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60億円のヒットの裏にセオリーあり。「カントリーマアム チョコまみれ」はなぜ売れたのか?【みる兄さんが話題のプロダクトを考察する連載・第6回】

最終更新日:2022.04.19

読者の皆さまにご愛読いただいております「みる兄さん」(事業会社のマーケティング部門に所属する匿名マーケター)の連載も第6回を迎えました。今回は、ゆるキャラの斬新なパッケージで話題を集め、2021年の売上が60億円に達したヒット商品「カントリーマアム チョコまみれ」を取り上げ、ブランドの拡張が成功した理由について考察します。みる兄さん自身も、過去に担当ブランドのブランド拡張について悩んだことがあり、「カントリーマアム チョコまみれ」の凄さがあらためてわかったそうです。

目次

     

    お客さまから飽きられないようにロングセラーブランドを的確にマネジメントし、成長させる。このテーマはブランディングの中でもとりわけ難しい命題です。市場の変化に合わせて変わらなければ、取り残されてしまう。しかし、やみくもに変えてしまうと、ブランドの信頼に傷をつけるおそれもあります。ロングセラーブランドには、長年そのブランドを支えてくれたお客さまが存在しますが、ブランドを守ること自体が目的となるとマンネリになり、気づくと他の競合ブランドに足元をすくわれているケースも目にします。ロングセラーブランドの担当者は「何を守り、何を変えるか?」を決断しなければならず、悩ましい立場にいます。

    そんな中、とあるお菓子に注目が集まっています。日経トレンディが2021年11月3日に発表した「2021年ヒット商品ベスト30」の11位にランクインした、「カントリーマアム チョコまみれ」です。

    今回のテーマは、不二家のロングセラーブランド「カントリーマアム」から、2020年に発売され、大ヒット商品となった「カントリーマアム チョコまみれ」について、ケビン・レーン・ケラーの名著『戦略的ブランド・マネジメント』に照らし合わせ、ロングセラーブランドでのブランド拡張のポイントをひも解いていこうと思います。

    カントリーマアムの歩み

    カントリーマアムは1984年7月の発売から38年続くロングセラーお菓子ブランドです。

    画像出典:不二家チョコチップクッキー カントリーマアム「カントリーマアムとは

    製造元の不二家がキャンディの「ミルキー」やチョコレートの「ルック」に次ぐ、第三のジャンルとして、クッキーにチャレンジしたことが誕生のきっかけです。「外の生地はサックリとしていて、中の生地はしっとり」な食感が特長。クッキーなのに白あんを入れて、中の生地のしっとり感を出す工夫をしています。

    カントリーマアムは毎年、新風味、コラボ商品、地域限定商品を展開し、ブランドを拡張してきました。

    2020年、2021年新商品数は以下の通りです。

    新風味商品地域限定商品コラボ(イベント)商品その他の商品
    2020年4414
    2021年5122

    ※リリースなどを参考に筆者作成

    2021年はコロナの影響で旅行需要が見込めないため、地域限定商品の数が少なかったものの、新風味の商品を4回~5回発売しています。

    ブランド担当者は売上を伸長させるために、味や香りなどの違いや地域限定、コラボレーションといった新商品によってブランドを拡張させていくことが多いと思います。ケビン・レーン・ケラーによると企業が行う、ブランド拡張/ライン拡張/カテゴリー拡張は、それぞれ下記のように定義されています。

    参考:『戦略的ブランド・マネジメント』(東急エージェンシー、ケビン・レーン・ケラー著)

    上記に照らし合わせると、カントリーマアムのブランド拡張の多くはライン拡張に当てはまります。そんな中、「カントリーマアム チョコまみれ」は新風味や地域限定商品の展開とは異なり、新たな顧客を開拓すべく、カテゴリー拡張にチャレンジしています。

    2018年に弊社のロングセラー菓子『ホームパイ』が50周年を迎え、その際に『ホームパイのみみ』という商品を発売しました。カリカリな端っこだけをパッケージするコンセプトはもちろん、パッケージに採用したゆるキャラがSNSなどで話題になったんです。そのことをふまえ、35周年を迎えた『カントリーマアム』も同様に若い人にもアプローチしたいと思って『カントリーマアム チョコまみれ』を開発しました。

    出典:@DIME『【ヒット商品開発秘話】チョコを大胆に使う発想と謎のゆるキャラでヒットした不二家「カントリーマアム チョコまみれ」

    チョコまみれの企画者のインタビューによると、2019年の11月にセブン-イレブン限定でテスト発売を実施。好評だったため、翌2020年4月に商品を正式に販売開始。2021年は売上約60億円を達成し、ビスケットカテゴリーの年間売上で上位にランクインするなど、近年まれにみるヒット商品となっています。

    新しい顧客に向けてブランド拡張するには

    ■新製品の顧客ターゲットは親ブランドと同一かを見極める

    チョコまみれがブランド視点で興味深いのは、カントリーマアムの既存顧客とターゲットを変えていることです。リリースを見ると、親ブランドのカントリーマアムの新風味は「ターゲット:30代~40代女性」(14枚入りの場合)と記載されています。一方、チョコまみれは「ターゲット:高校生~20代男女」と設定しています。

