事業会社のマーケティング部門に所属する匿名マーケター・みる兄さんが話題のプロダクトを考察する連載の第4回は、2013年から2020年の売上成長率2,200%と圧倒的な事業成長で注目を集める「Anker」を取り上げます。「Anker」がここまで圧倒的に成長できた要因は何か、メンタルアベイラビリティ(mental availability)とフィジカルアベイラビリティ(physical availability)の観点から考察します。
目次
今回のテーマは、「メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティのブランドとの関係」です。
マーケティングネイティブで連載が決まってから、一度は書いてみたいと思っていたAnkerグループに着目し、参考図書として『ブランディングの科学2』(※)を用いてその戦略をひもといていきたいと思います。
※編集部注:正確には『ブランディングの科学 新市場開拓編-エビデンスに基づいたブランド成長の新法則-』ですが、出典箇所を除き、本文中では通称の『ブランディングの科学2』と表記しています。
Ankerの成長要因
Ankerグループは2011年に元Googleのスティーブン・ヤン氏により中国・深センで設立されました。スマートフォンおよびPCの充電器やケーブル等のチャージング関連製品を展開する「Anker」をはじめ、オーディオブランドの「Soundcore」、そしてスマートプロジェクターブランドの「Nebula (ネビュラ) 」、ロボット掃除機を展開するスマートホームブランドの「Eufy (ユーフィ) 」など、コアデバイスを直接的に補完する機器から高度に連携する機器まで幅広いラインナップを展開しています。
2011年の創業時より、時代に先駆けてD2C (Direct to Consumer) モデルを採用すると共に、お客様の声に基づいてスピーディーに製品の開発・改善を行うソフトウェア的発想のものづくりを実践し、安心のサービスと納得の価格で高品質のスマートデバイス周辺機器を提案し続けています。
出典:アンカー・ジャパン
画像出典:アンカー・ジャパン
アンカー・ジャパンは2013年1月の設立以来、日本市場において存在感を急激に高めています。2013年の立ち上げから2020年までの成長率は約2,200%を超え、年間売上は約212億にまで達しています。
Ankerグループの成長要因については、書籍『Anker 爆発的成長を続ける 新時代のメーカー』(マイナビ出版、松村太郎著)で様々な視点で触れられています。
製品戦略:高価格な純正品と粗悪な低価格品の中で、第3の選択肢(高品質で手に取りやすい価格)を展開し、プロダクトの支持を集めてきました。
チャネル戦略:Amazonを主体として展開し、その後、他のECプラットフォーム/量販店へと拡張、自社ECや直営店舗へと販路を着実に広げています。
顧客体験:レビュー、口コミなどのお客様の声を重視してきました。カスタマーサポートを内製化し、日本国内だけでも年間20万件にも及ぶ問合せに対応しています。また、製品に対する厳しいご意見も真摯に受け止め、製品開発に生かしています。
参考:『Anker 爆発的成長を続ける 新時代のメーカー』(マイナビ出版、松村太郎著)
Ankerの成長をひもとくと、バイロン・シャープ氏が書籍『ブランディングの科学』『ブランディング科学2』の中で提唱していた”メンタルアベイラビリティ”と”フィジカルアベイラビリティ”の構築を徹底してきたことがわかります。
メンタルアベイラビリティを構築するには
前回のバルミューダに関する寄稿記事で顧客が購買にいたるまでの行程について触れました。
1.カテゴリーあるいはサブカテゴリーを選ぶ
2.候補ブランドをいくつか選ぶ
3.検討グループから1つ購入ブランドを選ぶ
4.ブランドを体験する
このような流れで顧客はカテゴリーとブランドを選好しています。
「2」の部分で購買客が特定のブランドをどれだけ記憶として想起するかをメンタルアベイラビリティと言います。
メンタルアベイラビリティ(mental availability) 消費者のブランドにかかわるすべての記憶のことで、ブランドロゴやパッケージの形やブランドカラーなどのブランドの構成要素から、なぜ・いつ・どこで・誰と・何と一緒に買う・使うのかというようなブランドオケージョンの記憶を指します。このようなブランド記憶が多いほど、またその記憶が新鮮であるほど、購買シーンで消費者がブランドを想起する確率が競合ブランドよりも高まります。マーケターは自分の担当するブランドのメンタルアベイラビリティを上げることに全力を注ぐ必要があります。
出典:『ブランディングの科学 新市場開拓編-エビデンスに基づいたブランド成長の新法則-』(朝日新聞出版、バイロン・シャープ、ジェニー・ロマニウク著
書籍『ブランディングの科学2』では、メンタルアベイラビリティを構築するために”消費者が記憶から想起する要素”をカテゴリーエントリーポイント(CEP)と表現しています。
目的は?Why? いつ?When? どこで?Where?
