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インタビュー

ソーシャルメディアが切り拓く価値共創時代のマーケターの考え方――トライバルメディアハウス代表・池田紀行インタビュー

最終更新日:2023.06.30

CEO Interview #19

トライバルメディアハウス 代表取締役社長

池田 紀行

ソーシャルメディアを中心にデジタルマーケティング事業を幅広く手掛けるトライバルメディアハウス。同社が2007年3月の設立から15周年を迎えたとTwitterで知り、代表の池田紀行さんに話を聞きました。

mixiやブログサービス中心の時代に会社を立ち上げてからTwitter、Facebookの日本参入で大きく飛躍。現在では大手クライアントのソーシャルメディアマーケティングやブランド戦略を多数手掛けているそうです。

まさにこの15年間、ソーシャルメディアマーケティングの第一人者の一人として、ソーシャルメディアの最前線で会社を経営してきた池田さんだからこそ気づく、時代のうねりや価値観の変化がたくさんあるはず。そこで今回は池田さんにトライバルメディアハウスとソーシャルメディアの過去・現在・未来について伺いました。

目次

時代の変化とともに転機を迎えたマーケティングの役割

――会社設立から15年。紆余曲折さまざまなことがあったと思います。2007年の起業時はソーシャルメディアも現在ほど盛んではなかったと記憶していますが、その中でなぜソーシャルメディアで会社を立ち上げようと考えたのでしょうか。

ブログサービスやmixi、クチコミサイトが出てきたときに、大きな可能性を感じたからです。私はマーケティングに携わって20年以上になりますが、トライバルを創業した2007年までは商品開発や売り場づくりなど比較的アナログなマーケティングの仕事をしていました。当時はまだテレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4マスとネット広告だけがマーケティングコミュニケーションの主な方法として用いられ、企業の情報や価値を消費者に伝えていた時代です。

ところが、特にブログの出現によって(日本では2002年頃から急速に普及)、とてつもなく大きな変化が起こり始めていると感じました。なぜなら個人が情報を発信し、別の個人が影響を受けて反応するようなメディア環境は歴史上、初めてだったからです。そのとき「もしかしたらマーケティングが根本から変わる転換点にいるのではないか」とワクワクしたことから、ソーシャルメディアを専門にする会社を立ち上げました。当時はメディアの人たちから「ブログなんて素人が書いた文章を誰が読むんだ?」と冷ややかな反応がありましたが、私は人と人がつながることで、情報の流れが大きく変わることに可能性を強く感じました。

――会社が軌道に乗り始めたのはいつ頃ですか。

転機はTwitterとFacebookの日本本格上陸です。ブログについても、ブロガーの裾野が広がったり、アルファブロガーが現れたりして影響力は大きかったのですが、質量ともにそれなりの文章を書かなければならないハードルがあります。

一方、Twitterは140文字以内で、カジュアルに情報発信できる点が魅力です。さらにTwitterの「フォロー革命」が時代を変えました。2009年に日本語版が上陸すると、広瀬香美さんが「ビバ☆ヒウィッヒヒー」というTwitterの歌を作ってTwitterコンサートを開いたり、ホリエモン(堀江貴文さん)がつぶやいたりして、急速に普及していきます。そこから1年半ほど遅れてFacebookが2010年頃、日本に本格上陸すると、TwitterやFacebookの公式アカウントを作って常時接続型のコミュニケーションを取りたいと考える感度の高いファーストペンギン組の企業が続々と現れ、ソーシャルメディアブームが発生。加えて炎上対策としてのリスクコンサルティングの需要も増え、お仕事をたくさん頂くことができました。創業赤字の2年間を経て、2009年から単年度黒字になると、以降は基本的に猫の手を借りても足りないくらいの忙しさが続いています。

――すごいですね。では、起業からここまで理想の姿に向かって順調に進んでいるとの認識ですか。

そうですね。出来すぎだと感じています。7人で創業して社員20~30人のときに自分が100人規模の会社の代表になるとは想像もしていませんでした。今は社員数1万人規模まで拡大するのが目標です。

――1万人!?今150人と聞きましたが、なぜそんなに…。

マーケティングは、人々の意識、態度、行動を変えるすごい力を持っています。これまでは良い商品を作り、大勢の人に知ってもらって多くの人に買ってもらうためにマーケティングが活用されてきました。しかしここで私が注目するのは、人口が急激に増え、地球環境も劣化する中でマーケティングは今また潮目を迎えていて、良い商品を作って多くの人たちに届けるだけでなく、持続可能な成長性を重視されるようになってきたことです。これも歴史上、初めてのことで、豊かさの価値観が変わってきたのだと思います。

そんな時代の転機をトライバルがリードするためには、150人では少なすぎます。1万人規模の会社にして、社会に届けられる価値の総量を最大化したいと考えています。

――サステナビリティ、SDGsの流れは来ていますか。

来ていますね。大量生産・大量消費が豊かさの象徴であり、幸福の証しであり、美徳でもあると考えてきた欲望の時代が限界を迎え始めたことに人類が気づき、今は皆で力を合わせて持続可能な世界をつくる方向に意識や行動が向かいつつあります。

成長速度を緩めてでも持続可能な世界にしていかなければならない。今までは「もっと、もっと」を促進するのがマーケティングの大きな役割でしたが、これからは持続可能な成長へのパラダイムシフトにマーケティングの力が活用されるわけです。大量生産・大量消費の旧態依然とした考え方から、50円高くてもSDGs、フェアトレードの商品を買うべきだと先進諸国の人たちの思考が変わっていく必要があるとすると、私はそこに人々の意識、態度、行動を変えていくマーケティングの力が貢献できると信じています。

ソーシャルメディアの15年を5段階で分けると…

――ありがとうございます。次に、ソーシャルメディアについての話をお聞きします。ソーシャルメディアと間近に接してきた池田さんから見て、会社設立から現在までの15年間で重要性や価値にどんな推移があったとお考えですか。

個人的にはこの15年を大きくざっくりと5段階に分けて考えています。

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記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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