼んでいます。

Z世代とその前の世代であるミレニアル世代(Y世代)は、共にインターネット普及後に育ったデジタルネイティブ世代に分類されますが、その特徴や消費行動には違いがあります。では、具体的にどう異なるのでしょうか。

この記事では、Z世代の定義や特徴、マーケターが押さえておくべき消費傾向やアプローチ方法などを解説します。

目次

消費の鍵を握る存在として注目を集めるZ世代

商品やサービスのターゲットとして、Z世代という言葉に接する機会が増えてきました。ここでは、Z世代の定義と、企業から注目を集める理由をご説明します。

Z世代とは?

Z世代(Generation Z)とは、一般的に1990年代中盤から2010年頃に誕生した世代のことです。2021年時点で年齢が11歳から26歳くらいの人が該当します。ただし、年齢の区切りに関しては諸説あり、1996年~2012年に生まれた世代ととする見方もあります。

Z世代の「Z」の由来は、アメリカで1960年代から1980年頃の生まれを「X世代」、1980年代から1990年代中盤の生まれで、2000年代初頭に成年期を迎えた人たちを「Y世代」もしくは「ミレニアル世代」と呼び、その次の世代に当たることからです。そのためZ世代のことを「ポストミレニアル世代」と呼ぶこともあります。

ミレニアル世代は日本では「ゆとり世代」にあたり、学習内容の削減や完全学校週5日制が導入された「ゆとり教育」を受けた世代を指します。またZ世代の次は、ミレニアル世代の子どもであるα世代(アルファ世代)と言われています。

Z世代が育ってきた時代には次のような出来事が起きており、価値観や行動に影響を与えていると考えられています。

  • SNSの普及
    Twitterが2006年に、Instagramが2010年にサービスを開始
  • スマートフォンの時代の到来
    2007年にiPhoneが登場(初代iPhoneは日本では未発売)
  • 世界的な経済不況
    2008年にリーマン・ショックが起きる

Z世代が注目を集めている理由

Z世代が消費の鍵を握る存在として注目を集めています。2020年代にはZ世代の多くが成人して社会に進出し、購買力を持ち始めるため、将来的に消費の主役になる世代として期待されているからです。

またZ世代は、SNSでバズやトレンドを生み出す可能性を持つことから、企業のマーケティング施策においても重視される存在となっています。Z世代は生まれたときからインターネットが当たり前のようにあるデジタルネイティブ世代で、子どもの頃からスマートフォンで日常的にコミュニケーションを取り、ソーシャルメディアに親しんできたソーシャルネイティブなので、SNSとの高い親和性を持っています。

芝浦工業大学教授でマーケティングアナリストの原田曜平さんは、Marketing Nativeのインタビューで、企業がZ世代に目を向ける理由について次のように話しています。

流行をうまく作り出すのは若者が得意です。人口としてはマイノリティでも、SNS人口ではマジョリティですから、流行の波を捉え、インフルエンサーとして拡散する役割を担っています。そのため、デジタル化が進行する企業がネットでのプロモーションやSNSにおける「バズ」を分析する先に存在するのは、結果的に若者になるのではないでしょうか。

Z世代は確かにお金をそんなに持っていませんが、若者が主要顧客層であるプチプラコスメや韓流コスメ、菓子・ジュース類、マッチングアプリなどの市場は盛り上がりを見せているところもあります。

出典:Marketing Native『テレビ界も世代交代の動き急!台頭し始めた「Z世代」の消費意欲のつかみ方と、企業が採用・育成する際の注意点――原田曜平インタビュー』

Z世代の主な特徴とは?

Z世代とミレニアル世代の特徴を比較します。両世代の違いを知ることで、Z世代の特徴や価値観がさらに浮き彫りになるでしょう。

スマートフォンと共に育ったスマホ第1世代である

ミレニアル世代がガラケー第1世代であるのに対し、Z世代はスマホ第1世代に当たります。中学・高校生の頃からスマートフォンを日常的に活用し、複数のSNSを使用している世代です。

また、前出の原田曜平さんは、Z世代がスマホ第1世代であると同時に、動画第1世代でもあると言います。

Z世代は「スマホ第1世代」であると同時に「動画第1世代」でもあります。スマホでTikTokやInstagramストーリーズと常に接しながら生きているZ世代は独特の審美眼を持っていますので、企業のマーケターにとっては「動画映え」するプロダクトを生み出すことが1つのポイントになるでしょう。