誰と一緒に?With whom? 何と一緒に?With that?
これら様々なCEPでブランドが想起されることがメンタルアベイラビリティを構築するためには重要です。
筆者の解釈では、CEPに基づきメンタルアベイラビリティを高めるには闇雲にCEPとブランドの紐づきを増やすのではなく、一定の規則があると感じています。
- CEPの中でいくつかに絞り、そのCEP視点で商品を探しているときに購買に近い部分で考慮集合(※)に入ることに集中する。
- 特定のCEPの考慮集合を取った後、速やかにより多くのCEPをその商品に連動させる。
※編集部註:購買を検討している製品やブランドの集合体のこと。
Ankerは、人の可処分時間の多くを占めるスマートフォンの電子周辺機器などのチャージング関連製品を集中的に展開してきました。また顧客が「スマートフォン」を利用する際に直接的に補完する商品を探す場所「Amazon」に集中して展開し、購買に非常に近い場で考慮集合に入ることを達成しています。
CEPの中でも「何と一緒に?」(スマートフォンと一緒に)「どこで?」(購入場所としてのAmazonで)に絞り込み、合理的にCEPを獲得してきています。
アンカー・ジャパン代表取締役CEO 猿渡氏のインタビューでは、初期に販売プラットフォームをAmazonに絞っていたことが成長のドライバーになっていたと示されています。
だからデータを見て仮説を立てて、うまくいかなければ改善する。ウルトラCがあったわけではなく、その繰り返しでビジネスを伸ばしてきました。その中でも、Amazonをコアにできたというのは強かったですね。Amazon自体がすごい勢いで伸びてきたので、シェアさえ維持できれば、そこに乗って一緒に成長できました。
出典:ECのミカタ「ECの大変化に対応するアンカー・ジャパンの取り組み」
また、Ankerでは上記のような特定のCEPでNo.1を獲得した後に、さらにCEPを増やす取り組みを展開しています。例えば、2018年より公式サイトでオウンドメディア「Anker Magazine」を展開し、「飛行機にも持ち込める!旅にオススメのモバイルバッテリー」などシーンごとの有益性を発信したり、「#Ankerのある生活」キャンペーンをSNSで実施したりと、スペックだけでなく、顧客の生活シーンに紐づくコンテンツを強化することでCEPを増やしています。
画像出典:アンカー・ジャパン「飛行機にも持ち込める!旅にオススメのモバイルバッテリー」
画像出典:アンカー・ジャパン
購買に近い顧客接点で特定のCEPで考慮集合の優位性を獲得する。その後、コンテンツマーケティングのようなストック型の打ち手によってCEPを拡張していく。この戦略こそ、メンタルアベイラビリティを着実に高めていく方法だと感じています。
ブランドローンチ時は、あれもこれも売れる切り口を作るべく、CEPの数を増やす方に向きがちですが、初手としては「CEPの選択と集中によって特定カテゴリーのNo.1を獲得する」といったAnkerグループのようなマーケティング戦略を組むことが重要と考えています。
フィジカルアベイラビリティを構築するには
メンタルアベイラビリティに加えて、マーケターや事業者が忘れがちなのがブランドの買い求めやすさです。チャネル戦略に向き合ってこそマーケティングの醍醐味だと僕は思います。この買い場の優位性について言及しているのが「フィジカルアベイラビリティ」です。
フィジカルアベイラビリティ(physical availability) ブランドの存在感が高まっていて多くの消費者に幅広い購入機会が提供されている状態。具体的には配荷の量と質のことであり、ただ単に100%どの店にも配荷されているだけではなく、棚位置やフェース数、棚以外での山積みを獲得し、ECサイトでは上位に検索され、小さいスマホ画面の中でも目立つように配置されているなど、消費者がブランドを購入する瞬間に常に競合よりも購入されやすい状態であることが問われます。マーケターだけではなく営業やEC担当者にとっても非常に重要な概念です。
出典:『ブランディングの科学 新市場開拓篇-エビデンスに基づいたブランド成長の新法則-』(朝日新聞出版、バイロン・シャープ、ジェニー・ロマニウク著)
フィジカルアベイラビリティを高めるには、プレゼンス(存在感)、レレバンス(買い求めやすさ)、プロミネンス(目立っているか)の3要素それぞれを意識しなければなりません。