    画像出典:株式会社不二家「ニュースリリース 2020年」
    https://www.fujiya-peko.co.jp/assets/pdf/press20200114_3.pdf
    https://www.fujiya-peko.co.jp/assets/pdf/press20200414_1.pdf

    親ブランドのカントリーマアム、「カントリーマアム(宇治抹茶)」のような他のライン拡張のアイテムと「カントリーマアム チョコまみれ」のパッケージを比較すると、一連のカントリーマアムは「カントリーマアムのロゴがメインで味がサブ」「新たな風味に採用した果物などの画像でイメージを訴求」のフォーマットの中で展開されています。しかし、チョコまみれは「カントリーマアムのロゴとチョコまみれの表記は並列」「前面にゆるキャラを出し、”ぬう~~~~~ん”のテキスト」と、その違いがより際立っています。

    ■新製品は親ブランドの「何を守り、何を変えるか?」

    ロングセラーブランドにおいて、ブランド拡張を検討する場合、「何を守り、何を変えるか?」の議論が起こります。新しいチャレンジをすると、「そのパッケージデザインはブランドのトーン&マナー(広告表現の一貫性を保つための表現のスタイルや方法などのルール)から外れている」「ブランドらしさを損ないかねない」とブランド・エクイティを守るために変化を受け入れられなかったとの話をよく聞きます。

    しかし、「カントリーマアム チョコまみれ」は良い意味で、カントリーマアムらしくないパッケージとネーミングで市場展開しました。この企画を通すために不二家の担当者も非常に苦労したそうです。

    『カントリーマアム』に抱く〝ロングセラー〟のイメージと、パッケージに描かれる「まみれさん」の〝ゆるい〟印象のギャップが、若い層を中心に支持された。「まみれさん」のデザインは企画担当の粘りで社内のGOサインを勝ち取ったそうだ。

    出典:@DIME『【ヒット商品開発秘話】チョコを大胆に使う発想と謎のゆるキャラでヒットした不二家「カントリーマアム チョコまみれ」

    ▲パッケージに描かれているキャラクター、「まみれさん」(画像提供:株式会社不二家)

    ■ブランド拡張をマトリクスにして整理する

    では、ブランド拡張においてどういうケースで親ブランドから変化を伴う新製品を投入すべきか、下記のマトリクスで整理できると感じています(筆者の経験で作成)。

    ※USP:Unique Selling Propositionの略で、商品やサービスが持つ強みのこと。

    親ブランドに対して顧客とブランドコンセプトが共に同一の中でブランド拡張を狙う場合は、新風味やサイズ展開などのライン拡張が有効です。ブランドコンセプトが同一で新たな顧客ターゲットにより新市場を開拓する場合は、新風味などのライン拡張でも狙えますが、大胆にカテゴリー拡張を狙う方が親ブランドを効果的に活用できると考えられます。

    親ブランドと顧客が同じで、ブランドコンセプトが異なる新製品の投入によるブランド拡張は失敗するケースが多く見られます。しかし、世の中では同様のケースが絶えません。ブランド側は、「同じ顧客ターゲットであれば、別のカテゴリーで異なるブランドコンセプトであってもそのブランドの製品に好感をもってくれるだろう」と企業視点で考えてしまうことが原因と思います。有名な例だと、バイクブランドのワイン・クーラー、ジーンズブランドのスーツ、醤油ブランドのワインなどがあります。これらは、親ブランドと新製品の対象顧客が同一だったのかもしれませんが、もともと持っているブランド・エクイティとは親和性のないカテゴリーに進出し、親ブランドが持っているブランドコンセプトを踏襲せずに展開し、もれなく失敗しています。

    その点、「カントリーマアム チョコまみれ」は、親ブランドのカントリーマアムのUSP「外の生地はサックリとしていて、中の生地はしっとりな食感」を守りつつも、対象となるターゲット層が親ブランドと明確に異なるため、パッケージデザインとネーミングに関しては徹底してターゲット世代に寄せて開発したことが成功要因ではないでしょうか。

    「何を守り、何を変えるか?」がハマったブランド拡張の素晴らしい成功事例だと思います。

    ■カテゴリーをずらすブランド拡張の有効性

    「カントリーマアム チョコまみれ」は、ビスケットカテゴリーからチョコレートカテゴリーへと拡張をしたことも成功要因と考えられます。不二家のカテゴリーではビスケットになっていますが、顧客はチョコレート菓子のひとつとして選択肢に入れていると感じています。

    実際に、僕の周りでも「カントリーマアム チョコまみれ」を好んで買っている若手がいましたが、話を聞いてみると、最初はカントリーマアムと認識せず、チョコレート菓子の新商品として購入していたそうです。ブランドロゴよりも、パッケージの印象の方が強かったため、新たな顧客開拓につながっている例です。何度かリピート購入するうちに、「チョコまみれはカントリーマアムだった」と認識していました。