出典:Marketing Native『テレビ界も世代交代の動き急!台頭し始めた「Z世代」の消費意欲のつかみ方と、企業が採用・育成する際の注意点――原田曜平インタビュー』

ソーシャルネイティブである

Z世代は、SNSの流行の影響をダイレクトに受けている世代でもあります。Instagram、Twitter、LINE、YouTube、TikTokなど複数のSNSを利用し、情報収集をしたり、積極的に発信を行ったりしています。

Googleなどの検索エンジンよりSNSを使って情報検索する人もいて、趣味や発信したい内容によって、Instagram、Twitterなどのアカウントを複数持ち、使い分けているユーザーも見られます。また、生まれたときからインターネット環境が整備され、日常的にスマートフォンやSNSを使いこなすZ世代は、ネットリテラシーが高いという特徴もあります。

SNSの中でも特にZ世代からの支持を受け、ユーザー数を急激に伸ばしているのがショートムービープラットフォームのTikTokです。「Z総研」が2021年1月に実施した調査によると、Z世代の56.9%がTikTokを1日1時間以上閲覧し、60.8%の人がオタ活や食べ物、音楽などの日々の情報をTikTokで得ていることがわかっています。

出典:株式会社N.D.Promotion「リアルZ世代のトレンドを調べるZ総研トレンド通信〜Z総研トレンド通信Vol.7『TikTok編』〜

社会課題やSDGsへの関心が高い

Z世代は、社会課題やSDGs(持続可能な開発目標)に関する関心が高い世代と言われています。若者マーケティング研究機関「SHIBUYA109 lab.」が2020年7月に15歳~24歳の男女800名に行った調査によると、社会課題解決に対して「すごく関心がある」と答えた人の割合は19.4%、「関心がある」と答えた人の割合は40.1%と、半数以上が「関心がある」と回答しました。ただし、社会課題解決のために具体的な取り組みを行っている人の割合は7.8%にとどまり、興味関心がありながらも実際に行動に移している若者はまだ少ないことがわかります。

また、生活者起点のリサーチ&マーケティング支援を行う「ネオマーケティング」が2022年5月に日本とアメリカのZ世代・Y世代に実施した調査によると、日本のZ世代は2021年よりも社会問題への関心が高まっていることが明らかになりました。アメリカと日本のZ世代を比較すると、日本のZ世代の社会問題への関心度はアメリカよりも低い傾向にありますが、日本でも問題意識は上昇傾向にあるといえます。一方で、日本のY世代は社会問題に対する関心が下降傾向にあることもわかりました。

Z世代が社会課題やSDGsに対して高い関心を持っている理由としては、地球温暖化に伴う異常気象や2011年の東日本大震災をはじめとする地震や豪雨など、子どもの頃からさまざまな自然災害や社会問題に触れて考える機会があったからだと考えられます。また、子どもの頃からスマートフォンやタブレットなどのデジタル機器が身近にあり、複数のSNSを日常的に利用しているZ世代は、インフルエンサーや友人によるSNSの発信を通じて社会課題について知ることもあります。

さらに、新学習指導要領や第3期教育振興基本計画には「持続可能な社会の創り手の育成」が掲げられており、Z世代は学校の授業でも社会課題やSDGsについて学ぶ機会が多くなっています。持続可能な社会を実現していくために、現代社会の問題を自らの問題として捉える教育が行われているのです。

出典:
株式会社SHIBUYA109エンタテイメント「“around20とSDGs“を徹底調査!
株式会社ネオマーケティング『「日本と米国のZ世代意識調査:SDGs編」 ~Y世代と比べてみる、米国と比べてみる~

多様性を認め、受け入れる傾向にある

Z世代は一般的に、価値観をあまり押し付けられたくないと感じやすい傾向にあるとされます。そのためか、他人の個性を尊重する側面を持ち、多様性・ダイバーシティを認め、インクルージョン(包括、一体性)を重視すると言われます。アメリカのマーケティングコンサルティング会社であるFutureCast社が2017年1月に発表した調査では、Z世代の多く(60%)が、人権・人種差別・性的指向について立場を明確にするブランドをサポートすると回答しています。

また、ジェンダー関連の問題への関心が高いのも特徴です。前出のネオマーケティングが2021年5月に実施した調査によると、男女共にジェンダー関連の問題への関心度がミレニアル世代よりも高くなっています。SNSを通じて多様な考えに触れたり、仲間と意見を交換したりする機会が多いからなのかもしれません。