プレゼンスとは、フィジカルアベイラビリティを支える中心的要素です。ブランドが購買接点で存在感を作れているか?の観点のことを指します。存在感を出すためには、多くの購買接点でブランドを配荷する必要があります。顧客がブランドを購入する際の障壁を取り除くことで存在感は高まります。
レレバンスとは、買い求めやすさの視点。ここで言う買い求めやすさはチャネルの数ではなく、カテゴリー内での製品ラインナップを拡充することや支払い条件を増やすことで、顧客があらゆる条件で購入できる状態を指します。
プロミネンスとは、目立っているかの視点。ECプラットフォーム、小売りの店内には広告や製品情報などさまざまな情報が存在し、ブランドは多くの競合ブランドの中に埋もれています。顧客の購入環境でブランドが目立つことができれば、フィジカルアベイラビリティの構築が促進される。
※参考:『ブランディングの科学 新市場開拓篇-エビデンスに基づいたブランド成長の新法則-』(朝日新聞出版、バイロン・シャープ、ジェニー・ロマニウク著)
Ankerグループは、フィジカルアベイラビリティを構築するために、プレゼンス(存在感)、レレバンス(買いやすさ)、プロミネンス(目立っているか)をそれぞれ着実に積み上げています。
まず、販路をAmazonに絞ったことは、フィジカルアベイラビリティ構築の一手として理にかなっています。足を運ばず、店頭で探さずに、最速で自宅に届く購買接点を作る。これにより、目的をもって購入するユーザーのフィジカルアベイラビリティにおける負の部分を補うチャネルを構築しました。
『ブランディングの科学2』では購買客が一つの特定チャネルや小売店にロイヤルティを抱くことはない「購買重複の法則」について言及されています。Ankerグループもこの法則と同様に、Amazonを中心としたECプラットフォームを攻め、購買接点の一つを攻略したのち、楽天市場への出店、家電量販店、直営店舗であるAnker Store、セブン-イレブンでの展開とチャネルを拡張し、ブランドと顧客接点を広げています。フィジカルアベイラビリティを高めるためには非常に合理的な歩みだと感じます。
そして、カテゴリー内でレレバンス(買いやすさ)を高めるためには、いくつかのポイントがあります。
品ぞろえ:大量買いから単品買いまで幅広いニーズに対応する製品をそろえる。
価格幅:購買客が掲示された価格に100%満足することはない。(中略)買う側としては、贅沢したいときにも倹約したいときにも、選択肢があることはうれしいことだ。
支払い方法:買いたい気持ちがあるからと言って購買行動を起こすわけではない。(中略)たとえば、分割払い、クレジット払い、端末決済など購買客にとって便利な決済方法がある。
出典:『ブランディングの科学 新市場開拓編-エビデンスに基づいたブランド成長の新法則-』(朝日新聞出版、バイロン・シャープ、ジェニー・ロマニウク著)
Ankerグループは、上記の3要素を着実に捉えています。カテゴリーでNo.1を取るために、様々な製品ラインナップで品ぞろえを拡充しています。例えば、モバイルバッテリー、急速充電器、ケーブルの各カテゴリーで数十製品を販売するなど、他ブランドと比較しても圧倒的なラインナップ数を展開しています。
また、支払い方法に関しても特筆すべき点があります。筆者もユーザーとして、いちEC事業者として非常に驚いたのがAnker Japan公式サイトの製品ページに、公式サイトでの決済だけではなく「Amazonで購入する」というリンクが全製品で設置されていることです。
公式サイトでの販売とAmazonではブランドの元に残る利益は大きく異なるはずです。しかし、公式サイトで会員登録や支払い方法の設定などを行う顧客の手間よりもAmazonで注文する支払いの簡易さを重視して、ブランド側が顧客の選択肢を提供している。これを実施しているブランドを僕は他には見たことがありません。徹底して顧客のレレバンスを重視することで、Ankerグループはフィジカルアベイラビリティを構築し、顧客からの支持を集めているのだと思います。
そして、プロミネンス(目立っているか)を高めるためには何を意識すれば良いのか。多くのブランドが存在するECプラットフォーム上や店舗で埋もれないことが重要です。ECプラットフォームは商品情報がカテゴリーごとに画一化されて表示されています。その中でプロミネンスを高めるためには、ユーザーレビューの質と量を高めることが重要と筆者は感じます。
Ankerグループは、ECプラットフォーム上のユーザーレビューを非常に重要視していると伺います。