    洋菓子市場で比較すると市場規模:チョコレート5,470億円/ビスケット3,805億円と1.42倍の市場規模があり、両方ともここ10年は他のカテゴリーよりも伸長しています。

    データ出典:全日本菓子協会「令和2年 菓子データ(凡例修正)

    ■BtoBにおけるブランド拡張のメリット

    「カントリーマアム チョコまみれ」は一見カントリーマアムと見えないパッケージにしていますが、親ブランドのブランド力を利用したチャネル開拓の効果も大きかったと感じます。小売りの多くはブランド単位で売り場の棚を決めています。「カントリーマアム チョコまみれ」が、全く新しいブランドだった場合、チャネルを開拓し棚に置いてもらう労力は大きいと思います。

    toBのチャネル側面において親ブランドのメリットを使い、toCに向けては大胆に顧客志向で突き抜けた商品を開発する。これが、顧客ターゲットが異なるブランド拡張の勝ち筋かと思います。

    僕が見聞きした範囲では、企業都合のサイクルで新製品を投入してブランド拡張を狙った場合、親ブランドとブランドコンセプトの不一致、自社内でのカニバリゼーションなどのトラブルが起こりがちです。ブランド拡張が失敗すると、親ブランド自身のイメージを棄損することにもつながります。特にヒット商品のブランドから新風味やカテゴリーをまたいだブランド拡張の新アイテムを展開し、そのアイテムの売れ行きが良くなかった場合、小売業者(チャネル)にも顧客にも「売れているブランド」という信頼に傷をつけてしまいます。

    終わりに

    今回は、「カントリーマアム チョコまみれ」をテーマに、ケビン・レーン・ケラーの名著「『戦略的ブランド・マネジメント』を照らし合わせてロングセラーブランドのブランド拡張について掘り下げてみました。僕も過去に担当ブランドのブランド拡張を企画として出した際に、ブランドらしさと顧客の共感度の狭間で、どこまで親ブランドから離すべきか、非常に悩んだことを思い出しました。

    「カントリーマアム チョコまみれ」のブランド拡張は、親ブランドのブランドパワーを活用しつつも、新たな顧客/市場を開拓するために担当者の着眼と熱意によって、「何を守り、何を変えるか?」を見事にやり切ったケースだと思います。ブランドマーケティングにおいて、ここの決断こそが醍醐味ではないでしょうか。

    特にロングセラーブランドの担当が変わったタイミングでは、新任者は過去のマーケティングを踏襲するより変化を好む傾向があります。「カントリーマアム チョコまみれ」のようにブランド拡張がうまくいけば、新製品だけでなく親ブランドにもプラスの寄与(ブランドのリフレッシュ)が起こりますが、逆に新商品によって順調だった親ブランドの信頼に傷をつけることもあります。

    こういったブランド棄損を避けるためにも、ケラーが書籍で提唱したブランド拡張のチェックリストを参照してみるのが良いと思います。

    1. 親ブランドが強いエクイティを持っているか?
    2. 拡張品への十分なエクイティの移転があるか?
    3. 拡張品がブランドのビジョンや本質と一致しているか?
    4. 標的市場で意味をなす論理的適合性が見られるか?
    5. 新しいカテゴリーで強い競争的ポジショニングを作り出すか?
    6. 新しいカテゴリーでネガティブな連想を作り出すのを避けられるか?
    7. その拡張品はブランド・エクイティに対し、どのような結果を持つのか?
    8. マイナスのリスクや希釈化を最小限にするか?
    9. さらなる拡張機会をもたらすか?
    10. 拡張品は必要な類似化ポイントと差別化ポイントを備えるか?
    11. マーケティング・プログラムは拡張品のエクイティをどのように高めることができるか?
    12. 拡張品の開発に求められる組織的なスキルやリソースがあるか、もしくは得られるか?
    13. 拡張品の親ブランドへのフィードバック効果を、どのようにうまく管理すべきか?

    出典:『戦略的ブランド・マネジメント』(東急エージェンシー、ケビン・レーン・ケラー著)

    「カントリーマアム チョコまみれ」をこのリストに照らし合わせてみると、「1.親ブランドが強いエクイティを持っているか?」「2.拡張品への十分なエクイティの移転があるか?」「5.新しいカテゴリーで強い競争的ポジショニングを作り出すか?」の3つが特に重要であると考えられます。

    お読みいただいた方の中にも、ブランド拡張の「何を守り、何を変えるか?」に悩んでいる方がいらっしゃるかもしれません。ブランドは一貫性、継続性が重要視されていますが、「変わらないために、変わり続ける」この重要さをカントリーマアム、チョコまみれの事例から学びました。

    みる兄さん

    記事執筆者

    みる兄さん

    匿名アカウントなマーケター。事業会社のマーケティング部門に所属している。
    Twitter:@milnii_san
    note:https://note.com/milnii
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