出典:株式会社ネオマーケティング『全国の15歳~41歳の男女995人に聞いた「Z世代・ミレニアル世代のリアル」』

なお、ミレニアル世代については、以下の記事で詳しく取り上げています。あわせて参考にしてください。

関連記事:ミレニアル世代とは?押さえておきたい価値観や特徴とZ世代との違い

Z世代の消費傾向とアプローチ方法

Z世代は、成長過程で2008年のリーマン・ショック後の経済不況を体験したことで、貯蓄への意識が高く、消費に慎重な世代と言われています。ここでは、マーケターにとって気になるであろうZ世代の消費傾向と具体的なアプローチ方法をご紹介します。

購入する際はリアルな情報を求める

・消費傾向

Z世代は金銭感覚が保守的で安定志向、また「買い物に失敗したくない」という気持ちが強く、商品やサービスを購入する前に熟考する傾向があるとされます。SNSで行きたい店の評価や写真を調べたり、レビューが純粋なクチコミか宣伝かを確認したりするのも一般的です。中でもインフルエンサーはZ世代にとって多大な影響力を持つ存在で、自身が信頼するインフルエンサーの情報を参考に商品を購入することもあるようです。

また、Z世代はリアルな情報を求め、デジタルで修正されたコンテンツや宣伝されることを嫌う傾向があります。あまりに誇張されたコンテンツを発信すると、実物を手に取ったときのイメージ差が大きくなり、消費者の信頼を損なうおそれがあります。買い物に慎重になりがちなZ世代に訴求するには、等身大のリアルを見せることが大切です。

・アプローチ方法

リアルな情報を求めるZ世代にアプローチするには、Z世代にとって影響力の大きいインフルエンサーを起用したマーケティング手法、いわゆる「インフルエンサーマーケティング」が効果的な手法のひとつとして活用されています。ターゲットとするZ世代にとって身近なインフルエンサーを起用し、自社製品やサービスをアピールしてもらうのがよいでしょう。実際に製品を使ってもらい、消費者目線でリアルな感想を伝えてもらうのがポイントです。

広告を打ち出す際は、画像を修正したり、誇張したりせず、等身大のリアルを発信するアプローチが有効です。商品・サービスの画像が過度に誇張されていないか、消費者の誤解を招くような表現がないか、根拠のない情報や不足している情報がないかなど、広告を配信する前にしっかりと確認しておきましょう。

貢献意識が高い

・消費傾向

Z世代の中には貢献意識が高く、自分が共感する人やブランド、商品に対して、応援消費をする傾向を持つ人もいます。その例として挙げられるのが、自身の好きな人や物への時間とお金を惜しまない「ヲタ活」「推し活」です。「お仕事」とかけて「推し事」と呼ぶこともあり、いずれも推しを応援するために行う活動全般を指します。

前出の「SHIBUYA109 lab.」が2021年7月に発表した調査結果によると、Z世代の75%が自身が何かの熱心なファンである「ヲタ」であることを自覚していると言います。イベント参加やCD購入などの「オフィシャルヲタ活」だけでなく、グッズを手作りするなどの「創作ヲタ活」も行われているようです。また、6割以上のZ世代がヲタ活についてSNSで投稿しており、背景には「応援」「布教」を通じて共感してくれる人とつながり、一緒に楽しみたいというモチベーションがあるとのことです。

出典:株式会社SHIBUYA109エンタテイメント「コロナ禍におけるZ世代のヲタ活実態調査

・アプローチ方法

貢献意識が高いZ世代にアプローチするには、「推し活」に着目した商品・サービスの提供が効果的です。推し活の対象は幅広く、俳優やアイドルからアニメのキャラクター、動物、特定のブランドまでさまざまあります。推しのライブで使う担当カラーのチケットホルダーやうちわカバー、推しをイメージした香水をオーダーできるサービスなど、推し活の対象や需要を捉えた商品・サービスがすでに数多く誕生しています。

また、Z世代の「応援したい」という気持ちを引き起こすような、魅力的なキャンペーンを開催する手もあります。サンリオが開催する投票企画「サンリオキャラクター大賞」では、ユーザーからの投票によってサンリオキャラクターに順位がつけられます。去年よりも順位を上げたい、もっと上位にランクインさせてあげたいなど、自分の推しキャラクターを「応援したい」気持ちが引き起こされる人気企画です。結果発表はライブ配信され、「#サンリオキャラクター大賞」やランクインしたキャラクターがTwitterでトレンド入りするなど、非常に反響の大きい企画となっています。