Amazonのカテゴリーランキングで1位を獲っていて、良いレビューが並んでいて、価格も手頃で人気商品らしいことがわかれば、ブランド名を知らなくてもお客様は選んで頂くことはできると思っています。
出典:ECのミカタ「AnkerのD2Cはいかにして成功したのか。「顧客体験」を起点にした事業戦略とは」
また、家電量販店の中でもプロミネンスを高めるための取り組みとして、他製品と横並びの棚ではなく、「Ankerコーナー」なるブランド特設の売場作りや、家電量販店内に直営店を出店するSHOP IN SHOP形態でのAnker Storeなどの取り組みも積極的に行っています。
このように、Ankerの製品ラインナップ、またチャネル戦略も『ブランディングの科学2』で提唱されているフィジカルアベイラビリティを構築する要素を踏襲し、非常に合理的にステップを踏んでいると感じます。
Ankerグループのブランディングについて
猿渡氏へのインタビューによると、アンカー・ジャパンの立ち上げ当初は製品戦略、チャネル戦略に注力し、ブランド戦略に取り組み始めたの比較的近年(2019年頃より)ということでした。
事業会社でコーポレートブランディングに従事している筆者の体験談になりますが、企業のブランドを強くするにはコミュニケーション戦略とブランド自体の顧客体験の両輪をバランスよく回すことが重要と考えています。
前述のメンタルアベイラビリティの構築でも触れましたが、顧客がCEPでブランドを想起するきっかけは、体験と情報それぞれの接点が重要となります。「製品が高品質」「故障しにくい」など製品の使用体験や、トラブルがあった際のカスタマーサポートの対応に関する記憶が体験の記憶に当てはまります。Ankerグループは顧客体験とコミュニケーション戦略を合理的に実践していたと思います。プレスリリースでの情報発信を強化したり、オウンドメディアでコンテンツを発信したり、キャラクターやアーティストとのコラボレーション、川崎フロンターレのスポンサリング、地方自治体との連携・災害時対応など、徐々に幅を広げながら顧客とのCEPを構築していると感じます。これらの活動も製品やサービスの顧客体験の基盤があるからこそ、レバレッジが効いてきます。
もしも、Ankerグループのブランド戦略の未来を描くなら
このように、製品戦略とチャネル戦略にブランド戦略を強化している中、長年のAnkerユーザーであり、実務者としてブランド戦略を学び実践してきた者として、「もしも、筆者がAnkerグループのブランド戦略の未来を描くなら」について少しお節介ながら書いてみたいと思います。
コアデバイスを直接補完するモバイルバッテリー、充電器、ケーブル各種に関しては製品戦略、チャネル戦略ともにカテゴリーNo.1の獲得により生まれるメンタルアベイラビリティ、直営店舗やセブン-イレブンなど販路を拡充しているフィジカルアベイラビリティともに盤石であると感じています。
ビジネスとして伸びしろがあるのは、「Soundcore」の完全ワイヤレスイヤホンなどのオーディオ関連製品、「Eufy」のロボット掃除機、「Nebula」のスマートプロジェクターといったコアデバイスと連携するブランドで展開される製品だと思います。
Ankerグループは、テクノロジーの力で人々のスマートな生活を後押しする「Empowering Smarter Lives」をミッションとしています。
このミッションをユーザー像に落とし込むと、
Ankerユーザー=スマートな(合理的で無駄のない)生活をする(賢い)ユーザー
このブランド連想をより高めていく必要があると感じています。
その視点からすると、盤石なAnkerグループの戦略の中で一点だけ強化できるポイントがあると感じています。
それが、「クリエイティブへの投資」です。
同じ電子機器でブランディングのお手本とされるのは”Apple”ですが、Ankerの向かう方向は”Apple”とは異なり、学ぶべき方向性は、”ユニクロ”ではないかと感じています。ユニクロは2000年以降にセールス第一主義からブランド主義へと進化しています。
ユニクロは1990年代後半、いわゆるブランド系のファッションとショッピングセンターやスーパーで販売している普段着の間に、「人々の生活をより豊かに、より快適にする究極の普段着」として第3のポジションを確立していきました。しかし、2009年頃には「ユニバレ」という現象が起きており、筆者も例にたがわず、ユニクロTシャツのタグを切って着用していました。
そんな世間の評判に変革を起こしていったのがクリエイティブの革新です。記事によるとユニクロのクリエイティブの革新には2回の転機があったそうです。一つ目は、1998年の世界的な広告代理店ワイデン+ケネディのジョン・ジェイ氏との出会いでした。
佐藤可士和氏がユニクロのロゴや旗艦店のデザインのクリエイティブディレクターを務めていることは有名ですが、僕はジョン・ジェイ氏が携わった後に生まれたフリースのCMと店頭陳列がユニクロのクリエイティブの変革として鮮烈に記憶に残っています。50色あるフリースがレーンにつられて回っているCM。そして50色を店頭の棚に大量に陳列されたディスプレイです。
※イラスト:Marketing Native編集部(CMを参考に作成)
ここから、ユニクロが外部向けに発信するクリエイティブは大きく変わっていったと感じます。
そして、二つ目の転機が、2006年の佐藤可士和氏のクリエイティブディレクター就任です。共通のクリエイティブコンセプトを作成し、広告コミュニケーションと店頭がアップデートされていきました。
そもそも僕はクリエイターという職業を信用していないんです。名乗っている人の95%にはクリエイトする力がない。つまり自分でものがつくれない人が多い。そんな僕に、ある知人が「佐藤可士和というクリエイターがいるので、ぜひ会ってみてくれ」と言ってきた。でも僕はずっと断っていたんです。そうしたら、その人が「NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』という番組で、可士和さんが取り上げられるから見てくれ」と重ねて言うもんで、じゃあと見たところ「おお、これはすごい」と。
出典:GOETHE「【柳井 正×佐藤可士和 対談】世界一を目指すユニクロのクリエイティブの裏側」
当時、売上高が4,488億円、営業利益が703億円だったファーストリテイリングの選択なので、もちろんそのまま踏襲するわけにはいきません。しかし、ファッションにおけるコモディティな普段着を「Lifewear」としてブランド化する。そして、ユニクロを着ている人=「クールで賢いユーザー」と一般的になった過程でクリエイティブの力は非常に大きかったと感じています。
そのため、Ankerグループにもラグジュアリー視点ではない、「Empowering Smarter Lives」な視点でブランド創造にチャレンジしていただきたいと思います。
筆者の主観にはなりますが、その可能性を秘めているのは「Soundcore」と直営店舗のAnker Storeだと思います。「Soundcore」は現在、スペックの種類を増やしつつ、いくつかのカラーバリエーションを作っていますが、圧倒的なカラーバリエーション、または、著名なクリエイティブを発信するデザイナーとのコラボレーションモデルなどの展開を行い、Smarter Livesのアイコンとなるラインにするのはいかがでしょうか。Ankerグループの製品の中で一番他人との接点で可視化されるアイテムが完全ワイヤレスイヤホンだと思います。アイコンとなる製品に選択と集中を行い、メンタルアベイラビリティを獲得していく戦略はAnkerグループならではの方法だと思います。
そして、その「Soundcore」を中心にAnkerのミッション「Empowering Smarter Lives」を視覚的に体現する店舗としてAnker Storeの顧客体験をよりリッチにアップデートにします。
画像出典:アンカー・ジャパン「Anker Store」
そんな「ビジネス視点」と「クリエイティブ視点」をもち、プロダクトから店舗までの顧客接点のデザインを一貫して組めるビジネスパートナーこそがAnkerグループの次のピースなのではないでしょうか。
最後の「Ankerのブランド戦略の未来」は、Twitter上で友人のアンカー・ジャパン代表取締役CEO 猿渡氏への僕からのお節介な感情がだいぶ入ってしまいました。現状のAnker Japan公式サイトやテレビCM、また各地の店舗設計も順調と伺っていますので、目に見えた課題があるわけではない前提として書かせていただいております。
僕自身も事業会社でプロダクトマーケティング、ブランディングに従事する中で、「クリエイティブへの投資対効果ほど合理的判断が難しい分野はない」と感じています。しかし、その一歩を踏み出したブランドのみが、より強くかつ長期的にメンタルアベイラビリティを獲得できると信じています。
ブランドのクリエイティブに対して、合理的にチャレンジする姿をいちユーザーとして期待しています。