推し活の内容や実態、ニーズを捉えた企業事例については以下の記事で詳しくご紹介しています。本記事とあわせて参考にしてください。

関連記事:推し活とは?データで見る実態と、企業の商品・サービス事例

体験を重視する

・消費傾向

Z世代はミレニアル世代と同様に、コト消費を重視する世代とも言われます。定額料金を支払うとコンテンツやサービスを利用できるサブスクリプションサービスが物心ついた頃からあり、モノを所有することへの意義が見いだしづらくなっているのに対し、コトに価値を感じやすい傾向が指摘されています。

実店舗での体験を楽しみたいと考えるZ世代は、オンラインとオフラインの両方をショッピングに活用する傾向があるのも特徴です。買い物に行く際はSNSまたはインターネットで口コミや商品の情報を検索し、きちんと検討してから店舗を訪れ、購入する傾向があります。

・アプローチ方法

体験や経験といった「コト」に価値を見いだすZ世代には、ECサイトだけで完結せずに実際の店舗にも足を運べるよう、オンラインとオフラインの両方でアクセスできるようにするアプローチがおすすめです。手軽に実店舗を構える方法としては期間限定で出店する「ポップアップストア」があり、新規顧客の獲得や既存顧客のロイヤルティ向上などの効果が期待できます。実際に商品を手に取ってサイズや素材などを確認してもらえるため、購入につながりやすいことも大きなメリットです。

また、ユニークな体験を好むことから、Z世代に楽しんでもらえるような体験を実店舗で提供するのも効果的です。SNSでのシェアや拡散が期待できるでしょう。

Z世代が体験を重視する消費行動を捉えた、フルーツオレ専門店も登場しています(2021年12月時点)。次世代フルーツオレ専門店「The Label Fruit(ラベルフルーツ)」は、すべての商品をスマートフォンから注文・決済し、店舗のロッカーから商品を受け取る仕組みです。ボトルラベルやフルーツオレの味はカスタマイズが可能で、自分だけのオリジナル商品を作ることができます。

社会課題やSDGsに取り組む企業を評価する

・消費傾向

現代社会の問題に対する関心が高いZ世代は、社会課題やSDGsに取り組んでいる企業への評価も高い傾向があります。また、環境に配慮した容器・包装を使っている商品、生産国への寄付になるフェアトレード商品など、社会課題に貢献できる商品を積極的に購入する人もいます。このような傾向はY世代よりもZ世代の方が多く見られ、Z世代は社会課題やSDGsを自分ゴトとして捉えている意識がうかがえます。

・アプローチ方法

現代社会の問題に取り組む企業を評価するZ世代には、SDGsへの取り組みや企業の思い、ストーリーなどを積極的に発信するアプローチが効果的です。世界が抱える課題の解決に取り組む企業として評価され、企業や自社製品のイメージアップにつながり、採用活動においても良い影響を及ぼすでしょう。

また、Z世代は社会課題への貢献意識があるため、環境を考慮したサステナブル商品の開発も有効です。水洗いすれば何度も繰り返し使えるラップ、廃棄予定の野菜や果物を利用した紙製品など、さまざまなサステナブル商品が開発されています。社会課題への関心が高いZ世代の興味を引き購買行動につなげるという目的はもちろん、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の達成にも貢献する取り組みといえます。

消費の主役となり得るZ世代の特徴を理解し、施策に活かしましょう

Z世代は、今後社会に出て購買力がより高まることから、消費の主役になる世代と言えます。同じデジタルネイティブ世代として、ミレニアル世代との共通点もありますが、Z世代独自の価値観や考え方も際立っています。Z世代向けにマーケティング戦略を打ち出す際は、Z世代ならではの特徴やライフスタイル、消費行動への理解が大切です。Z世代の行動様式や消費動向を注視することで、新しい消費トレンドも見えてくるでしょう。

なお、以下の記事では、Z世代の消費意欲のつかみ方や特有の価値観などについても紹介しています。参考にしてください。

テレビ界も世代交代の動き急!台頭し始めた「Z世代」の消費意欲のつかみ方と、企業が採用・育成する際の注意点――原田曜平インタビュー

マーケターが知っておきたいZ世代“ホントの”価値観――SHIBUYA109 lab.所長・長田麻衣インタビュー

 

記事執筆者

Marketing Native編集部

Marketing Native(マーケティングネイティブ)は株式会社CINC(シンク)が運営しているメディアです。 CMOのインタビューやニュース、Tipsなど、マーケターに役立つ情報を発信しています。
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